第穹話 守護者突破
✣ ✣ ✣
シヴァは勢いをつけ、デウスに急接近する。デウスはシヴァの攻撃場所を心眼で暴き、全て防ぎ切る。
「GuaA!」
デウスはシヴァに蹴りを入れ、尚且つ左手で殴り込んだ。
「ぐっ!があっ!」
シヴァは後方に吹き飛ぶ。
トラソルテオトルはデウスに拳銃を向け、何度も何度も発砲。
デウスはそれを難なく躱し、回り込みながら接近する。
デウスは咄嗟に足を止め、逆方向に一瞬走り駆け、即座にトラソルテオトルの元に滑り込んだ。
「しまっーー!」
デウスの右手に持つ兇敵ノワ・ルーナはトラソルテオトルの足を軽く切り、体勢を崩させる。
追い打ちとばかりにデウスはトラソルテオトルの顎を蹴り上げる。
「ぐっ!」
トラソルテオトルの飛び上がった体の上にデウスは飛び上がり、踵で頭を強く蹴飛ばす。
「HAAAaaAAaa!」
轟音と共にトラソルテオトルが地面に激突する。
「やあああ!」
シヴァが突撃を決意し、デウスに攻撃する。
デウスは間一髪で攻撃を躱し、剣を利用してシヴァの懐に回り込んだ。
「ーー!?」
驚く隙など与えず、デウスはシヴァの腹を蹴り潰し、刃を向けた。
しかし、肩に意味が走り、ロンダートバク宙を綺麗に決めて距離を取った。
シヴァは背中から地面に激突し、トラソルテオトルはゆっくりと立ち上がる。
シヴァはともかく、トラソルテオトルは意外と軽い怪我が多く。累計で言えば死に数も意外と多い。
デウスは兇敵ノワ・ルーナを地面に突き刺し、深呼吸をする。
唸るような声が深呼吸とは思えない音を鳴らす。
「お、前、中々、やるな。」
腹を抑えて立ち上がるシヴァがそう言った。
デウスは相変わらず目を閉じたままだった。
トラソルテオトルは深呼吸をするデウスに銃口を向けた。
「早く片付けるわよ。」
シヴァは地面に倒れ込んでいる剣を手に取る。
「了解。」
デウスは深呼吸をし終え、地面に突き刺した兇敵ノワ・ルーナを抜き出した。未だ目は閉じており、心眼で敵の位置などを把握している。
シヴァとトラソルテオトルが同時に構える。
それに合わせてデウスも重い重心を軽く持たせ、速度重視の構えを取る。
「はあああ!」
先に仕掛けたのはシヴァだった。
デウスは突撃してくるシヴァの剣を捌き、柄頭で喉元を強打。
「ッッッ!!!」
当然ながら声など出るはずもなく、口から血を吐き出した。
デウスはシヴァを上に蹴り上げ、トラソルテオトルの銃が丁度デウスではなくシヴァに当たるように立ち回り、シヴァを蹴飛ばした。
当然シヴァはトラソルテオトルの方向へ飛んで行き、激突した。
「きゃあ!」
地面に仰け反るトラソルテオトル。
デウスは足を動かし、走り出した。
その速さはまるでウェーローキタースのようだ。
トラソルテオトルとシヴァの周りを見えない速度で走るデウス。
どこに居るのかさえ掴めない。裸眼では確実に捉えることは不可能な速さを誇っている。
「きゃああ!」
トラソルテオトルの肩に亀裂が入った。
深い訳では無いが、浅い訳でもない。この一撃は本気の合図とトラソルテオトルは受け取り、立ち上がる。
拳銃を縦横無尽に持ち替えたりして連射する。
だが、手応えというものが壊滅的に感じられなかった。
これは一撃もかすりさえもしていないということ。
「くっ!」
傷口は増えていくだけ。その度に体は再生を始める。
傷が残る気配など微塵もない。はずなのだが。
「いっ!」
銃を構えた途端に走った激痛。肩に目を合わせると、傷口の再生速度が鈍くなっていた。
これはあと少しで固定数死ぬという合図だ。
早くケリを付けなければ先にトラソルテオトルとシヴァが負けるのは確実だ。
だが、デウスの速さに追いつくことが出来ない。
そう、速すぎるのだ。魔神族の脅威なる裸眼でさえも捉えられないほどに速い。
「くっ!きゃっ!つっ!」
更に増える傷。再生の速度が尋常じゃないほどに減っていく。
その時、デウスが地面に倒れ込んでいた。
それを抑え込むシヴァの姿。
「ーー嘘っ!」
驚きを隠せずにいるトラソルテオトル。
あれほどまでの速度に追い付けるのはもう奇跡と言っていいほど。
それを無難で捉え、デウスを止めた。しかも形勢逆転。これは凄いと言えざる負えない。
「大事な仲間にこれ以上傷は付けさせないぞ。」
「GuuUUuU…」
デウスは地面に押さえつけられている。
「撃てっ!トラソルテオトルっ!」
その言葉にトラソルテオトルは銃を構え、発砲。
銃弾はデウスの脳を突いた。
デウスは力を抜き、地面に腕を落とした。
「……ふぅ。」
シヴァは立ち上がり、額の汗を腕で拭った。
「それにしても、あんたよくあんな速い速度見極めたわね。」
「偶然だ。たまたま目で捉えられたから先を読んで攻撃したらジャストだったんだ。」
得意気でないシヴァの背中をトラソルテオトルが叩いた。
「何洒落臭い顔してんの。今回はあんたの手柄よ。早く魔神王様に報告をーー」
言葉は途中で途切れた。
トラソルテオトルがデウスの方向を見ると、デウスが地面に足の裏を確り付けて立ち上がっていた。
