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徐々にではあるけれど、店内の掃除にも慣れてきた。
自分の部屋のこと、全部、母親に頼りきってる僕としては、驚くべきこと。
もちろんそこには、おおきな存在として、キイの姿がある。
都合よく使ってしまって、すまないとの思いも。
僕が店を開けたとき、キイは、来てくれるようになった。
けど、来るのはキイだけで、ほかには誰も。
風と砂と、太陽の光をのぞいては。
金色の毛が眩しいあの犬も、青い服の女性にしても、あのときかぎり姿を見せない。
すてき、を散りばめたあの光景に、出会うことは、もうないのかも。
苦いものが、口のなかを走る。
そんな思いの僕とちがって、キイは笑顔だ。
「楽しいの?」
「え? 楽しくないの?」
不思議だ。
「だって、誰も来ないからさ」
「だから何?」
わからない、キイの言ってること、すこしも。
「もっと、この状況を楽しんだほうがいいよ」
「誰も来ないことを?」
「じゃなくてさ。わたしたち高校生なんだよ。高校生らしく、してれば」
「無責任すぎるよ」
「無責任? それでいいんじゃない? ちがう?」
釈然としないものもある。
でも、すこし。
「そんな感じでさ」
言って、キイが、グラスに入ったコーラをストローで勢いよく吸い上げる。
最後にぞぞっ、と短く響き、それが、夏の終わりの合図のように、僕には聞こえた。
重くあった冴えのないおなかの痛みは、知らない間に、消えていた。




