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マッチングアプリで出会った彼女、実は結婚相手を自由に選べない家の娘だった~自由恋愛の行き着く先で、僕たちは結婚できない~  作者: スアップ


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第2話 また会いたい

「優作さん、こっちですこっちです!」


店に入った瞬間、桃華が小さく手を振った。


“初対面だから最初はカフェで”と言っていた本人とは思えないくらい、明るい。


優作は少し笑いながら席へ向かう。


「思ったより元気ですね」


「いや、めっちゃ緊張してましたよ?」


「そう見えないですけど」


「こういうの、勢い大事なので」


桃華はそう言って笑った。


ころころ表情が変わる。


アプリで話していた時より、ずっと感情が分かりやすい。


でも騒がしい感じではない。


人懐っこいのに、不思議と品がある。


「何飲みます?」


桃華がメニューを開く。


「アイスコーヒーで」


「じゃあ私も同じにします」


店員を呼ぶ時の言葉遣いまで丁寧だった。


優作はなんとなく、その様子を見てしまう。


「……なんですか?」


「いや、育ち良さそうだなって」


その瞬間、桃華は吹き出した。


「それめっちゃ言われます!」


「やっぱり」


「家、結構厳しいので笑」


冗談っぽく言う。


だが嫌そうではない。


むしろ、それが当たり前という感じだった。


「優作さんって、普段どんな仕事してるんですか?」


「フリーで色々やってます。開発系というか」


「あー!なんかそんな感じします!」


「どんな感じです?」


「家にずっといそう」


「否定できないですね」


桃華は楽しそうに笑った。


その笑顔を見ていると、優作も自然と肩の力が抜ける。


離婚してからの一年。


こんな風に誰かと自然に話したのは久しぶりだった。


「桃華さんは?」


「私ですか?」


「仕事とか」


「あ、一応会社やってます」


優作は思わず目を瞬かせる。


「え?」


「小さいですよ? 全然そんなすごい感じじゃないです笑」


「24歳で会社経営?」


「いやほんと全然です」


桃華は少し照れながら笑った。


だが、その“普通に話してる感じ”が逆に本物っぽい。


変に自慢する感じがまったくなかった。


「すごいですね」


「お父さんも会社やってるので、その影響かもです」


「経営一家なんですね」


「そんな感じです笑」


そう言ってストローの袋を指でくるくる回す。


その仕草まで妙に自然だった。


「でも家は厳しいですよ?」


桃華は笑いながら言う。


「門限ありますし」


「24歳で?」


「あります」


「厳しい……」


「位置情報も共有してます」


「え」


優作は思わず聞き返す。


だが桃華はあっけらかんとしていた。


「あと帰る時間とか、誰といるかとかも普通に聞かれます」


「大変ですね」


「でも慣れちゃいました」


本当に自然な口調だった。


嫌がっている感じでもない。


それが優作には少し不思議だった。


「仲良いんですね」


「はい! 家族大好きです」


その笑顔には嘘がなかった。


気づけば二時間以上経っていた。


「やば、めっちゃ話してますね」


桃華がスマホを見て驚く。


「確かに」


「なんか一瞬でした」


その言葉に、優作も同意する。


沈黙が苦じゃない。


無理に盛り上げなくても会話が続く。


年齢差があるはずなのに、不思議なくらい自然だった。


カフェを出ると、外は少し暗くなり始めていた。


駅まで並んで歩く。


桃華は道の途中でもよく笑った。


「あ、見てください猫!」


急に立ち止まる。


植え込みの横にいた猫を見つけたらしい。


「めっちゃ可愛い……」


しゃがみ込んで嬉しそうに眺める姿が、年相応に無邪気だった。


その横顔を見ながら、優作は少し思う。


こういう子なんだな、と。


会社を経営しているとか、育ちがいいとか。


そういう肩書きより先に、人として好きになれそうだった。


「あ」


桃華が急にスマホを見る。


「どうしました?」


「お母さんからLINE来てました」


画面を見た瞬間、少しだけ表情が変わる。


だがすぐ、いつもの笑顔へ戻った。


「怒られてる感じです?」


「まだ大丈夫です笑」


そう言いながら、桃華はすぐに返信を打ち始める。


かなり長い。


優作はなんとなく、その様子を眺める。


「仲良いんですね」


何気なく言うと、


「はい! なんでも話します」


桃華は明るく答えた。


まるでそれが当然みたいに。


その言葉が、なぜか少しだけ引っかかった。


でも優作は、その理由をまだ知らない。


駅に着く。


「今日はありがとうございました!」


桃華はぺこっと頭を下げる。


「こちらこそ」


「めっちゃ楽しかったです」


その笑顔が妙にまっすぐで、優作は少し困る。


こんな風に好意を向けられることに、まだ慣れていなかった。


「……また、ご飯行きません?」


気づけば、自然にそう言っていた。


少し早かったかもしれない。


だが桃華は、ぱっと表情を明るくする。


「行きたいです!」


その返事が嬉しくて、優作は少しだけ笑った。


桃華は改札へ向かいながら、何度も振り返って手を振る。


その姿を見送りながら、優作はスマホを取り出した。


数秒後。


今日はありがとうございました

優作さん話しやすくて安心しました!


通知を見て、優作は思わず笑う。


止まっていた時間が、少しだけ動き出した気がしていた。

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