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マッチングアプリで出会った彼女、実は結婚相手を自由に選べない家の娘だった~自由恋愛の行き着く先で、僕たちは結婚できない~  作者: スアップ


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第4話 恋人じゃない

水族館へ行ったあとから、二人の距離はさらに縮まった。


仕事終わりに電話をするようになり、


「今コンビニなんですけど、優作さんアイス何派ですか?」


みたいなどうでもいい話で笑い合う。


桃華は本当によく喋った。


でも不思議と疲れない。


むしろ、静かだった部屋に誰かの声があることが心地よかった。


「優作さんって、絶対ちゃんとご飯食べてないですよね」


ある日の夜。


ビデオ通話越しに桃華が呆れた顔をする。


「食べてますよ」


「絶対嘘です」


「なんでですか」


「部屋に生活感ないですもん」


「悪口です?」


「褒めてます」


たぶん褒めてない。


優作は苦笑する。


画面の向こうの桃華は、髪を後ろでまとめながら楽しそうに笑っていた。


その姿が妙に自然で、優作は少しだけ視線を逸らす。


恋人でもない相手と、こんな風に毎日話している。


冷静に考えると、不思議な関係だった。


それでも、心地よかった。


朝起きて、桃華から連絡が来る。


仕事の合間に、くだらない話をする。


夜になると、


『今日ちょっと疲れました』


なんてメッセージが届く。


気づけば優作の生活の中に、桃華が自然に入り込んでいた。


休日。


二人はショッピングモールへ来ていた。


「優作さんって服どこで買ってるんですか?」


「ネットですね」


「絶対そうだと思いました」


桃華は楽しそうに笑いながら、勝手に服を選び始める。


「これ似合いそうです!」


「派手じゃないですか?」


「たまにはいいです」


年下の女の子に服を選ばれる三十九歳。


少し前の自分なら、絶対に想像しなかった。


「これ可愛くないですか?」


雑貨屋の前で桃華が立ち止まる。


猫のイラストが描かれたマグカップ。


「桃華さん好きそう」


「え、なんで分かったんですか!?」


「なんとなく」


「優作さん、最近ちょっと分かってきましたね」


そう言って笑う。


その言葉が、妙に嬉しかった。


フードコートで休憩している時だった。


桃華のスマホが震える。


画面を見た瞬間、笑顔が少しだけ消えた。


「お母さん?」


「です笑」


桃華はすぐ電話に出る。


「うん、今外〜」


さっきまでの空気が少し変わる。


優作はなんとなく、水を飲みながら視線を逸らした。


「うん……女の子とじゃないよ?」


その言葉に、優作の動きが少し止まる。


「あ、うん。前話した人」


前話した人。


たぶん、自分のことだ。


「うん、大丈夫。変な人じゃないよ」


桃華は明るく答える。


でもその声には、どこか気を遣う響きが混ざっていた。


数分後、電話が終わる。


「すみません」


桃華は困ったように笑う。


「毎回連絡来るんですよね」


「心配なんじゃないですか?」


「そうなんですかね?」


桃華はジュースのストローを軽く噛みながら首を傾げる。


「でも昔からずっとこんな感じなので、もう普通です」


普通。


その言葉に、優作は少しだけ引っかかった。


帰り道。


駅へ向かうエスカレーターで、桃華がふいに言う。


「優作さんってモテそうですよね」


「急にどうしたんですか」


「いや、なんか優しいので」


「39歳バツイチですよ」


「だからなんですか?」


桃華は不思議そうに言う。


その顔が本気っぽくて、優作は少し困った。


「桃華さんは、年齢とか気にしないんですか?」


そう聞くと、桃華は少しだけ考える。


「うーん……好きなら気にしないかもです」


さらっと言う。


その言葉に、優作の胸が少しだけざわついた。


改札前。


いつものように別れるはずだった。


「じゃあまた連絡しますね」


桃華がそう言って笑う。


その瞬間。


優作はふと、思ってしまった。


帰したくない。


一緒にいたい。


もっと。


だが当然、そんなこと言えるはずもない。


まだ自分たちは、恋人ですらない。


「優作さん?」


桃華が不思議そうに首を傾げる。


「あ、いや……気をつけて帰ってください」


結局、そんな言葉しか出てこなかった。


桃華は少し笑う。


「優作さんもです」


そう言って改札を通っていく。


その後ろ姿を見送りながら、優作は小さく息を吐いた。


たぶんもう、自分はかなりこの子に惹かれている。

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