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FaTuS;契約譚  作者: 元気ハツラツマン
二章 仲間探しの旅
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第三十五話 呪約のワイバーン

✣ ✣ ✣


部屋に陽の光が差し込み、輝かしい朝がやって来た。

外では鳥の声が聞こえず、龍の鳴き声が響き渡る。

「龍の、声?」

デウスは疑問に思い、起き上がった。

「ガアアアアアアア!」

空に声が反響し、建物を揺らす。

「うおっ!」

起こした体が前に倒れる。

何とか手で地面を押し、体を支える。

「なんだ!?」

デウスは窓を開けた。

デウスの目に映ったのは巨体を持った赤き飛龍だった。

「んだよあれ!」

驚くデウスの後ろでデア達が目を覚ました。

「どうしたの?」

「あれ見てみろよ!」

「ん?」

デウスの驚き様にデアは全く持って理解出来ず、デウスの指差す方向を見た。

「え!?」

目の前の光景にデアも驚いた。

街の中には入っていないが、外で街を見渡して荒く声を上げる飛龍。

「ん?どうした?」

地面に胡座をして眠っていたフローレが目を覚ました。

「いや、あれ見てみろよ!」

「何でそんなに大はしゃぎしてんだよ。」

フローレは立ち上がり、頭を搔きながらデウス達の元に向かった。

フローレは龍の姿を目にし、窓縁を強く叩き握った。

「あれは!ワイバーン!」

ワイバーン。Sランク級の赤き飛龍だ。二足歩行で手に翼が付いている。

主に火山や砂漠に生息するモンスターだ。草原には度々獲物を探しにやってくる。が、街に近づくことはない。何かあったのだろうか。

「誰も戦おうとはしないな。交友関係でもあるのか?」

デウスが疑問に思い、顎に手を当てると、大きな音と揺れが襲いかかった。

「うおっ!」

「きゃっ!」

「おっと!」

三人同時に体勢を崩した。

何とか体勢を整え、外を見た。

「グルウァァァァ!」

家を破壊し始めたワイバーン。全く交友関係ではない。

「あれは止めた方がいいんじゃないのか!?」

デウスはそう言って身を乗り出した。

「おい!危ないぞ!」

フローレの忠告も聞かずにデウスは窓から飛び降りた。

「全く主は!」

フローレもデウスの後を追うように窓から飛び降りた。

「二人とも待って!」

デアも窓から飛び降りた。


✣ ✣ ✣


「ガアアアアアアアアアアア!!!」

破壊行為をするワイバーンに手を焼いている戦士がいた。

「どうなってる!」

デウスは走って近づき、状況を聞き出す。

「侵入してきたワイバーンが破壊行為と殺戮をしている!必死に交戦しているが、強過ぎる!」

「「うわあああああ!」」

会話中に数名が吹き飛ばされてきた。地面に激突し、鈍い音と共に息絶えた。

「増援は!」

デウスはさらに問いかけた。

「まだだ!もう少し掛かる!」

そう言って戦士は突撃して行った。

「待て!」

その言葉は戦士に届かず、ワイバーンに吹き飛ばされた。

「殺るしかない。」

デウスが大剣を引き抜こうとした時、それを妨害するかのように手が乗っかった。

「何故止める!」

「ここは私がやるわ。」

干将・莫耶を握るデアが前に出た。デウスは溜息をつき、引き抜きかけていた大剣を戻した。

「なら任せたぞ。呉々も油断するなよ。」

「分かってるわよ。」

デアは走り出した。

その後、フローレが走ってきた。

「お前遅いぞ。」

「お前らが速いんだよ!」

その言葉をデウスは無視し、ワイバーンを見た。

デアはワイバーンの足元を切った。

「ヴヴヴヴヴヴ。」

ワイバーンがデアを睨みつけ、赤く光る口を大きく開き、デアに向けた。

「やばいぞ。」

