第四十八話 街の長四大天使ウリエル
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デウスはマルミアドワーズを鞘に収めた。
「女?」
デウスは女性を見た。
狩猟に最適な格好をしている女性。手には弓、腰には矢入れに矢の束が入っていた。
「貴様、何者だ!」
女性は弓に矢を引いた。
デウスは慌てて両手を上にあげた。
「待て待て!俺は悪いやつじゃない!」
少し間が開き、信じてもらえたのか。女性は矢を矢入れに戻した。
デウスは安堵のため息をつき、手を下ろした。
「えーっと。とりあえず、ここは?」
「なんだ?迷子者か?ここはリグド島だ。」
「リグド島?」
リグド島。大地は孤立した小さな孤島。街をひとつ作っても少し地が空く程だろうか。
「リグド島を知らないのか?」
「あぁ。なんせ海を渡ったことが無いからな。」
デウスの発言に一度女性は口をポカリとあけた。
「なら、どうやってここに来た。」
女性の問いかけにデウスは躊躇無く答えた。
「飛ばされたんだよ。モルドレッドに。」
「なにっ!モルドレッド!?」
女性はまた矢を引いた。
「貴様、魔神族のスパイか!」
デウスは頭を搔いた。
「違う。それに、もしそうだとしたら自ら明かす訳ないだろ。」
「そうだな。」
女性は矢を閉まった。
「とりあえず、早くこの島から抜け出さねぇとな。」
デウスは空を見た。
「うーん。空を飛んでもいいけど、そしたら警戒されるしな。」
空を向きながらブツブツと喋るデウスを見て女性は首を傾げた。
「何をブツブツ言っているのだ?」
「んあ?あぁ。気にするな。独り言だ。」
そう言ってデウスは体を前に反る。
女性は何をしでかすかと見ていると、デウスの背中から闇が出現した。
「なっ!」
闇を見て女性は驚きを隠せずにいた。
デウスは空に飛ぼうとした。女性はそれを止めた。
「待て!」
デウスは動きを止め、振り返る。
「なんだ?この闇のことなら触れなくていいぞ。」
「貴様、街の長様と同じ力を持っているのか。」
それを聞いた途端、デウスは闇を抑えた。
「長と、同じ?」
闇を操ることの出来るものは魔神王と天神族の二族だけのはずだ。
「おい。その長に合わせてくれ。」
「なっ。それは出来ない。」
女性はそう言ってデウスを睨んだ。
「何故だ。」
「長様に男などを近づけれない。」
デウスはため息をついた。
「今はそんなことを言っている暇はない。」
そう言ってデウスは闇を出し、空を飛んだ。
「あ!待て!」
デウスはそのまま街の方へと飛んで行った。
「くそっ。これだから男は!」
女性も走って追いかけた。
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デウスは街の前で地面に降り立った。
相変わらず門には門番がいる。当たり前ではある。
「貴様、何奴。」
だが、いつもとは違う。門番は通常男性がするが、ここでは女性が門番をしていた。
「珍しい街だな。」
デウスがそう呟くと、門番は槍をデウスの首元に突き立てた。
「何者だ。」
デウスは渋々答えた。
「俺はデウス・ペンドラゴンだ。訳あって中に入りたい。」
「デウス・ペンドラゴン?聞いたことの無い名前だ。要件はなんだ。話せ。」
少し鬱陶しいと感じたデウスだったが、全て話した。
門番はその話を聞いて中に入れることを許した。だが、一つだけ約束をされた。
長様に近づくなと。
デウスは何も返事せずに中に入った。
中に女性がうじゃうじゃいた。
「女しか居ねぇのか?」
デウスが周りを見渡していると、店には男性がいた。
デウスはその男性の元へ行き、話を聞いた。
「この街は男と女の立場が逆なのか?」
「旅人か。そうさ。だから男が女に逆らえば罪を問われる。まず、死刑は確定だろう。」
「なんで立場が逆なんだ?」
「この街の長が女だからだ。」
そう答えられ、会わせられないという意見にも少し納得はできた。
「そうか。話ありがとな。」
「おう。あんたも、せいぜい気いつけな。」
デウスは歩き出した。
『どうするんだ?』
『そうだな。長に会えないとなるとどうしたもんか。』
デウスは悩みながら歩いていると、不意の気配に気づいた。
後ろからだった。
「やああ!」
デウスはエクスカリバーを逆手で抜き出し、後ろからの攻撃を防いだ。
金属音がなり、周りの女性もデウスを見た。
「不意の攻撃と思えば、二ランクの短剣片手に何してんだよ。」
防ぎながらデウスはため息をついた。
「うるさい!お金全部置いていけ!」
デウスは短剣を受け流し、女性の足をすくい、体勢を崩させた。
案の定女性は体勢を崩し、地面に倒れ込んだ。
それを見ていた周囲の女性達はデウスに罵声をあびせる。
デウスはそれに見向きもせずに転けた女性を見た。
