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マッチングアプリで出会った彼女、実は結婚相手を自由に選べない家の娘だった~自由恋愛の行き着く先で、僕たちは結婚できない~  作者: スアップ


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第3話 距離

桃華と初めて会った日から、二人は前より頻繁に連絡を取るようになった。


とはいえ、特別な話をしているわけじゃない。


仕事の愚痴。


コンビニの新作。


猫の動画。


「見てくださいこれ可愛すぎません!?」


深夜に突然送られてくる動画に、優作は思わず笑ってしまう。


やり取りは自然だった。


無理がない。


気を遣いすぎなくていい。


それが心地よかった。


『優作さんって、普段休みの日なにしてるんですか?』


ある日の夜、桃華からそんなメッセージが来た。


『最近は家いること多いですね』


『もったいないです!』


『インドアなので』


『だめです』


すぐ返信が来る。


『今度どっか行きましょ!』


優作は少し笑った。


年齢差を感じる時があるとすれば、こういう勢いかもしれない。


でも不思議と嫌ではない。


むしろ、その明るさに引っ張られている自分がいた。


結局その週末、二人は水族館へ行くことになった。


「優作さん絶対こういうとこ自分から来ないタイプですよね」


待ち合わせ早々、桃華が笑う。


「バレてます?」


「分かりやすすぎます」


休日の水族館は思ったより人が多かった。


だが桃華はそんなことも気にせず、楽しそうに歩いていく。


「あっ、見てくださいクラゲ!」


ガラスに顔を近づけながら、子供みたいに目を輝かせる。


「めっちゃ綺麗……」


その横顔を見ながら、優作は少し思う。


一緒にいて楽しい。


単純だけど、それが一番大きかった。


「優作さんって、結構静かですよね」


クラゲエリアを歩きながら桃華が言う。


「そうですか?」


「でも一緒にいて疲れないです」


「それ褒めてます?」


「褒めてます」


桃華は笑う。


「なんか、無理に盛り上げようとしないから楽です」


「桃華さんが勝手に盛り上がってるので」


「ひどい」


笑いながら軽く腕を叩かれる。


その距離感が自然すぎて、優作は少し驚いた。


昼過ぎ。


館内のカフェで休憩している時だった。


「ちょっと写真撮っていいですか?」


桃華がスマホを向ける。


「え、自分ですか?」


「はい」


「なんで」


「今日の思い出です!」


そう言って勝手にシャッターを切る。


「絶対変な顔してる」


「大丈夫です、ちゃんと39歳です」


「フォローになってないですよ」


桃華は楽しそうに笑う。


本当に感情表現がまっすぐだった。


思ったことをそのまま口にする。


裏表がない。


だから一緒にいて楽なのかもしれない。


「桃華さんって、昔からモテそうですよね」


何気なく言うと、


「えー、どうですかね?」


桃華はストローを咥えながら首を傾げる。


「でもお母さんめっちゃ厳しかったので、あんまり恋愛自由じゃなかったです」


「門限あるって言ってましたもんね」


「あります」


普通に答える。


「学生の時とかも、誰と遊ぶとか結構聞かれてました」


「大変ですね」


「でも普通だと思ってたので」


桃華はあっけらかんとしている。


そこに暗さはない。


むしろ家族仲が良いことを誇りに思っている感じすらある。


「家族好きなんですね」


「大好きです!」


迷いなくそう言った。


その笑顔が、本当に幸せそうだった。


帰り道。


駅へ向かう途中で、桃華のスマホが震える。


画面を見た瞬間、少しだけ表情が変わった。


「お母さん?」


「です笑」


桃華はすぐ電話に出る。


「うん、今帰ってる〜」


声色が少し変わる。


優しい。


というより、“気を遣っている”。


「うん、大丈夫。ちゃんとしてる人だよ」


優作は思わず視線を逸らした。


“ちゃんとしてる人”。


たぶん自分のことを説明している。


「うん、また連絡するね」


通話が終わる。


桃華はすぐ、いつもの笑顔に戻った。


「すみません」


「いや、大丈夫ですよ」


「めっちゃ連絡来るんですよね」


困ったように笑う。


だが本気で嫌そうではない。


それが優作には少しだけ気になった。


改札前。


「今日めっちゃ楽しかったです」


桃華がそう言って笑う。


「自分も楽しかったですよ」


「またどっか行きましょ!」


その言葉が自然すぎて、優作は少し笑った。


「あ、次は優作さん決めてくださいね?」


「急にハードル上げますね」


「期待してます」


そう言って手を振りながら改札へ向かっていく。


途中で一度振り返り、また笑う。


その笑顔を見送りながら、優作はふとコンビニの前で足を止めた。


レジ横に、新作のプリンが並んでいる。


“桃華さん、こういうの好きそうだな”


そう思った瞬間、優作は少しだけ苦笑した。


離婚してからずっと、一人で完結していた日常だった。


誰かを思い浮かべながら過ごす感覚を、いつの間にか忘れていた。

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