心配するフローレの隣、腕を組んで黙り込んでいるデウス。

突如、ワイバーンの口から火炎が吹き出た。デアは干将を前に出し、火炎を切り防いだ。

デウスは笑みを零した。

「このモンスター倒しちゃっていいんだよね!」

「あぁ!良いぞ!」

火炎の放射が途切れた直後にデアが炎の中から飛び出した。

「ガアアアアアア!」

翼で叩きかかる。しかし、その攻撃は速度が足りず、デアには当たらなかった。

「はあああ!」

莫耶を振り翳し、首を切りつけた。

「!!!」

ワイバーンは口を最大に開き、舌を出した。気道を切ったため、息が出来ず、血の出血も大量だった。

ワイバーンは地面に倒れ込み、血をぶちまけた。

莫耶に付いた血は消え去った。

「どうだ?手応えは。」

デアに近づき、デウスが問いかける。

「ワイバーンが弱過ぎてよく分からないわ。」

先程吹き飛ばされた戦士が意識を取り戻し、体を起こす。

「君達は、一体なんなんだ。」

「お前と同じ人間さ。」

デウスはそう言って欠伸をした。

そこに走ってくる人影が見えた。何かを持っていた。しかも二つ。

「これを届けに来た。」

少し息の切れた男が鞘を二つ持ったてきた。

「これは?」

「お前らに頼まれてた干将・莫耶の鞘だ。」

その時、デウスは少し驚いていた。

男には武器が干将・莫耶ということを教えていない。それなのに武器名が干将・莫耶だと知っている。

「そうか。貰おう。」

たった一日だけしか経っていないのにもう鞘が出来上がっている。ここまで来ればプロだ。達人の領域を超えている。

重さは中々のもの。

「ほれ!」

「わっ!」

デウスは鞘を二つ投げた。デアは慌てて掴み取った。

「ちょっと!」

「まぁまぁ。入れてみろよ。」

デアは少しデウスを睨んだが、鞘を見た。

白い鞘と黒い鞘。少し装飾が施されている。

デアは干将・莫耶を鞘に入れた。金属の擦れる音が鳴りながら、鞘に収まっていく。

刀が鞘に収まった時、音が無くなった。

「いい鞘ね。」

デアは腰に携えた。右腰と左腰に。

「これで依頼は完了した。じゃあな。」

男は煙草に火をつけて背を向けた。

「助かった!」

デウスがそう言うと、男は後ろを見ずに、ただただ煙草を挟んだ手を上に挙げ、手の甲を見せた。

クールな去り方である。

「俺達も戻るか。」

デウスがそう言い、後ろを向いた。

「全員起きてると思うし、早めに帰るとしますか。」

デウスは走り込みの構えをした。

「あ、待って。」

デアはそう言ったが、デウスは聞かず、走り出した。

物凄い風がデアの髪を揺らした。

「もぅ。」

デアは笑って歩き出した。


✣ ✣ ✣


宿に着くと、外にみんな出ていた。

「起きたのか。」

「そりゃああんな揺れ起きたら誰だって目を覚ます。」

ビングルが少し呆れた顔で吐き捨てる。

「で、ワイバーンの方はどうなったんですか?」

バグラが心配そうに聞いてくる。

「片付いたよ。」

デウスはそう言って後ろを向いた。

確かにワイバーンの姿は無く、澄えた空が見える。

「それより、これからどうするの?」

イリビードの問いかけに少しデウスが考える。

「特に行き先も考えてねぇな。」

『なら、レイシンク国はどうだ?』

『レイシンク国?』

レイシンク国。別名聖騎士国。聖騎士になりたい者が多い国、あるいは行きたい国。

「では、レイシンク国、なんてどう、でしょうか。」

不意にイラドゥエトスが発言する。

『これで決定だろ。』

まさか闇と同じ考えの者が居るとは思わなかった。

「このあとどうするの?」

後ろから声が聞こえた。デウスは振り返る。

両腰に黒白こくはくの太刀を携えたデアの姿と難いがいいフローレの姿があった。

「あぁ。レイシンク国に行くことになった。」

