第三十七話 総騎士長ランスロット
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コクホウ国の門を抜け、外に出たデウス達。
緑が生い茂っている。
『ここからレイシンク国まで何キロある。』
デウスは闇に問いただす。
『そうだな。多分十数キロはあるんじゃないか?』
『なら近い方か。方位は?』
『ここから十時の方向だ。』
『了解。』
デウスは背中から翼を生み出した。
「前より形が綺麗になってるな。」
ヘルトの言葉にデウスは翼を見た。
「ほんとだ。」
「無自覚だったのか?」
デウスは頷いた。どうやら翼はデウスの考えで形が変わる訳では無いようだ。
「とりあえず俺についてきてくれ。」
その言葉にフローレ達九つの罪龍達は龍の姿に変化した。
他の人は全員一体一体の龍の背中に乗る。
デウスが翼をはためかせ、空に飛ぶと、それに続いて龍達が空に飛び上がる。
そして十時の方向を向き、飛び進んだ。
緑の上を飛びすぎる。たまにモンスターが見えるが、こちらに全く無興味の様子だった。
少し飛び進んで約一分。ある一体のモンスターがデウスの隣を飛び始めた。
それはデウス達をコクホウ国に案内してくれた飛硬種だ。
「キャウキャウーン!」
「レイシンク国だが、それがどうかしたか?」
「キャウ!キャキャウ!」
デウスが飛硬種と会話している様をフローレ達は後ろをついていきながら見ている。
「なるほど。教えてくれて助かる。」
「キャウ!」
飛硬種は降下して行った。
「なんて言ってたの?」
デアが問いかけると、デウスはゆっくり降下した。フローレ達も降下する。
「あと三キロぐらいでレイシンク国に着くけど、あのまま行けばもしかしたら敵対として受け取られるかもしれないらしい。」
地面に降り立ち、翼を消し去った。
フローレ達は背中からデア達を下ろし、人の姿に変わった。
「ならここからは歩いていくのか?」
「そうなるな。」
一応国が見えているが、とても小さく見え、近いとは言えない。
「少し時間はかかるけど、仕方ない。」
デウス達は雑談を挟みながらレイシンク国へ向かった。
雑談を挟みながら歩いて約三十五分。レイシンク国の門へと近づいた。
相変わらず門には門番が待ち構えている。
「お前ら、冒険者カードを提示しろ。」
デウス達は冒険者カードを提示したが、シャティスだけ提示出来なかった。
何故ならまだ冒険者になれる歳に年齢が満たされていないからだ。
それを分かっていた門番は、全員の冒険者カードを確認し、一人づつカードを返し、門を開けた。
「通って良い。だが、子供の冒険者カードを作ってくれ。この国でな歳問わず冒険者カードは作れる。」
親切に教えてくれた。
「ありがとう。」
デウス達は門をくぐり抜け、レイシンク国に入った。
他の国とは違って整っていた。
家の向き、家の壁や地面がとても綺麗だ。
「騒がしいな。」
銀色の防具を着た騎士達が走り回っている。災禍のことはどうやら本当のようだ。
「そこの騎士。災禍はあと何日で来るんだ?」
騎士は何故知っているのかと驚いていたが、口を開いた。
「あと一日だ。」
翌日には災禍が来るという。
そう考えると災禍が来るのは早朝だろう。
「君たちは今来たんだろ?最悪だったな。」
「いや、災禍が来ると知ってここに来た。」
「なに!?」
自ら災禍の元へ足を運ぶ馬鹿が存在することを知り、とても驚いた。
「俺達も手伝う。」
「それは危険過ぎる。避難するんだ。」
デウスは顔を横に振った。
「いいから避難するんだ!ジャンヌ騎士長の帰りがない分、守りきれるか分からない!」
デウスはため息を大きくついた。
「ジャンヌ・ペンドラゴンは死んだ。」
その言葉に騎士は言葉を失い、唖然とした。
「……嘘だ。」
「嘘じゃない。」
「嘘だ!騎士長が死ぬ訳ない!」
デウスは騎士の肩を強く掴んだ。
「ジャンヌは死んだんだよ!」
その声は他の騎士にも聞こえ、ざわつき始めた。
「…お前が、殺したのか?」
「そんな訳ないだろ。ジャンヌを殺した相手は魔神族のゾルドリオだ。」
ジャンヌを殺した相手も分かっているデウスに騎士は問いかけた。
「お前もその場に、居たのか?」
「…あぁ。」
デウスの手を払い、騎士はデウスの肩を掴み返した。
「何故助けなかった!近くに居たのなら、助けられたはずだ!どうして!」
デウスは騎士の腕を掴み、涙を流した。
「俺だってやれる事はやった!姉を守るために出来ることをやった!それでも無理だったんだよ!」
騎士は力を抜き、手を離した。
「ジャンヌ騎士長の弟か。」
死に枯れた声でデウスに問う。
「あぁ。そうだ。」
騎士はデウスを見た。
「ジャンヌ騎士長と戦ったことは?」
「ある。子供の頃と、数日前に。」
「子供の頃は勝ったか?」
