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FaTuS;契約譚  作者: 元気ハツラツマン
二章 仲間探しの旅
40/91

第三十話 一夜の宴

✣ ✣ ✣


ヒラナリ国では宴が開かれていた。

もう空は暗く暗黒に包まれていたが、地を照らす星と人間が灯した焚きで辺りは明るい。

その光に集まるモンスターも少なくはない。光に集まるモンスターに害悪はいない。大抵は人間に懐っこいモンスターだ。

「ここまでうるさい晩御飯は久しぶりだな。」

デウスはそう言って水を飲んだ。

「酒飲まねぇのか?」

ヒラナリ国の戦士が話しかけてきた。

「別に飲んでもいいけどあんまり飲みたくねぇんだよ。」

「そいつァ如何してだ?」

「酒に強すぎて一度店の酒半分飲み干したことがある。」

「へぇ。そんなに強いのか。なら尚更飲んでるところ見てみてぇな。」

デウスは少し考えてから言った。

「ま、今日は宴だし、良いか。」

その言葉に戦士は笑顔を浮かべて盃をデウスの前に置いた。

「そう来なくちゃな。若造。」

戦士は盃に酒を溢れるほど注いだ。

デウスは盃を持ち、飲んだ。

「いい飲みっぷりじゃねぇかよ。」

「まぁな。」

そう言ってもう一杯貰うデウス。

それを見たデアは酒に手を出した。

「デアって酒飲めるのか?」

デウスが問いかけた。

「あ、当たり前でしょ?」

そう言ってコップに注ぎ、ぐびぐび飲み干した。

「結構いくんだな。」

デアはコップを地面に置いた。

そこでデウスは異変に気づいた。

「デア、お前、頬赤くねぇか?」

「あかくないわよ。」

呂律が回っていない。デアはかなり酒に弱いらしい。

「お前、酒に弱かったのか。」

「よわくないわよ。」

完全に酔っている。

「お、おい。これ以上酒を飲むのは。」

「だいじょうふらよ。」

これはもうダメだと思うデウス。

『酒飲みてぇなぁ。』

『お前酒飲んだことあんのか?』

『あるに決まってんだろ?昔生きてたんだし。』

『いや、初耳なんだけど。』

『そうだったか?』

デウスは立ち上がった。

「そう言えばレーヴァテインってどこ行ったんだ?」

レーヴァテインはヒラナリ国の戦士が回収したが、その行方は分かっていない。

「ねぇデウスゥ。」

デアがデウスの足にしがみついた。

「これはやったな。」

デウスは頭を掻いた。

「あんちゃん、強いんだって?」

誰かに話しかけられたデウス。

「あ?」

そこに居たのは見たことの無い若そうな男性だった。

「強いんだろ?」

「強いかは知らんが、弱くはないぞ。」

「なら戦ってみるかい?」

「は?」

急展開にデウスが戸惑っていると、

「お?レクがあの英雄に挑むぞ!」

「マジか!こいつぁ見ものだぞ!」

続々とギャラリーが増えていく。

「まためんどくさい事になったな。」

デウスは大きくため息をついた。

「さぁ、あんちゃん。武器を取りな。」

「要らねぇよ。」

そう言ってデウスはデアを引き剥がした。

「なんだい、武器とらねぇのかい?」

「あぁ。なしで大丈夫だ。」

レクという男は武器を取る。

「武器なしだと面白くないけど、まぁいっか。」

レクの武器は槍だ。

リーチは長いが、攻撃力に欠ける武器だ。

「腕硬化。」

デウスの黒紫の腕を見てレクは目を点にした。

「そりゃなんだいあんちゃん。」

「なに。ちょっとした芸当だ。」

レクは笑みを浮かべた。

「じゃあ、行くぜあんちゃん。その腕壊れても怒らねぇでくれよ!」

そう言ってレクは突撃してきた。

槍を勢いよくデウスに突き立てるレクだが、デウスはそれを躱してレクの腹を殴った。

「がっ!」

そのまま勢いよく後方へ吹き飛び、壁にぶつかり、気絶していた。

「やべ、やりすぎた。」

それを見ていたギャラリー達は愕然としていた。

「なんか悪ぃな。やりすぎたみたいだ。」

誰も話を聞かない。誰一人として体を動かさない。言葉すら発しない。

『まじでやりすぎたかな。』

デウスはその場を移動した。


✣ ✣ ✣


デアの隣に座る。

「おい、デア。起きてるか?」

うつ伏せで寝ているデア。

体をゆすぐと、小さく声を出す。

「んん。」

デウスはため息をついた。

「世話のかかる彼女だ。」

デウスは胡座をかき、デアの頭を乗せた。

それに気づいて目を覚ましたデア。

「あ?デウスゥ。」

そう言ってデウスの顔を両手で掴んだ。

「どうかしたか?」

デウスは問う。しかし、デアは返答しない。

デアはデウスの顔を引き寄せる。

「おいおい、どうしたーーー」

言葉はデアに止められた。

唇と唇が重なり合った。

「んん。」

デアは少し経ってから唇を離した。

「急に何をすると思えばお前なぁ。」

デアは溶けきった顔で笑顔を浮かべて笑った。

「ふふ。だいすきだよぉ。デウスゥ。」

酔っていることを知っているデウスだが、それに回答するようにデウスは言った。

「あぁ。俺も好きだよ。デア。」

「はああぁぁ。」

デアは欠伸をした。

「眠かったら寝ていいんだぞ?」

「うぅん。ねるぅ。」

そう言って直ぐ眠りについたデア。

「早っ。」

かなり早い。速攻だ。

「筋肉が強ばってる。かなり疲れていたようだな。」

