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FaTuS;契約譚  作者: 元気ハツラツマン
最終章 魔神王へ
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第肆話 氷結の傷口

✣ ✣ ✣


デウスの拳とソーマの氷剣はぶつかり合う。

その時、暴風が吹き荒れ、地面で砕けた氷がデウスとソーマの周りを取り巻く。

「さっさとこの右眼潰すんだろ?ならもっと本気出せや!」

「坊主が本気出さねぇから出せねぇだろうが!」

二人は愚痴を吐き散らし、距離を取った。

「敵なのに律儀だな。」

デウスがそう言うと、ソーマは氷剣を下に下ろした。

「俺はハンデなんて言うものは嫌いなんだ。フェアでやりてぇんだよ。」

少し喋り方を変化させたソーマ。

デウスはため息をついた。そして両手の覊惹きじゃを解除した。

「わぁったよ。じゃあ、後悔すんじゃねぇぞ。」

デウスは両手を開いた。

デウスの特殊スキルである『不制御狂乱暴君者バーサーカー』に新たなスキルが宿った。その名も遺止いじ。それともう一つ、謄本とうほん

遺止は覊凝きぎょうで作り出した武器、または防具を消滅させずに維持することが出来る。闇で作られているため、砕けることはない。相当なことがなければ。

謄本は武器、または防具の性能や構造、容姿を全く同じように作成することが出来る。これは覊凝と合わせることで強力になる。

デウスは両手を開いた。

『今回は遺止はいいか。』

デウスの周囲に雷鳴が轟く。

「ハァァァァ。」

初めてボルセリオンが言葉を発した。

訳では無いが、口から冷気を飛ばす。

すると、雷鳴と融合し、氷雷ひょうらいが生まれる。

どちらの味方かは分からないが、確実に遊んでいることは確かだ。

そして、デウスの両手に赤黒いもやが出現する。

それは刀の形に変化し、氷雷がその赤黒い靄を取り巻く。

そしてデウスはその両手の赤黒い靄を地面に叩き付けた。

爆発したような大きな音と、砕ける結晶。煙がデウスの事を隠す。

そして、その煙は刃に切られた。

「その武器は。」

二刀の刀。とても美しく輝くその刃は天井からの光を氷に弾く。

右手に持つ太刀の名が妖刀澪裓(れいこく)。左手に持つ太刀の名が名刀狼錑蕾(ローレライ)

妖刀澪裓は世には『鬼狂ききょう暴走刀ぼうそうとう』と言われている。澪裓を持った多くのものは今まで生きていたものなどおらず、全員があの世に葬られている。多くの血を取り入れることで、力の向上。能力の上昇することが出来る。しかし、逆に向上し過ぎ、持つ者全員が力に耐えきれず、狂乱する澪裓に切り裂かれて死んでいる。

名刀狼錑蕾は世界に名を轟かした最高の名刀。今まで切れなかったものはほとんどなく、全てを断ってきた。一度、魔神族をたった一太刀で再生不能の瀕死状態まで追い詰めたという伝説も存在する。今ではその伝説さえも幻と言われている。

「妖刀澪裓はともかく、名刀狼錑蕾まで作れるとは。」

特に震える様子もなく、氷剣を構えるソーマ。

デウスも妖刀澪裓と名刀狼錑蕾を構えた。

「臥龍冴虎構えか。こりゃあ厄介な相手だ。俺より強いアルテミスちゃんが使ってた流派だ。」

初耳ではある。だが、デウスの生み出した流派である龍虎かみとら流派を使用していたということは少なくともペンドラゴン流派と臥龍冴虎構えは熟知、使用出来る。

ということはアルテミスが臥龍冴虎構えを使用していたということには納得がいく話。

「なら覚悟しろよ。俺はアルテミスよりも多少なりとは強いぞ。」

「それは楽しみだ。だけどなぁ、俺はアルテミスちゃんに本気を見せたことがない。精々四割程度。それでもアルテミスちゃんの本気とほぼ互角。ということは俺が本気を出して坊主に勝つ確率は約八割。坊主が俺に勝てる確率は精々二割。二十パーセントってところだな。」

