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カルロスの災難  作者: 岸野果絵
独立
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11/13

お茶会

 街道沿いのポピー畑が広がる見晴らしのよい丘で馬車は止まった。

 どうやらここで休憩をとるらしい。

 手際よく荷解きはじめた使用人たちを横目で見ながら、カルロスは馬から降りたフランクのそばに移動した。

 きらびやかな天幕が彩り豊かに張られていく。

「なんなんだ? あれ」

 カルロスは指さしながらフランクに尋ねた。

「貴婦人たちの休憩は、ちょっとしたお茶会なんですよ」

 フランクは苦笑する。

「……理解できねぇ」

「全く同感です」

 テーブルや椅子が並べられていくさまを眺めながら、師範魔術師たちは互いに顔を見合わせた。


 ヴィオレッタの侍女がカルロスのもとへ歩み寄ってきた。

「カルロス先生。側妃様がお呼びです」

「……」

 フランクが「いってらっしゃい」と、爽やかな笑顔で手を振る。カルロスは恨みがましい視線をフランクに投げつけてから、侍女の後に続いた。


 可憐に咲き乱れるポピーに囲まれた一角で、ヴィオレッタと色とりどりのドレスを纏った数人の令嬢が、優雅にお茶を楽しんでいた。

「来たか。カルロス、そこへ立て」

 ヴィオレッタは扇子で、彼女の座る椅子の右後ろを指し示した。そこには既に騎士が一人立っていた。

「……そこにですか?」

「左様」

 騎士はカルロスに冷えた視線を浴びせながら、スッと横に移動した。

「ども」

 カルロスは小声で軽く仁義を切ったが、騎士は拒絶するかのように無反応だった。


 大人げなねぇな……。


 心の中で大きなため息をつきながら、しぶしぶカルロスは騎士の隣に立った。

「魔術師風情が」

 憎々しげな囁きが聞こえてくる。カルロスは思わず「フッ」と鼻で笑ってしまい、慌てて咳払いで誤魔化した。


「皆のもの。どうじゃ? この、彫刻のような不動の佇まいは」

 ヴィオレッタが楽しげに言葉を投げると、座っていた令嬢たちが一斉に、扇子の隙間から熱を帯びた視線を向けてくる。

「本当ですわ。法衣の刺繍が、かえって逞しさを強調して……」

「逞しいお方が、微動だにせず控えていらっしゃる姿は……なんだか、神殿の守護像を見ているようですわね」

「まあ、守護像にしては、随分と野性味が溢れていらっしゃること」

「あら、あたくしには古の守護騎士のようにみえましてよ」 

 令嬢たちはティーカップを傾けながら、まるで品評会の牛でも眺めるようにカルロスを語り合う。

 隣から、騎士の殺気がひしひしと刺してくる。

 ポピーが愛らしく咲き乱れる絶景と、女たちの遠慮のない好奇心、そして、男の嫉妬。不思議な空気が漂っている。

 

 なんなんだよ、この状況。意味わかんねぇ。


 カルロスは無の境地に至ろうと、遠くの雲を見つめて耐えていた。

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