第漆話 まだ続く戦い
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地面を削る金属の音が響く。
気迫の爆風を起こしながら、デウスは兇敵ノワ・ルーナを地面に擦らせながら進む。
「…止まれ。」
どこからともなく聞こえてきた声にデウスは足を止めた。
決して自我がある訳では無い。
「お前がデウスか。思ったよりもガキだな。」
その声の後、デウスの目の前に人影が現れた。
そして、デウスの顔に蹴りを加えた。しかし、デウスはビクともしない。
「最小の力でも吹き飛ばせると思っていたが、無理みたいだな。」
人影はそう言い、デウスの顔から足を退けた。
「やぁ、俺様の名前はオルフェウス。お前を食い止めるために派遣された五番目の魔界の護り人だ。」
デウスは兇敵ノワ・ルーナを持ち上げ、勢いよくオルフェウスに振り下ろした。
爆発したような音と共に砂埃が舞い上がる。
「痛いなぁ。そんな殺気を剥き出しにされても困る。」
砂埃が履け、その場には兇敵ノワ・ルーナを″拳″で止めているオルフェウスの姿があった。
「…GaAaaaAAaa。」
デウスは少し力を加えた。その途端、地盤が歪み、地面に無数の亀裂が割れ入った。
「かなりの力だな。こんな″化け物″を今こうして止めているのも奇跡だと思うんだが、どうだ?」
「hAaaAAAaaaA…」
「そうか。」
オルフェウスは腕に力を入れ、兇敵ノワ・ルーナを弾き返した。
デウスはその勢いのまま、後退した。
デウスは脅威の眼力でオルフェウスを睨みながら臥龍冴虎構えをする。
「力の限り暴れ回るのは勝手だが、それが魔神王に向けられるのなら止めるしかないな。」
オルフェウスは牙を向けるデウスに歩み寄る。
どんどんデウスとの距離が近くなっていく。等々オルフェウスはデウスの目の前に立った。
剣先がほとんどオルフェウスに当たっている。ゼロ距離間合い。
「この右手の拳は″正義の拳″と言われていてな。悪を断つ、拳なんだぜ!」
そう言ってオルフェウスはデウスに右手の正義の拳を振りかざした。
その瞬間をよみ、デウスは兇敵ノワ・ルーナを突き出した。
「!!!」
しかし、突き出した兇敵ノワ・ルーナはオルフェウスの左肘と左膝によって止められた。
「周りを見ろよっ!」
オルフェウスの拳がデウスに直撃した。
拳はデウスの頭を狙ったが、躱され、代わりに肩に激突した。
デウスは後ろに吹き飛ぶ。
地面に砕きながら減速し、勢いを抑えた。
「どうだ?俺様の拳は。」
その言葉に答えるようにデウスは左肩と首の間の骨を鳴らした。
「効いてないか。」
オルフェウスはそう言ってデウスを見つめた。
デウスは完全に敵対心を剥き出しにしていた。
「さっさとやろうぜ。殺し合いを!」
オルフェウスは地面を蹴り、右腕を引いた。
デウスは体を回し、左足を突き出し、オルフェウスの腹を蹴った。
「ぐっ!」
デウスの蹴りに怯み、一瞬隙を出したオルフェウスの首元をデウスは掴み、地面に叩きつけた。
オルフェウスが地面に叩きつけられた途端、地面が抉れ、波打つように周囲の壁が揺れた。
「ぐ、がぁぁっっ、!」
首をしてられ、苦しく藻掻くオルフェウスに追い打ちを掛けるようにデウスは兇敵ノワ・ルーナを逆手に持ち替え、頭に振り下ろした。
手足を拘束され、その上首まで拘束されたオルフェウスは兇敵ノワ・ルーナが刺さる寸前で目を開いた。
『ここだっ!』
オルフェウスは兇敵ノワ・ルーナが刺さる寸前でデウスに拘束されている両足を横に回し、デウスの体勢を崩す。
デウスは危機を感じ、飛び退いた。
オルフェウスは体を丸め、後ろに勢いをつけ、手で地面を押して飛び起きた。
その時、オルフェウスの体が重りを付けられたように鈍くなった。
「っ、なん、だ、これ。」
それはデウスの右眼だった。
「くそ、『森羅万象を見透す神邪眼』かっ。」
正式には覊繃の力だ。
デウスの覊禍はかなりの力を有している。
そんな力で睨まれでもしたら、忽ちにして体の身動きが取れなくなる。
「…ITtouRyu。」
オルフェウスは必死に足掻こうとするが、動かぬ体はただの的に過ぎない。
デウスはただただ殺意をオルフェウスに向け、兇敵ノワ・ルーナを向ける。
「や、めろ、!」
その言葉を無視する如く、デウスは地面を蹴飛ばし、オルフェウスの体を横に一刀両断した。
「蔭果煌報。」
オルフェウスの上半身は下半身の断面を滑り、地面に落ちた。
断面から黒い靄が空に舞い、靄にならなかったものは灰となって積み溜められた。
デウスはその灰を見、兇敵ノワ・ルーナを地面に擦らせてまた歩き始めた。
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嫌な音が響く。デウスはそんな音に耳も傾けず、歩き続ける。
「…………」
デウスは体をゆっくり左に傾けた。
その瞬間、地面に何かが激突し、地面を抉った。
