第五十八話 覊鏖の個性
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自由行動は良いものの、早くもすることが無くなったデウスとサクラ。
街の中心区にある噴水の近くの椅子に座り込んでいた。
「早くもすることが無くなりましたね。」
「あぁ。」
二人共上を見ていた。
まだまだ降りねぇぞと言わんばかりに太陽は大地を照らす。
『なぁ、なんか面白いことねぇか?』
『知るかよ。』
闇に速攻拒否された。
『君主よ。何か狩りに行くのはどうじゃ?』
『狩りか。』
修行を省いてモンスターと戦うのは久々だった。
『子奴の練習にもなるじゃろ。』
『…そうだな。』
デウスは立ち上がった。
「サクラ。」
「はい?」
「行くぞ。」
「えっと、どちらへ?」
そう疑問を呈しているサクラの手を引っ張り、ギルド本部へと向かった。
「え、え、な、なんですか?」
「腕試しってやつだ。」
「は、はぁ。」
取り敢えずデウスについて行くサクラ。
腕試しの意味もあまり理解はしていないが、デウスの後を追いかける。
着いた場所はギルド本部であった。
「ここってギルド本部ですよね。」
「あぁ。」
「もしかして腕試しって、」
「そのもしかしたらだ。」
デウスはサクラを見た。
サクラの体が少し強ばっていた。過去のトラウマがあるのだろう。
「行けないか?」
「え、っと、ちょっと、待って、下さい。」
先程より喋り方が辿々しい。やはり体全体が強ばっているのだろう。
恐怖はそう簡単に消えるものでは無い。
「サクラ、深呼吸だ。」
息遣いが少し荒いサクラにデウスは呼吸を整えさせた。
深呼吸をしていると、サクラの体が少し緩んだのをデウスは感じ取った。
「大丈夫か?」
「は、はい。少しですけど、落ち着きました。」
サクラは決意を決めたかのように目の色を変えた。
「大丈夫そうだな。ほい。」
「わっ!」
デウスはサクラにあるものを投げた。
サクラは慌ててそれを受け取る。
サクラの手にはかなりの重りが掛かった。
「言っただろ。やるよ。」
デウスが投げ飛ばしたのはエクスカリバーだった。
『別にいいだろ?エクスカリバー。』
『良い。お主がそれで良いのならな。』
エクスカリバーは快く許してくれた。
だが、エクスカリバーの声はまだサクラには届かない。
先に霊宝と終寳を解放した方が良いのだが、それはまた今度にでもやろうとデウスは思った。
「サクラは何ランクのモンスターを倒せるんだ?」
「そうですね。昔はBランクからAランクまで狩っていました。」
やはり昔や過去という言葉を使うと口篭るサクラ。
デウスはサクラの頭に手を置いた。
「安心しろ。今お前を嫌うものなんてない。」
その言葉に安堵の表情を浮かべたサクラ。
「はい。」
頬を少しながら赤らめる。
デウスはサクラを見る。
「今日はSランクのモンスターに挑むぞ。」
「勝てるとは思えないのですが、」
「大丈夫だ。ヤバくなったら俺を頼れ。それか俺が止めに入る。」
サクラは頷く。
「行けるか?」
「少し待ってください。」
サクラは一度深呼吸した。
そして笑顔を浮かべた。
「行きましょう。」
デウスとサクラはギルド本部に入って行った。
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戦闘エリアは末綻境地。昔の街のようだが、今ではすっかり廃回都市になっている。
「こんな所にモンスターが居るんですか?」
「あぁ。ここはSランクモンスターの出現率が高い。多分すぐに見つか…。」
あることに気づき、デウスは言葉を止めた。
サクラが喋ろうとした。デウスはそれを手で防ぐ。
デウスは腰を下ろした。それにつられてサクラも腰を落とす。
「グュルルルル。」
通常の数倍はあるウルフが現れた。
名前はフェリアルウルフ。Sランクのモンスター。
だが、デウス達の前に現れたのは傷だらけだった。
その傷口から血が垂れていた。戦った後だろうか。
「怪我、してますね。」
サクラが小声でそう言った直後、大きな物音と共に地響きが鳴り響いた。
「うおっ!」
「きゃっ!」
デウスとサクラは同時に声を上げて地面に手をついた。
フェリアルウルフの方向を見ると、何者かから攻撃を受けていた。
「狩猟者か?」
だが、狩猟者にしては威力が弱い。
Sランクモンスターをたった数発で倒せるものでなければ狩猟者にはなれない。
ということは答えはひとつ。
「いや、あれは冒険者か。」
攻撃方法を見ると、集団でのギルドだと思われる。
フェリアルウルフはとうとう地面に倒れてしまった。
その後、歓声の声が辛うじて聞こえた。
デウスは立ち上がる。
「サクラ、場所を変えるぞ。」
「どうしてですか?」
「別の冒険者だ。獲物を取られる。」
冒険者と冒険者が同じ場所にいれば獲物を取られる可能性が非常に高い。
