第2話『高魔道士』
国立シュヴァルティエ魔法魔術育成学院、国立と言っても世界の研究者や企業が加担している為、国立と言う表現は少しばかりおかしいのかもしれない。
ここシュヴァルティエは魔法の技術、魔術式の仕組み等を勉強、そして実戦をして学んでいく。
ここを卒業すれば自動的に就職先へ送り込まれる、今や世界のVIPや政治家の傍にいるボディーガード、警備はこの学院のOBやOGが9割だと言われている、一般人でも魔法が使えると言われているが、それも資格が必要でその資格を取得した者に、魔法を発動させるのに必要な『ブレスレット』を支給される。
最近ではそのブレスレットを悪用し、転売、そして色々な人の手に渡り犯罪等に使用されるケースが増加。
さらにそのブレスレットを分解し、オリジナルに改良またはコピー、本来ならばブレスレット自体に魔法が掛けられ簡単には分解できないのだが、そこに入ってくるのが『エルドラド魔術』だ、
この魔法魔術はどんな魔術式も干渉しない、それだけ危険な魔法魔術を誰かが握っている。
話を戻すと、ブレスレットを入手するには厳しい資格試験、そして適性検査、またはこの学院に入学するしか入手方法はない、もちろんブレスレット無しでも発動は可能だが、身体にかなりの負担が掛かる為、ブレスレットが存在する。
ブレスレットは魔力を制御し、怪我をしない程度の魔法しか発動できないようにリミッターが掛けられている、それが『一般人』向けに支給されるブレスレット、またの名を『ホロスブレスレット』
そして学院で支給されるブレスレットは2つあり、これは高魔道士と魔道士との格差をつける為にある。
1つは『エクリプスブレスレット』だ、学院でエリートと認められた生徒に渡されるブレスレットで、魔力制御のリミッターは無く、魔術式も簡略化されてあり発動するまでの工程がスムーズになる、魔力も限界まで放出できる。
しかし、これは1つ間違えると命に関わる為よく考えて扱わなければただの自殺になる。
そして2つ目は『イグリスブレスレット』だ、魔力も練られる量が制限され、魔術式を発生させる為の工程が少しばかり長い、そのかわり身体への負担は少なく安定した魔法が発動できる。
これから入学する2人は、どのブレスレットを手にするのか。
しばらく走っていた無人運転の車は目的地に到着する、身体に感じるか感じないかのブレーキ、慣れない人は気持ち悪くなる感覚に慣れている2人、ユウはリュリカより先に車から降りると開けたドアの横に立ち軽くお辞儀をする、それを合図にリュリカは車から降りた。
「ほぅ、ここがシュヴァルティエか…なかなか立派ではないか」
リュリカは降りるなり辺りを見回す、もちろん今日は入学式の為他の新入生が歩いて登校する姿もある
「は、中も全て最新設備のようです」
「と、パンフレットに書いてあったのだな?」
「その通りです」
無人運転車は確実に降りたのを察知し、走り去っていった。
2人が立っている姿を見る新入生は口々に
『うわぁ、美人過ぎだろ…』
『スタイルも抜群だよね?胸もさ、ほら隣の』
『バカかお前、あんまり見てると鞭打たれるんじゃね?』
『Sっぽいよな、隣の子はなんだか妹みたいだけどスゲェ清楚っぽい』
等とリュリカはともかくユウまでも評価の対象にされてしまう、ユウはその会話する新入生に対して軽くペコッと会釈。
「どうだ?私の言うセンス、当たりだろ?」
「そうですね、残念でなりません、ここの学院の制服は人気と言われているそうですし」
「と、パンフレットに書いてあったんだろう?」
「左様です」
全くこの人は、そう思いながらも歩き出したリュリカの半歩後ろから付いて歩くユウ、学院の敷地はかなりのもので1つの街と言っても過言では無い、寮もある上に生活する上ではなんら苦労しない場所。
「お嬢様、寮を選ばなかった理由を聞いていませんでした」
そう、このパンフレットを持ち帰ってきてから寮の話は幾つかあったが、入寮を選んでいないリュリカに疑問が浮かんだユウ
「ノートの切れ端を回収するのに寮に入ったら出られないだろ?入寮すれば決まった時間には校門は閉まる、無断で出れば退学だ」
「ですが、自宅と学院はかなり距離が……」
するとリュリカは歩くのを止める、突然止まるリュリカに反応できずドサッとリュリカの背中に顔をぶつけるユウ
「はぅ…!」
本当に男か疑いたくなる声色だ、リュリカはスッとユウに振り向き
「お前との2人きりの時間が欲しいからに決まっているだろ、安心しろ他の男には渡さんからな?」
キリッとした顔でユウを見るなりそう告げる、ユウは少しだけ照れながらもリュリカをじっと見つめて
「ボクは男です、男に興味はありませんし、色恋などしている暇はありません」
「全く…お前は冷たい奴だ、まぁいい、それより講堂はどこだ?」
急に素に戻るのもいつもと同じ、リュリカは新入生とは別で教師がいないか探すが見当たらず、袖に腕章を付けた生徒が歩いているのを見つけその子に話しかける
「おい、講堂はどこだ」
「お嬢様、人にものを尋ねる時はそんなんではダメです」
「あなた達、新入生?」
ツインテールで腕章、ちっこい身体の女の子だが襟元に二年生を表すエンブレムが付いていた、腕章には風紀と書かれている。
「はい、講堂までの道を教えては頂けませんか?」
「ユウ、この女にヘコヘコする必要はないぞ」
「お嬢様、黙っていてください」
リュリカはユウ以外の人間を嫌う、理由はまだ解らないがユウにだけ愛を注いでいる。ツインテール風紀委員はリュリカに少しだけ睨みつける
「そこのアンタ、先輩にタメ口とかダメなんじゃないの?」
「ふん、これだから真面目は嫌いだ、もっと柔らかい物腰になればその辺の女と同レベルくらいにはなんじゃないのか?ま、ユウには敵わないがな?」
そう言いながらガバッとユウの肩を抱く、ユウは成すがままになるが溜め息は吐く、慣れて入るがお嬢様と言う身分のリュリカにはちょっと甘い所がある、リュリカの発言に一瞬魔力を練る気配を見せるが直ぐに無くなる
「その子に免じて教えてあげるわよ、そこの脇道を行ったら講堂は直ぐよ、じゃあね下級生のお金持ちさん」
ツインテール風紀委員はイライラしていた、リュリカは敵を多く作るから味方は少ない、これも昔からだ
「お嬢様?そろそろ行かなければ遅刻です、行きますよ」
リュリカの手をそっと退けて1歩前に出て、さぁ歩いてくだいと言う表現をする。
「お前は本当に冷たい奴だ、行くぞ」
どちらがお嬢様か解らなくなるくらいユウは女の子見たいな振る舞い、これもリュリカの指導した賜物なのだろうか?
