最終話 たった一日にして…
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デウス達はベリアラスク國を目指した。
メルバリング國を出発したのは七時前後。ベリアラスク國に着くのは八時過ぎぐらいだろう。
朝食を取れる時間帯だ。
デウス達は空を飛びながら移動する。
「餓鬼。」
「なんだ?」
スペルビアがデウスを呼ぶ。
「あと一体の怠惰の罪龍はベリアラスク國に居るぞ。」
「本当か?」
「あぁ。」
有難い情報だ。
これで九つの罪龍が全体揃う。そうなれば後はデウスの父を倒すのみだ。
「そろそろベリアラスク國に着くんじゃないか?」
ヘルトの言葉にデウスは前を向いた。
「そうだな。」
奥の方に小さくだが一つの街が見える。
あれがベリアラスク國だろう。かなりの規模の街だ。
街に近づいていく。次第に街の大きさは大きくなっていく。
「かなり大きい街ですね。」
バグラがそう言う。
確かに大規模の街だ。流石は人が集まる街だ。
門の前に降り立つデウス達。
門番はいつも通り顕在だ。
門番はデウス達を見るやいなや向かってきた。
「何日の滞在かね?」
五十代だろうか。かなり歳を取っているようだ。その問いにデウスが答える。
「二日だ。」
デウスの言葉に門番が驚きを顕にする。
「そんな短くて良いのかい?」
確かにいつもは三日以上だったが、今回は二日。短いと言えば短いが、敵の本拠地が見つかっている。それに最後の九つの罪龍がいるとなればすぐにでも本拠地に侵入した方が良い。向こうも流石に勘づいているはずだ。
「二日でいい。」
「そうかい。なら入りな。」
門番がそう言うと、門が音を立てて開いた。
門の中には多くの人達と多くの家が並んでいた。
「ようこそ、ベリアラスク國へ。」
街に入った時、門番がそう一言放った。
その時門は閉じられた。
「広いな。」
デウスが街を見渡し、そう言う。
「さ、朝食でも取るか。」
フローレがそう言うと、デウス以外の全員が賛成だった。
「別にいいな?主。」
「お好きにどうぞ。」
朝食を取る事になった。
丁度近くにあった店に入ることにした。
見た目は渋いが、客は上々のようだ。
デウス達は席に着き、飯を頼んだ。
その後、飯を済ませ、街を回った。
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ベリアラスク國には人間族の他に妖精族、獣人族、亜人族、翔天族という多種族が暮らしている。
街は賑やかに、そしてド派手な感じだった。
日も上がり、そろそろ昼頃になるだろう。そんな時だったが、デウス達はあるものと対面していた。
それは怠惰の罪、ピグレッド・ミーティットゥだった。
「久しぶりだね。」
ピグレッドは笑みを浮かべてフローレにそう言う。
「随分変わったんじゃないか?」
フローレの言葉にピグレッドは笑った。
「面白いこと言うね。」
何処か幼い感じがあるが、年齢はフローレ達よりも遥かに高いらしい。アルカナムを省いて。
「突然だが、仲間になる気はあるか?」
スペルビアの問いにピグレッドは鼻で笑った。
「はっ!なる気なんて無いね。」
そう言ってピグレッドは武器を取り出した。
神器だろうか。見たことも無い武器だった。刀だが、何処か刀とは違う感じがする。
「やるなら、私が、出ましょう、か?」
イラデゥエトスの言葉にデウスは頭を横に振った。
「俺がやる。」
そう言ってデウスがマルミアドワーズと龍鱗を取り出した。
「ただの人間が抗うのかい?笑い草だね。」
「敵のことも見極められないならそれで結構。速攻倒す。」
「出来るならね!」
街中だが、ピグレッドはデウスに牙を向いた。
ピグレッドは刀を振り下ろした。
デウスは龍鱗で防ぎ、マルミアドワーズで攻撃をした。
が、デウスは肩を切られた。
「いっ。」
デウスは距離を取った。
「驚いてくれたかな?伸びる刀だよ。君こそ分析が足りないんじゃない?」
デウスは武器を構えた。
肩の傷が癒えていることに気づき、ピグレッドは驚いていた。
