第六十二話 悪魔到来
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ギルド本部を出たデウス達は爆音によって不機嫌になる。
鐘を叩くような大きな音だった。
その音の後、街の住民達が一斉にギルド本部へと駆けつけてきた。それも武器を持って。
「何事でしょうか。」
疑問に思うサクラ達。ただ、デウスとアルカナムは目付きを変えていた。
世界の創造者という異名もつくほどの祖龍だ。情報門はかなりのものだ。
デウスの出身国は情報入室量が世界で五位を誇る。それに、デウスは昔から新聞を読むことを好んでいたため、大抵のニュースは分かる。
「デウス。」
「あぁ、分かってる。」
デウスとアルカナムは互いに頷き合い、デア達の方向を見た。
「全員戦闘準備だ。」
デウスの言葉に一同は疑問を呈した。
「今の鐘の音は敵襲来の合図だ。しかも今の大きさからするにかなりの強敵だぞ。」
デア達は戦う準備を始めた。
騒がしいギルド本部前。騒がしさを沈めるように大きな音がたった。
集合した人達全員が静寂を作る。
全員の見つめる方向に一人の老人がたっていた。
「今、こちらに強大な邪気が迫っておる!これは街の存亡をかけた戦いになるじゃろう!わしも命を呈してこの街を護る気じゃ!皆も全力で街護衛に呈して欲しい!」
老人の言葉に全員が歓声を上げた。
「デウス、君はサクラ達を守って欲しい。」
「今回来る敵は多分魔神族とは比にならないだろうな。」
デウスが笑みを浮かべて返答する。
「僕にも勝てるか分からないんだ。君が彼女達を守ってあげないと。」
「安心しろアルカナム。俺の仲間を信じろ。サクラはデアが守る。」
「君も戦う気なのか?」
「あぁ。全員そのつもりさ。」
「駄目だ。死んでしまうぞ。」
「……はぁ。」
デウスは一度黙り込み、ため息を零した。
「死ぬ訳ねぇだろ。」
「その根拠は何処から来てるんだ。」
「今まで俺達が経験してきた事さ。」
アルカナムは諦めてため息をついた。
「君は僕の力じゃ止められない。死なないでくれよ。サクラが悲しむ。」
「お前が死んだ方が悲しむと思うがな。」
「そうだね。」
まるでデウスとアルカナムの話が終わることを待っていたかのように老人が大きく息を吸った。
「皆!準備は良いな!」
街全体が声を荒らげる。
「門の前に集まれ!」
人々は走って門の前に行った。
デウス達はその波に揉まれながらついて行く。
門を飛び出し、全員五列になって横に並ぶ。
『相棒、準備は大丈夫か?』
『ふ。当たり前だろうが。』
地面が揺らぎ、世界が暗く曇る。
「今回は戦う気で来たわけじゃないんだけどなぁ。」
そう言いながら赤黒い翼を広げた何者かは手に武器を持っている。
「嘘が下手よロキ。」
その隣にもう一人翼を広げ、武器を持っている何者かが降りてきた。
戦斧を持った男の名前はロキ。もう一人の女は野太刀を持っていた。両者とも武器を片手に持ち、肩にかけていた。
「皆!突撃!」
老人の言葉と同時に一同は走り出した。
「雑魚は殲滅だな。」
そう言ってロキは指パッチンをした。
その直後、背後からモンスター達がわんさかと現れた。
その数約四十体。今いる人達の約二分の一だが、Sランク級、あるいはSGランク級の敵しかいない。
デウスはマルミアドワーズを抜き取った。
「殺るとしますか。」
全員が武器を取る。
「そうだな。」
ビングルが戦闘の合図を出すかのように狙撃銃をモンスターに発砲した。
弾丸は敵の脳天にクリーンヒットし、破裂した。
「破裂弾か。いいもん持ってんな。」
デウスがそう言うと、ビングルは狙撃銃を肩にかけた。
「特注品だ。数はそこまで多くないから期待すんなよ。」
そう言ってビングルはまた破裂弾を撃ち込んだ。
「よし、行くか。」
デウスとアルカナムが敵の親玉の元へと向かう。
それを邪魔するようにモンスターが割り込むが、デウスとアルカナムは関係なしに切り裂き、親玉の元へと向かう。
「私達とやる気なの?」
野太刀を持った女がデウスを見てそう言う。
「そうだ。」
女は野太刀を振った。
「貴方、名前は?」
「俺はデウスだ。お前こそ名前は?」
「私の名はルサールカ。悪魔よ。」
デウスはマルミアドワーズを地面に突き立てた。
その隣でアルカナムがロキの前に立つ。
「久しぶりですねアルカナム。」
「何しに来たロキ。」
どうやら二人は知り合いだったようだ。
「サタン様の名によって魔神族と祖龍を討伐せよとの事だったので。」
「ち、サタンか。サタンは何処だ。」
「そりゃあ言えませんよ。とりあえず貴方ぐらいなら今の俺でも勝てますよ。」
「それはどうかな。」
「いつまでその根気が続きますかね!」
ロキはアルカナムに戦斧を振り下ろした。
アルカナムはクレスケンス・ルーナで戦斧を防いだ。
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デウスはルサールカの野太刀をマルミアドワーズで防いだ。
