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不思議な塔にまつわるあれこれ。  作者: ちびやな@やなぎ
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40-5 試作品の調整と魔術の講義。

「それで、これ、どうしたらいいの?」


「一応右手用で調整してあるので、右手首に巻いてください。

 動かして落ちない程度に結わいてあればかまいませんよ。

 あとはさっき魔術符を使った時と同じで大丈夫です」


 魔術具を渡されたところでどうしていいかわからない私が、ブレスレットを眺めつつ尋ねるとディノがなんだか微笑ましそうな顔して説明してくれた。


 ……新しいおもちゃを買ってもらった子供とみたいだと思われてるんじゃないかって気がしてきた。

 外れてるとは言わないけどさ。


 まぁそれはともかく。


 言われたとおり、右手首に雑に結わき付けて的に向き直る。

 今度は手に何も持ってないんで、なんとなく手のひらが的にむくような感じで構えてみた。


 そしてさっきと同じようにイメージして……。


 ……あれ?


 なんか、手のひらに何か暖かいような感覚があったかと思ったら、不意に集中が切れてしまった。


 思わず右手を眺めるけど、何の変化もない。


 ……あれぇ?


「不発、だねぇ」


「魔力は充分集まっていたようですけど……。

 なんで不発したんでしょうね?」


 首を傾げる私を前に、二人も不思議そうだった。


「魔術具としての難易度がミュルカちゃんの制御限界を超えちゃった可能性は?」


「工程数は増えていますけど、難易度は上がらないように極力単純化はしてあるんですが……」


 言って、ディノが試作品を一回見せてくれと言うので渡してみた。


 受け取った試作品を両手で包むようにして目を伏せると、何か呟いた。


「動作解析だね。

 試作品の魔術具には、実際どんな風に魔力が伝わったか、どこで失敗したのかが確認できるように、解析用の魔術を付け加えておくんだよ」


 きょとんとしている私にザームさんが解説してくれた。


「……どうして失敗したのかわからないんですが……。

 ザーム先生にも見てもらっていいですか?」


「君が見てわからないものを、僕が見てわかるとは思えないんだけどねぇ。

 まぁ、ちょっと見てみようか」


 困惑気味のディノから苦笑いで試作品を受け取ったザームさんも、同じようにして動作解析とやらをして、……やっぱり不思議そうに私を見た。


「本当にどうして失敗したんだろうね?

 制御限界もなにも、一番最初の火球の発動で失敗しているし」


「威力の調整ができるように、魔力量を変数にした以外はさっき試してもらった魔術符と同じですしね。

 ……変数の処理に失敗したんでしょうか?」


「でも、未指定の場合、基本設定値で発動するようになっているよね。

 それに従って変数は五で自動設定されていたみたいだけど?」


「ですが、そこ以外には失敗できるような項目が見あたらないんですが……」


「うぅん……。確かに、他で失敗しようと思ったら魔力不足で不発、位しか考えられないね。

 ミュルカちゃんに限ってそんな馬鹿なことはあり得ないだろうけど」


 なにやら話し合って、首を傾げる二人。


「……まぁ、ミュルカは魔術の概念自体が曖昧ですから、何か原因があるんでしょう。

 とりあえず一つずつ可能性をつぶしていきましょうか」


 言って、ディノは試作品のブレスレットを分解し始めた。


「何が始まるの?」


「不発の原因がはっきりしないので、分解して魔術符の状態で一つずつ発動可能か確認してもらおうかと思いまして。

 すぐにすみますからちょっと待ってくださいね」


 説明しながらも作業の手は止めないディノ。


 ものの数分で試作品ブレスレットは分解されて、四枚の魔術符と紐になった。


「では、火球の魔術符からお願いしますね」


 言われて差し出された符を受け取ると、試し打ち。


「……成功したね?」


「成功だねぇ」


「成功してますね……」


 三人そろってきょとんとしてしまう。


 何の問題もなく発動したんですけども?


 結局、三つ全て試したけどどれも成功してしまった。


 ちなみに、四枚目の魔術符は解析用のものなんだそうで。


 射線制御のは、投擲練習用に訓練施設で用意しているピンポン球くらいのボールを投げることで確認した。


 的を狙ってから、わざとずれた方向に投げても軌道修正してくれるし、届かない勢いで投げてもきちんとあたるとか、本当反則だ。


「……何がいけなかったんですかね?」


「あとは解析用魔術との相性くらいかな?」


「じゃあ、それ一緒に使ってみる?」


「そうしてみましょうか」


 ディノが他の魔術符と解析用魔術の符を繋げている間に、少しお茶を飲んだりクッキーをつまんだりして休憩を入れる。


「そういえば結構術符を立て続けに使ったけど疲れてないかい?」


「うぅん……。

 まぁ、普通に体動かした分くらいは疲れてるけど、それ以上の疲れはないかな?」


「やっぱり君は結構規格外な魔力量みたいだね。

 普通、全くの初心者ならいくらディノ君謹製魔術符といえどもそれなりに疲れるはずなんだけど」


「まぁ、それは手甲補正じゃない?

