第四十三話 報われた英雄
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ビングルはトリガーに指を掛けた。
「でも、詰めは甘いようね。」
顔を踏まれながらスカサハは両手に持つ槍をビングルに向けた。
「お前がな。」
ビングルはもう片方のアサルトライフルをスカサハの手に向け、両手に発砲した後、顔に速い多くの鉛弾をくれてやる。
その後少し距離を取った。
「痛いじゃないの。」
スカサハはゆっくりと立ち上がった。
「うるせぇ口だな。そのまま寝てろ。」
ビングルは左のアサルトライフルを構え、蜂の巣になるまで発砲し続けた。
スカサハの体は穴だらけになった。
しかし、魔神族の再生によって穴は消えていった。
「話の聞かない男ね。」
スカサハはそう言って音もなく消え入った。
「はぁー。またそうやって姿を消す。残念だが、」
スカサハはビングルの背後を取った。
スカサハは言葉も発さず、槍を突き立てる。
「その芸当はもう見飽きた。」
ビングルはアサルトライフルを逆手に持ち替え、連射する。
スカサハが怯んだ隙にビングルはアサルトライフルを持ち直し、頭に翳した。
「痛いなら痛いって言えばどうだ?」
アサルトライフルの先から銃弾が飛び出し、スカサハの脳天を貫いた。
「おら。」
ビングルは躊躇無く貫かれた脳天にアサルトライフルを押し付け、アサルトライフルを貫通させた。
そして、アサルトライフルを抜くためにスカサハの腹部を蹴り飛ばし、後方に吹き飛ばした。
スカサハはまたしても背から地面に叩きつけられた。
「こんなものは知っているか?水素爆発ってやつだ。」
そう言ってビングルは懐からグレネードを取り出し、スカサハに投げた。
再生したスカサハはグレネードを突き刺した。
すると、とんでもないほどの爆発が発生した。
爆風がデウス達を襲う。
「結構削れたか?」
ビングルの言葉と同時に舞う爆煙は切られた。
「はぁ。はぁ。」
行きの切れたスカサハが立ち上がっていた。
「少しは削れたな。交代だ。」
ビングルはそう言ってアサルトライフルを下ろし、後ろへと下がる。
「私の出番ね。」
デアがそう言って刀を鞘から抜き出した。
「干将・莫耶。それを持ててるってことは貴女只者ではないわね。」
「いいえ。ただの人間よ。」
デアはデウスと同じ虎ノ威の構えを取った。
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スカサハは片方の槍を肩にかけ、もう片方の槍をデアに向けた。
「男とは違って女は力がない。簡単に殺せそうだわ。」
スカサハは地面を蹴り、デアの目の前に瞬時に移動した。
「神槍、飢餓暉火、隷哭!」
緑の槍はデアを目掛けて刃をたてた。
デアは干将の鐔と峰の間で受け流し、莫耶で首元を切りつけた。
スカサハは青い槍で莫耶を防いだ。
金属の当たる音が鳴り響く。
「弱いと思われるのは少し癪だわ。」
そう言ってデアはスカサハを槍ごと弾き返し、追撃をした。
「冢命暴虐。」
スカサハの体に何重もの切り傷が付き、その勢いで後方に強く飛ばされる。
スカサハは何とか耐える。
「ごほっ。強いわね。」
「血を吐きながら言うセリフじゃないわね。」
デアは干将を一回しした。
すると、その円を描いた干将の周りに青い炎が宿る。
「久しぶりに魔法を使うわ。」
デアは魔導剣士なので魔法を多用する戦い方が主流である。
「燃えると貴女は死ぬのよね?なら燃やすだけよ。」
デアは地面を強く蹴り飛ばし、スカサハよりも速く近づいた。
スカサハは焦り、炎を切り刻んだ。
しかし、炎は払えたものの、刀までは払うことができなかった。
「ぶはっ。」
スカサハの腹と首に刀が突き刺さる。
「後はデウスに任せるとしますか。」
デアはそう言ってスカサハを五回突き刺し、地面に叩きつけ、ラストに脳天を突いた。
「後は任せたわよデウス。」
デアは刀を鞘に収め、後退した。
「どうだ?俺の仲間は。」
デウスはそう言ってスカサハの前に立った。
スカサハは体を起こした。
「強いわね。″本気を出さなければ″だけどね。」
スカサハは青い槍を一回転させる。
「そうか。」
デウスはそう言って龍鱗を口に銜えた。
「″ゲイボー″と″ゲイジャルグ″の使い手であるスカサハ・ベルクリオン。」
「私のことを知っていたのね。」
スカサハはデウスに微笑み掛けた。
「噂ぐらいは聞いたことはある。二つの槍を自由自在に操る妖艶なる魔神族とな。」
「そんな噂があるのね。嬉しいわね。」
スカサハの微笑みは次第に怖く、おぞましくなっていった。
「ま、俺はそうは思わねぇけどな。」
デウスは腰に携える二つの剣を取り出した。
「それはエクスカリバー。あの餓鬼を殺したのね。」
「デスペランドーマは上じゃないのか。」
「下の下よ。私達四大魔神でさえも下なのだから。」
そう言ってスカサハはゆっくりと歩き出した。デウスに向かって。