「人間なのに再生するのかい?」
「俺は人間じゃねぇよ。」
「ならなんだと言うんだい?」
「それはこの戦いが終わってからな!」
デウスは地面を蹴り、ピグレッドに突撃した。
ピグレッドは刀を伸ばした。
しかし、その攻撃はデウスに当たらなかった。
「なにっ!?」
「二刀流。」
デウスとピグレッドの距離はほんの僅か一センチほどだった。
「珀戦憐魔。」
デウスの攻撃はピグレッドの胸部を斬り裂いた。
「ぐはっ!」
ピグレッドは地面に膝を着いた。
デウスはマルミアドワーズと龍鱗を鞘に収めた。
「俺の勝ちだ。」
デウスの言葉にピグレッドは嘲笑のように笑い、立ち上がった。
「分かったよ。仲間になるよ。」
ピグレッドはそう言ってデウスに右手を差し出した。
握手を求めているのだろう。
「宜しく頼む。」
デウスはピグレッドと握手を交わした。
かなりあっさりだが、これで九つの罪龍が全体揃った。
後は魔神族の本拠地を目指すだけーーのはずだった。
「「かっ!」」
デウスとピグレッドは同時に首を貫かれた。
「デウス!」
ビングルが銃口を向ける。
ピグレッドの後ろに人影があった。
ビングルはそれに向かって発砲。しかし、当たらなかった。
いつの間にかデウスとピグレッドの首元に刺さっていた物は無くなっていた。
「誰だ!」
ヘルトが鎌を取り出して警戒心を剥き出しにする。
「そうムキにならないで欲しいわ。」
後ろから声。全員がその方向を見た。
そこには血に染まったレイピアを手にしている女性が立っていた。
「お初にお目にかかるわ。私の名前はアルテミス。紫骸架の一人よ。」
誰一人としてアルテミスの存在は知らない。
デウスは癒えた首を撫でながらアルテミスに問いかけた。
「お前、魔神族だな。」
「ご名答よ。デウス・ペンドラゴン君。」
アルテミスはレイピアに付いた血を舐めた。
「罪人の味。貴方達全員ここで死んでもらうわ。そしてこの街も終わりよ。」
その言葉にデウスが剣幕を悪くする。
「クソが。その腐った根性全部叩き切ってやる。」
デウスはそう言って武器を取り出そうとした。
「遅いわよ。」
デウスは背後から五回連続で貫かれた。
「がああ!」
いつもよりも痛い。再生を妨害する力があるのだろうか。
「はあああ!」
ヘルトが前に出た。
鎌はアルテミスに当たらず、地面を叩いた。
「じゃあね。」
後ろからの声に反応し、後ろを振り返ったが、遅く、ヘルトは脳天を貫かれた。
「ヘルト!」
アブァリティアが瞳渾を握り、アルテミスに攻撃をした。
その他の全員もアルテミスに猛攻撃を仕掛けた。
だが、それは一瞬のことであった。
「全員最初から出直して来なさい。」
全員体の一部を貫かれた。
後方に飛び、地面を滑る。
ヘルトの死によって、アブァリティアが死んでしまった。
「早く終わらして全員の首を持ち帰りたいから、幕引きとしましょう。」
アルテミスはそう言って指パッチンをした。
すると、モンスター達が街を破壊し始めた。何処からとも無く現れたモンスター達は無我夢中に街を破壊し尽くす。
「これ以上、させて溜まるか!」
フローレが立ち上がり、アルテミスに蹴り込んだ。
しかし、その蹴りも無残に片手で止められた。
「この程度なら私一人で充分だったかもね。」
アルテミスはフローレにレイピアを突き刺し、追い討ちとして蹴り飛ばされた。
「のわあああ!」
フローレは強い力に飛ばされたように後方へ飛び、壁に激突した。
シャティスとインビディアが対抗するも、虚しく敗北し、首を貫かれて死亡した。
子供にさえも容赦ない。
「一刀流。」
その声がアルテミスの耳に入った。
アルテミスは声の方向を見た。デウスがマルミアドワーズを握っていた。
「ならこれで行きましょう。」
アルテミスはレイピアを逆手に持ち替えた。
「一刀流。」
両者とも睨み合う緊迫した状況だった。
「「天神爛真!」」
二人同時に攻撃をした。
同じ技。同じ攻撃方法だった。違うとすれば武器を順手で持っていたか、逆手で持っていたかだけだったーーはずなのに。
「かはっ!」