「グダグダうっせぇんだよ。」

デウスは構えを止め、ソーマに名刀狼錑蕾を向けた。

「そう急かすな。坊主、最後にひとつ聞く。」

デウスは溜息をつき、名刀狼錑蕾を肩にかけた。

「なんだ。」

ソーマは不敵な笑みを顔に浮かべた。

「死ぬ気はあるか?」

ソーマの言葉にデウスは思わず笑ってしまった。ソーマは頭を搔く。

そして、ソーマが口を開こうとした時、デウスは口を開いた。

「死ぬ気じゃなかったらここには来ねぇよ。」

その回答にソーマは喋ろうとしたことを放棄し、軽く笑った。

「面白い奴だな坊主。なら、ここで死んでも文句は言うなよ。」

「死ぬんだから言うも何も言えねぇよ。」

デウスは地面に足を叩き付けた。

それが戦いのゴングとなった。


✣ ✣ ✣


デウスが速攻をかけた。

「ふっ!」

左に持つ妖刀澪裓を振りかざした。

しかし、それは氷剣によって楽に止められた。そして弾き返され、追い討ちを喰らった。

「ぐあ!」

腹を深く切られ、後方に吹き飛んだ。

デウスはボルセリオンに止められた。

「ガァァァァ。(確り戦え。)」

「あ、ありがとう。」

デウスは応援してくるボルセリオンに礼を言いながら立ち上がる。

腹の傷は超再生によって治った。

「俺の流派を教えてやろう。」

そう言ってソーマは氷剣を手から落とした。

すると、地面に触れる前に雪の結晶となって消えていった。

そして地面に掌を付けた。そして地面から手を離していくと、冷気と共に武器が形成されていく。

片刃の大剣、と言った所だろうか。大きさ、重量ともにかなりのものだろう。

氷剣を引き抜き、デウスに剣先を向けた。

「氷轟剣テンペリオン。」

そう氷剣に、いや、テンペリオンに名を授けた。前も言ったように、武器は名を与える事で強化される。

現在テンペリオンはかなり強化を得たはず。

すると、ソーマはテンペリオンを逆手に持ち、腰を落とし、四股を取る。そして左手を前に出し、テンペリオンを持つ右手を後ろに持っていく。

「氷黒の構えか。」

デウスはその構えの名を知っていた。

そこまで珍しくもない流派だが、構えからの連携攻撃が強く、それを習得、または使いこなす為にジョブを剣士にするものが続出したという事件もある。

氷の技を主流とした流派。攻撃を受けた部位が氷結するという効果がある。

「俺が一番最初に覚えた流派さ。坊主には負けやしないよ。」

ソーマはそう言って腰を更に落とし、右腕を更に後ろに回す。

デウスは構えを少し変えた。

右腕を受けの構えから突きの構えに変更した。

ソーマが足を引いた時、それと同時に攻撃を仕掛けることが攻撃を喰らわないための最善策。

しかし、その予測はずれ、的外れな速度でデウスの腹に切り傷が付いた。

デウスは後ろを振り返った。

「驚いただろ。予備動作がいる構えだと思うからだ。」

『なんだ。今、何が起きた。氷黒の構えは予備動作があって始めて移動ができる流派。なのに、予備動作無しなんてーー』

「ーーありえない。そう思ってんだろ?」

全て筒抜けだった。油断が一番の天敵とも言われるがその通りだった。

「この流派は構え方を微量に変えることでその力を発揮することが出来る。予備動作無しでも敵に瞬間的に攻撃ができる。」

ソーマの解説中にデウスの腹は見る見るうちに凍っていく。

『くそ。冷た過ぎる。これじゃあ真面まともに戦えねぇっ。』

デウスは凍りついた腹を抑え、ソーマから距離を取るため、後方に飛んだ。しかし。

「遅いのは駄目だな。」

後方から声が聞こえた。聞き慣れてきたソーマの声だった。

「なっ!?」

『は、速すぎる!』

目で捉えることも、風で捉えることも出来なかった。

音速を超える速度だろう。マッハ五はあっただろう。

そして、音を、風の速度を超えたソーマの速さ故に凍りついていた風が解き放たれ、デウスに襲いかかった。

「のわぁ!」

風に押し流され、ソーマの方向へと飛ばされる。

『マズい!このままだとソーマに切りつけられて終わりだ!』

デウスはソーマが振りかざしたテンペリオンの剣身を妖刀澪裓で弾いた。

「えっ!?」

この解決策をソーマは考えておらず、流石に驚きを隠せずに声を荒らげた。

『当たりっ!』

デウスは顔に不敵な笑みを浮かべ、名刀狼錑蕾でソーマを切りつけた。

しかし、ソーマも即座に我に返り、浅傷で済ませ、回避。

デウスとソーマはまた距離が遠ざかった。

「早く殺られてくれ。」

デウスは少し疲れた表情でソーマに言った。

「坊主も、早く諦めろ。」

正反対に立つソーマも疲れた様子だった。

両者共に少し息を整え、同時に武器を向けあった。

「そろそろ決着を付けさせてもらう。」

「それはどうかな。」

デウスは開眼した右眼を一度閉じた。

「何をするつもりだ?」

「ふ。見てりゃあ分かる。」

「なら、見る前に倒すまで!」

ソーマは走り込み、デウスに襲いかかった。

そして、デウスは右眼をゆっくりと開眼した。

その右眼からは少ない光が溢れていた。

デウスはその右眼を強く開眼しながら氷剣に名刀狼錑蕾を振り下ろした。

すると、氷剣は即座に砕け、そのまま名刀狼錑蕾はソーマを一太刀。

「ぐはっ!」

ソーマは地面に膝を着いた。

肩から横腹にかけての傷跡。損傷がすごく、血の量も凄まじい。

だが、ソーマは魔神族ディアヴォル。傷なんて直ぐに治る体質。なのに、一向に傷が回復せず、血がただただ溢れる状態。

このままになると失血死の恐れが大いにあった。

そんなソーマにデウスは妖刀澪裓を向けた。

「終わりだ。氷の使い魔、ソーマ!」

ソーマは悔しそうに地面を叩いた。

「あぁ。そうだな、俺の負けだ。」

そう言ってソーマは氷剣を作り出し、自らの首を切った。

傷口は凍り、腹の出血と共に地面に倒れ込んだ。

デウスは妖刀澪裓と名刀狼錑蕾を消した。

「じゃあな。俺はまだまだ先に進まなくちゃいけない。」

そう言ってデウスはその場を後にした。

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