第五十一話 敵襲来
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大きな音とともに鳥達が空に飛び立った。
Sランクモンスターであるコモドドラゴンが血を垂らして死んでいた。
「やっぱり弱いな。」
エクスカリバーとマルミアドワーズを握るデウスがそう口にする。
『君主よ。あれから二日が経過しているが一向に強くなっているとは言い難い。』
『分かってる。でもな、敵が弱過ぎるんだよ。』
『お主の力が強過ぎると我は思うぞ?』
エクスカリバーとマルミアドワーズに馬鹿にさせるデウス。
「はぁあ。強い敵居ねぇかなぁ。」
デウスの言葉は現実となった。
街の方から大きな鐘の音が鳴り響いた。
「なんだ?」
デウスはエクスカリバーとマルミアドワーズを鞘に収め、龍鱗を背に収めて街に走った。
街に走っている途中であるものを見た。
「あれは、魔神族。」
デウスは少し足を速めた。
翼を生やし、街に乗り込むと、武器を持った女戦士達が魔神族を睨んでいた。
「女しか居ねぇのか。どうしてここに俺を送り付けたのか、分かり兼ねるなぁ。」
魔神族は地面に足を付けた。
「俺を楽しませれる者が居ねぇならいい。全員墓場はここだ。」
その言葉に女戦士は口を開いた。
「元から我々の死に場所はここだ!それに、殺られるだけじゃない!」
その言葉に魔神族は大きな声で笑った。
「威勢は達者なようだな。まぁいい。なら見せてやろう。これが俺の強さだ。」
魔神族は武器を取り出した。
「あれはトリシューラ。」
三叉の神が操る槍。その一撃は一億という数の敵を穿つと言われている。
「我々の強さ、見せつけてやりましょう!」
その声に釣られ、女戦士達は次々と武器を掲げた。
「なんて愚かな。トリシューラを見て少しは引くと思ったが、そうでも無いらしいな。」
魔神族はトリシューラを華麗に回し、女戦士達に刃を向ける。
「行くぞー!」
先頭にいる女戦士がそう言うと、周りの者達も声を上げ、魔神族に向かった。
「待て!」
デウスは大声を出したが、その声は女戦士には届かず、女戦士達は魔神族に向かうばかり。
「別に全員殺してもいいが、絶望の顔が見てぇから今殺すのは数名だけだ。」
そう言って魔神族はトリシューラで前方の一列に突き立て、穿った。
一列の女戦士達は腹に風穴を開け、倒れ込んだ。
それを見た女戦士達は次々と足を止めた。
勝てないと知ったのだ。
「無力だな。」
魔神族はトリシューラを片手で振り回した。
魔神族は一人の女戦士の前に立ち、トリシューラを後ろに引いた。
「もっともっと見せてくれよ。」
笑みを浮かべ、魔神族は女戦士にトリシューラを動かした。
その攻撃は女戦士に当たることなく、金属音とともに止められた。
「もっと手加減したらどうだ。ベイリン。」
「俺を名前知ってるってことはただの人間じゃねぇな。」
金属が擦れる音が鳴り響く。
デウスはエクスカリバーでトリシューラを防ぐ。
「その武器はエクスカリバーか。てことは災禍を倒したのか。」
ベイリンは少し力を入れた。
デウスはそれを弾き、ベイリンを後ろに飛ばす。
ベイリンは何とか耐え、体勢を立て直す。
「いいねぇ。その強さ。強い奴を絶望のどん底に落とすのが俺は一番好きなんだ。」
おぞましい顔で舌を出した。
「お前に俺は殺せねぇよ。四大魔神と並ぶ実力を持つベイリン・ゲイリン。」
そう言ってデウスは龍鱗を口に銜え、マルミアドワーズを抜き出した。
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ベイリンはトリシューラを一回転させた。
「戦う気満々だな。」
「丁度退屈していたところだったんだ。いい修行相手を見つけた。」
デウスとベイリンは同時に武器を振った。
互いの武器が衝突し合い、爆風が吹き荒れた。
「なかなかやるんだな。」
ベイリンが笑ってそう答える。
「お前もな。」
デウスはトリシューラを弾き、ベイリンを蹴飛ばした。
ベイリンは足を引き摺り、後飛を防いだ。
「なかなか、いい蹴りだ。」
ベイリンは体勢を整えた。
デウスはマルミアドワーズとエクスカリバーを鞘に収めた。
『どうして戻した?』
エクスカリバーの問いかけにデウスは口に銜えていた龍鱗を取り、答えた。
『まぁ見てろって。少し本気を出すだけだ。』
デウスは龍鱗片手に獲物を狩る虎のように構えた。
「無駄なことだ。その刀壊してやるよ。」
ベイリンはトリシューラをデウスに向けた。
静寂が世界を支配し、風が静寂を急かす。
龍鱗が音を立てた途端、デウスとベイリンは即座に動き出した。
「神の一撃。身技をここに。『三叉斬岳』!」
「一刀流。」
ベイリンはデウスに飛び込んだ。
