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FaTuS;契約譚  作者: 元気ハツラツマン
最終章 魔神王へ
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第弌話 魔神族の本拠地

✣ ✣ ✣


それから数時間が経った。

街全体は暗い空気に侵されていた。

死者多数。負傷者五万人以上。死者の埋葬が行われた。

そこには当然デア達の名も記載されていた。

貢献した者の名前は石碑に刻まれていた。

そこには死者の名も、生きた者の名も刻まれていた。″デウス″という文字を見た時、デウスは歯を食いしばり、その場に背を向けた。

『何処が貢献出来たってんだ。誰一人も救えやしねぇ。』

デウスのその思いに答える(相棒)もいない。誰一人もいない。

空はすっかり紅に染まっていた。

しかし、何処か暗い感じが漂っていた。雲が時折太陽の光を遮る。

デウスは下を向いたまま手をポケットに入れ、ギルド本部へ向かっていた。

宿を取り、部屋に入った。

〈デウス!早く!〉

〈主、早く寝ろよ。〉

部屋にはデアとフローレの幻覚が一瞬写った。しかし、それは忽ちにして消えた。

デウスは下を向いたままベッドに向かい、座り込んだ。

この戦いで得られたものなんてない。失ったものは数え切れず、考えるにも胸が痛む程。

デウスはいつの間にか一筋の涙を流していた。

それを拭いもせず、ベッドに倒れ込んだ。腕でデコを隠す。

あの楽しかった頃も、もうない。

残ったものは不完全燃焼感と憎しみだけだった。デウスは涙の流す勢いを強めた。

「………」

何も言えない。言いたくない。

コクド達を失った頃のようだった。

今では懐かしい情けない過去だが、今もそうなるだろう。

デウスは涙で潤う目で天井を凝視した。

そして、心に、この闇に決めた。

『死んだっていい。ただ、奴らを駆逐出来ればそれでいい。』

敵を、魔神族ディアヴォルを殲滅することが今のデウスの目標。

仲間を失った今、死など思考の外だ。

殺せさえすればそれでいい。

デウスは滲んだ涙を流したまま眠りについた。

夜は遅く、デウスを急かすようだった。

デウスは夜遅くに目を覚ました。

『今は、何時だ?』

デウスは思わず(相棒)に問いかけた。

しかし、当然ながら返答はなく、静かな空間がそこには広がっていた。

デウスは起き上がり、時計を探した。

デウスは時計を見つけ、時間を見た。現在の時刻は深夜の午前二時。

なんとも不気味な時間に起きてしまった。

部屋を見渡す。暗くてよく見えない。

『……』

デウスは壁にそり、ドアに向かった。

ドアに触れ、ドアノブを回した。ガチャっとドアの開く音がなり、ドアをゆっくりと手前に引く。

ドアの外も暗く、あまり見えなかったが、左側からは光と賑やかな声が聞こえた。

デウスはその光に向かい、歩く。

階段を下ったところはギルド本部だった。

そりゃあそうだ。デウスの泊まっている場所はギルド本部の宿だ。

賑やかなギルド本部の中、デウスは一人で椅子に座った。

『賑やかだな。』

デウスは周囲を見渡す。酒を飲んだり、飯を食べたり、腕相撲をしている者達もいる。

デウスは机に肘をついた。

そして手の上に顔を乗せた。

『なんで起きたんだ、俺。』

何故この時間に起きたかはよく分からない。ギルド本部が賑やかだから。では無いとデウスは思う。

別に気にする程ではない。それに部屋の中に居れば外の音はあまり入ってこない。

デウスは考える内に思考が止まり始めた。

『…考える事止めよう。』

デウスは考える事を止めた。

そしてデウスは立ち上がり、ギルド本部を出た。

外は静かだった。静まり返り、夜が深く、星が大地を照らしていた。

『少し、寒いな。』

風が吹いている訳では無い。別に冬って訳でもない。

それなのに寒気を感じる。

これもデア達がいない影響なのか。

デウスは少ない睡魔のせいであくびが出た。

そして門の方へ向かった。

街はまだ戦いの後が滲んでいた。歩いていくと、工事をしている場所が目に映る。

少し腐ったような異臭がする。人間の死体と血が混ざった臭いだ。

デウスは歩く。歩く。歩き続けた。

憎しみを踏みつけるように。その足で歩き続けた。

何時しか門の前まで歩いていた。

「漸くだ。」

デウスの顔は憎しみ混じりの笑みだった。

「この手で、確実に。」

デウスは右手を握り締めた。

門も壊れている。だが、人が通るには辛い。

デウスは瓦礫を駆け登り、頂点に達したところで足を止めた。

外は赤い目や青い目を光らせたモンスターだらけ。

デウスは手をポケットに入れて歩き出した。


✣ ✣ ✣


モンスターはデウスを見るも、襲わず、前を通り過ぎたり、ついて行くだけだった。

デウスの邪鬼がモンスター達の恐怖を湧き立てる。

「ブルァァァァ。」

モンスターが一体デウスに言葉をかけた。

二足歩行のモンスター。見た目は恐竜に似ているが、体全体がほとんど鋼鉄や鋼といった鉱化物で出来ている。

尾が少し特殊で、先が物凄く尖っている。まるで槍のようだ。

