第19話「聖騎士と陰謀とスタンピード」その2
第19話「聖騎士と陰謀とスタンピード」その2
【マジ区・ニューカ街の冒険者ギルド別室】
「あの場所で得た情報、無駄にするわけには参りません!お願いします!
それに、いざとなったら正義の聖騎士、モブデッド様が護って下さるでしょうから」
「勿論だとも!我が半身の聖剣、【黒鵜・無眼月】の名にかけて!」
はぁ、何カッコつけてんだかこのジジイ……。チラチラあたしの胸を見てんのはバレバレだっつーの。
いくら任務の為とはいえ、サービスし過ぎたか?チッ!
「流石は音に聞こえた、最強の聖騎士モブデッド様!頼もしいですわ!」
”むにゅん”
あたしはダメ押しにジジイの腕に抱き着き、自慢の胸を押し付け上目使いで見つめる。チョロいなー、これでもうこっちの思う壺だね。
「うはははは!ハナ殿は、私が命に代えても護って見せようぞ!」
「宜しくお願いしますね、聖騎士サ☆マ☆」
しっかり盾として、働いてもらうとするか。
【翌日の早朝、特別依頼を受けた聖騎士と女レンジャーは”魔女の森”に向かい、出発していった】
………
……
…
あたしの名はハナ。 ハナ・ズオウという、女だてらに冒険者でレンジャーをやっている。
まぁ、それは表の顔で本業は”ギルドの飼い犬”の暗殺者をやっている。
何故”飼い犬”かって?そりゃぁ……この町の要人を暗殺しまくってんのがばれたからさ!
ちょっと私怨もあって、サクサクしてたらここのギルマスに取っ掴まってさ、
『私の手足となって働くなら飼ってやる』とか言うんで、二つ返事で飼われたってわけ。
私には、どうしても”やらなきゃならない”事があるから、どんなに心と体を汚しても。使えるものは何でも使ってやる!
あたしの目的は、ざっくり言うと”敵討ち”だ、もう11年前になるかな?あたしの住んでた【イロ村】は魔物の群れに蹂躙され壊滅した。”数十年以上、発生していない”とされている”スタンピード”によって、あたしの両親も生まれたばかりのあたしの弟も、友達もみんな喰われちまった……。
あたしの村から一番近かった、この【ニューカの街】は救援を求めても、助けてはくれなかった。
あたしたちは、見捨てられたのだと諦めかけた時に、隣街から救援が来た。
領土的には、ただ”近かった”それだけなのに、あたしたちを”同じ国に住む領民”だと、銀色の鎧に身を包んだ女性は言った。私は数人の村人と共に命を救われ、すべてが終わった後、【ニューカの街】から遅すぎる救援が到着し、住民として迎えられた。
新しい生活にも慣れ、元々冒険者だったあたしはレンジャーとして活動を再開した。
あたしの村を助けてくれた”英雄女傑”に憧れたからかもしれない。いつかちゃんと本人に会って、”あの時は助けてくれて、ありがとうございます!”とお礼を言いたかったってのもある。
街の誰に聞いても”英雄女傑”の話を聞くことはできなかった。
……あたしは、知ってしまった。あたしから全てを奪った”スタンピード”が意図的に起こされたものだという事を……。そして、あの”英雄女傑”はあの時に命を落としていたことも知った。
しかも、子供を出産したばかりの身体でありながら、たった一人の従者と共に戦い続け、亡くなったと。
あたしの村を壊滅させたのは”スタンピード”ではなく”たまたま偶然に魔物に襲われた村”と記録されていた。そして、あたしたちを救ったのは【ニューカの街】の精鋭たちだとも……。
あたしたちを救った、英雄の事は記録されていなかった。
それどころか、あたしたちの”救援要請を受け入れなかった”と隣街の領主を非難する記録ばかりだった。
領主は”ランセル家”で、あの英雄は領主の妻である”メロディア・ランセル”という事を、
村の生き残りである大人たちから聞いた。昔から良くしてくれた、貴族らしくない人物だったらしい、
ランセル家の長女と次女とは顔見知りだった、彼女たちの母親だったのだと知った時、胸が苦しくなった。
あたしは涙していた、悲しかった、そして悔しかった。あたしの村を見捨てた街で、
あの人を非難する、この恥知らずな街でぬくぬくと生き続けてきた事に……。
あたしは今生きている、成長して大人になり、一人で生きていける。
でも、それはあたしたちを見捨てなかったあの英雄を犠牲にした結果だ。
あたしたちが”生きている”事に喜びを感じていた時、あの英雄は、あたしたちを助け、死んだ。
幼い二人の娘と、生まれたばかりの自分の赤子を、その手に抱くことは二度となかったのだ……。
弟も生きていれば、その子と同じ年頃だっただろう。あたしの胸の中に”怒り”という感情が芽生えた瞬間だった。
あたしは”スタンピード”を引き起こした犯人を突き止める為、情報を得る為ならどんなに汚い仕事でも引き受け、時にはこの身体を交換材料にもした。
……どうやら、この街が関わっているという事を突き止めた。
この街では”スタンピードは、数十年以上起きていない”というのが通説になっている、
街の近くで発生した”アレ”を”なかったこと”にしてる節がある。あやしい……。
貴族の要人を、情報を得る為に拷問しては殺していった結果、あたしはギルマスに捕まり、
飼い犬となったが、おかげで新たな情報を得た。
”【魔女】がスタンピードを起こしているらしい”と……。
【魔女】なんて、子供の頃のおとぎ語でしか聞いたことがない。
どっちにしろ、手掛かりの一つではある。
あたしは、ギルドが秘密裏に行っている【魔女の森】の調査隊に志願した。
しかし、調査隊は全滅、あたしも死にかけて、この様だ。
そして、もう一度チャンスが転がり込んできた!
この聖騎士を上手く利用すれば、魔女に会うことも可能だろう。
それに……
あたしは自分の荷物に手を触れた、この中にはある大事なものが入っている。
次こそは……必ず。
残業で帰宅後……時間とは無情なり。