デウスは地面に倒れ込んだ。
デウスの胸部には大きな切り傷が出来ていた。
「この技は順手よりも逆手の方が強いのよ。覚えておきなさい。まぁ、その前に死ぬけどね!」
アルテミスは振り返るやいなやデウスに突撃した。
レイピアがデウスに触れる直前、金属に弾き返された。
「させないわ!」
「愛情って素晴らしいわね。」
デウスを救ったのはデアだった。
「デアっ!」
デウスは立ち上がろうとするが、立ち上がれない。
「大丈夫よ。デウスは休んでいて。」
そう言って干将・莫耶を握り締めるデア。アルテミスはレイピアを振り回した。
「その意気込みは褒めるけど、力がなければ何も出来ないわよ。」
アルテミスはレイピアの動きを止め、デアを睨み付けた。
「貴女一人で何が出来るのかしら。」
アルテミスの言葉にデアは笑みを浮かべた。
「誰が私一人って言ったのよ。」
その言葉の直後、アルテミスの体は貫かれた。
「お前には痛みを充分に味わってもらう。」
スペルビアとフローレがアルテミスの体を貫いていた。
「痛いじゃない。こんな悪い子にはお仕置きしなきゃね。」
デウスは何とか立ち上がった。
「フローレ!スペルビア!逃げろ!」
デウスの忠告は遅く、フローレとスペルビアの体には切り傷が多数ついた。
「ぐあ!」
「くっ!」
フローレとスペルビアは武器を抜き、即座に離れた。
しかし、フローレは逃げきれなかった。
「これでどうかしら。」
レイピアをフローレの体に突き刺し、地面に叩きつけた。
「ぐはっ!」
フローレは口から血を吐き出す。
「終わりよ。」
アルテミスはレイピアを抜き出し、勢いよく振り下ろした。
その時、アルテミスの目の前を弾丸が通り過ぎた。
アルテミスは後ろに回避した。
「外したか。」
ビングルが狙撃銃をアルテミスに向けてそう言っていた。
「わざと外したでしょ。」
「バレてたか。」
ビングルは突撃銃をアルテミスに向けた。
「ヘルトの仇だ。その脳天ぶち抜いてやる!」
連続で発砲するビングル。しかし、一発も当たらない。
弾かれるのではなく、全て回避されている。
「遅いのよ。」
アルテミスはビングルの後ろに移動していた。
「その手は読めてるよ。」
ビングルはそう言って狙撃銃を発砲した。
銃弾はアルテミスに命中した。が、ビングルは項を切られた。
ビングルはただの人間。項なんて切られたら即死だ。
ビングルは地面に倒れ込んだ。
それの影響により、イラデゥエトスも倒れ込んだ。
隣で弓を構えていたバグラも首を切られ、ゾルディブと共に死亡。
デウスは牙を剥き出しにした虎のように武器を握り、構えた。
「殺す!」
アルテミスは笑ってレイピアを舐めた。
「貴方みたいな軟弱者に出来るのかしら。」
デウスは左手で龍鱗を握った。
「幻覚二刀流。」
デウスはマルミアドワーズを逆手に持ち、アルテミスを睨み付けた。
「怖いわねぇ。」
アルテミスはレイピアを逆手に持った。
「一刀流。」
しかし、アルテミスはあるものを見て体の神経が止まった。
デウスの後ろから巨大な者が出現した。恐怖が全身を揺さぶり、首を絞めるようだった。
「迅羅万漿!」
空気を切る音が鳴り響く。先程までアルテミスの前にいたデウスだが、今はアルテミスの後ろにいる。
何も起きない。
アルテミスは冷や汗を掻きながら笑った。
「何も起きないじゃない。」
「分からねぇのか。それはかなり馬鹿だな。」
そう言ってデウスは指さした。
アルテミスは自分の体を見た。
アルテミスの体には十字に刻まれた傷がついていた。血が少しづつ勢いを増して出てくる。
アルテミスの傷は何故か癒えない。
それにデウスはマルミアドワーズを地面に叩きつけて言った。
「この技は全ての始まりを意味する。その意味がわかるか?」
要するに死への始まりという意味だ。
傷が癒えることはない。
アルテミスは剣幕を悪くした。
「はああああ!」
アルテミスは暴れ始めた。
アルテミスはジークフリートを攻撃した。ジークフリートは不死身の体と言われているが、弱点がある。そこを突かれればジークフリートは死んでしまう。