ジルデボリオスだ。ジルデボリオスはデウスにこう言った。

「仲間のことは残念だったな。」

デウスは足を止めずに返答する。

「あぁ。」

それ以外返す言葉が出てこなかった。

ジルデボリオスは尻尾を極端に振り回した。

「グラァァァ。(魔神族ディアヴォルを倒しに行くんだろ?)」

「あぁ。」

「ガァァァ。(手伝うぞ?)」

「いや、いい。」

「グゥゥゥ。(そうか。)」

ジルデボリオスは足を止めた。

「ガウゥゥゥゥ!(死ぬなよ!)」

離れていくデウスにジルデボリオスは御念を言った。

デウスは左手を出し、ジルデボリオスに手の甲を見せたまま歩く。

『死ぬなよ、か。』

デウスは笑みを浮かべていた。

命がいくらあっても足りない戦い。死なぬ事など必ずないと言うのに。

ジルデボリオスの言葉はデウスの心に響いた。

『モンスターに託されるとはな。』

デウスは歩き続けた。

次の街を目指すことも無く。

何時しか草原を過ぎ、林の中に入っていた。

空も街を出た時よりほんの少しだけ明るい。

デウスは背中から闇を展開した。

闇は翼の形に変わり、デウスを空に浮かせた。

そしてまた意味もなくデウスは地面に降り立った。

デウスの背中の翼は消え去り、足を黒紫色に変えた。

「時間が勿体ないな。」

そう言ってデウスは地面を強く蹴った。

物の崩れる、いや、壊れる音が鳴り響き、デウスの姿は消える。

今まで見たことも無い速度で進むデウス。

何時しかデウスは街を数個超えていた。

魔神族ディアヴォルの本拠地までの道のりが極限までに近づいていく。

八千キロもの道のりをデウスは分速二万メートル、秒速三百三十三メートルものスピードで進む。

休むことなく、長い時間走り続ける。

何度かモンスターがデウスのことを見て驚いていた。

気づけばデウスは三十分走り続けていた。

今は六百キロ。流石に息が切れていた。

しかし、そんなものは気にしない。

気にする余裕すらも勿体ない。今デウスは敵を殲滅するため、死ぬために走っているのだ。どれだけ疲れ果てようが本気でやる。それが今のデウスの意気込みだった。

人間の最速移動乗り物の飛行モンスターでも分速六百メートル程。

最速モンスターのウェーローキタースは例外だ。分速二万二千メートルくらい余裕で出る。

その代わり、人間は耐えきれない。

四十分、五十分と時間を重ねていく事に近づいていく。

一時間走り続けたところで、デウスの体は限界だった。

あれからスピードが落ちつつ走っていたため、現在は出発してから千キロだ。

デウスは地面に倒れ込んだ。

「はあ、はあ、はあ、っ、はあ、」

息がとても辛い。体全体が焼けるように暑くなっていた。

汗の量も尋常ではない。

デウスに一体モンスターが近づいてきた。

機械のような体、体全体が武器のような見た目のモンスター。ウェーローキタースだ。

「ジャァァァァァ。(ここで何をしてる。)」

デウスは辿々しい言葉でウェーローキタースに伝えた。

「俺は、魔神族ディアヴォルの、本拠地に向かってる。今の俺の体は、この状態だ。場所がわかるなら、連れてってくれ。」

その言葉にウェーローキタースは呆れたような態度を取った。

「ジャァァァ。(反乱する気か?)」

「反乱じゃ、ない。仇討ちだ。」

「ジャァァァァァァ。(ほう?仇討ちとな。)」

「あぁ、そうだ。」

ウェーローキタースはデウスを持ち上げ、背中に乗せた。

「ジャァァァァ。(確り掴まっとけ。)」

その言葉にデウスは背中から闇を展開し、体を固定する。

「完了、だ。何時でも、いいぞ。」

「ジャァァァァァ。(時間はかかるが許せ。)」

そう言ってウェーローキタースは飛び始めた。

デウスよりも早く、物凄いスピードを叩き出す。

デウスは必死に耐える。

そして飛び始めてから十分が経過した。

『あと、何キロだ?』

デウスが問いかけると、ウェーローキタースは回答する。

『あと二千五百キロだ。』

かなり早い。あと五分もあれば魔神族ディアヴォルの本拠地に到着する。

そして五分。予測が見事に的中し、魔神族ディアヴォルの本拠地に到着した。

デウスは十五分でかなり回復した体を起こし、ウェーローキタースの背中から降りた。

「ありがとう。」

デウスの感謝の言葉を聞いた後、ウェーローキタースは頷き、その場を去った。

「ようやく来た。」

世界の空間が歪むようだった。空気も辛く、どんよりとした雰囲気が漂っている。

「やぁ、君が魔神王様が言っていたデウス君だね?」

前方から黒い影としてこちらに向かってきた者がいた。

「誰だ。」

デウスが問いかけると、その者は少し焦ったような態度を取っていた。

「そんなに急かさないで欲しいな。僕はせっかちなものは嫌いなんだ。」

そう言って姿を現した。身長はデウスより少し小さいぐらいだが、年齢で言えば明らかにデウスの方が下である。

当たり前だ。今デウスの前にいるのは魔神族ディアヴォルなのだから。

「俺を殺す気か?」

「当たり前じゃないか。そういうめいだからね。」

そう言って魔神族ディアヴォルは武器を取り出した。

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