第六十五話 朝を迎えて
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結局的宴は続き、朝を迎えた。
デウス達も寝ずに朝を迎えることとなった。
「もう朝か。」
デウスが空を見てそう言う。
『眠かねぇのか?』
闇がそう言うと、デウスは少し疲れたように鼻で笑った。
「眠くわねぇけど疲れたな。」
『どうして眠くねぇんだ?』
「イフリートとの戦いで死にかけた時に少し寝れた気がしたんじゃねぇか?知らんけど。」
デウスは立ち上がり、目を閉じて下を向いた。
「そろそろ出るか。」
その言葉に歩み寄ってきたビングルが反応する。
「そろそろ行くのはいいが、こいつらどうすんだよ。」
ビングルの見つめる先ではデア達が寝ていた。しかもぐっすりと。
「そうだなぁ。全員抱き抱えていくか?」
「馬鹿言え。無理に決まってんだろ。」
派手にツッコミをかますビングルにデウスは少し笑った。
「じゃあ、全員起きるまで待つとするか。」
そう言ってデウスはまた座り込んだ。その隣にビングルが座り込む。
「デウス、お前にひとつ話がある。」
「なんだ?」
ビングルの改まった感じにデウスはいつものように返答を返す。
「お前、いつも誰と話してる。」
「…………」
ビングルの問いかけにデウスは黙り込んだ。
『バレちまったな。』
『多分、お前が俺に話しかけた時からバレてる。』
デウスが闇と話していると、ビングルがデウスに言った。
「また話してんだろ。誰だ。」
真剣に聞いてくるビングルにデウスはため息をついた。
「知ってもいい事なんてひとつもねぇぞ。」
「別に得しようとなんてしてねぇよ。ただ単純に気になったから問いかけてんだよ。」
一向に折れないビングルに闇がデウスに言った。
『いいんじゃねぇか?話しても。』
デウスはそれには回答せず、ビングルに話した。
「俺が話してる相手は″俺″だ。」
「″俺″?」
「あぁ。」
ビングルはそれ以上問うことは無かった。
デウスは胡座を搔いた。
「…お前も話してんだろ?その″銃″と。」
デウスの問いにビングルは笑みを浮かべた。
「…気づかれてたか。」
「気づかないわけないだろ。お前が気づけてんだからよ。」
「そうだな。」
ビングルは立ち上がった。
「ぼちぼちあいつらも起きるだろ。」
ビングルはそう言って皆の元へ行った。
『もう一人の″俺″、か。カッコイイこと言ってくれるじゃねぇか。』
『別にそういう意味で言ったわけじゃねぇよ。ただ、』
『ただ?』
『……ただ、あいつの顔が何処か恐れていたからだ。』
『ふぅん。取り敢えず準備はしろよ。そろそろ行くんだろ?』
『あぁ。そうだったな。』
デウスは立ち上がり、少しその場を離れた。
ビングルはデア達が起きたところに出発すると伝えた。
デアとサクラはまだ少し酔っていた。
デウスがその場に戻ってきた。
「全員起きたか?」
デウスのことを見た途端、デアが顔を溶かした。
「…デウスゥ。」
訂正、少しではなく、普通に酔っている。
「デア?酔いがまだ回ってんのか?」
「酔いぃ?何それぇ。」
「完全に酔ってんな。」
デウスは呆れたように溜息をつき、デアを抱き抱えた。
「何ィ?」
デアは酔いに勢いを乗せ、笑顔を浮かべながらデウスの頬を撫でる。
「酔いが強いのか?」
アルカナムがデウスに問いかける。デウスは軽く頷いた。
「体が、だるい、ですね。」
デアに対してサクラは激しく酔っているのではなく、程よく酔っている。
「大丈夫か?」
「あ、はい。少し休憩すれば、大丈夫だと思います。」
サクラはアルカナムの肩を借りる。
「二日酔いか?」
「多分、そうだと思います。」
アルカナムの肩を借りるサクラだが、高さの違いが少しサクラを苦しめる。
「はぁ、はぁ、はぁ、」
ずっと息が整わないサクラ。顔が赤く、今にも倒れそうだ。
「本当に二日酔い?」
「二日酔いだと、思います、けど…」
サクラはふらつき、地面に落ちた。
「おっと。」
アルカナムが何とか掴む。
「あ、ありがとうございます。」
サクラの感謝に何も言わず、アルカナムはサクラのデコに触れた。
「…熱い。」
「はぁ、はぁ、はぁ、」
どうやら二日酔いでは無く風邪であった。
「これで旅を続けるの難しそうだ。」
アルカナムはサクラをゆっくり地面に下ろした。
「す、すみません。私が風邪を引いたばっかりに。」
「気にすんな。仕方ないさ。」
だが、風邪の原因が何も分からない。
「体、熱い…」
サクラが右腕をデコに乗せる。
汗が凄く、見ているだけでこちらも熱くなるようだ。
「いや、待て。これ、本当に風邪か?」
デウスの言葉にアルカナムが少し体を動かし、デウスの方向にゆっくりと振り返った。
「どういうことだ?」
アルカナムの言葉にデウスは目を瞑った。
「風邪にしては症状が変だ。息切れはあっても、こんなに酷くない。」
