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FaTuS;契約譚  作者: 元気ハツラツマン
二章 仲間探しの旅
41/91

第三十一話 倭国の最高位剣士

✣ ✣ ✣


デウスが目覚めたのは宴が終わった頃だった。

街は静けさを取り戻し、鳥の鳴き声が響き渡る。

「朝か。」

デウスは体を上に伸ばした。立ち上がろうとしたが、足に重さを感じた。

「んん。」

デアだ。デウスの足の上で眠ったデア。酔いは解かれていたが、疲労などでまだ眠っている。

「こりゃあと数十分は眠ってるな。」

デウスはそう言って辺りを見渡した。

地面に寝転がる人や、壁に持たれて眠る人。人と人が支え合って寝ているところもある。

デウスは一人空を見上げていた。

青く澄み渡る空。それを遮るように浮く雲。世界を照らす太陽。まだ少し暗い。

デウスが空に見とれていると、後ろで誰かが起き上がった。

「なんだ?もう朝か。」

フローレだ。

フローレも宴途中で眠ったから起きるのが早いのだ。

「起きたか。」

「そう言う主こそ、起きてたんだな。」

フローレは立ち上がり、デウスに近づく。

「悪ぃな。何度も死んじまってよ。」

「気にしなくていい。第一、主はこうして生きてるんだから。」

デウスの隣に座り込むフローレ。

デウスは少し笑って前を見た。

「全員目覚めたら出るぞ。次の目的地は倭国、コクホウ国だ。」

「了解。とりあえず我は全員起きてるか確認しに行く。」

「あぁ。頼んだ。」

フローレは立ち上がり、イリビードの元へ向かった。

デウスはデアの頭を撫でる。

寝返りを打ったのか。横向きで寝ているデア。

「そろそろ起きろよ。」

デウスがそう告げると、デアは掠れた声で

「うん。」

と答えた。

デウスは頭を搔いた。

「起きてるのか?」

問いかけるが、応答がない。

ただの偶然だったようだ。

「よくやってくれたよ。」

デウスは感謝を告げたが、少し上を向いた。

「いや、今更感謝なんて洒落臭いことするもんじゃねぇか。」

デウスが笑みを浮かべて前を向いていると、デアが目を覚ました。

「ん、ん?」

目をゆっくり開けるデア。デウスは全く気づかない。

その凛とした笑みと清々しい程の凛々しい顔向き。デアは見とれていた。

デウスは下を向き、ようやく気づいた。

「起きたのか。」

「え、えぇ。たった今起きたわ。」

『今のはなんだったのかしら。』

カリスマ感があり、それでいて幼き少年のような笑みがデアの目に焼き付けられた。

そこへフローレ達が歩いてきた。

「デアは起きたか?」

「あぁ。起きたよ。」

デアは体を起こした。

デウスは立ち上がり、皆を見た。

「全員に告げる。今からコクホウ国に向かう。出発はすぐだ。準備の出来ていない者は直ぐに準備だ。」

「「了解!」」

全員了解と答え、準備を進めた。

「ねぇ、デウス。」

「ん?なんだ?デア。」

デアがデウスの腕を掴んだ。

「昨日、私変なことしなかった?」

「変なこと?」

デウスは思い返した。

一つだけあったが、言うことでもないと思い

「いや、してないよ。」

そう答えた。

デアは安心したようにため息をついた。

「そう。ならいいわ。」

そう言ってデアはデウスの腕を離し、少し後ろに下がった。

『本当は覚えてる癖に。』

デアは頬を赤らめた。

デウスは龍鱗ジグラギの状態を確認した。

一欠片の刃こぼれもなし。埃すら付いていない。

デアが使っていただけはある。

デウスは龍鱗ジグラギを鞘に収めた。

「全員準備出来たぞ。」

フローレがデウスに伝えた。

「そうか。なら行こうか。」

「行くことを伝えなくて大丈夫か?」

ビングルがそう言った。

「こいつらも疲れてる。寝かせといてやろう。」

そう言ってデウスは紙を取り出し、偶然落ちていたペンを拾い、文字を書いて近くで眠っている戦士の隣に置いた。風で飛ばされぬよう、重りを付けて。

【また来る】

そう書き残した。


✣ ✣ ✣


門をゆっくり開き、音を立てぬように門を閉めた。

何故か久しぶりに感じる外。

「コクホウ国の方向が分かるやつは?」

誰も名乗りを挙げない。誰一人として分からない。

「こいつは困ったな。」

デウスは頭を搔いた。

そこに一体のモンスターが飛んできた。

飛硬種ひこうしゅのモンスターだ。空を飛ぶモンスターだ。

「キャウ、キャウキャウ。キャウ。」

モンスターは何かを言っている。

デウスは真剣に聞いていた。

「ここから北に真っ直ぐだそうだ。」

デア達は驚いていた。

「モンスターの言葉が分かるの?」

「そりゃあ俺は魔神王の息子だし、流石に分かる。」

デウスはなんの躊躇いもなくそう口にする。

「まぁいいわ。なら北に進めばいいのね。」

「キャウキャウ!キャウキャウ!」

モンスターがまた何かを言っている。

デウスが対応する。

「今向いてる方向が北だそうだ。それと、案内すると言っている。」

「へぇ。それは有難いな。」

ビングルがそう言った。

「案内よろしくな。」

ビングルがモンスターの頭をポンポンと叩いた。

「キャウキャウ。」

モンスターが笑顔を浮かべた気がした。

人間が好きなのだろう。役に立ちたいという気持ちで案内をしてくれるのだとデウスは思った。