「勝ったことは無い。」
「数日前は?」
「同点だ。」
騎士はデウスの肩をもう一度掴んだ。
「ジャンヌ騎士長の代わりに、戦ってくれるか?」
「あぁ。そのために俺はここに居る。」
デウスは涙を拭った。
「心強いよ。では俺についてきてくれ。」
騎士はそう言って歩き出した。その後ろをついて行くようにデウス達が歩く。
少し歩いき、騎士本部のような所に着いた。
中に入り、階段を上がり、一番奥のドアに着いた。
騎士はドアを二回叩いた。
「誰だ。」
中から渋い男の声が聞こえる。
「シグル・シグナルドです。」
「入れ。」
その応答にシグルという騎士はドアを開いた。
「なんだ?」
「心強い助っ人が来ました。」
シグルの言葉でデウス達は部屋に入った。
「この人達は?」
「ジャンヌ騎士長の知り合いです。」
「そうか。お前は下がれ。騎士副長としての仕事を全うして来い。」
「分かりました。」
シグルは部屋を出て、ドアを閉めた。
「では、単刀直入に聞こう。ジャンヌ騎士は何処だ?」
「天界に召された。」
デウスの回答に男は信じられないという顔を見せる。
「それは本当か?」
「無論事実だ。」
男は机に肘をつき、指を交差させて顔の前に置いた。
「君達は?」
「俺の名前はデウス。デウス・ペンドラゴンだ。」
「私はデア。デア・ルナティックよ。」
「我はフローレだ。憤怒の罪龍。」
「私はイリビード。色欲の罪龍よ。」
「織の名前はヘルト。ヘルト・ベルト。」
「俺の名前はアブァリティア。強欲の罪龍だ。」
「私はインビディアよ。嫉妬の罪龍。で、この子がシャティス。」
「シャティスです。」
「俺はビングル。ビングル・ビルグルル。」
「私は、イラドゥエトスと、申しま、す。憂鬱の、罪龍、です。」
「私はバグラ。バグラ・ヴィルランと申します。」
「刳の名はソルディブスルクトーリス。虚飾の罪龍だ。」
全員自己紹介が終わると、男は立ち上がった。
「俺はランスロット。ランスロット・オーディンだ。この国の総騎士長をしている。」
こちらに気がづいてくるランスロット。
「ではデウスくん。腕前を見せてもらおう。」
その言葉で何をするか想像がついたデウス。
「決闘か。」
「その通りだ。実際に剣を交えた方が早い。剣は嘘をつかない。手っ取り早く信頼ができるという訳だ。」
「なら何処でするんだ?」
「世界で二番目に広いとされるエンゴルスコロシアムで試合を執り行う。すぐにだ。」
「了解だ。場所を教えてくれ。」
ランスロットからコロシアムの場所を聞いた。
「大体は把握した。俺は先に向かう。」
そう言ってデウスは部屋を出た。
「せっかちですみません。」
「俺もせっかちなところはある。似たもの同士だ。」
ランスロットは机に立てかけていた剣を取り出した。
青く世界を写すその剣からは神秘の力を感じる。
それを腰にかけるランスロット。
「その武器は?」
ヘルトが聖剣と思い、問いかけた。
「これはオーディン家に代々伝わる伝説の聖剣。アロンダイトだ。」
魔水を帯びると言われている伝説の聖剣、アロンダイト。神秘の力が備わっており、悪を断ち切るとされる。
「それでは、行くとしよう。」
ランスロットも部屋から出た。
「私達も行きましょ。」
デアがそう言うと、全員頷き、部屋から出た。
コロシアムには人は居らず、ガラガラだ。
そりゃあそうだ。一大事の時に殺し合いを見ている訳にはいかない。
中央から少し離れた場所に胡座で座り込むデウス。
『どうしたんだ?』
闇が問いかけてくる。
『待ってるんだよ。特に意味は無い。』
座っていると、後ろから声が聞こえた。
「待たせたな。」
デウスは立ち上がった。
「そんなに待っちゃいないよ。」
デウスは向かい側へと歩いた。
PvPにおいて場所取りは大事である。
観客席に数名の人を確認したデウス。デア達である。
「準備はいいかな?」
「待ってる間に終わらした。」
ランスロットは自慢の聖剣、アロンダイトを鞘から抜き出した。
デウスは龍鱗を右手に、聖魔剣のカラドボルグを左手に取った。
「二刀流か。ジャンヌ騎士とそっくりだ。」
「弟だ。似るのは当たり前だろう。」
ランスロットは笑みを浮かべた。
「そうだな。」
ランスロットはアロンダイトを両手で持った。
「では、やるとしよう。」
ランスロットの構えが変わった。
先程まで正眼の構えをしていたが、八双の構えに変わった。
「デウス!負けたら承知しないわよ!」
デアがデウスにそう言い放つ。
「分かってるっつうの。」
『行くぞ、相棒。総騎士長となればそれなりの強さだ。気を引き締めろよ。』
『分かってる。』
闇からも言われた。
これはもう本気で頑張るしかない。
「いざ尋常に、勝負!」
ランスロットがそう言い、デウスに突撃を仕掛けた。
デウスは虎ノ威で迎え撃った。