「やるわね。」
「そうか?」
デウスは野太刀を弾き、ルサールカに攻撃を仕掛ける。
「遅いわよ。」
ルサールカは野太刀を素早くデウスに振り下ろした。
野太刀はデウスの首元まで行った。
あと一ミリというところでデウスの姿が消えた。
ルサールカは野太刀を地面に叩きつけ、周囲を見渡した。
「何処見てんだ。」
デウスの声がし、ルサールカは隣を見た。
ルサールカはしゃがみ、デウスの攻撃を避けた。
マルミアドワーズはルサールカの髪を少し切りつけた。
「危ないわね。」
「何安心仕切ってんだ。」
デウスの言葉に反応し、ルサールカは上を見た。
上からは龍鱗が振り下ろされていた。
ルサールカはギリギリ躱しきれず、頬に浅いが切り傷がつく。
「よくも私の顔に傷を付けたわね。」
「うるせぇよ。」
デウスはマルミアドワーズを上に掲げた。
「黒獰。」
マルミアドワーズは忽ち黒紫に変色した。
「闇の力っ!」
「はああ!」
ルサールカは振り下ろされたマルミアドワーズを躱し、野太刀を振った。
野太刀はデウスに当たらず、空気を切った。
「そら、ついてこい!」
デウスはルサールカに早い速度で攻撃をする。
ルサールカはそれを防ぐ。
「ただの人間が、闇の力を、」
「俺は人間じゃねぇぞ。」
デウスは更に加速する。
言葉を交わすことも出来ぬほどの速度だ。
ルサールカは防ぐので必死だった。
「悪魔なんだろ?もっと頑張れよ。」
デウスは速度を全く下げずに連撃し続ける。
「くっ、なら、」
ルサールカは隙をつき、マルミアドワーズを弾き、すぐさま距離を取った。
「伝太刀尽く銘国の如く、野太刀尽く來国になりけり。染魂野太刀『魄釵龕』!」
ルサールカは野太刀をデウスに突いた。
デウスはそれを躱し、右手で強くマルミアドワーズを握った。
「何っ!」
「紅き業火に焼かれ、蒼き尽獄に沈まれし連翹よ。神器の如く鏡沌せよ!『滅灼零霊の寶牙』!」
デウスはマルミアドワーズをルサールカの首目がけて振った。
ルサールカの首は半分裂け、燃え上がる。
烈火がルサールカの肉を燃やし、血を溶かす。
ルサールカは地面に倒れ込み、塵残らず燃やされた。
「終わったな。」
デウスはマルミアドワーズを鞘に収めた。
デウスはアルカナムの方向を見た。
どうやら苦戦しているようだ。
「祖龍と言えど悪魔には適わないか?」
「ぐ、ぐぐ、」
アルカナムは何とか耐える。
「もう終わりだ!」
ロキはクレスケンス・ルーナを弾いた。
「死ね!」
ロキはアルカナムの首に戦斧を振り下ろした。
アルカナムは体勢を運悪く崩し、反撃が出来ない。
ロキの戦斧には不再生の力が付与されている。首や心臓をやられれば確実に死んでしまう。
絶体絶命のピンチだった。
「死んだらサクラが悲しむんじゃ無かったか?」
アルカナムは声の方向を見た。
すると、デウスが笑っていた。
デウスの右手には覊凝で形成した鉤爪。
その鉤爪には炎が宿っていた。
デウスはロキの背中をその鉤爪で引き裂いた。
「ぐああ!」
ロキは背中から発火し、ルサールカと同様に塵残らず消えた。
デウスは覊凝を解除した。
「後は雑魚だけだな。」
「助かった。ありがとう。」
「気にすんな。」
デウスはそう言ってモンスター達を見た。
モンスターはたった今全て倒された。
「なんだ、終わったのか。」
デウスはデア達の元へ行く。
「そっちは終わった?」
「あぁ。ほぼ同時に。」
デウスが手を腰に当てる。
「相変わらず早いのう。」
ジークフリートがデウスにそう告げる。
「お前らもだよ。結局四十体お前らだけで倒したんだろ?」
「街の住民はSランク級のモンスターを倒したことがないらしくての。」
戦う気はあったが、結局的モンスターの討伐すらも出来なかった住民達。
「なんか前もあった気がするな。」
デウスは過去を遡った。
四大魔神のアスフォルトがやってきた時のモンスターを討伐したのはデア達だけだった。
街の住民は結局一体も倒せずに何人か殺された。
「あの時は犠牲者が出てたな。」
デウスの想像を読み取ってデアが回答する。
「そうだな。」
デウスは腕を組んで頷く。
とそこへサクラが向かってきた。
「無事だったかサクラ。」
アルカナムがサクラを抱き締める。
「アルカナムさんも無事で良かったです。」
デウスが居なければ無事では済まなかったが、その事は言わないでおいたデウスとアルカナム。
サクラの体は脱力仕切った。
アルカナムはサクラのことを抱き締めるのではなく、抱き抱えた。
「大丈夫か?」
「すみません。疲れたみたいです。少し、寝ます。」
「分かった。おやすみサクラ。」
「おやすみなさい、アルカナム、さん。」
サクラは眠りについた。
「サクラちゃんは疲れたら寝るみたいね。」
「脱力したらだいたい寝るな。」
デウス達の言葉にその場は笑いに溢れた。
その時サクラが薄ら笑った気がした。




