第六十三話 迫り来る脅威
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デウス達は街に戻る。
住民招集がかかり、デウス達もそれに入った。
「たった今、敵は討ち取られた!」
老人の言葉に民衆は歓声を上げた。
「敵を討ち取ったのは、そちらの旅人達!」
老人はデウス達の方向を指さした。
民衆は一斉にデウス達を見た。
二秒間静寂が続き、突如民衆が沸いた。
「そちらの方々、こちらに!」
デウス達は一応前に出ることにした。
「この度は街の命を救って下さりありがとうございます。」
デウスはとりあえず一礼する。
「何かコメントはございますか?」
急なことでデウスは戸惑っていると、ジークフリートが回答した。
「強かったのう。」
「そうですか。では、街の勝利を祝って、宴だ!」
民衆は大声を上げて喜んだ。
「旅人様もどうぞ。」
「そうだな。」
デウスはそう言っていた。
そして、デウスはアルカナムを見た。
二人同時に頷いた。
この時、二人共悪寒を感じていた。
とりあえず何か来るまでは楽しむことにしたデウスとアルカナム。
「……んん。」
サクラが目を覚ました。
どうやらサクラは目を覚ます時必ず空気漏れのようなものが発生するようだ。
「起きたか。」
「おはよう、ございます。」
「おはよう。」
アルカナムはサクラを下ろした。
サクラは周囲を見て疑問に思い、アルカナムに問いかけた。
「アルカナムさん、これはどういう状況ですか?」
「勝ったことを祝って宴をするんだ。」
「宴、ですか。」
少し声のトーンを落とすサクラ。
「いい思い出がないのか。」
デウスの言葉にサクラは頷いた。
「今サクラがいる状況は前とは違う。サクラを貶すものなんて誰もいない。一緒に楽しもう。」
アルカナムの言葉にサクラは頷き、アルカナムの懐に顔をうずくめた。
デウスはその場の空気を少し壊すように割言った。
「さ、楽しもうぜ。あと何分楽しめるかは分からねぇがな。」
「そうだな。サクラ、行こう。」
アルカナムはサクラを抱き抱えた。
「あの、恥ずかしいです。」
「そうか?僕は好きだけどな、これ。」
「!!!」
その言葉にサクラは烈火の如く顔を真っ赤にし、アルカナムの胸に顔を当てた。
「アルカナムさんが、それで、いいなら…///」
やはりサクラは押しに弱いタイプだ。
デウスは手をポケットに入れてアルカナムの後を歩いた。
「アルカナムさんとサクラちゃんラブラブだね。」
歩くデウスの隣にデアが寄ってきた。
「そうだな。」
デウスは普通に歩き、デアは手を後ろで組んで歩く。
その時不意とデウスがデアに言った。
「お前もしてやろうか?」
少し揶揄うように言った。
デウスはデアのツッコミを待っていたが、デアは頬を赤らめ、
「……してくれるなら。」
と言ってきた。
デウスも一瞬照れ臭くなったが、手をポケットから出し、デアを抱き抱えた。
「お、重くない?」
「大丈夫だ。デアはどうだ?痛い所とかないか?」
「う、うん。大丈夫。」
女性を抱き抱えるデウスとアルカナム。抱き抱えられるデアとサクラ。微笑ましくも何処から子供と父親のようである。
「デウス、そろそろ準備をした方が良さそうだ。」
「分かってる。」
デウスとアルカナムは止まり、サクラとデアを下ろした。
「どうしたの?」
「どうしましたか?」
デアとサクラは同時に言う。
「お前ら二人は来るな。この街を守護しろ。」
デウスの真面目な顔にデアは対応する。
「何が来るの?」
デアの問いかけにアルカナムが回答する。
「屍界雅が来る。」
「屍界雅?」
魔神族の上位魔神よりも遥かに強い悪魔のこと。
今まで祖龍であるアルカナムも何度かあったことがあり、とてつもなく強いという。
「いいか。街の住民には伝えるな。ビングル達にだけ伝えろ。」
「どうしてですか?」
「住民が戦いに参加したらただの邪魔にしかならないからだ。」
サクラの疑問にデウスが的確ではないが回答をする。
「ビングル達と一緒にいて。」
アルカナムがそう言うと、サクラは頷いた。
「死なないでね。」
「死なないでください。」
デアとサクラの言葉に送られ、デウスとアルカナムは門外へと出た。
「来るぞ。」
アルカナムの言葉に臨場し、爆風が吹き荒れた。
デウスとアルカナムは腕で顔を隠した。
「これはこれは。魔神族と祖龍がお出ましとは。随分と気が利いてるみたいですね。」
敬語を使う男。背中にはロキやルサールカと同様に翼が生えていた。
「とんでもない気だな。」
「まさか君がお出ましとはね。イフリート。」
「私のこと覚えててくれたんですね。」
「忘れはしないよ。」
アルカナムは背中からクレスケンス・ルーナを取り出す。
「戦う気は伝わって来ます。」
「お前とてそうだろう。」
デウスがマルミアドワーズを抜き出す。
「そうですね。」
イフリートは武器を取り出した。
「その武器は、」
イフリートの取り出した武器は世界の炎が宿ると言われている槍。
「神気霊魂槍デースペーラーティオ。」
その刃は業火を表し、一振で街ひとつが燃えてしまうほど。
