待ち合わせ
フランク:27歳。既婚。師範魔術師。魔術師協会幹部(クレメンスの側近)。サーベルトとクリスティーナの息子。
ダニエル:26歳。師範魔術師。師匠はニコラス。専門は幻術・幻惑魔法。
ニコラス:33歳。師範魔術師。魔術師協会幹部。師匠はレイラ。人の心を操れる幻惑魔法の第一人者。専門は幻術・幻惑魔法。魔術師協会一の変人&頭痛の種。クレメンスの゙親友。
後宮エリアからほど近い東の脇門。その橋の袂に、二人の青年が立ち話をしている姿があった。
一人はフランク――豪奢な法衣を身に纏い、ダークブラウンの髪をきっちりと整えた姿は気品に満ち、いかにも名門出身の魔術師といった佇まいだ。
もう一人は師範魔術師の正服を着た、色素の薄いブラウンの猫毛の男。こちらに背を向けているため、表情は見えない。
「悪ぃ、悪ぃ。待たせちまったみたいで」
まだ待ち合わせ時間には早かったが、カルロスは軽く手を上げて駆け寄った。
フランクは無言のまま近づいてくるカルロスを見つめ、その翠玉色の瞳にわずかな驚きを浮かべた。
「……」
「あ、あれ? カルロス……く……先生?」
振り向いた正服の男――ダニエルは、青い目をまんまるくして軽く首をかしげた。
「……俺、やっぱ、なんか変っすか?」
「い、いえ。変……ではないです」
フランクの妙に間のある返答に、カルロスは眉間にシワを寄せる。
「似合ってますよ。ただ、いつもと雰囲気がちょっと違ったんで……」
ダニエルはフォローするように言い、ふんわりと笑みを浮かべた。
「……なんか、引っかかるな……。ってか、ダニエル、おめぇ、なんでここに?」
「師匠の名代で王妃様にお届け物なんです。ついでにお二人のお見送りをするようにと……」
そう言って、手にした風呂敷包みを軽く掲げてみせる。
「はぁ? ニコラス大先生がお前に見送れってか? 皆既日食でも起きるんじゃねぇか?」
カルロスは茶化すように、大げさな身振りで驚いてみせた。
ダニエルの師匠――『灰色の道化師ニコラス』は、魔術師協会きっての変人で、他人のことなどまるで気にかけない男である。弟子を見送りに出すような人物ではない。
「いえ。単純に、珍しいものが見られるからと面白がっていらっしゃるだけに思いますが……」
フランクがひどく真面目な顔で言う。
「俺は見世物かよ……」
「師匠が、なんかすみません」
ダニエルは申し訳なさそうに頭をポリポリとかいた。
「ダニエル先生。今の謝罪、逆に傷口に塩ぬってますよ」
フランクの鋭い指摘に、ダニエルは曖昧な表情を浮かべた。
「おまいら、楽しんでねぇか?」
カルロスは半眼で低く唸った。
「とんでもないです」
「滅相もない」
二人は呼吸を合わせたように、手を横に小刻みに振って否定した。




