第五十七話 自由行動
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デウスは妖精族を連れてデア達の元に戻った。
外で待っててくれと言われたデア達は外で待っていた。
「待たせたな。」
デウスの言葉に全員が気づき、デウスを見た。
デウスの隣の妖精族を見てフローレが呆れた溜息を落とす。
「裏で仲間を手に入れるとは。」
デウスは笑みを浮かべる。
「良いじゃねぇか。別に。」
デア達が妖精族に集る。
デアの身長よりも低い。
「お名前は?」
デアが聞くと、妖精族は口篭り、首を横に振った。
どうやら名前が無いようだ。
「どうするの?」
デアがデウスを見て問いかけると、デウスは顎に手を当てた。
「そうだな。名前が無いのは不便だろし。」
唸りながら悩んでいるデウスが思い付いたように指を鳴らした。
「よし。今日からお前の名前はサクラだ。」
「どうしてサクラ?」
デアの問いにデウスは答える。
「木に和種の桜があるだろ?」
デアは頷く。
「桜みたいな髪の色と可憐な容姿だからだ。」
その言葉にデアは納得した。
「そうね。それがいいわね。」
デアは手を出した。
「これからよろしくね。サクラちゃん。」
デアの手を取り、サクラはコクリと頷いた。
その後サクラは全員と握手を交わした。
「で、本題に入る。サクラ、お前の過去を聞いてもいいか?」
デウスの言葉にサクラは下を向き、引き気味になった。
「言いたくなかったら言わなくてもいい。お前が決めろ。」
その言葉を聞いてサクラは体の力を抜いた。
「私は普通の家庭に生まれました。最初は私にも名前がありました。シラリアという名前がありました。普通に生活して、狩りなども覚えました。でも、狩りの仕方が周りの皆と違ったんです。」
「と、言うと?」
「皆は弓を使って狩猟しますが、私は弓を使えず、剣を使って狩猟していました。」
妖精族は弓の守護種とも呼ばれるほど弓の扱いに長けている。
弓以外の武器を使うとなれば種族から嫌われてしまう。
「私はその後虐められました。お母さんからの虐待も受けました。私は頑張って耐えました。皆からのいじめにも屈せずに笑って過ごしていました。でも、ある日肩を弓で射抜かれました。私は緊急で搬送されて何とか出血を止めて生きました。その矢で私の肩を射抜いた子は怒られました。これをされた時に私は本気で死にたいと思いました。」
話していく次第にサクラの目からは涙が零れてきた。
「お見舞いに来てくれたお母さんは私の荷物を持ってきました。どうして荷物を持ってきたのと私は問いかけました。したらお母さんはお前は要らないから見えないところで死ねと私に告げました。その言葉の後に三人の男性が入ってきました。私はその男性達に連れられるままでした。お母さんの言葉が頭の中でずっと繰り返し流されていました。生きることがとても嫌になりました。私は生まれてきたことを後悔しました。いつの間にか知らない場所に連れてこられていました。錠を首と腕と足に付けられて身動きが取りにくかったです。どうにか死のうとしましたが、錠では死ぬことも出来ず、ずっと一人冷たい石の床に座っていました。でもある日私にも転機が訪れました。男性一人が私にこう告げました。お前の主人をこれから決めると。私は殺してくれる人がやっと見つかると思ってついて行きました。そこで貴方様と出会いました。私はもう一度生きたいと思いました。貴方様が願うなら。」
何処かデアの過去に似ている。
弓を使わない妖精族は聞いたことがない。
「そうか。サクラは剣を使えるのか?」
デウスの問いにサクラは頷いた。
「俺の仲間になるなら武器が必要だ。お前が剣使いで良かったよ。」
デウスはサクラに近づき、あるものを渡した。
「これは、なんですか?」
「神が与えし聖なる剣。エクスカリバーだ。」
