第撥話 最後の守護者達
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デウスの左頬を掠る銃弾。トラソルテオトルの左頬を掠る剣筋。
両者ともに攻撃を行う。
トラソルテオトルは両手の銃を乱射。
デウスはそれを躱し、上に飛んだ。
「GUrAaaaaAAaa!」
デウスは唸り声を上げ、兇敵ノワ・ルーナを振り下ろした。
鉄が弾ける音が鳴り、拳銃に止められた。
「っ!」
トラソルテオトルは右の拳銃をデウスに向け、発砲。デウスは体を横に倒し、銃弾を避ける。
両者ともに距離を取り、出方を伺う。
先に仕掛けたのはトラソルテオトルだった。
トラソルテオトルは両手に持つ拳銃をデウスと、その他の場所に連射。
デウスは自分に飛んできた銃弾のみ切り裂き、トラソルテオトルに急接近した。
トラソルテオトルは反応を少し送らせてしまった。
デウスは兇敵ノワ・ルーナを突き出した。
トラソルテオトルは回避が間に合わず、拳銃で剣筋をずらした。
デウスは追撃をさせぬために、右足でトラソルテオトルを蹴った。
トラソルテオトルは左腕で防ぎ、拳銃を逆手に持ち、発砲。デウスは顔を横にし、髪の毛数本以外無傷で回避した。
デウスは距離を取り、右回りで走り始めた。
トラソルテオトルは右手の拳銃を走るデウスに向け、的確に発砲。
デウスは全て回避し、更に加速する。
無風の場所に風が出現し、トラソルテオトルの短い髪を軽く揺らす。
デウスの姿はもはや見えない。トラソルテオトルは周囲をこまめに見渡す。
「…………!」
トラソルテオトルは左側に回避した。
その瞬間、地面に兇敵ノワ・ルーナが突き刺さる。
地面が波打ち、激音を走らせる。
「GrAAaaaAaaA!」
デウスは地面を抉り、兇敵ノワ・ルーナを抜き出し、トラソルテオトルに強斬の一撃を与える。
「きゃあああ!」
トラソルテオトルの腹部が裂け、血を吹き出す。
トラソルテオトルは後方に吹き飛び、地面に激突。
デウスは兇敵ノワ・ルーナを地面に擦らせながら走り出す。
トラソルテオトルの目の前に立ったデウスは兇敵ノワ・ルーナを振り下ろした。
トラソルテオトルの腹部は既に再生しており、デウスの追撃を避けた。
回避したと同時に両手の拳銃をデウス目掛けて発砲する。
デウスは全て華麗に躱し、少しづつ距離を詰めていく。
トラソルテオトルは片手の拳銃の連射を止めた。
勢いが収まった今、攻める好機。
デウスは弾丸を全て切り裂き、トラソルテオトルの目の前に走り込み、兇敵ノワ・ルーナを振りかざした。
「…掛かったわねっ!」
「Gu!?」
連射を止めたトラソルテオトルの右手には手榴弾があった。
しかし、その手榴弾にはプル・リングがなかった。
既に抜かれているとは考えにくい。
デウスは距離を取ったが、もう遅かった。
トラソルテオトルは手榴弾を投げ飛ばし、拳銃を手榴弾に向けて発砲。
銃は手榴弾を貫き、飛んで行った。
手榴弾は光を放ち、轟音を奏でた。
光が履けた。デウスの体は所々ボロボロになっていた。
トラソルテオトルの体も少しボロボロになっていた。
道連れ覚悟の手榴弾だったのだろう。
だが、両者ともにほとんど無傷。それどころか傷は再生する。
戦いはただただ続く。
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デウスの構えが先程とは異なった。
先程まで突っ立っていただけだったが、腰を落とし、右足を前に出し、左足を後ろに引く。左手を地面に付き、兇敵ノワ・ルーナをトラソルテオトルに向ける。
「新しい構え方ね。」
デウスは何も返答せず、左目を閉じた。
「ーーッ!」
その時、トラソルテオトルの背筋に氷期が通る。
何か、ただの生物では無いものと対峙しているような。そんな感じが漂う。
トラソルテオトルは恐怖に感じ、拳銃を向けた。
しかし、引き金に指を翳した瞬間だった。デウスに腕を取られた。
トラソルテオトルの後ろに移動していたデウス。そのデウスの左手にはトラソルテオトルの右腕があった。
血を大量に放出している。
トラソルテオトルは振り返り、左の拳銃を発砲する。だが、全て当たらない。
デウスはトラソルテオトルに向き直り、兇敵ノワ・ルーナを逆手に持つ。
トラソルテオトルの右腕はいつの間にか再生しており、拳銃がない状態だった。
トラソルテオトルは逃げようと思ったが、逃げたところで戦うことに変わりはない。それに、こんな″魔獣″から逃げられる気がしない。
デウスは構えをやめ、体を緩くした。
その途端、トラソルテオトルの首に亀裂が入った。
亀裂からは血が溢れ漏れ出す。
だが、即座に再生する。
『……こんなの、もう勝ち目無い。』
一対一のタイマンの場合、トラソルテオトルに勝ち目はない。だが、加勢が来れば話は別だ。
『せめて、一人でも来てくれればーー』
そう思ったトラソルテオトルにデウスはゆっくり近づいていく。
トラソルテオトルは近づいてくるデウスと同じ速度で後ろに下がる。
その時。
「GuU!」
