第四十五話 怪物的覚醒
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デウスはアストルフォのシャルルを受け流し、切りつけた。
「いたっ。」
アストルフォは切りつけられた肩を抑え、下がった。
「効いたか。」
デウスはエクスカリバーを持ち直した。
アストルフォの肩傷は再生した。
「少しだけ痛かったよ。」
アストルフォは肩から手を離し、デウスにそう告げる。
デウスはまた構え直した。
「効いてる様子じゃなさそうだな。」
デウスはアストルフォを睨みつける。
「少し力入れようかな。」
アストルフォはそう言って歩き出した。
デウスは警戒心を高め、いつ攻撃されてもいいように待機していた。
「こら。ちゃんと敵を見てないとダメだよ?」
その声にデウスは横を見た。
そこにはシャルルを大きく振りかざしているアストルフォの姿があった。
「いつの間にっ!」
デウスはカラドボルグを出し、シャルルを防ごうとした。
しかし、速度が追いつかず、薙ぎ払われた。
デウスは横に吹き飛び、地面を跳ねながら転がる。最後には減速をし、止まった。
「ぁ…ぁぁ…」
痛みのあまり声が漏れる。
「まだ立てる?」
先程まで遠くに居たアストルフォが今はデウスの目の前にいた。
デウスは立ち上がろうとした。その時、違和感に気づいた。
デウスの左腕は完全に吹き飛んでいて、そこには無惨に血が滲んでいた。
「がああああ!」
その傷を見た途端、左腕に激痛が走り、地面をのたうち回った。
「なぁーんだ。もう立ち上がれないんだ。」
アストルフォはそう言ってシャルルを上に掲げた。
そして、目を見開き、デウスを見下すような眼差しを向けた。
「じゃあね。」
振り下ろされたシャルルはデウスへと落ちていった。
デウスは薄れ行く意識を必死に保つ。
『まだ、死ぬ訳には、』
そう自分自身に暗示をかけるも、意識は遠ざかるばかり。
その時、シャルルはデウスの横腹を砕き、断ち切った。
その一撃を受け、デウスは目を閉じた。
『相棒!しっかりしろ!相棒!』
闇の声さえも遠のいて行く。
言葉も出ない意識の中でデウスは泣き願うように念じた。
『俺に、今の俺に、勝てる強さをくれ。今死ぬ訳には行かない。たった一片でもいいから、俺に力を。』
そう念じる意識さえも遠のいて行った。
真っ暗闇へと変わり、デウスは意識を無くした。
アストルフォはシャルルを持ち上げ、血を払い落とした。
「これで君も僕のおもちゃだ。」
アストルフォはシャルルを地面に置き、デウスに近づいた。
「さて、どうやって僕のおもちゃにしようかな。腕をもぎ取って鎌に付け替える?それとも首をねじって百八十度角度を確認できるようにする?夢が広がるよ。」
アストルフォは喜び、興奮を顕にした。
しかし、アストルフォは何かに気づき、シャルルを取った。
「動いてる。」
デウスの指が感電したかのようにぴくぴくと動く。
アストルフォはシャルルを振りかざした。
「早く僕のおもちゃになれ!」
アストルフォはシャルルを振り下ろした。
だが、そのシャルルはエクスカリバーに受け止められた。
「どうして、動ける!」
アストルフォの言葉にデウスは反応もせず、立ち上がる。
「まだ、生きているのか。」
だが、デウスからは感情を感じない。
「いや、生きているわけじゃない。ならどうして。」
その言葉に答えるようにデウスの口が開いた。
その喉から風の音が聞こえた。
その音を聞いたアストルフォは恐怖の感情を出し、体を震わす。
そして、大きな唸るような声がアストルフォをさらに恐怖へと陥れた。
「GAAAAAAAAaaaaaaaaaa!!!」
デウスはその声とともにアストルフォを弾き、蹴飛ばした。
アストルフォは後ろに飛び、地面に背中から強く激突した。
「がっ!」
これにはアストルフォも痛みを耐えることが出来ず、声を出した。
「KoOoooRRRooOSUU!!」
声とは思えないほどどんよりとしたおぞましい唸りが言葉を発する。
その言葉さえも何を言っているのか分からない。
アストルフォは我に返り、立ち上がる。
「早く、僕の、おもちゃになれ!」
アストルフォは地面を抉るほどの力で足を動かし、デウスに急接近した。
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デウスの姿はとても立ち上がれるとは思えないほどボロボロだった。
傷口からは血が溢れ、地面を赤く染める。
アストルフォはそんなもの気にかけることなくデウスにシャルルを振り下ろす。
デウスはエクスカリバーで受ける。