デウスはサクラにエクスカリバーを渡した。
「良いんですか?こんな私が貰っても。」
「気にするな。俺は一緒に戦ってくれるならそれでいいんだ。それに、ここにいるほとんど全員がお前と同じ苦悩を持っている。」
その言葉にサクラが全員を見た。
全員軽く頷くものもいれば軽いため息をつく者もいる。
デウスは流れるサクラの涙を親指で拭き取った。
「過去なんて気にすんな。自由に行こうぜ自由に。俺達皆自由に生きるために生まれてきたんだからな。」
サクラはまた涙を流し、拭いもせずにデウスに飛びついた。
「おっと。」
デウスはサクラを抱き、地面に尻餅を着いた。
泣きじゃくるサクラの背中をデウスは軽く叩く。
「よろしくな。サクラ。」
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漸く泣き止んだサクラを起こし、立ち上がるデウス。
「どうして名前ないって言ったんだ?」
デウスが問いかけると、サクラはただ一言言った。
「醜いんです。」
デウスはその意味を理解し、それ以上問うことは無かった。
「よし。これから三日間ここで住むことになったが、どこか行きたい場所はあるか?」
デウスの問いかけに全員が頷いた。
「そうか。ならここからは別行動だ。今の時刻は午前十一時前だ。午後五時にはギルド本部に集合だ。良いな?」
全員頷き、それぞれ別れた。
その場にはデウスとサクラだけが残った。
「ま、こうなるはな。」
デウスはサクラを見た。
ボロボロの服を見てデウスがいいことを思い付いた。
「サクラ、服買いに行くぞ。」
「服、ですか?」
「あぁ。そんなボロボロだと不便だろ。」
デウスが腕を組む。
「それでは、買いに行きましょう。」
サクラの賛成にデウスが口角を上げる。
「よし、行くぞ。」
「はい。」
デウスの歩く後ろにサクラがいる。
道は人混みが激しく、はぐれてしまいそうだった。
「よっと。」
「え、」
デウスはサクラを抱き抱えた。
「なん、ですか?」
「これならはぐれないだろ?」
「あ、はい、えと、そうです、ね。」
サクラは少し頬を赤らめた。
人混みを進み、ひとつの店に着いた。
「着いたぞ。」
デウスがそう言ってサクラを下ろす。サクラは地面に足をつけ、手で顔を覆っていた。
「何してる。お前の服を決めるぞ。」
「は、はい…///」
恥ずかしくて顔がとても出せない。サクラの顔は熱く、赤い。
「手を外せ。決めるのはお前だぞ?」
サクラはそっと手を除けた。
目の先に広がっていたのは女性物の服だった。
「凄い。」
サクラが見取れている時、デウスはあることに気づいた。
「なぁサクラ。エクスカリバー何処やった?」
サクラに渡したエクスカリバーが見当たらない。
「あっ!」
どうやら置いてきてしまったらしい。
「すみません。」
「気にするな。」
デウスはそう言って店の入口に向かって開いた手を向けた。
そして、その手を握り込んだ。
すると、握り込んだ手の中にはエクスカリバーが出現した。
「今何をしたんですか?」
「ちょっとしたことだ。」
デウスはそう言ってエクスカリバーを腰に携えた。
「これを渡すのはお前の服が決まってからだな。」
サクラが何個か服を選び、試着室へと入って行った。
少し経ち、試着室のカーテンが開いた。
「これ、どうですかね。」
長いワンピースだが、色も派手ではない。
サクラ色の髪に似合っている。
「いいんじゃないか?」
「そうですか。」
そう言ってサクラはカーテンを閉めた。
それを二回ほど繰り返し、服が決まった。
「これにします。」
「分かった。」
下がスキニー。上が黒の半袖服。
値段は銀貨十二枚。そこまで高くない。
それを着たまま買った。
サクラに似合っている。
「これで服はOKだな。飯食いに行くか?」
「御飯ですか。久々に食べます。」
「久々?」
「売り物として売られるまで御飯を食べていなかったので。」