「よし、それじゃ、行こうか。」

デウスの言葉と同時にフローレ達の罪龍が龍化した。

「さぁ、乗れ。」

しかし、デウスだけ乗らない。

「乗らないのか?」

「あぁ。大丈夫だ。」

デウスは前のめりになる。

背中から二つの凸が出てきた。

背中の皮膚をぶち破り、出てきたのは闇だった。

翼のように広げられた闇はゆらゆらと炎のように揺れていた。

「それは、覊鏖はおうの力か。」

「あぁ。多少操れるようになったからな。」

デウスは宙に浮いた。

「行こう。コクホウ国に。」

「おう。」

「キャウ!」

デウス達は北へ進んだ。


✣ ✣ ✣


空を飛ぶデウス達。異妙な光景だ。

「あとどれくらいだ?」

「キャウキャウ!」

モンスターはあと少しと告げる。

「そうか。」

そのまま進み続ける。

進み続けること約二分。一つの国が見えてきた。

「キャウ!」

どうやらあの国がコクホウ国らしい。

「昔とは違うな。」

デウスはそう言って地面に降り立った。

それに続くように皆が地面に降り立つ。

「ここがコクホウ国か。」

人間の姿に戻ったフローレが言った。

「昔とは随分変わっているけどな。」

デウスは門へと近づいた。

門番はデウス達を見て槍を使い、行く手を阻んだ。

「貴様ら、何者だ。」

「俺達は旅人だ。手紙で招待されて来た。」

「それは誰からだ。」

デウスは一息置いてから発言した。

人部見ひとぶみ 一晟いっせい。」

その名前を聞いた時、門番が躊躇いもなく、槍を退けた。

「そうか。それは失礼した。」

門番は親切に門を開いた。

「ありがとう。」

デウス達は街の中に入って行った。

「ねぇ、デウス。その、人部見 一晟って誰?」

「俺の師匠だ。今はここの最高剣士だとか何とか。」

デウスは周囲を見ながらそう告げた。

「目的の人はその人部見 一晟っていう人でいいの?」

「あぁ。」

すると、デウスが急に足を止めた。

デアは急に止まるデウスにぶつかった。

「どうしたの?」

デアの問いかけにデウスは応答しない。デアはデウスの脇腹から前を見た。

そこには一人の白髪の白い髭を生やした老人が立っていた。

その老人は腰に携えている刀を抜き出した。

老人はデウスに襲いかかった。何一つ声を挙げずに。

デウスは龍鱗ジグラギを抜き出し、老人を迎え打った。

老人は刀を両手で掴み、上部から切りつけてきた。

デウスは片手で大剣を握り、防いだ。

金属のぶつかる音が鳴り響き、風がデア達に強さを尊重した。

地面が抉れる。

「訛っとらんようじゃな。」

「当たり前だ。こちとら怪物と戦ってきたんだ。」

一言ずつ会話を済まし、老人は刀を引いた。

デウスは大剣を鞘に収めた。

それに続いて老人も刀を鞘に収めた。

「久しぶりじゃのう。デウスよ。」

「こちらこそ久しぶりだ。一晟師匠。」

フローレはデウスに問いた。

「この人がデウスの師匠か?」

「あぁ。人部見 一晟。歳も誕生日も不明。分かっていることは″臥龍冴虎構がりごとらがまえ″を主流として戦う老人とその剣の腕前だけ。」

謎が多い一晟。国の最高位人物でさえ未だ分かっていない。

「謎の多い老人みたいな説明は辞めんか。」

「だってそうだろ?最高位人物さえも知らないんだから。」

「まぁ、それもそうじゃな。」

一晟は刀に右手を置いた。

「わしの名は人部見 一晟。子奴の師匠じゃ。皆は子奴の仲間か?」

「あぁ。順に紹介するよ。」

時間がかかる作業になるだろう。

「左から順にデア、フローレ、イリビード、インビディア、シャティス、アブァリティア、ヘルト、ビングル、イラドゥエトス、バグラ、ゾルディブスルクトーリス。」

「よろしくお願いします。」

「よろしく。」

「よろしくね。」

「よろしく頼むわ。」

「……」

「ま、よろしく。」

「よろしく頼む。」

「よろしくな。」

「よろし、くお願い、致し、ます。」

「宜しく御願い致します。」

「うん。よろしく。」

全員と握手を交わす一晟。

「早速じゃが、お主ら全員稽古してやろう。」

「「え……えぇ!?」」

突然の発言に驚きの発言で返す。

「そんなにビビりおって。どうしたんじゃ?」

「師匠が急に全員稽古するなんて言うからだよ。」

「そうじゃったか。悪いのぅ。」

一晟は頭に手を置く。

「ど、どうして急に稽古なんて?」

「お主らが強いかどうかがわしには分からん。じゃから、わしが直々に相手をした強さを図るということじゃ。」

「んな急に言われても、老人を攻撃するなんて。」

「舐められてもらっては困る。」

一晟の眼差しが変わった。真っ直ぐに向けられた眼差しはデア達に向けられた。

「この世界は一言で言って戦場。老人じゃからと言って手加減されてもわしが困るだけじゃ。いいか。例え相手が老人であろうと、子供だろうと、手を抜いてはいけん。強さは見た目だけじゃないんじゃ。本質を見極めるんじゃ。どんな相手であろうと手加減はしてはならない。これだけは覚えておれ。」

熱血に語られたものはデア達の心を動かした。

「そうね。どんな相手にも本気で。」

デアが笑顔でそう言った。

「なら、一人ずつ御指導お願いする。人部見 一晟殿!」

フローレがそう言って、稽古が始まった。

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