「そうなのか。初めての情報をありがとうと言っておこう。」
四大魔神は人間の尺度で決めた立場上の二つ名のようなものだ。
人間が適うギリギリの線に居る四体の魔神族を四大魔神と呼んでいた。その為、魔神族の中でもいつしかそう呼ばれるようになっていた。
デウスはスカサハを待つように立ち尽くす。
「はっ!」
スカサハは青い槍のゲイボーをデウスに突き立てた。
デウスはエクスカリバーで受け、上に弾いた。
「二刀流、百鬼夜行。」
エクスカリバーとカラドボルグでスカサハを交差させるように切りつけた。
スカサハはゲイジャルグで防ぎ、上に跳び、ゲイボーを手にして構えた。
「我が身に答えよ。命を貫く一双の槍。神をも殺しうる力を今ここに!『豪尾赫煌鬼核』!」
デウスはカラドボルグとエクスカリバーを鞘に収め、口に銜えていた龍鱗を右手に取った。
そして、虎のように獲物を狙う目付きでスカサハを睨みつけた。
「行くぜ愛剣!これぞ神器の神髄!『獄炎超氣烽洞』!」
デウスの剣はスカサハの槍を、スカサハの槍はデウスの剣を穿つ。
暴風がデア達を襲い、飛ばされぬように耐えるのが精一杯だった。
その風がなくなり、砂埃が晴れた頃、デウスとスカサハは互いに攻撃しあったあとであった。
デウスは地面に龍鱗を突き刺し、エクスカリバーを抜き出し、スカサハを見た。
「さらばだ。」
その一言を言って、デウスは構えた。
「天地を統べり、凶を断て!『絶対的勝利』!」
斜めに落とされたエクスカリバーはスカサハの肩から横腹に流れ、体を斬り裂いた。
スカサハは何も言わずに二つになった体を戻すことなく地面に倒れ込んだ。
「俺達の勝ちだ。」
デウスはそう言ってエクスカリバーを鞘に収め、地面に突き刺していた龍鱗を抜き出した。
デウス達はその後全員の手当をし、勝利を祝った。
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壮絶な宴をやるというが、デウス達は出発しなければならなかった。
「少しも残れないのですか?」
デウス達に集まったものの女性が一人言葉を発した。
「あぁ。悪いな。」
デウスはそう言って手をポケットに入れた。
「ちょっと待ちな!」
そうどこからともなく声が聞こえ、デウスは左へと振り向いた。
そこには鞘を持って走ってくる者がいた。
「あんた、一つ武器に、鞘が無かったから、作ってきた。武器スキルが五十から七十までなら収めることが出来る。」
デウスはその鞘を受け取り、龍鱗を収めた。
すると、確りと収めることが出来た。
「ありがとう。」
そう礼を言うデウスにその者は照れ臭そうに頭を搔いた。
「良いってことよ。街の危機を救ってくれたんだ。これぐらいはさせてくれ。」
デウスは心細かった背に鞘を付けた。
「また街を救ってきてくれよ!救世主!」
一人の男がそう言うと、周りの皆がそう言う。
デウスは笑みを浮かべて一言残した。
「またな。」
その一言の後、背から闇の翼を作り、空に飛んだ。
ゲイボーとゲイジャルグは街の秘宝として武器庫に納められた。
デウスに続いてフローレ達も空に飛んだ。
それを見えなくなるまで手を振って見送ってくれた街の人たち。
恵まれぬ英雄から報われた英雄になったデウス達。
次の目的地はスラビア国。ミシュラド国から少し離れた場所に位置する国だ。
「あれ?」
デウスは異変に気づいた。
二体の龍の姿が見当たらない。
スペルビアとグーラだ。
「フローレ。あの二体はどこに行ったんだ?」
「さぁな。」
フローレはそう言ってデウスの前を行く。
デウスが疑問を呈していると、後ろからスペルビアとグーラが飛んできた。
因みにデウスとスペルビアはもう解約している。
「お前ら何処行ってた?」
デウスが問いかけると、二体は同時に言葉を発した。
「主を」
「マスターを」
「「探してた。」」
その言葉にデウスは思い出した。
『そう言えば主を探すって言ってたな。』
「見つかったのか?」
「あぁ。」
スペルビアの背中から一人顔を出した。
「私はアミナル・ミドラージュと申します以後お見知り置きを。」
丁寧に自己紹介をするアミナルという女性の両手にあるものにデウスは驚いた。
右手に赤い槍。左手に黒い槍を持っていた。
ゲイ=ボルグとアスカロンだ。
「この槍について疑問に思ってんだろ。俺は使わねぇからくれてやったんだよ。」
スペルビアはそう言ってデウスの隣を飛ぶ。
グーラの背中からも一人顔を出した。
「私はエネルヴァ・コルオリ・テンコールと言います。一人称は私ですが男です。」
「いや、見た目でわかる。」
エネルヴァの手にも腰にも武器がなかった。
「えーっと。エネルヴァのジョブは何なんだ?」
「私のジョブは魔人です。」
魔法にのみ特化したジョブ。
魔法があれば回復薬がなくても大抵の傷は癒せる。
「宜しくな。二人共。」
デウスの言葉に両者とも返事をした。
「こちらこそ、よろしくお願い致します。」
「よろしくお願いします。」
新たな仲間が追加された。