2人は説明された脇道を歩いて行き、暫く並木道が続いた。
並木道を越えると白い建物が目の前に現れた、これがシュヴァルティエの講堂。
「まるで教会だな、神を崇拝するのは好きじゃないのだが?」
「講堂ですし、神に信仰していてもおかしくはありません、さ、入りましょう」
講堂の入り口に立っていた教師から座席表を受け取り中に入る、既に新入生のほとんどが着席していた、座席表を見ると入り口に近い場所のようで直ぐに見つかった、ユウはリュリカが座る椅子を軽くハンカチで拭き、ハンカチを仕舞うとリュリカが座る横に立ち、リュリカが座るのを見て座った。
『おい、さっきの姉妹じゃないか?』
『できた妹だよなぁ』
チラチラ見てくる新入生男子、リュリカはそれを見て満足げだ、ユウを女の子だと思い込んでるのを楽しんでいるようだ、2人が着席した後入り口は閉ざされ、祭壇に教師が立つ
『これより、シュヴァルティエ学院入学式を行います、まずは学院長からお話をしてもらいます』
マイク、今は魔法の力で声の音量を増幅させることができるがここは原始的なのか、スタンドマイクを使用している。
学院長らしき老人が祭壇を上がる、1度周りを見渡したあとマイクをスタンドから取り電源を入れる
『ようこそ、シュヴァルティエ学院へ、君たち新入生は今日からこの学院で魔法とは何か、魔術とは何かを学びそれを実戦し、未来の為に努力していただきたい、魔法即ち生きる術、君たちはここで何を学び何を得るのか、私達教師は君たちに期待している』
学院長の話を真剣に聞く中、リュリカは目を瞑っていた、寝ている訳ではなく何かを探っている、ユウは新入生と同じで話を聞き入っている。
『話は以上、立派な魔道士になりなさい』
リュリカは目をそっと開ける、ユウは目だけをチラッとリュリカに向ける、リュリカは首を横に浅く振る。
そう、この姉妹のように新入生に混じって魔術録のページを探しに来ている可能性があるからだ、だが見つからなかったらしい。
その後入学式は15分程度で終了し、講堂の出口から新入生が去っていく、2人も講堂を後にし最初の正門広場へと向かう、広場にはモニターが展開され適性検査の場所が表示されていた。
「適性検査の内容は行かなければ解らないようです」
「見たいだな、なら早く……まて」
「どうかしましたかお嬢様」
リュリカが向けた視線の先にはあのツインテール風紀委員、こちらに向かって歩いてくる、ユウは軽く会釈するがリュリカは腕を組み睨みつける
「入学式は終わったみたいね?」
「ほー、ちっこいツインテールの癖に心配か?」
「はっ!吠えずらも今のうちよ、私は二年生にして高魔道士で風紀委員!新入生なんかに負けてられないわ」
ネクタイに付いているシルバーのネクタイピン、高魔道士を表す勲章で優秀成績者に与えられる、しかしそれを見たとしてもリュリカは怯まない、怖いもの知らず?いや、自分の力をそれ以上に信じているからだ
「お前がエリートだかマスターだか知らないが、あんまり……調子に乗るなよメス」
「!?」
リュリカの威圧に少しだけ怯むツインテール風紀委員、ユウは見かねたのかリュリカとツインテールの間に立つ
「お嬢様、入学そうそう問題は控えてください」
リュリカは少し間を置いてから。
「………ふん、命拾いしたな」
「風紀委員さんも、申し訳ございませんがまだボク達はブレスレットを渡されていないので貴女には敵いません、下がってくれませんか」
「ち、ま、そうよね?ブレスレット無いと魔法発動は至難の業だもの、今日は下がるわ、ただしブレスレットが来たらわかってるわよね?」
リュリカに挑発するがやる気が散ったのか、適当に返事を返した、ツインテールも髪を揺らしながら2人の前から立ち去った。
「お嬢様、彼女は確かに高魔道士です、あまり挑発は良くないかと」
ユウが言ってしまった発言にリュリカはイラッとする、ユウは特に何も感じてはいないが
「ほぅ、お前は私がアイツより下だと言いたいのだな?」
「その様には申して――」
「お前にはお仕置きが必要だ、か・く・ごしろ?」
この後ユウはリュリカに何をされたかは、誰も知らない、一つだけ言える事は、リュリカはスッキリしていた事だ。