デウスはそのベイリンを迎え撃った。
空気の切れる音が聞こえた。斬撃が音を残す。
デウスは構えを変えていなかった。
ベイリンは突きをしたように止まっている。
「佰火繚蘭。」
ベイリンの首元に赤い炎が灯る。
その炎は広がり、ベイリンの体を包んだ。
「アスフォルトより弱いんじゃねぇか?」
「ふ。好きに言っとけ。俺は負けた。」
そう言ったベイリンは地面にトリシューラを突き刺した。
「戒めとしてこれをここに残す。」
ベイリンは燃えながら上を見る。
「じゃあな。お前と会えて、成長出来た気がする。」
デウスの言葉にベイリンは呆れたようにため息をついた。
「気がするじゃ、いけねぇんだぜ。」
その言葉を最後にベイリンは灰となって空へと飛ばされて行った。
デウスは龍鱗を鞘にゆっくり収めた。
閉じる鉄の音が鳴り、後ろからは女戦士達の歓声が上がった。
デウスは一人の女戦士に背中を叩かれた。
「痛てぇよ。」
「やるじゃないかあんた。罪人に命を救われるとは思わなかったよ。」
この歓声の後、死亡してしまった女戦士達の葬式が始まった。
デウスはその場には参加せず、街を出ていた。
「さて、次は何処に行こうか。」
街を淡々とすれば強い敵と渡り合えることを改めて実感したデウスは近くの街に移動することにした。
『闇、ここから一番近い街は何処だ?』
『ここから十時の方向にアグロル国がある。そこは獣人族が住んでいる。』
獣人族はあまりいない種族。珍しいと言えば珍しい。
種族には位が存在する。その中でも上位に君臨する獣人族。戦闘力で言えばデスペランドーマよりも上の可能性がある。
「魔神族じゃねぇけど強い可能性はある。気を引き締めねぇとな。」
デウスは背中から悪魔の翼を生み出した。とても綺麗な黒紫色をしている。
見た目も随分整った。闇の扱いにも慣れてきた頃だ。
「行くか。」
デウスが飛び立とうとした時だった。
「待って!」
後ろの声にデウスは動きを止めた。
「なんだ。ウリエルか。葬式はいいのか?」
「もう終わってみんな宴の準備を始めている。」
ウリエルは走ってきたのか、息を切らしていた。
大きく息を吸い、ウリエルはデウスに言った。
「宴には参加しなくていいの?」
喋り方が変わったことにデウスは少し目を見開いたが、デウスはため息をついた。
「俺にはそんなことしてる時間がねぇんだ。」
「そう…」
少し残念そうな顔のウリエルにデウスは微笑み掛けた。
「なら、また仲間と一緒にここに来る。その時にパーンと祝ってくれよ。」
その言葉にウリエルは嬉しそうに笑みを浮かべた。
「分かったわ。」
デウスは空を見上げた。
『また来れる保証なんてあんのか?』
闇の言葉にデウスは苦笑いを浮かべた。
『ま、ねぇっちゃねぇけど。きっと来れる。』
闇はそれ以上何も言わなかった。
「じゃあな。四大天使として、この街を守れよ。」
デウスはそう言って空に飛び立った。
バサバサと音を立て、風を巻いて。
随分日が傾いてきた。後二時間もすれば夕方になるだろう。その前にアグロル国に着きたいとデウスは考えている。
距離にして約五百キロ。早くても一時間を過ぎる。
陸と面していない孤島ともなれば陸からはかなり距離が離れているだろう。
下を見渡しても海。海。海。
見た感じ海しか見当たらない。他の孤島も確認出来ない。
デウスはため息混じりに言葉を漏らした。
「急ぐか。」
デウスは飛ぶスピードを上げた。
風に靡く短い髪と武器が音を出す。
『君主よ。気をつけよ。近くから何者かが迫ってきておる。』
マルミアドワーズの言葉にデウスは周囲を見渡した。
そして左側に飛ぶ物を確認出来た。
「あれは、モンスターか?」
距離が遠くてよく見えない。
しかし、確実にその物はこちらに接近してきていることは分かる。
「近づいてみるか。」
デウスはゆっくりと左に移動した。
そして、見えてきたのは一体のモンスターだった。
「龍?」
確かに龍の見た目だが、何か違う気がして気にかかる。
その時だった。
「リュウアアアアア!」
龍は轟を上げ、デウスに襲いかかった。
「のわっ!」
デウスは目の前を通り過ぎた龍に驚き、後ろに仰け反った。
「くそ。なんだってんだ。」
その龍はデウスの周りを飛び回っている。
『我の力を使え。』
エクスカリバーの言葉に自然的に体が動き、デウスはエクスカリバーを抜き出した。
「落としてやる!」
デウスはエクスカリバーを後ろに回した。
「一刀流。暦激!」
エクスカリバーは龍にヒットし、龍は無残に海へと落ちていった。
それを見ていたデウスはあるものを見て驚愕した。
「なんだよ、あれ。」
何者かが龍を捕食していた。それもかなりの巨体。
その者は海を飛び出し、デウスに襲いかかった。