デウスも食べ物はあまり食べないで済むタイプだが、話の限り売り物になるまで大体二三週間はあった。その間飯抜きは少しデウスでもキツい。
「取り敢えず行こう。」
「はい。あと、抱っこは辞めてください。」
「何故だ?」
「恥ずかしいです。」
デウスは他の作を考え、サクラの手を取った。
「離すなよ。」
サクラの手を引くデウス。
傍から見れば恋人である。デウスはそんなことも気にせずにサクラの手を取って進む。いわゆる鈍感というやつである。
サクラは先ほどよりでは無いが、頬を赤らめた。
人混みに流されるように着いたのは食べ物の匂いが香る店だった。
「ここで済ませよう。」
デウスはサクラにそう言う。
サクラはコクリと頷き、店に入った。
中々年季の入った店だ。だが、何処か新しい感じがした。
「えっと、デウス様。何処に座りますか?」
「そうだな。ん?なんで様付け?」
「主人ですので。」
「あんまり敬称を付けられるのは慣れてないんだがな。」
そう言いながらデウスは空いている席を見つけた。
そこに座り、少し脱力する。
「ふぅ。」
「デウス様は何か食べるのですか?」
「今はいいかな。腹減ってる訳でもないし。」
デウスは周囲を見渡した。
席にはほとんどの確率で人が座っていた。
空いている席なんてほとんどない。
気づくと、いつの間にかサクラが食べ物を頼んでいた。
「何を頼んだんだ?」
「これです。」
品書きを見せてくるサクラは頼んだものを指さしていた。
海王を使った料理だそうだ。肉類で、見た目も美味しそうだった。
値段は銀貨五枚と安めに設定されていた。
『海王は倒すのに時間がかかる敵。それを使用してここまで安いとなると手練がいるのか。』
そう心の中で思っていると、早速その飯がやってきた。
サクラはそれを美味しそうに食べる。
「確り食えよ。」
デウスがそう言うと、サクラは軽く頷いた。
サクラが御飯を食べていると、ドアが勢いよく開く音が店に響いた。
店全体がドアの方向を見た。デウスとサクラは全く見向きもせずにいた。
ドアに居たのは数名の男グループだった。
有名な不良集団で、デウスとサクラ以外の人達は出来るだけ目を合わせないようにしていた。
その集団がデウス達のいる席まで歩み寄った。
「おい。」
男に話しかけられたデウスは漸く男の方向を向いた。
「なんだ?」
「そこ邪魔だ。」
「知るかよ。今俺の連れが飯を三週間ぶりくらいに飯を食ってんだよ。邪魔すんじゃねぇ。」
その言葉に男は激怒した。
「あ?うっせぇな糞が!邪魔なのはてめぇらだろうが!」
男は足で机を倒した。
男は笑っていた。その他の男達も笑っていた。
しかし、目の前の景色を見て笑うのをやめた。
「飯を無駄にするんじゃねぇぞ。」
熱い皿を片手で支えていたデウス。それを気にせずに皿の上の食べ物を間食したサクラ。
「ちっ!殺してやる!」
男は腰から片手剣を引き抜き、デウスに振り下ろした。
しかし、その剣はデウスに当たらず武器に当たった。
「させません。」
デウスの腰からエクスカリバーを引き抜いて攻撃を防いだサクラ。
その目付きはまるで覊繃を使う時のようだった。
「くそ!このアマ!」
男は片手剣を上に上げ、勢いよく振り下ろした。
サクラが防ごうとすると、デウスがサクラの肩を叩いた。
サクラは攻撃を防がず、立っていた。
その片手剣の剣身はデウスの手によってとめられた。
「なに!?」
「うっせぇんだよ。取り敢えず黙ってろ。」
デウスは鉄を壊し、男の腹を蹴飛ばした。
男は後方に吹き飛び、壁にヒビをつけて壁に直撃した。
「くそ!覚えてろ!」
男達はもう一人の男を連れて離れていった。
「なんかビングルの時を思い出すな。」
デウスはそう言って机を立て、皿を置き、銀貨五枚を置いた。
「失礼した。」
デウスとサクラは店を出た。
店の中は静寂が唸った。




