第三十四話 干将・莫耶の鞘作り
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コクホウ国へと戻ったデウス達はまずイリビード達の元へ向かった。
イリビード達の元へ着いた時、イリビードは物凄く心配して近寄ってきた。
「大丈夫なの?」
デウスが事情を説明し、一先ずは安心するイリビード。
「とりあえず、まずは鞘探しからだな。」
デウスはそう言ってデアを見た。
干将・莫耶には収めるための鞘がないため、このままだと握り締めたまま移動を行わなければならない。
それでは不便なので、鞘を製作してくれる武器屋を探した。
一晟が一つ場所を知っていたが、聞いた感じでは達人はいなさそうだった。
長いこと街を歩いて一つの武器屋に着いた。
見た目はボロく、年期が入った木の壁。苔が生えていないところを見ると、確りと手入れをされているようだ。
デウスはドアを開けた。
「久しぶりの客だ。」
そのには少し歳をとった五十台前半の男性が武器の手入れをしていた。
「これに見合う同等の鞘を作ってくれ。」
デウスがそう告げ、デアは干将・莫耶を見せた。
「うむ。見た感じ武器ランク九十五ってところか。これを何処で?」
男性が問いかけてきた。
デウスが事情を話した。
「うーん。そうだなぁ。これと同等ってなると作るのに短くて二日はかかるな。」
男性が干将・莫耶を握ると、少し輝いた。
「なるほど。」
男性は何かを察したように干将・莫耶を木台に置いた。
「金は要らん。」
「なしでいいのか?」
「あぁ。ただし、鞘の素材を取ってきたらだがな。」
「その鞘の素材はなんだ。」
デウスが問うと、男性は少し間を置いてから言った。
「グラッド・ルマルネーレを取ってきて欲しい。」
グラッド・ルマルネーレ。特殊な鉱石のひとつ。手に入れることが困難を極める鉱石。チグリクト鉱石の次に取得困難な鉱石と言われている。
稀に地上に現れるが、たった一欠片だ。
「どれくらい取ってくればいい?」
「ざっと五キログラムほど取ってきて欲しい。」
グラッド・ルマルネーレは比較的重い鉱石だ。今まででグラッド・ルマルネーレの最重量が二キロだ。
手に収まるサイズだ。
「五キログラムか。ならすぐに取ってこれるな。」
デウスはドアへと向かった。
「どこに行くの?」
「グラッド・ルマルネーレを取りに行くんだよ。みんなはここで待っててくれ。」
そう言ってデウスは一人で武器屋を出た。
「もう!少しは私を頼ってよ!」
デアはデウスの後を追うように外に出た。
「君達は行かなくて大丈夫なのか?」
「大丈夫だろ。」
ビングルが欠伸をしながら答えた。
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デウスは外に出て、翼を出した瞬間、後ろから誰かに掴まれた。
「デア?待ってなくていいのか?」
「数分前に一人だけで行動しないでって言ったのに。」
「あぁ。悪いな。」
そう言ってデウスはデアを掴んだ。
「え…あ…」
デウスはデアを抱き上げた。
「なら一緒に行くか。」
「う、うん。」
デウスは翼を広げ、力いっぱいに空気を扇ぎ、空に飛んだ。
風が髪をなびかせる。
「大丈夫か?」
少し顔色の悪いデアを見てデウスは問いかけた。
「う、うん。少し、怖いかな。」
デアは下を見てそう言った。
「そうか。もう少しだから我慢してくれ。」
デウスは飛び続けた。
少し経ち、デウスが降下した。
「ここ?」
「あぁ。」
デウスは地面に足をつけ、デアを下ろした。
「ただの、草原だよ?」
「まぁ見てろ。」
デウスは翼を消し、腕を硬化させた。
「ふん!」
デウスはその拳で地面を叩いた。
バキッと大きな音を立て、地面はひび割れ、抉れた。
「うわっ!ちょっと!」
体勢を崩し、倒れかけたデアがデウスに怒を飛ばした。
「まぁまぁ。見てみ。」
デウスが指を指す場所をデアはため息をついて見た。そこには光り輝くものが見えた。
「これは。」
地面には無数の無色透明な鉱石が出ている。
「地表近くにあって助かった。」
デウスはそう言ってグラッド・ルマルネーレを拾いだした。
しかし、この中にもグラッド・ルマルネーレじゃない鉱石も混ざっている。
デウスは手の上に鉱石を乗せ、グラッド・ルマルネーレを厳選する。
「これぐらいでいいか。」
デウスは両手いっぱいにグラッド・ルマルネーレを持った。
「それどれくらいあるの?」
「ざっと二十五キロぐらいかそこらだろう。」
グラッド・ルマルネーレは重量系の鉱石。人差し指サイズでも七十グラムはあるだろう。
「さ、グラッド・ルマルネーレも取ったし、帰るか。」
デウスは闇で翼を生やした。
一部を袋に変え、グラッド・ルマルネーレを入れた。
「よっ!」
デウスは軽々とデアを持ち上げた。
そして、空に飛び立った。
「デウス。」
「なんだ?」
「私達のために命をかけるのはなんで?」
デアの問いかけにデウスは軽い顔が真剣な顔になった。
「お前達が俺の全てだからだ。」