その言葉を聞き、デアは少し暗い顔をした。

「…………そう。」

乗り気ではない様子だが、何故なのかは理解出来ない。

「どうした?レイシンク国に未練でもあったか?」

「違うわよ。それに未練があったら行くことに積極的になるわよ。」

「そうか。」

デウスは頭を搔いた。

「ガアアアアアア!」

地面が揺れ、地響きがなり、モンスターの声が宙を舞う。

「なんだ?新しいワイバーンか?」

デウスがそう言って前方を遠く見た。その光景を見て、デウスは目を見開き、口を開いた。

「いいえ、あれは!」

大きな巨体を持ち、こちらを睨みつけるワイバーン。そのワイバーンは首から大量に血を流し、切り裂かれていた。

「私が切った、ワイバーン。」

全員が唖然としていた。

「グラアアアアアアアアアアアアア!」

その咆哮は風を暴走させ、まっすぐと銃弾のように飛び交った。

その咆哮がデウスに攻撃を与えた。

「どわ!」

腹を貫かれ、後ろに吹き飛ぶ。

宿屋に背中から激突し、壁が半壊した。

「どうなっとるんじゃ!」

宿屋の店主が慌てて出てきた。

「おい!お前さん、大丈夫なのか!?」

腹から溢れるほどの血を放出し、口からは真っ赤な血が流れる。

「店主さん、早く、逃げろ。」

血が溢れる体をどうにか瓦礫がれきを掴んで起き上がる。

「大丈夫か。デウス。」

「これは、やばいな。」

体を起こすデウスにデアが莫耶を突き刺した。

「かはっ!」

「おいデア!」

デウスを心配して近づいたヘルトがデアにキレる。

「大丈夫。」

デアはそう言い、莫耶を引き抜いた。

傷は瞬時に癒えた。

「済まない。デア。」

「いいわよ。礼なんて。それより、」

「あぁ。あれは呪約じゅやくだ。」

呪約じゅやく。あるものと契約を結んだモンスターが契約者にかけられる呪文だ。

決して逆らわぬように呪いをかける。惨いことだが、こうしなければ反逆してくる。

しかし、それともう一つ呪約には効果が存在する。

モンスターの生命の灯火を操る。

例えモンスターが死のうと、呪約をしていれば自由自在に生死を操れるということ。

「あれは厄介だぞ。」

「どうしてだ?もう一度殺せばいいだけだろ。」

アサルトライフルを構えるビングルにデウスは肩を掴み、首を横に振った。

それを見たビングルはアサルトライフルを下ろした。

「奴を殺すには呪約を解除しなければならない。例え身体を細切れにしても動く。」

近くで必ず操縦者が居るとデウスは仮定した。

呪約を解除すれば操縦者の正確な位置と距離を確認出来る。

「この中で解呪出来るものはいるか?」

デウスが聞くが、誰も名乗りを上げない。

「私が出来る。」

一人名乗りを上げた。それは少し歳をとった老人だった。

「店主さん。危ないから辞めてくれ。」

「どっち道もう長くない。ならこの命を使ってこの国を救おうじゃないか。」

その決意はただの感情ではない。心の八巻をキツく締め、デウス達を真相している。信頼と根性が篭った決意だった。

「分かった。でも、チャンスは一度きりだ。ミスをすれば死ぬ。いいな。」

「お前さんが好機を作ってくれたら失敗はしない。」

店主は店の奥から武器を引き抜いてきた。

「これは私の神器だ。」

リーチは決して長くはないが、その武器からは周波を感じられる。

「なら行くぞ。コクホウ国での最後の大仕事だ。気引き締めろよお前ら!」

「おう!」

「えぇ!」

「了解よ!」

「わかったわ!」

「私も頑張る!」

「ミスんじゃねぇぞ!」

「全力で援護する!」

「はい!」

「了解!」

「おう!」

「はいっ!」

「解呪は任せろ!」

全員武器を手に取り、ワイバーンに近づいて行った。

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