デウスの左肩に小さな亀裂を付けた。
トラソルテオトルが付けたわけじゃない。
亀裂を付けたのはデウスの目の前に居る一人の男だった。
「あんたは、」
「加勢に来た。」
男はデウスを蹴り飛ばした。
デウスは地面に足を滑らせ、減速させた。
男の右手にはひとつの剣があった。
「名はシヴァ。貴様を殺す破壊神だ。」
シヴァと名乗る男。破壊神と来た訳だが、デウスは全く気にしていない。
「あんた最後の防衛じゃなかったの?」
「あぁ。そうだったんだが、訳ありだ。」
「……何があったの?」
「…ハリハラとルドラが殺られた。」
「!?」
デウスは自我はないが、疲れは感じる。
地面に座り込み、休憩している。
「ど、どうして!?」
「理由は全くの不明。だが、遺体は全て″灰″になっていた。」
「灰、?」
デウスの持つ兇敵ノワ・ルーナの効果だ。
斬り裂いた部位から腐敗し、灰と化す。
因みにトラソルテオトルは武器の効果に対する絶対的な耐性を持っているため、灰化しない。
だが、明らかにデウスの仕業ではない。現時点でトラソルテオトルと対戦している。ここから先の敵に攻撃など出来るはずもない。のだが。
「…死因は分かっている。」
「……何?」
「奴の武器だ。」
シヴァはそう言ってデウスの武器である兇敵ノワ・ルーナを指さした。
シヴァの特殊スキルは『透視』。敵のスキルや特殊スキルの効果を透視出来るというもの。これは人以外にも武器やモンスターの効果も透視出来る。
兇敵ノワ・ルーナの効果は『灰化』と『無惨』とその他数個。
『無惨』の効果は戦闘している相手を省く、近くに居る二人以下の生き物を斬殺出来るというもの。
この効果によって、ハリハラとルドラは死んだと考えられる。
「……そう。」
「なんだ?」
「…早く、殺そう。」
トラソルテオトルの目は憎きものを討ち取るような目だった。
そのトラソルテオトルの言葉に反応し、デウスは兇敵ノワ・ルーナを持ち、立ち上がった。
「GAAAAAAAAAAA!!」
奇声を発しながらデウスはトラソルテオトルに攻撃を仕掛ける。
しかし、その攻撃はシヴァに止められる。
「はっ!」
シヴァは兇敵ノワ・ルーナを弾き、追い打ちを掛ける。
デウスは勢いに任せ、バク転を綺麗に決め、その足でシヴァの握る剣を蹴り飛ばした。
「ーーッ!しまっーー!」
そう思った時点でもう遅かった。
デウスは既に体勢を立て直しており、兇敵ノワ・ルーナを構えている。
「hAAaAaaaAAaaa!」
デウスは兇敵ノワ・ルーナをシヴァに振り下ろした。
シヴァは上に跳ぼうとしたが、足を捻り、跳ぶことが出来なかった。
絶体絶命の危機。シヴァには武器効果無効がないため、切られれば忽ち灰化してしまう。
だが、シヴァの方はチーム。二対一ということを忘れては行けない。
「っ!トラソルテオトル!」
トラソルテオトルは声に反応し、拳銃をデウスの頭に発砲。
銃弾はデウスの額をギリギリに通り過ぎ、デウスは距離を取った。
シヴァは後方の地面に刺さっている剣を抜き出し、デウスに向ける。
「二対一は何だか気が引けるが、これも命令なんだ。許してくれ。」
言葉のみで謝罪するシヴァにデウスは無言で右眼のみで見つめる。
「…謝罪なんかしなくていい。こいつはあたし達の仲間を殺したんだ。」
謝罪するシヴァにそう言うトラソルテオトル。だが、トラソルテオトルも少しは罪悪感というものがなくはない。
タイマンで戦うことが今一番望ましいのだが、魔神王からの命令ならば仕方が無い。
デウスとシヴァ、トラソルテオトルは睨み合う。
二対一という状況に置いても、自我のないデウスはただただ殺すだけの存在。
特に危機を感じる状況でもないと思ってしまう。
「はあああ!」
シヴァが前に出た。遠距離型のトラソルテオトルは後方支援につく。
デウスはシヴァの剣筋を見極め、上下に兇敵ノワ・ルーナを振った。
二回とも防ぐ。
「初回でこれを見極めるとは。」
力を入れるデウスとシヴァ。それに水を差すようにトラソルテオトルが銃を連射。
デウスはシヴァの攻撃を防ぎながら回避する。
勢いが増してきた時に、デウスはシヴァの剣を弾き、バク宙をして距離を取る。
トラソルテオトルはデウスを追いかけるように銃を連射し続ける。
だが、ぶれてなかなか当たらない。
デウスが着地した時がトラソルテオトルの最大のチャンス。
デウスが着地した。同時に連射を一度止め、即座にまた発砲。デウスは全てを斬る。
それを好機と見定め、シヴァが突撃してきた。
「……」
デウスは右眼も閉じ、視覚を無くした。
だが、トラソルテオトルの方向から飛んでくる銃弾を全て二つに斬る。
これは視覚を遮断したことで、神経が発達し、感覚で全て確認出来る。
シヴァがデウスに攻撃をすると同時に発砲が止んだ。
デウスは左腕を覊惹で硬化させ、防いだ。
「くっ!」
シヴァは力を込めたが、デウスに弾かれ、後方に仰け反った。
即座に立ち上がり、距離を取る。
「さっさと終わらせるぞ!」
「ええ!」
「GaAaAAaaAaaaAAa!」
三人順々に言葉を発し、最終感が高まった。