「………………」
アルカナムは黙り込み、デウスの話を確り聞いていた。
「アルカナム、さん。」
「のわっ!」
アルカナムは後ろからサクラに倒された。アルカナムは倒れる際に体の向きを変え、仰向けで地面に倒れた。
アルカナムを乗馬のようにし、上に座ったサクラ。
息遣いが荒く、胸が大きく動く。
「サ、サクラ…?」
サクラは酔った時のように顔をとろけさせた。
「ねぇ、アルカナムさん?私、貴方が欲しい。」
「…は?」
「「えぇぇぇ!?」」
サクラの衝撃発言に全員が驚天動地。
敬語が無くなっている。サクラはサクラだが、何かが違う。
そして、アルカナムはある物を見つけた。
「…?なんだこれ。」
瓶が落ちていた。アルカナムはそれを拾い上げる。
「デ、デウス。なんだ、これ。」
アルカナムはその瓶をデウスに渡した。
デウスはそれを手に取り、瓶を見た。
貼り紙を剥がしたような白い跡が付いていた。
そして剥がし忘れのような場所にこう書いてあった。
″精力″と。
デウスはそれを見て言葉を失った。
「お、おい!デウス!何が書いてあったんだ!」
アルカナムが強く聞くと、デウスは瓶を下げ、アルカナムに告げた。
「精力…」
「…精力…だと…」
アルカナムは完全に終わったと思った。
すると、サクラがアルカナムの顔に顔を近づけた。
「アルカナムさん、ね?良いでしょ?」
アルカナムは目を瞑った。
その時、サクラが急にアルカナムに倒れ込んだ。
「な、なんだ?」
そこにはサクラの頭に手を置いているイラデゥエトスがいた。
「幻覚を、かけま、した。」
その言葉に全員が安堵。
イラデゥエトスを褒め讃えた。
その場は何とかイラデゥエトスによって沈められた。
その後、デウス達は行き先を決めた。
「次の国は″ベリアラスク國″だ。」
「ベリアラスク國?」
世界で三番目に巨大な國、ベリアラスク國。その規模からモンスターの標的になることもあるが、強い戦士によって守られている。
その國を目指す者も少なく無く、旅人なら必ず寄る國だ。
ビングルとグーラ、イラデゥエトスはベリアラスク國のことをあまり知らない。
「ここから北方向に七十キロ以上ある。」
かなり遠い。
「なんでそんな遠い所にわざわざ?」
ビングルが聞くと、デウスは普通に回答した。
「魔神族の本拠地がその方向にある。」
「本当か!」
フローレの驚きにデウスは頷く。
「何キロあるんだ?」
ヘルトがそう聞くと、デウスは少し考えた。
「そうだな。多分八千くらいか。」
普通の人間が歩きで移動すれば大体二千時間。日にちにして八十三から四日程かかる。
とてもでは無いが行こうとはしない。
「八千キロ。遠いな。」
しかし、デウス達は龍、あるいは闇で移動するため、長くても五十日程である。
「取り敢えずベリアラスク國に向かうぞ。」
デウスの言葉に満場一致。
因みにデアとサクラは両者とも眠っている。デアはデウスが、サクラはアルカナムが抱えている。
朝が来て時間は経ったが、移動することになった。
街民の人達の中には起きているものがいた。
その僅か十数名がデウス達の出発を見送った。
デウス達は街を出た。
「行くか。」
そう言ってデウスは背中から翼を生やした。
フローレ達の九つの罪龍はそれぞれ龍になり、主人を背中に乗せた。
「アルカナムは龍の姿にならないのか?」
「僕はいいよ。」
そう言ってアルカナムは少しだけ体を丸めた。すると、背中から龍の翼が生え、尾も生えた。
「龍化か?」
「半人半龍だ。」
アルカナムはそう言って空に飛び上がる。
「まぁ、同じだろ。」
デウスも飛び上がった。
「ここから何キロだっけ?」
イリビードはデウスに問いかけた。
「七十キロぐらいだ。」
デウスはそれに回答をした。
イリビードは納得し、翼をはためかせた。
「よし、行くか!」
デウスの掛け声に全員が反応し、北方向に七十キロぐらいの位置にあるベリアラスク國に向かった。
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「漸くここが分かったか。」
暗闇に一人、整った姿勢の男がいた。
「じゃあ、私が行くわ。」
その男の前に跪く女性。男は前を指さした。
「良かろう。お前に任せよう。」
その言葉に女性は笑みを浮かべた。
「逢瀬のままに。」
女性は男のことを王と言った。
男は腕を組んだ。
「私が奴らの首を持ってきましょう。」
「軽々しく言いよるわ。」
男は少し笑い、女性を見た。
「奴らの首を取ってくるのだ。紫骸架アルテミス。」
女性、いや、アルテミスは立ち上がり、男に一礼してから後ろに振り向いた。
そして歩き出すと、その体は原型をなくし、塵となって飛ばされた。
「さて、魔神王様に報告しなければな。」
男はまた笑った。大きな声で、大きな口で。