 ……にしても、ディノ君謹製魔術符って言い方気に入ってるの?」


 よく言ってるような気がするな、と思って尋ねると、ザームさんは小さく笑う。


 その笑い方がちょぉっと意地悪くて含むところがありげなのが答えですね。

 なるほど、からかう意味もあってお気に入りなんですね。

 わかりました。


「準備が終わったのでお願いしていいですか?」


 私たちの話を聞いていたのかいないのか、ディノに声をかけられて、試射に戻る。


 すると、なんでかまた全部成功しちゃうっていうね……。


「君、本当面白いねぇ」


「嬉しくない~……」


 これじゃあ消える魔球の夢が叶わない、とずれた方向に残念がっていると、黙々と解析用魔術を使って、結果を調べていたディノがなにやら呟いた。


「何かわかったかい?」


「わかったというか……。

 ザーム先生、この発動起点に関する部分なんですけど、これはどこを指定しているんだと思いますか?」


「うん? ちょっと見せてもらっていいかな?」


 今度は入れ替わりでザームさんが会話から離脱した。


「ザームさんもこういう魔術に詳しいの?」


 なんとなく気になっていたことを尋ねると、ディノが一つうなずく。


「ザーム先生は魔術全般に対して造詣が深いんですよ。

 一般的に使われている実用レベルの魔術に関する知識であれば私より数段上です。

 それに、解析に関係する魔術は先生の専門分野ですからね」


「治療魔術じゃなくて?」


「治療魔術を使うには、まず傷や病気の状態を調べなければいけないでしょう?

 先生はその魔術を特に研究しているんです。

 状態を調べる魔術も解析系の魔術に変わりありませんからね」


「なるほどねぇ。

 さっき、ディノにわからないなら自分が見ても、なんて言ってたのは口先だけってことかぁ」


 感心半分呆れ半分でうなずくと、ディノが吹き出した。


「まぁそういうことですね。

 ちなみに解析系の魔術はどの系統にもありますが、一番得意なのはどの属性かわかりますか?」


「え? ここでいきなり講義?

 ……うぅんと……。

 ……って、私、魔術の属性全部教わったことないんだけど」


「……そういえばそうでしたね。

 魔術の属性は火・水・風・土・重力・陽・闇の七系統があり、相性が存在します。

 どの属性が特に優位という訳ではなく、それぞれに得手不得手がありますね。

 ただ、使いこなせる人数の少ない――気難しい属性というのは若干あって、その属性の魔術と相性のいい人間は重宝されます。

 今現在知られている中で、もっとも気難しいのは闇属性、次いで陽、重力と続いて、他の四属性は横並びですね」


「重力属性って難しいの?」


「魔術の成否は的確にイメージできるかどうかですから。

 最初にあげた四つは別名自然属性とも呼ばれ、具体的なイメージをしやすいことから扱いやすいのではないかと言われています。

 対して後半の三つは概念属性と呼ばれ、はっきりとした形をイメージしづらいことから扱いにくさを感じる人が多いようですね」


「なるほどねぇ。

 ところで、その属性わけだとアイテムボックスなんかはどこに入るの?」


「基本的には風属性に含まれる空間制御が主体になっています。

 それに、重さの軽減策として重力属性、特定の持ち主にしか使えないようにする場合には任意の属性の魔力パターン認識を施します」


「重さの軽減は別なんだ?」


「はい。風属性の空間制御でできるのは、物を格納する空間を作り上げることまでで、作り上げた空間にある物の重量は持ち主にかかります。

 まぁ、着ている服の重さのように全身に等しくかかるので、数キロ程度であればあまり気になりませんけどね。

 容量の大きなアイテムボックスや、高価な物は重力属性の魔術で重量の軽減を追加します。

 その分、持続消費する魔力が増えて扱いにくくなりますが」


「え? アイテムボックスって常に魔力消費してるの?」


「はい。中に格納した物の大きさや重さに比例して消費魔力も上がりますよ。

 ですから小容量の物以外は普及していないんです」


「……ってことは、これは一体どのくらい魔力くってるんだろう?」


 つい左手に視線を向けてしまう。


「魔力枯渇は昏倒したり動けなくなったりと危険ですから、ミュルカに負担のない程度に抑えられているとは思いますよ」


「そういえば未解放のスペースがまだ結構あったなぁ」


 心配ないならいいや、と気にしないことにした。


 たぶん、私が使えるようになり次第順次解放されていくんだろう。

 ……たぶん。


 それにしても、なんだか魔術の講義が続くなぁ。

お読みいただきありがとうございます♪

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