「凄い勘。あれを避けるなんて。」
上部から声。デウスは上を向いた。
上から人影が降ってき、デウスの目の前に立った。
「…………」
デウスは無言でその人影を凝視する。
「あたしの名前はトラソルテオトル。君が魔神王様が言っていたデウス君ね?」
トラソルテオトルの言葉にデウスは無反応。全く返事を返そうとしない。
「なんで返事をしないかは知らないけど、取り敢えずは死んでもらうよ。」
トラソルテオトルはデウスの脳天に銃口を付けた。
「あと一秒数える。その内に逃げ切ってみなさい。」
そう言ってトラソルテオトルは口を一度閉じ、開いた。
「い〜~ち。」
煽るように放たれた言葉はカウントダウンを始めていた。
「ぜ~〜ろ。」
トラソルテオトルは引き金を引き、銃弾をゼロ距離で発砲。
しかし、デウスには当たらず、天井を崩した。
銃口は未だデウスの脳天に付いている。
「…………」
何が起こったのか一瞬理解を遅らせたトラソルテオトル。デウスは左手で銃を握った。
ヒビが入る音が鳴り、デウスの脳天から銃口が離される。
そして次の瞬間、銃が砕け、気を取り戻したトラソルテオトルにデウスは蹴りを打ち込んだ。
「がっ!」
腹部を抉るような一撃がトラソルテオトルの声を荒らげさせる。
後方には飛ばず、その場に立っていた。
デウスはトラソルテオトルの腹から足を退け、トラソルテオトルの頭を左手で掴んだ。
「があっ!?」
トラソルテオトルは痛みと驚きを混じらせ、声を上げる。
デウスはそんなトラソルテオトルの頭を強く掴み、持ち上げる。
「くっ、何を。」
トラソルテオトルは銃の破片を手にし、デウスに振りかざした。
「ーーッ!ぶはっ!」
鈍い音が鳴る。トラソルテオトルの腹部を貫通する兇敵ノワ・ルーナ。
トラソルテオトルは口から血を吐き出し、腕を下げた。
デウスは躊躇なくトラソルテオトルの腹から兇敵ノワ・ルーナを抜き出し、地面に落とした。
固く、冷たい地面に倒れ込んだトラソルテオトル。血が地面への接触を伝えるように音を立てた。
デウスは兇敵ノワ・ルーナを振り払い、血を落とした。
そして、また歩き出した。
「…………待ちなさい。」
言葉に反応し、デウスは後ろを振り向いた。
そこには傷が完全に再生したトラソルテオトルが立っている姿があった。
「そんなもので死ぬと思った訳?」
トラソルテオトルはまた、少し煽るようにデウスに言葉をかけた。
デウスは体の向きを変え、トラソルテオトルを見た。
そして、兇敵ノワ・ルーナをトラソルテオトルに向けた。
「やる気ねぇ。」
トラソルテオトルは少し嘲笑うようにデウスに言葉を放つ。
心做しか、デウスの口角が少し上がった。
トラソルテオトルは両手を開いた。
「近距離武器には遠距離武器を。これ、合ってる?」
トラソルテオトルはデウスに問いかける。だが、自我がないデウスは一切返答を返さない。
「合ってるみたいね。」
トラソルテオトルがそう言った途端、トラソルテオトルの周囲を稲妻が走った。
トラソルテオトルの手に武器が形成されていく。黒く、片手拳銃のような見た目を成す。
形成が終わり、トラソルテオトルは両手に持つ拳銃をデウスに向けた。
「あたしも容赦はしない。」
いつになく真剣な眼差しがデウスを睨む。
デウスはその眼差しに対抗するように右眼を大きく見開き、トラソルテオトルを見る。
「さ、始めよう。開始の合図は、これよ。」
トラソルテオトルは右手の銃を発砲。
弾はデウスに飛んで行った。だが、途中で銃弾は二つに割れ、地面に落ちた。
「凄いわね。」
『全く見えない。反射神経、も関わってる。闇の力でもない。あれは単純な身体能力で手に入れた速さ。』
銃弾を切る動作でさえも見えない。
デウスの手が止まって見える。躱すのも容易ではないという証拠だ。
「次はどこから…」
トラソルテオトルの言葉は止められ、デウスに頬を切られた。
牽制のつもりだろうか、かなり浅い傷。
しかし、全く凝視できない。目で追うという概念が消えるほどだ。
トラソルテオトルはデウスの方向を向き、銃を向けた。
しかし、そこにはデウスの姿はなく、あったのは砂埃のみ。
「いっ!」
トラソルテオトルの首にまたも浅い傷が出来た。
傷は再生するものの、明らかな速度の差。
雲泥の差、とも言おうか。トラソルテオトルの速度では全く追い付けない。
「ッ!」
トラソルテオトルは周囲に銃を発砲した。
その銃弾は全て二つに切られた。
そして、デウスはトラソルテオトルの目の前に止まった。
「…………」
「…あはははは!面白いわ!そうよ、あたしはこれを待ってたの!」
トラソルテオトルはデウスに銃口を向けた。
「さぁ、盛り上がりましょう!」
その言葉を合図に、デウスは地面を蹴った。
トラソルテオトルとの距離は本の数センチにも満たなくなった。
トラソルテオトルは右手の拳銃、デウスは右手の兇敵ノワ・ルーナを向けた。