「私はサタン様の名によってここに来ました。ですので、速攻倒させてもらいます。」
イフリートは地面に足をつけた途端、姿を消した。
デウスは警戒し、後ろに重心移動した。
その時、不意に肩を叩かれた恐怖が脳裏を過ぎった。
「遅いですね。よくルサールカを倒せたものです。」
デウスは即座に足を地面に着いたが、遅く、首を飛ばされた。
「知ってますよ。貴方は燃えても死なないことぐらい。」
そう言ってイフリートはデウスの体を乱れ打ちし、仕舞いに吹き飛ばした。
「デウス!」
「何処を向いているんですか?」
アルカナムは何とか攻撃を防ぐ。
「おお。」
「馬鹿に、するなよ!」
アルカナムはデースペーラーティオを弾き、反撃する。
「やはり遅いですね。」
アルカナムはイフリートに腹を刺され、蹴り飛ばされた。
「うーん。おかしいですね。ロキ達も油断しすぎたのでしょうか。」
イフリートはデースペーラーティオを振り回した。
「とっとと終わらせましょう。サタン様にもご迷惑がかかってしまいますし。」
その時、イフリートの左腕が吹き飛ばされた。
イフリートは何が起こったのか一瞬理解が出来なかった。
風圧が通り過ぎたことにより、腕を吹き飛ばされたことに気づいた。
「おいおい。油断は禁物だぞ。」
目の光を無くしたデウスが右眼を開眼させてイフリートを睨みつける。
『早すぎる。全く見えなかった。』
イフリートはデウスの方向を向き、少し後ろに足を動かした。
デウスは不気味な笑みを浮かべてイフリートに言った。
「全く見えなかっただろ。生物の脳では確認出来ぬ領域が存在する。それが早すぎるか、それとも今脳にいる情報かだ。」
デウスは足を一歩前に出した。
「つまり、こういうことだ。」
突如としてデウスの声が間近くになり、傷口から蹴りを喰らい、吹き飛ばされた。
「ぐああっ!」
イフリートは地面を滑り、そこらに血をぶちまけた。
「もうその腕では自由に槍を振り回すことも出来ない。」
デウスはマルミアドワーズに付いた血を払い落とした。
「次は、僕のターンだ。」
イフリートは後ろから聞こえる声に反応し、即座に後ろに振り返った。
そこには傷が塞がったアルカナムが立ち上がっていた。
「君には、いや、お前には絶対的絶望を叩きつけてやるよ。」
三人称を変えた途端、声が異常なまでに変わり果てた。
イフリートは青ざめ、何歩か後ろに下がった。
「イフリートって言ったか?お前に一ついいことを教えてやろう。」
デウスはそう言ってマルミアドワーズを逆手で持ち、地面に突き刺した。
「マルミアドワーズはな、大地のオーラとも言われているんだ。」
その言葉は地面の崩壊を表す。
突如地面が崩れ去り、イフリートを飲み込んだ。
「うわああぁぁぁぁ……」
どんどん声は遠ざかっていく。
そしてその崩壊した地面を周りの地面が覆い潰した。
デウスはマルミアドワーズを引き抜いた。
「多分出てくることはもうないだろ。」
デウスはマルミアドワーズを鞘に入れ、地面に座り込んだ。
「はぁ。」
疲れたように息を漏らしたデウス。
「お疲れ。」
普通の声に戻ったアルカナムがデウスの隣に座り込んだ。
「意外と呆気ない気がするな。」
デウスはそう言って夜空を見上げる。
「それ程デウスが強かったってことだよ。」
「そうか?流石におかしい気がする。」
「今変な不安を出してどうする。サクラ達が待ってる。戻ろう。」
アルカナムの言葉にデウスは立ち上がった。
「そうだな。落ち落ち考えてたって退屈なだけだ。」
「そうだよ。パーッと楽しんでその不安も吹き飛ばせばいい。」
アルカナムはデウスを追うように立ち上がった。
「行くか。」
デウスが歩く後ろをアルカナムは歩く。
街に戻ると、デア達が待っていた。
「終わった?」
「あぁ。″多分″な。」
デアはその言葉に一安心した。
「残りの時間は楽しもう。」
アルカナムの言葉に全員が声を上げた。
その後デアが酒を飲み、ベロベロになってしまった。
サクラも一口飲んだが、酔う気配もなく、少しずつ飲んでいた。
………………
『くそ野郎共が。絶対、殺す!』
………………
その時、デウスはあることに気づき、立ち上がった。
背筋が凍るような悪寒と邪悪な気がデウスの肌を撫でる。
『相棒、これは少しやばい事になったぞ。』
闇の言葉にも反応出来ぬほどに恐怖を感じていた。
デウスは誰にも言わずにその場を抜け出し、門外へと出た。
その時だった。
地面が音を立て、世界を揺らした。
「ぐっ、やっぱりか。」
デウスは揺れに耐え、地面を見た。
地面を砕き、その正体が顕になった。
槍を手にした男。イフリートだ。
「絶対、絶対殺す!」
殺意を剥き出しにしながらイフリートはデウスを睨みつけた。
『明らかにさっきとは比べ物にならないほどの強さだ。気をつけるんだ相棒。』
『あぁ。分かってる。』
デウスはマルミアドワーズを取り出した。
「最終決戦と行こうぜ、イフリート!」
デウスはイフリートに飛びかかった。
「ズタボロにしてサタン様の手土産にして殺る!」
敬語さえも何処かへと無くしたイフリートは殺意の槍をデウスに振った。




