表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
9/18

9話:手合わせ


 デュランとアイリスと一緒にグラムの街を出る。


「そんなに時間もねえし、急ぐか」


「そうね。アレク、あたしたちに付いて来て」


 二人が身体強化を発動すると、デュランが青い魔力に、アイリスが黄色い魔力に包まれる。

 走り出した二人が一気に加速する。僕も身体強化を発動して追い掛ける。


「さっきも思ったが、アレクの魔力には色がねえな……どんな属性か解らねえが、その身長で俺たちに付いて来られるなんて、身体強化の強度も相当じゃねえか」


 デュランの身長は一九〇センチ近く、アイリスだって一七〇センチくらいある。

 歩幅が狭い僕が追いつくには、より強く身体強化を発動させる必要がある。勿論、二人が本気を出していないことは解っているけど。


 街道を外れて五キロほど移動すると、周りは誰もいない荒野だ。


「ここまで来れば問題ねえだろう。アレク、剣を抜けよ」


 デュランは背負っていた大剣を降ろして鞘から抜く。幅広の刃には五つの魔法陣のような紋章が刻まれている。

 この紋章は魔力を通し易くするためのモノで、刃は鋭くて刃こぼれ一つない。この剣は相当な業物(わざもの)だろう。


 僕もベルトに差していた剣を抜く。僕の身長に合わせた小ぶりの剣は、大人が使うショートソードくらいのサイズ。

 特に意匠を施していない、どこにでもある剣だ。


「アレク、本気で殺す気で掛かって来い!」


「解りました。デュランさん、よろしくお願いします」


 せっかくの機会だから、遠慮なくやらせて貰おう。身体強化を発動して剣に魔力を纏わせると、大地を蹴って加速する。

 相手に的を絞らせないように不規則に左右に跳んで、間合いを詰めると横薙ぎの一撃で足元を狙う。


 デュランは一切無駄のない動きで、大剣を振り下ろして受ける。

 僕は刃の角度を変えて力を逃がして受け流すと、横に跳びながら回転して二撃目を叩き込む。デュランは剣を返して、これも受止めた。


「アレク、やるじゃねえか。長身の俺が一番避け難い足を狙ったのも、直ぐに二撃目を放ったのも悪くねえ。おまえ、相当戦い慣れしているな」


「あたしもそう思うわ。デュランの剣を受け流したのも凄いわよ。普通は力負けするところを、上手く力を逃がして続けざまに攻撃するとか。そこらの相手じゃ、アレクに敵わないんじゃない」