「金ぐらい自分で集めな。俺には生憎武器と服、回復薬ぐらいしかない。」
デウスはエクスカリバーを鞘に収めた。
その場に一人の女性が走ってきた。
「これは何事だ!」
周りにいた女性達が説明すると、走ってきた女性はデウスを掴んだ。
「来い。お前は今から処刑だ。」
「……は?」
なにも分からないままデウスは連れて行かれた。
それを見ていた先程の男性は下を向いた。
「だから言っただろう。気をつけろと。」
デウスは連れられるがまま歩く。
歩いて歩いてある場所に連れてこられた。
「ここは。」
「処刑場だ。早く中に入れ。」
デウスはやむ無く処刑場に入った。
そこで武器とポーチを取られた。
「あ、おい!」
デウスの怒る声に耳も傾けずにデウスはフィールドに投げ込まれた。
「いってぇ。」
背中から地面に激突したデウスはそう口にし、体を起こした。
周囲を見ると、コロシアムのように観客が座っていた。全員女性だ。
「めんどくせぇことに巻き込まれたな。」
デウスは立ち上がり、埃を払った。
すると、声が聞こえてきた。マイクに通した声だった。
「今からこの街にやってきた旅人を処刑する!……」
その言葉の後にデウスが犯した罪などを言っていく。
一通り言い終わった時だった。前方にある孤立した席に女性が座った。
「喜べ罪人!わざわざ長様が貴様の処刑を見届けてくれる!」
この街の長は足を組み、肘置きに肘をつき、拳に頭を乗せるように座っていた。
「愚かな者だな男とは。」
デウスはため息をついた。
「俺をどうやって処刑するかは知らねぇけどな。簡単に俺を殺せると思うなよ。」
声色を変え、長を睨みつけた。
「むかつく男だ。ラグムを解き放て。」
その言葉と同時に、ひとつの門が開いた。
奥から大きな足音を鳴らし、大地を揺らしてデウスの元に顔を出したのはドラゴンだった。
「ラグムは処刑場用に手なずけたブォルドドラゴンだ。Sランクモンスターの中でも強い個体だ。今までラグムに勝った男など一人もいない。食い尽くされておしまいだ。」
デウスはラグムを見た。
涎を垂らしたラグムはじっとデウスを見つめる。
「グァァァ。」
ラグムは地面を這いつくばるように歩く。
「さぁ!殺ってしまいなさいラグム!」
「グアアアアア!」
ラグムはデウスに前足を強く叩き落とした。
その場は砂埃が起き、見づらくなった。
「一撃よ!」
観客の一人がそう言うと、一斉に歓声が沸いた。
だが、その歓声は止んだ。
「ごちゃごちゃやかましいんだよ。」
ラグムの攻撃を片手で防ぐデウスを見て女性達は呆気にとられていた。
「ほい。」
デウスはラグムの前足を押し、後ろに離した。
ラグムはすぐに体勢を立て直し、デウスに襲いかかった。
「ガアアアア!」
ラグムは口を大きく開け、食らいつくように顔をデウスに近づける。
デウスは右手に闇を纏わせた。
そして、地面を蹴り、上に高く跳び、ラグムの頭を右手で殴り、地面に叩きつけた。
大きな音と共に砂埃が濃くなった。
女性達は手で埃を払った。
砂埃が晴れると、そこには倒れたラグムとその隣に立つデウスの姿があった。
「ラグムが、一撃で。」
観客席がどよめき始めた。
デウスは口を開いた。
「これで分かったか長。いや、ウリエル。」
デウスは長を見てそう言った。
「何故私の名前を。」
「四大天使であるお前の顔は世に知れ渡ってる。知らねぇ奴は少ないだろ。」
デウスはウリエルを睨みつけた。
「俺を殺したければ四大魔神を連れてくることだな。」
ウリエルは眉間に皺を作った。
「貴様、一体何者だ。」
ウリエルの問いかけにデウスは目を瞑った。
「あまり言いたくわねぇが、俺はデウス・ペンドラゴン。」
そして、デウスは目を見開いた。
「魔神王の息子だ。」
ウリエルは言葉を失った。
「魔神王を殺すのが俺のやることだが、残念ながら魔神王の息子だ。」
デウスは手をポケットに入れた。
我に帰ったウリエルはデウスに恐る恐る問いかけた。
「この街に、何の用だ。」
「俺はモルドレッドに飛ばされただけだ。別に用なんてない。ただ、ひとつ言うとすれば、今、魔神族は街の破壊を始めてる。この街も破壊されるだろう。気をつけろ。」
デウスの忠告にウリエルは息を飲んだ。
そして、ウリエルは立ち上がり、観客にこう言った。
「処刑は終わりだ!あとは私がなんとかする!」
魔神族が街に来るのは初めてのことでウリエルは動揺していた。
観客者達はやむなくその場を去った。
全員がいなくなったことを確認してウリエルはデウスに問いかけた。
「貴様は味方か、敵か、どっちだ。」
「それはお前が決めればいい。俺は魔神王を殺す。ただそれだけだ。誰の味方でもない。」
ウリエルは椅子に座り込んだ。
「では、味方と取ろう。」
そう言ってウリエルは場に降り立った。
「今この世界に起こっていることを教えて欲しい。」
ウリエルはデウスにそう言った。




