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ジョブホッパーの魔導譚 〜幾多の職を越えて紡ぐ、魔眼使いの英雄譚~  作者: フェアリーP
幼児編

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第19話 ステータスと、素材の極みと、のんびり暮らしたい理由

 初めての昼ご飯作りを終えた後。食器洗いと片付けまで手伝った自分は、いつものように庭へ出ていた。


 今日は雲ひとつない快晴だ。柔らかな日差しが庭を照らし、心地よい風が吹いている。


 フローラは昼寝中。父さんは仕事。母さんは家の中。


 つまり――。


「よし」


 絶好の考察タイムだった。誰にも聞こえないよう小さく呟きながら、自分は心の中で念じる。


(ステータス)


 視界の端に、見慣れた半透明の画面が現れた。



ーーーーーーーーーーーーー


名前・レイ(4歳)


状態・良好+食事効果(ステータス微増)


属性・雷


職種・無


種族・人族


成長スピード


力3 器用8 速さ3


知力8 魔力8


パッシブ


人見知り/建築/土木/料理/素材の極み


アクティブ


鑑定/クリーン/ボックス/ボール/シールド/ハンド/ストレージ


固有スキル


ジョブホッパー/鑑定の魔眼


ーーーーーーーーーーーーー



「やっぱり増えてる……」


 気になっていたのは状態欄だった。そこに見慣れない文字が追加されている。


【食事効果(ステータス微増)】


 昨日までは無かった表示だ。何度も確認した。見間違いではない。


「微増って何だよ……」


 思わず呟く。力なのか。魔力なのか。体力なのか。何が増えているのか全く分からない。ゲームなら間違いなく説明不足で炎上するやつである。便利そうに見えて肝心な部分が雑だった。


 仕方ないので原因を調べることにした。まずはパッシブスキルからだ。【鑑定】を発動する。





【人見知り】 人見知り状態になりやすくなる。


「お前だけマイナス効果じゃないか」


 相変わらず酷い。なんでこんなスキルを持っているのか。前世の自分への悪口だろうか。転生してまで引き継ぐことではない。


 続いて建築。


【建築】 建築に関する作業効率が上昇。建築に関連するスキル取得率が上昇。


 土木も似た内容だった。作業効率と取得率。シンプルだが実用的だ。前世で培った現場感覚が、スキルという形になっているのかもしれない。


 そして。


【料理】 料理に関する作業効率が上昇。料理に関連するスキル取得率が上昇。食事効果を付与。


「やっぱりこれか」


 予想は当たっていた。どうやら食事効果を付与していたのは【料理】スキルらしい。つまり今日のスープで発生した変化ということになる。普通の料理人とスキル持ち料理人。その差は想像以上に大きいのかもしれない。


「結構凄いな……」


 だが同時に問題もある。


「バレるな」


 もし誰かにステータスを見られた場合、料理スキル持ちだと分かる。もちろん料理スキル自体は珍しくないだろう。しかし四歳児となれば話は別だ。少し目立つ。少なくとも普通ではない。その辺りは注意した方が良さそうだった。





 そして最後。問題児を確認する。


【素材の極み】 素材の加工時、メンテナンス時に品質が上昇。上昇率は素材に対する認識度により変化する。


「やっぱりお前か」


 思わずため息が漏れた。


 今日のスープが妙に美味しかった理由。十中八九これだ。料理スキルだけでは説明できない部分があった。だが【素材の極み】なら話は変わる。食材も素材。料理も加工。条件に完全に一致している。


 つまり素材の品質を引き上げながら料理していた可能性が高い。


「これ危なくないか?」


 改めて思う。


 料理。建築。土木。鍛冶。細工。錬金術。思い付くだけでも相性の良い職業が多過ぎる。しかも説明文が曖昧だ。こういう曖昧なスキルほど危険なのである。前世のゲーム知識がそう告げていた。


 弱そうに見える。地味そうに見える。でも実際は壊れている。大体そういうパターンだ。


 特に【極み】という名前。建築や料理と並んでいるのに、明らかに格が違う。嫌な予感しかしない。


「これは隠そう」


 即決だった。


 優秀な子供は目立つ。目立てば注目される。利用される。囲われる。最悪の場合は誘拐だってあり得る。平和そうな町ではあるが、だからといって油断する理由にはならない。前世で散々社会を見てきた自分は、その辺りを甘く考えられなかった。


 だから今後は。料理が上手い理由も、建築の発想が良い理由も、加工技術が高い理由も、全部【料理】や【建築】スキルのおかげということにしておこう。多少なら誤魔化せるはずだ。


 たぶん。きっと。おそらく。


「シーラさん辺りには見抜かれそうだけど……」


 ブラットの母親は食堂の主人だ。料理人である。普通の人より気付く可能性は高い。何か対策を考えておいた方が良いかもしれない。


(まあ、その時はその時で考えよう)


 今から悩んでも仕方ない。前世でも、取り越し苦労の九割は起きなかった。残りの一割だけ本当に困った。





 空を見上げる。青空は今日も広かった。


「のんびり暮らしたいんだよなぁ……」


 自然と言葉が漏れた。


 前世では忙しかった。仕事。人間関係。将来への不安。色々あった。気付いたら身体が先に終わっていた。


 だから今世くらいは。美味しいご飯を食べて。家族と過ごして。時々旅をして。穏やかに生きたい。


 そんな人生も悪くないと思う。


 そのためには力が必要だ。生き残るための力。生活を豊かにする力。魔法も、料理も、建築も、全部役に立つだろう。


 そして来年。五歳になると職種判定の儀式があるらしい。どんな職業に就くのか。どんな未来が待っているのか。少し楽しみだった。


 もっとも――自分には【ジョブホッパー】がある。普通の人とは違う未来になる気しかしない。その辺は考えても仕方ないだろう。


(今はできることを増やそう)


 積み重ねた努力だけは裏切らない。たぶん。きっと。前世よりは。


 そう信じながら、自分は再び【魔力操作】の訓練を始めるのだった。

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