「分かりました。」
サクラはそう言って立ち上がった。
「場所変更は少しめんどくさいな。」
そう言いながらデウスは動き始めた。
それについて行くサクラ。
しかし、デウスはあることに気づいてサクラを抱き寄せた。
「ど、どうしたんですか?」
「少し静かに。」
デウスは耳を澄ました。
そしてデウスはサクラを抱き抱え、後ろに飛んだ。
すると、先程までデウスが居た場所に小さな爆発が起きた。
「い、今のは。」
サクラが驚いた表情で周囲を見渡していると。
「素晴らしい。あれを避けるとは。」
前方から声が聞こえた。
そこには男性と女性のグループが居た。
「顔を出す前に敵意剥き出しとはな。」
「特にそういう訳では無いんだ。」
そう言いながらグループの全員が武器を手に取っていた。
「サクラ、今は俺から離れるな。」
「は、はい。分かりました。」
デウスは武器を取る気もなかった。
「で?何を望む。場合によっては戦うぞ。」
「簡単なことさ。その女を貰おうか。」
「それは無理な願いだな。」
男の要望に即却下したデウス。
「なら仕方ない。強制的にでも貰っていく。」
「俺の仲間なんだ。やるわきゃねぇだろ。」
男は全員に命令を飛ばした。
全員が武器を持っていた。
「その前に、魔法使いは邪魔だな。」
デウスは魔法使いを強く睨み付けた。
魔法使いは忽ち気を失い、地面に倒れ込んでしまった。
「何をした。」
男の問いかけには見向きもせず、デウスはサクラを見た。
「良いかサクラ。お前もこの力を身につけれる。確り見とけ。」
「はい。」
サクラはデウスから少し距離を取った。
「敵の力も推し量れない貴様らに仲間をやる気はない。もとよりそのつもりだがな。」
デウスは歩き出した。
男達は少し下がる。
「おいおい。まさかあれ如きでビビってる訳じゃあねぇよな。」
デウスは地面に足を強く叩きつけた。
音が響き鳴り、地面が抉れた。
「俺の仲間を欲しいってんならこれ如きで臆してんじゃねぇぞ!」
デウスの気力に到底かないっこないことに漸く気づいた男は腰を抜かし、地面に崩れ落ちた。
「お前らは邪魔だ。」
デウスはそう言って手をポケットに入れた。
「腰を抜かしたお前にはこいつで十分だ。」
そう言った途端、デウスの後ろから大きな影が写った。
「ガアアアアアア!」
Sランクモンスターの爆龍天が男達を睨み付けていた。
「喰いちぎれ。」
そうデウスが言うと、爆龍天は涎を垂らし、男達を貪り始めた。
男達は悲鳴を上げながら喰い散らかされる。
デウスはサクラの方を見た。
サクラは寛いでいた。
目の前で人々がモンスターに食い散らかされてるという状態にも関わらず。
一通り食べ終えた爆龍天は翼を大きく広げて飛び立って行った。
「ありがとな!」
デウスはそう言って爆龍天に手を振る。
デウスはサクラに近づいた。
「終わりましたか?」
「あぁ。良く寛げていたな。」
デウスが問いかけると、サクラはコクリと頷いた。
「あの人達を昔の人達と重ねたら何故か大丈夫でした。」
サイコパスではあるものの、冷静さがサイコパスを少しオブラートに包む。
「それ程憎いんだな。」
「はい。」
心が楽になったと言わんばかりにサクラは立ち上がる。
「今先程のはなんですか?」
「あれは覊鏖の力ってやつだ。」
「覊鏖、ですか。」
サクラは考える。
今まで生きてきた中で初めて聞く用語であったため、少し理解しにくかった。
「お前も身につけることが出来る。」
「そうなんですか?」
「あぁ。お前には過酷な過去がある。それが覊鏖の力を解放する一番の鍵なんだ。」
「過酷な過去が?」
「そうだ。」
デウスはサクラの頭に手を置いた。
「お前には素質がある。」
サクラはデウスの顔を見て問いた。
「先程デウス様がモンスターを操っていたもの。あれはなんですか?」
「あれは覊鏖の力だ。一人一人によって少し変わってくるんだ。」
覊鏖の力は人によって個性が別れる。
例えば四大魔神のソロモンの覊鏖。ソロモンの覊鏖は敵の潜在能力の限界までも見通すことが出来る。そしてもう一つ、世界の理を見通すことが出来る。
要するにソロモンは相手の行動を大体読むことが出来る。
「俺の覊鏖はモンスターとの意思疎通が出来る。そして敵の動きを奪い取ることが出来る。」
敵の動きを奪う。敵がもし武器を右斜め上から振り下ろしてきたとすれば、その動きを即座に奪い、それから予測を立て、全ての攻撃、あるいはちょっとした行動を自分の支柱に収め、掌握することが出来る。
因みに弱点も存在している。
「サクラも習得出来る。」
「出来るでしょうか。」
心配するサクラにデウスは微笑んだ。
「大丈夫だ。お前ならできる。」
デウスの言葉に元気づけてもらい、サクラは強く頷いた。
「それじゃあ、モンスター探すぞ。」
「はい!」
サクラはデウスについて行った。