「すぅ…すぅ…」

気持ちよさそうに寝ている。

「おやすみ。」

デウスはそう言って上を見上げた。

夜の割に明るく感じる。

きっとこの場所が楽しくて面白い場所だからだろう。

「デアは酔いつぶれたか。」

デウスの隣に座るビングル。

「ビングルか。ちゃんと楽しんでるか?」

「そっちこそ、楽しんでるか?」

「質問を質問で返すな。まぁ、ぼちぼち楽しんではいるよ。」

「そうか。それはよかった。」

ビングルは片手に持つ酒入りの瓶を口に運んだ。

「あぁ…やっぱり戦いのあとの酒はいい。」

ビングルは酒に浸っていた。

「明日にはここを出る。」

「早いな。」

「長居はしていられないからな。これも貰ったし。」

そう言ってデウスは人差し指と中指に挟んである紙をビングルに見せた。

「なんだこれ?」

ビングルは紙を手に取った。

「手紙さ。」

「そりゃあ見たら分かるが、如何して?」

「知り合いからの受け取りものだ。」

ビングルは折りたたんである手紙を開いた。

【こうやって手紙を送るのも何年ぶりじゃろうなぁ。お主の成長ぶりは新聞で見たわい。その強さ、お主には覊鏖はおうの力が眠っておる。その力をコントロールするには訓練が必要となる。しかし、お主が自ら訓練をしない訳では無いと思いたい。じゃが、やはりわしも見過ごせないのじゃよ。という訳で、久々に倭国に来んか?倭国ではお主の人気は絶大じゃ。ま、わしがお主の顔を久々に見たいだけなのじゃがな。来るか来ないかはお主が決めるといい。それじゃ、わしはお主が来ることを願っておるぞ。】

ビングルは手紙を折りたたんでデウスに返した。

「この手紙を送ってきたのは誰だ?」

「俺の師匠だ。もう十年は会ってない。」

「この倭国ってのは何処だ?」

「コクホウ国のことだ。あっちの人達は自分達の国を倭国って呼ぶんだよ。」

デウスは手紙をポケットに収めた。

「次の目的地はコクホウ国って訳か。」

「そうだ。少し遠いから明日の朝に行くぞ。」

「了解。全員に伝えてくる。」

ビングルは立ち上がり、フローレ達の元に言った。

「あんたが英雄だね?」

また声をかけられた。

「あぁ。英雄かは知らねぇが、そうだと言っておくよ。」

「これを渡しておく。」

何かを投げられ、デウスは少し焦りながらも冷静に掴んだ。

「これは、」

デウスに投げられたのは鞘だった。

「あんた、カラドボルグの鞘が内容だったからね。作ってみたんだ。良かったら使ってくれよ。」

「ありがとう。良い鞘だ。」

黒い刺繍が入っている。

金色で描かれた龍の絵が目立つ。

重く、そして持ちやすい。

「そうかい。それはよかったよ。」

その人物はその場から去った。

デウスは地面に置いていたカラドボルグを手に取り、鞘に収めた。

金属音が鳴り響き、閉じた瞬間、音がすっと消え去った。

良い鞘の特徴だ。

「上物を貰ったものだ。」

鞘は武器ランクに合うものでないと即座に壊れてしまう。

例えば五ランクの武器が一ランクの鞘に収められたらどうなるか。結果は鞘が壊れてしまう。逆のパターンだと鞘は壊れることはなく、武器に支障が出てしまう。

一ランクの差でさえも許されない。繊細でかつその武器に合うものでないといけない。

革鞘なら八ランクまで対応出来るが、聖剣、魔剣、神器は収めることは出来ない。

革が破れ、武器が落ちてしまう。

聖剣や魔剣は人間が生み出すことが出来ない武器種。自然の摂理が作り出した武器だ。

人間が測れる限界で聖剣が十二ランク。魔剣は十五ランクだ。

聖魔剣、魔聖剣となると軽く二十ランクは越す。高いもので五十ランクだ。

人間は聖剣や魔剣を作ることは出来ないが、それを収めるための鞘を作り出すことは現時点で可能だ。

しかし、それにはかなりの腕前が必要だ。

これを作ったあの人物はかなりの手練であっただろう。

カラドボルグは中間ぐらいだ。武器ランクはざっと三十後半。それを収めることの出来る鞘はそう簡単に作れるものじゃない。

腕の悪い職人がやれば失敗する。腕のいい職人がやっても五日はかかる。

手練の達人が作るとたった数時間で出来る。

今のところ聖剣、魔剣、聖魔剣、魔聖剣の中で一番ランクの高い武器がエクスカリバー、ゲイ=ボルグ、グングニル、クリューサーオール、ブリューナクの五つだ。

これらの武器は危険殺戮兵器として登録されている。

無論、人殺しとして使うのは危険だ。

まず見つけることすら叶わぬ武器だ。

ランクは五十~六十前後。この武器達を収める鞘を作ろうとしても数ヶ月はかかる。手練の達人が作ったとしても数週間はかかるだろう。

神器はその者の使う武器のことだ。

長く使えば使う程人は愛着が湧くものだ。

名前を付け、愛剣として使えばその武器はやがて神器と変わり、聖剣などとも渡り合うことが出来る代物となる。

デウスの大剣、龍鱗ジグラギは神器化してきているが、まだ時間がかかる。最もっと使えば神器としてクラスアップする。

そうなれば革鞘も役目を終えるだろう。

『明日にはここでなきゃいけない。俺も、寝るとするか。』

デウスはデアに寄り添うように眠りについた。

その後宴は早朝まで続いた。

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