「それだけじゃねえぜ。俺が本気じゃないとはいえ、二撃目は正面から受け止めたぜ。スビードと技術だけじゃなく、パワーもあるってことだ」


 魔力で負荷を掛けて鍛えた身体に、身体強化を発動すれば、大抵の相手には負けない自信はある。

 だけどデュランはまだ全然本気を出していない。


「今度はこっちから行くぜ」


 デュランが剣を加速させて、続けざまに斬撃を放つ。

 青い魔力を纏う剣から物凄い冷気を感じる。デュランの魔力が氷の属性を持っているからだ。


 速くて重い連撃を、魔力を全力で注ぎ込んで何とか受ける。

 力を逃がそうと刃を滑らしても、吸いついたように離れないで押し込んで来る。

 僕は大きく後ろに跳ぶことで、何とか(しの)いだ。


 デュランはベルナルド家に仕える騎士よりも明らかに強い。これで本気を出していないんだから、今の僕が剣で敵う相手じゃないな。


「デュランさん、身体強化以外の魔法を使っても構いませんか?」


「ああ、良いぜ。アレク、おまえの全力を見せてみろ」


「じゃあ、行かせて貰います!」


 走りながら瞬時に術式を展開。左右に出現した『魔力弾(マナバレット)』を剣と同時に叩き込む。

 高速で飛来する二つの魔力の弾丸。デュランは大剣とは思えない剣速で続けざまに叩き切ると、僕の剣まで真っ二つにした。


「悪い、少し本気を出しちまったぜ。だが今の魔法は何だ? 身体強化もそうだが、アレクの魔法から属性を感じねえぜ」


 『魔力弾』を使った時点で覚悟はしていた。魔法に属性を持たせると発動が遅くなるし、魔力の集束度も落ちる。

 僕の魔法でデュランに通用するとしたら『魔力弾』くらいだ。せっかくの機会に、出し惜しみするつもりはなかった。


「僕は普通の術式が使えないので、自分に合うように術式を改良しているうちに、属性無しでも魔法が発動できることに気づいたんです。

 属性を持たせない分、魔法の発動が早くなって、魔力の集束度も高くなる。これが今の僕が使える中では最強の魔法です」


「属性を持たせないって……それって、魔力そのもので攻撃したってこと?」


 アイリスが唖然としている。


「自分に合うように術式を改良したってのも凄いけど……アレクは本当に何者なのよ?」


 デュランの反応は話について行けない感じだ。魔法については、アイリスの方が詳しいみたいだな。


「僕が凄いんじゃなくて、術式を改良することを教えてくれた師匠が凄いんですよ。訳あって師匠が誰かは言えませんし、今はもう会えないんですけど」


 師匠に出会ったのは一周目で、二週目の今は会ったこともない。僕が死に戻りしたことは言えないから、言える範囲で正直答えた。


「ふーん……よっぽどすごい師匠なのね。私も会ってみたいわ」


「まあ、理屈の話は別にして、アレクの実力は良く解ったぜ。この俺を一瞬でも本気にさせる奴なんて、そうはいねえからな」


「本気を出されたら、全然敵いませんでしたけど」


「子供のおまえに負けたら、俺はハンターを辞めるしかねえだろう」


「じゃあ、次はあたしの番ね。デュランが馬鹿力で剣を折っちゃったけど、代わりの剣をあげるから勘弁してね。確か、ちょうど良い長さの剣があった筈だわ」


 アイリスはベルトのポーチに手を入れると、とてもポーチに入らないサイズの剣を取り出す。あのポーチはマジックバッグなのか。


「これなら長さが同じくらいだから、そんなに違和感はないんじゃない?」


 アイリスが差し出した剣はショートソードで、刃の長さは僕が使っていた物と同じくらい。持ち手の部分が少し長いけど、細いから持ちやすい。

 だけど問題はそこじゃない。柄に装飾が施された剣は明らかに高級品で、僕が使っていた剣よりもずっと高そうだ。


「こんな凄い剣を貰えませんよ」


「予備の剣の一本だから、気にしないで。デュランが剣を折ったのが悪いんだし、剣がないと、あたしと戦えないじゃない」


「……解りました。ありがたく使わせて貰います」


 試しに剣を振ってみると、手にしっくりと来る。持ち手が長いから両手持ちもできるし、この剣なら戦い方の幅が広がりそうだ。

 だけど、この剣をどうやって手に入れたのか、前の剣をどうしたのか、両親への言い訳を考えておかないと。


 その後、アイリスとの手合わせは僕の完敗だった。デュランとの戦いを見ていたアイリスは、最初からそれなりに本気で戦ったから、僕は手も足も出なかった。


「そろそろ帰るとするか。アレク、魔獣狩りに行くって約束も生きているって考えて構わねえな?」


「そうね。今度は魔獣相手にアレクがどう戦うか、見てみたいたいわね」


「はい、是非お願いします。それと不躾な質問をして申し訳ないんですが、アイリスさんとデュランさんは、上級魔法が使えますか?」


 一周目のデュランとアイリスは上級魔法を余裕で使えたけど、これだけ強いなら、すでに使えても不思議じゃないだろう。


「当然だろう。何なら今直ぐ見せてやるぜ?」


「いいえ、見せて貰いたい訳じゃないんです。図々しいのを承知でお願いしますが、僕に上級魔法の術式を教えて貰えませんか」


「上級魔法の術式? つまり上級魔法を教えろってことか? 教えたからって簡単に使えるもんじゃねえぜ」


「いいえ、そうじゃなくてですね……」


 僕は背負い鞄から、最近肌身離さずに持ち歩いている上級魔法の本を取り出す。


「術式に書かれている一つ一つの図形と魔法文字の意味と、その組み合わせによって、どんな作用が生じるかを教えて欲しいんです」


「魔法は術式をイメージして発動するもんだろう。そんな細かいことは考えたこともねえぜ」


 デュランは僕の父親と同じで、感覚で魔法を覚えるタイプだな。魔法が使える人の大半がそうだから、そこまで期待していた訳じゃないけど。


「あたしにはアレクが言いたいことが何となく解るわ。この魔法の術式は、ここから五ページに渡っていて、五つの魔法陣を重ね合わせるイメージね。一ページ目の術式が表わしているのは――」


「じゃあ、この魔法文字にはどういう意味があるんですか?」


「ああ、中級以下の魔法じゃ使わないわね。その文字は次のページの術式と繋ぎ合わせるためのモノよ。上級魔法は立体的に術式を展開するから、図形だけじゃ術式を繋げられないのよ」


 凄い……アイリスは僕の質問に全て答えてくれる。


「アイリスさん。僕にできることなら何でもしますので、この本に書かれている上級魔法の術式を全部解説してください」


「何でもするって……アレクに何か要求する気はないわよ。あたしに時間があるときで、解る範囲のことを教えるくらいなら構わないわ」


「本当ですか? ありがとうございます! だったら明日は時間がありますか?」


「朝は毎日鍛錬をするけど、一〇時からなら大丈夫よ」


「じゃあ、是非お願いします!」


「おい、勝手に話が進んでいるが、魔獣狩りはいつ行くんだ?」


「そうですね。明後日の朝からってのはどうですか?」


「よし、決まりだ。アイリスも構わねえだろう?」


「ええ、問題ないわ」


 自分のことばかり考える訳にはいかないから、魔獣狩りの予定を優先したけど、僕は上級魔法の術式を教えて貰うことで頭が一杯だった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