「それは、どうして?」
「最初はお前だデア。お前が俺の生きる道を引いてくれた。それからビングル。ライバルとして良い友になった。他のみんなも、俺の止まった時間、崩れかけた心を動かしてくれた。だから俺は命を掛けてでも大切なお前達を守りたい。」
デウスは笑みをデアに見せた。
「そう。」
「あれ?それだけ?冷たいなぁ。」
笑ってデウスは少しスピードを上げた。
『貴方が死んだら元も子もないわよ。ばか。』
デアは下を向いた。
緑の草原を。
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コウホウ国に着いたデウスとデア。
降り立ち、デアを下ろし、武器屋へ向かった。
ドアをバタンと開き、鉱石を渡した。
「これでいいか?」
「ふむ。早かったな。これだけあれば充分だ。これは持ってっていいぞ。」
干将・莫耶を渡されるデウス。
「寸法に使わないのか?」
「もう測ってある。それに、武器が無かったら不便だろう。」
デウスはデアに干将・莫耶を渡した。
「そうか。」
「二日後に一度来てくれ。出来ているかは分からんが、もしかしたら出来てる場合があるからな。」
「分かった。二日後にまた来る。」
「おう。」
デウス達は店を出た。
「さて、これは前代未聞の大仕事だ。気合い入れねぇとな。」
そう言って男は頭に八巻をまいた。
グラッド・ルマルネーレを取り、工具場へと向かった。
デウス達は何をするか悩んでいた。
「暇するぞ。これは。」
「うーん。そうだな。デアは干将・莫耶に慣れた方がいいだろ。」
そう言ってデウスは頭を搔いた。
「近くにいい獲物でもいればいいんだけど。」
デアがそう言った途端、遠くで甲高い遠吠えが聞こえた。
「なんの声だ?」
「距離にして大体二十メートルって所か。街にモンスターが侵入したで間違いないだろ。」
デウスはそう考えた。声から察するに凡そは絞れた。
「行ってみよ。」
イリビードが先頭を走った。全員その後ろをついて行く。
走って数分。そこに居たのSランク級のモンスター。ホードボリオだった。
見た目は鳥類だが、多少爬虫類が混じっている。
「これならいい肩慣らしになりそうだわ。」
そう言ってデアはホードボリオに近づいた。
「ァァァァァ」
嘴同士を打ち付け、小さく声を出して威嚇する。
だが、一歩も引かないデア。
ホードボリオは威嚇を辞め、こちらを向いた。
「アアアアアアア!」
牙の生えた嘴を力いっぱい開き、声を上げた。敵対心を剥き出しにし、嘴をデアに振り下ろした。
デアは難なく躱した。
「可愛くないわね。」
デアは地面を蹴り、ホードボリオの顔に近づいた。
「ア!?」
驚いた声を上げるホードボリオ。
デアは右手に持つ黒の太刀を振り下ろした。
ホードボリオは躱し、反撃した。
「アアアア!」
翼を武器にし、斜め下から振り上げられた。
デアは白の太刀で防いだ。
「ふっ!」
翼を弾き飛ばし、ホードボリオの腹を切った。
「アアアアアアアア!」
鼓膜を揺らす程の大声で痛みを表現した。
デアは地面に一度足をつき、もう一度跳んだ。
「やああああ!」
その声をかき消すように、デアはホードボリオの首を跳ね飛ばした。
跳ね飛んだ首はデウスに飛んできた。
デウスは大剣を引き抜き、ホードボリオの頭に剣を向けた。
まだ動くホードボリオの頭はデウスに噛み付こうとした。
その開いた口に大剣が突き刺さり、動けなくなった。
「黒炎。」
ホードボリオの頭は黒い炎によって燃やされた。跡形もなく。
「ごめん。」
デアは片手を顔の前に置き、片目を閉じ、謝った。
謝る気零である。
「別にいいよ。」
デウスは大剣を鞘に収めた。
「やっぱり鞘がないと不便ね。」
そう言ってデアは白の太刀を振る。
白の太刀が干将。黒の太刀が莫耶。二つ合わせて干将・莫耶だ。
「あと数日待て。そしたら鞘が出来る。」
デウスは空を見回した。
「そろそろ夜だな。」
「そうね。」
それに反応するイリビード。
全員一斉に空を見上げた。
紅の中に薄い輝きを放つ星が見える。
「宿探すか。」
「そうだな。」
全員賛成で宿を探すとになった。
歩いて本の数分。宿は見つかった。
三部屋借り、前と同じ部屋分けとなった。
ちなみに一晟は道場へ帰った。
「とりあえず、気長に待ちますか。」
デウスはベッドに身を投げてそう言った。
「そうね。」
その隣にデアが座り込んだ。
「これから我は肩慣らしに行くが、来るか?」
フローレの誘いに全員首を横に振った。
「そうか。」
フローレはドアを開けた。
「行ってくる。」
一人部屋を出たフローレ。それを見守ったデウス達。
「俺は疲れた。」
「私も疲れたわ。」
デウスとデアは同時に欠伸をした。
デウスの隣にデアが横たわる。
その時にはもうデウスは眠っていた。
「早いわね。」
イリビードが外を見ながらそう言う。
「いつも通りよ。多分。」
デアもその言葉の後すぐに眠りについた。
「私も少し経ったら寝ようかしら。」
外を見ながらイリビードは欠伸をした。




