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第18話「聖騎士と陰謀とスタンピード」その1

第18話「聖騎士と陰謀とスタンピード」その1




【マジ区・ニューカ街の冒険者ギルド別室】


「ほう、”スタンピード”と言いましたかな?」


青銅色の聖騎士の鎧を纏う老騎士は、立派な口髭を撫でながら聞き返す。


「ええ、ここ数十年、発生を確認できていない魔物の大暴走……”スタンピード”です」


にこやかな笑みを絶やさない初老の男、この冒険者ギルドのギルドマスターが答える。


「儂も幼少の頃に聞いたことがある、何人もの罪なき人が犠牲になったと……。

悪戯をして叱られた時は”言うこと聞かない悪い子は、スタンピードで魔物に食べられる”と聞かされていたくらいだ」


幼き日の恐怖(トラウマ)を思い出し、身震いする老騎士。


「そのスタンピードが、”何者かの手によって引き起こされる”という事であったな?」


「ええ、これは現在、調査中なのですが、”聖騎士の貴方になら話すべき”かと思いまして」


「うむ、その判断は正しい、この儂に協力できる事であれば力を貸そう!」


老騎士は満足そうに腕を組み、力強く答えた。


「流石は噂に聞こえた、最強の聖騎士と言われるモブデッド様!なんと心強い」


「ふはは!それは言い過ぎであろう?まぁ、あながち間違ってもおらんがな!」


「我がギルドでは、多くの者が聖騎士モブ・デット様が”聖騎士長”に一番近いと信じておりますよ?」


「ふん、仕方のない奴らだな、で?儂に何を依頼したいのかね?」


ここぞとばかりに褒めちぎる、ギルドマスターに気を良くした老騎士は確信を突いてきた。


「流石は、聖騎士モブデッド様、隠し事など到底無理でございますね」


「いや、助けを求める声に応えるのも聖騎士の勤め!なんなりと申すがよい!」


老騎士はこの上なく、上機嫌だった。


「あり難きお言葉、感謝いたします」


恭しく首を垂れながらギルドマスターの口には笑みが浮かんでいた。


「スタンピードの引き起こすとされているのが、”魔女”である可能性があるのです」


老騎士の表情が、ギルドマスターの言葉に強張る。


「”魔女”ですと?魔女と申されたか?しかしあれは伝説上の……」


「ええ、しかも”四色の魔女”の一人”赤の魔女”らしいのです」


老騎士は力が抜けたように、ソファーに座りなおした。


「あの伝説の”赤の魔女”だと?」


「儂も騎士見習いの頃に聞いたことがある、魔女の伝説を……。

正義を忘れた邪なる騎士は”赤い魔女に、骨まで溶かされる”と聞かされていたくらいだ」


若き日の恐怖(トラウマ)を思い出し、身震いする老騎士。


「……言い伝えによると、【魔女の森】には魔女が棲んでいて迷込む者を喰らっていると言われていますが、どうやら真実味を帯びてきましてね」


「ま、まさか、そんなことは……ほんとに?」


「ここ数年、少年の姿をした”魔女の使い魔”が【魔女の森】の近郊に現れたという情報がありまして」


「ただの見間違いでは、ないのか?」


「そうかとも思ったのですが、その少年はどこに住んでいるのかわからず、【魔女の森】の方へ去っていったとか、空を飛んで行ったなどの情報もありまして」


老騎士の顔がみるみる青ざめる。


「【魔女の森】に伝わる伝承は数多く、眉唾物ではありますがスタンピードの件が絡んでいますので、ただ、【魔女の森】への恐怖からか口を閉ざす者も多く……」


「うむ、儂の死んだ婆様も【魔女の森】にはけっして近づくなと言っておったな」


死んだ祖母の言葉を思い出し、身震いする老騎士。


「大丈夫ですか?モブデッド様、顔色が優れないようですが?」


「いや、問題ない、ただの武者震いというやつよ!うはははは!」


老騎士は、バレバレな虚勢を張っていた。


「モブ・デット様には、その【魔女の森】に行って頂きたいのです!」


「へ?」


老騎士は、目が点になっていた。


「聖騎士モブデッド様であれば、【魔女の森】の魔物など、物の数ではありませんよね?

ならば魔物を蹴散らし”魔女”に会う事だって!」


「とと、当然であろう?所詮は森の中でしか活動できぬ、畜生共よ!え?”魔女”に会う?」


「では、引き受けて頂けるのですね?流石は正義の使徒、聖騎士モブデッド様!」


「まぁ、儂位の実力であれば、しかし【魔女の森】は遠く、土地勘がないと流石の儂でも……。

いや、臆したわけではないぞ?ただ、依頼を確実に遂行するには……」


「ご安心を、モブデッド様!馬車の手配から物資迄、こちらで手配させて頂きます!」


「そ、それはあり難いが、【魔女の森】は人を惑わす魔力が満ち溢れていると聞く近寄るだけで……」


「ご安心下さい、モブデッド様!」


「こ、今度は、何だね?」


「我がギルドに、【魔女の森】の調査隊の生き残りがおります!多少の道案内は可能かと!」


老騎士が固まってる間に、ギルドマスターによってその”生き残り”なる人物が呼ばれた。


「”レンジャー”の『ハナ・ズオウ』と言います!聖騎士様、宜しくお願いします!」


肩で揃えた金髪に、職業柄か二の腕や太ももを惜しげもなく晒す若い女が、深々と礼をする。


「わ、分かっているのかね?生き残りか何かは知らんが、次も無事で済むとは……むを!?」


”ハナ”と名乗った女が、いきなり胸元を広げ、豊満な乳房を露にする。ちょっと変な声が出た。


「覚悟の上です……ここで逃げ出したら、死んだ仲間に合わせる顔がありません!」


ハナの乳房には、恐らく魔物につけられたであろう、大きな傷跡が残っていた。


「あの場所で得た情報、無駄にするわけには参りません!お願いします!」


真剣な眼差しと、傷跡の残る形の良い乳房の迫力に、思わず首を縦に振ってしまった。


「それに、いざとなったら正義の聖騎士、モブデッド様が護ってくれるでしょうから」


「勿論だとも!我が半身の聖剣、【黒鵜・無眼月(クロウ・ムメツキ)】の名にかけて!」


老騎士は、ギルドマスターの”特別依頼”を受けることになった。



##########################

【緊急特別依頼】


①【魔女の森】に赴き、”赤の魔女”と思われる人物に接触し、スタンピードへの関与を問い正す。

②①で関与を認めた場合、止めさせる様、交渉し、受け入れなければこれを討伐するべし。

 ※生殺与奪の判断は任意とする

③その魔女と思われる人物が”本物”であった場合、可能な限りの情報を得る。


「③の補足」可能であればこれを討伐し”亡骸”を持ち帰る事。

##########################


老騎士は心の中で泣いた、ハナに抱き着かれ、腕に押し付けられる柔らかな感触を堪能しながら……。


「③はありえんだろうが、こんな高難易度クエスト儂はどうしたらいいんじゃ……」




墓参りやら事故やらで時間がえらいことに、

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