アルテミスはその弱点を知っていたため、ジークフリートは一撃で殺されてしまった。
それを止めようとデウスは攻撃するが、全く歯が立たず、デウスは体を切り刻まれた。
「ぐあああ!」
地面に背中から激突し、滑る。
アルカナムがそこに突撃した。
「や、やめろ。」
声さえも出ず、手を伸ばすだけ。
傷の癒えが遅く、痛みが酷すぎる。立つことも今のデウスには難だった。
「やあああ!」
アルカナムはアルテミスに攻撃した。
しかし、簡単に防がれた。
「死ね!」
アルカナムの体は蜂の巣のように穴だらけになった。
アルカナムは後ろに大きく飛び、壁に激突する。
アルテミスはそんなアルカナムに追い打ちを掛け、攻撃をしようとした。
だが、その攻撃は防がれた。
「サク、ラ。」
アルカナムを守ったのはサクラだった。
「やああ!」
サクラはアルテミスに連続攻撃を叩き込む。
だが、全て受けられ、サクラは心臓を突き刺された。
「……」
サクラは何も言わず、そのまま倒れ込んだ。
アルカナムは傷だらけの体のままゆっくり目を閉じた。
エネルヴァもアミナルもアルテミスに対抗するが、尽く敗れ、殺された。
スペルビアもグーラも死んでしまった。
次々と仲間が死んでいく。地獄絵図だ。
しかし、デウスの体は動かない。動いてくれない。
『相棒!大丈夫か!』
闇の声が聞こえる。
その途端、アルテミスがデウスを見た。
アルテミスはレイピアを上に翳した。
そして勢いよく振り下ろした。斬撃がデウスに当たった。
『ぐはっ!』
攻撃を喰らったのはデウスではなく、闇だった。
『どうした!』
デウスが問いかけるも、闇からの応答はない。
アルテミスの特殊スキルは絶斬。切れぬものも必ず斬れるというスキル。要するに闇はアルテミスに切られた。
「くっ、そが。」
デウスは力を振り絞り、立ち上がる。
体の傷もだいぶ癒えてきた。
「一緒に行くわ。」
デウスの隣にデアが来た。
「宜しく頼む。」
デウスは龍鱗を鞘から抜いた。
デウスとデアは同時に構えた。
アルテミスはレイピアをデウス達に向けた。
「「合四刀流。」」
デウスとデアは息ぴったりにそう告げた。
そして、同時に地面を蹴った。
「「魑魅魍魎!」」
同時にアルテミスに攻撃した。
アルテミスもそれに合わせて攻撃をした。
アルテミスの体は燃え始めた。
それと同時にモンスター達の体も燃え始め、塵となって消えた。
デウス達の勝利だった。そうだったはずだ。
「くっ!」
デアが地面に膝を着いた。
その時、武器が割れた。
干将・莫耶とマルミアドワーズ、龍鱗も砕けた。
デウスは苦しみ始めた。
「が、ぁぁ、ああ。」
見るも無惨に倒れ込んだデウス。
デアはそれに手を添えた。
「デウ、ス。」
デアもかなり限界だった。
デウスの左手の甲に刻まれたオーラは消え去った。
しかし、デウスは起き上がった。
死ぬはずだった。だが、残念ながらデウスは魔神族。死んだとしても生き返ってしまう。
「良かっ、た。」
デアはそう言って倒れ込んだ。
「デア!」
デウスはデアの体を持つ。
「早く、これを!」
デウスはポーチを触ろうとした。しかし、ポーチは無く、回復薬すら無くなっていた。
アルテミスにやられたと考えるのが妥当だろう。
「デア!早く回復魔法を!」
急ぐデウスにデアは力を振り絞り、笑みを作った。
「もう、無理、よ。」
「無理じゃない!」
デウスは涙を流す。下を向き、必死に涙を堪える。
「私の知る魔法じゃ、もう、癒せないわ。」
デウスは自分を強く責めた。
「また俺は、くそ!俺は、俺はーー」
デウスは頬を撫でられ、デアの方向を見た。
「自分を、責めないで。」
デアの優しさがとても苦しかった。
「私、デウスと、出会えて、幸せ、だったよ。」
その言葉を最期に、デアはデウスの頬から手を下ろし、目を瞑った。
フローレとイリビードが同時に苦しみ始め、地面に倒れた。
たった一日にして仲間が全員死んでしまった。
デウスは涙を拭い、デアを抱き抱えて立ち上がった。
「絶対に、殺す。」
デウスの決意は一層、いや、鋼鉄のように固まった。