「……おいおい。それは無いだろ。」
立ち上がっているデウスを見てシヴァがそう口に出す。
「……あれで、死なないって、どんな構造してんのよ。」
渾身の一撃とも言える攻撃を放った後で、デウスが普通に立っている。
信じ難い光景を目の当たりにしている。
「……guaaaaaaa。」
小さな声で唸り、デウスは両眼を開いた。
右眼からは紅い靄が揺らついていた。
兇敵ノワ・ルーナを地面に付け、真っ直ぐシヴァとトラソルテオトルを睨み付ける。
その目からは信じられないほどの恐怖と鬼胎を感じる。
シヴァは立ち上がり、デウスに剣を向けた。
「つ、次こそその息の根をーー」
その言葉に終止符を打つ形でデウスがシヴァの首を跳ね飛ばした。
「ッ!」
跳ね飛んだシヴァの首は灰と化し、地面に落ちた。
シヴァの体も段々灰へと姿を変えて行った。
「このっ!」
トラソルテオトルがデウスに向かって銃を発砲する。だが、全て回避される。
「どうして、どうして当たらないの!」
その答えを表すようにデウスはトラソルテオトルの溝に兇敵ノワ・ルーナを突き刺した。
「ーーッ!……あははは。あたしが、弱いからか。」
デウスはトラソルテオトルの溝から兇敵ノワ・ルーナを抜き出した。
トラソルテオトルは地面に倒れ込み、死亡した。
デウスは兇敵ノワ・ルーナを地面に擦らせながらまた進み始めた。
ラストボスの魔神王の元へ。
✣ ✣ ✣
デウスは突如として、足を止めた。
進み始めて約二分。ある気配に気づいき、兇敵ノワ・ルーナを向けた。
「そんな怖い顔せんでくれよ。我が息子。」
剣先に人影。身長はデウスより少し大きいか。
「GAaaAaaa。」
「それじゃ真面に話せないだろう。ほれ。」
その途端、デウスは頭を抱えた。
「a……aaA…」
そして、デウスは頭から手を離した。
「…こ、ここは。」
「気がついたか。」
「お、お前は?」
「俺はディオス・ペンドラゴン。お前の実の父親だ。」
その言葉にデウスは我を取り戻し、兇敵ノワ・ルーナを向けた。
「お前が俺の親の魔神王か!」
「まぁ、そうムキになるな。俺は今戦う気は無い。少し話をしよう。」
「出来るか!因縁の相手と!」
「いいや、出来る。少しついてこい。ちなみに、同行中に攻撃をしたらその時点で捕獲する。」
デウスは兇敵ノワ・ルーナを下ろした。
近くにいるだけでも伝わってくるこの凶悪な邪気。
『これが、俺の父親…』
今でも信じ難い。だが、ジャンヌがそう言っていた。それが真実なのだろう。
デウスはディオスについて行く。
少し歩き、着いた場所がなんとも言えない空間だった。
「…家だ。」
「ここは俺の家だ。そこにでも腰掛けてくれ。」
デウスはソファに腰掛けた。
どこかデウスの家に居るような感じがする。
そこへディオスが歩いてきて、向かいのソファに腰掛けた。
「さて、どこから話したもんか。」
「単刀直入に聞きたいんだが、お前が魔神王なんだよな?」
「実の父親に″お前″は無いだろ。ま、仕方ないか。十六年間離れてたからな。」
「なんで俺を人間に仕向けたんだ?」
「別に仕向けたわけじゃない。ただ、魔神王の息子なんて肩書き、荷が重いと思ってな。デスペランドーマもいる事だし、良いと思っただけだ。」
何故か嫌ではない。話をしている自分が信じられないデウス。
「で、本題に入りたいんだが、お前の仲間についてだ。」
「……あぁ。」
デウスの表情が少し頑なになる。
「済まなかったな。」
意外とあっさり謝ってきた実の父親のディオスにデウスは少し剣幕を悪くする。
「ふざけんなや!俺は目の前で仲間殺されて命かけてここに来てんだ!それなのにこんな馬鹿みたいに茶話しやがってぶった斬るぞ!」
「……お前にできるのか?」
その言葉にデウスは口篭る。
「俺も訳があったんだ。それに俺はデウス達を連れて来いって命令したんだ。でも、何を勘違いしたのか伝達役がミスして殺してこいなどと言ってな。それでこうなった。」
「…なら何故護衛なんか付けた。」
「お前の仲間を殺してしまった以上、確実に殺しにかかってくるのは分かっていた。少しでも体力を減らして疲れたところで捕獲しようとしたんだ。でも、全員また殺せと聞き間違えて本気で殺しにかかるし。俺だって不本意なんだ。」
信じられない感じがするが、何故かデウスには真実だと思えた。実の父親だから?違う。純粋な悲しみに感じたからだ。
「争いだって起こしたくはない。そこでこんなのはどうかと思う。」
ディオスの提案にデウスは耳を傾けた。
「なんだ?」
「選択肢は二つ。一つは俺とディオサと一戦交えるか。もう一つは戦わずしてお前の願いを聞き届ける。悪くない話だとは思う。どうだ?」
デウスは考えることなく、即答した。
「一戦交える。」
「ほう?願いの方を選ぶと思ったが、違ったか。」
「流石に因縁深いんだ。謝罪だけで許すなんて言えない。だから、」
「分かった。なら場所を変えよう。ついてこい。その場所にディオサも居る。」
そう言ってディオスは歩き出した。
デウスはその後ろをついて行く。最後の決戦となるだろう。