「今の君では僕には勝てないよ!」
アストルフォはエクスカリバーを弾き、デウスを攻撃するが、全てエクスカリバーに受けられる。
アストルフォの速度はかなり早く、重量のある鎚を楽々と振り回す。だが、その重量のある武器に軽い片手剣で受ける。
デウスはアストルフォの隙をつき、エクスカリバーを地面に突き立てた。
その威力は計り知れず、大きな地響きを起こした。
その地響きはデア達にも届いていた。
「きゃっ!」
デアが体勢を崩し、倒れ込んだ。
「ギュラアアア!」
合成獣はデアを襲った。
デアは何とか干将を動かし、合成獣を切る。
「なんなの。」
デアは立ち上がり、合成獣を迎え撃った。
デウスはそんなこと知る由もなく、アストルフォを睨みつけた。
地響きにアストルフォは体勢を崩し、倒れ込んでしまった。
デウスはエクスカリバーを抜き取った。
「aaAaAAAaaa!!!」
デウスはエクスカリバーを振り下ろした。
アストルフォはそれを躱し、体を起こして距離を取った。できるだけ大きく距離を取った。
「君の体に何があったのかは知らないけど、僕は君を全力でおもちゃにする。」
アストルフォはシャルルを両手で持った。
だが、アストルフォはあることに驚き、さらに警戒心を強めた。
肉をちぎる音が鳴り、デウスの無くなった左腕に闇が擬態し、悪魔のような左腕が新たに出来た。
切り裂かれた横腹にも闇が補うように覆った。
「闇。あそこまで使いこなせるなんて。」
傷を治す、あるいは覆うなどを闇で出来るのは四大魔神の一番上からのものしか出来ない。
アストルフォもスカサハもそこまで闇を使いこなしていない。
「HHhhhAAaaaAaaa。」
息を吐く音でさえ唸り声のようになっている。
アストルフォは走り込んだ。
デウスに一直線に走り出した。
「やあ!」
アストルフォはシャルルを振り下ろした。
だが、それはエクスカリバーで防がれた。
それを弾き返し、エクスカリバーを両手で持ち、上に掲げた。
いつもとは構え方が違う。
「aaAaAAAaaa!!!」
デウスは右足を積み込んだ。
エクスカリバーの刃は銀色から黒色へと変色し、邪気を放った。
「『無慈悲的惨虐殺意』!」
アストルフォはシャルルで防いだが、防ぎきれず、肩を吹き飛ばされる。
「ああああ!」
痛みが声を押し、腕はシャルルを地面に突き立てて吹き飛んだ。
アストルフォの右腕は再生し、傷の痕跡が消えた。
「なんて威力。」
まともに喰らっていれば体が半分吹き飛ぶレベルである。
デウスはエクスカリバーを片手に持ち替え、地面に転がっていた龍鱗を左手に取り、鞘に収めた。
そして歩き出し、千切れたデウスの左腕を踏み潰し、カラドボルグを取った。
「これ以上続けても時間の無駄。早くおもちゃにして終わらせないと。」
アストルフォはシャルルを取り、後ろに大きく構えた。
「台地を砕き、天を裂け!『神乃鉄槌』!」
アストルフォは足を動かし、デウスに走って近づいた。
デウスはエクスカリバーとカラドボルグを上に掲げた。
「『絶対的神乃一撃』!」
シャルルとカラドボルグ・エクスカリバーは衝突し、武器が慟哭をあげる。
雷のような大きな音が大地を揺るがし、天の雲を集めた。
「はああああ!」
「HHaaAAaaa!!!」
デウスはシャルルを地面に叩きつけ、左足を右足の前に置き、体を回した。
その勢いを利用してエクスカリバーをアストルフォに突き立てた。
アストルフォは頭を後ろにしたが、エクスカリバーが首元をかすり、血を垂れ流す。
「があぁぁ。」
アストルフォはシャルルを地面から抜き、距離を取る。
喉の傷の治りが少し遅い。
かなり死んだ証拠だ。
「HaayAkiuuU!」
デウスは唸り、アストルフォに近づいた。
アストルフォはシャルルを振ったが、当たらず、デウスはアストルフォの体を斜め下から切り上げた。
「があああ!」
アストルフォは打ち上げられたように上に飛び、地面に強く激突した。
「がはっ!」
口から唾と混ざった血を吐き出した。
デウスはゆっくりアストルフォに近づく。
いつの間にかデウスの右眼が開眼していた。
だが、少し違った。赤い目に真っ黒い模様がついたようになっていた。
アストルフォは立ち上がった。
「おもちゃの癖に、調子に乗るな!」
アストルフォはシャルルを両手で持ち、肩を落とした。
デウスはエクスカリバーを逆手に持ち替え、エクスカリバーとカラドボルグの刃を重ねた。
「aaaAaaAaaaAA!!!」
デウスはエクスカリバーとカラドボルグを擦り合わせ、金属音を立て、アストルフォに襲いかかった。




