第二十八話 ゾルドリオとの再戦
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金属同士が音を立て、雷を走らせる。
「以前より強くなったみたいだな。」
「えぇ。あなたを殺すためにね!」
デアはゾルドリオをはじき飛ばし、追い打ちをかける。
その後ろからバグラが弓に矢をセットし、強く引いた。
ゾルドリオは弓矢にも気づいていた。しかし、今はデアの相手で手がいっぱいだった。
それ程デアが成長したという事だ。
「はああああ!」
斜め上から振り下ろされた刀はレーヴァテインに衝突した。
「戦い方が奴に似ている。」
デアの攻撃を受け止めてそう言った。奴とはデウスのことだろう。
バグラが隙を見つけ、矢を撃ち放つ。
その矢はゾルドリオの真横を掠った。
「外しましたか。」
少し悔しそうなバグラ。また新しい矢をセットする。
ゾルドリオは真横を掠った矢に気を取られ、デアに斬られた。
斬られた部分は右肩だ。右肩は直ぐに再生し、デアを押し返す。
「はああああ。」
大きく息を吐き、息を止めた。
そうすれば体が軽くなり、力が出る。無呼吸が続く限りは。
デアがどんどん押されてきた。
「デア。交代だ。」
その言葉を聞いたデアは何とか耐え、勢いを反転させ、弾いた。
距離を取り、後ろの仲間と交代した。
ゾルドリオはそのまま体勢を崩し、体を戻すのに時間がかかった。
体を沿っているゾルドリオは目で敵を確認した。
ゾルドリオの目に写ったものは穴の空いた金属がこちらに向けられているところだった。
「さて、お前は何回死ねば敗北して貰えるのかな?」
アサルトライフルを二丁構える男が笑いながら引き金を引いた。
その銃口から無数の銃弾が飛び出し、ゾルドリオの体を蜂の巣にする。
しかし、直ぐに再生した。
「巫山戯るなよ!」
ゾルドリオはレーヴァテインを横振りしたが、アサルトライフルを二丁持った男は飛んで交わした。
男は空中にいる時に引き金を強く引いた。
軽い反動だが、二丁もあるため、少し後ろに飛ぶ。
ゾルドリオの体はまた蜂の巣にされた。
直ぐに再生し、睨みつけた。
「くそっ。やはり、拳銃以外も扱えたか。」
「ふんっ。この二丁拳銃の二つ名を持つビングルがこの程度の武器を扱えないとでも思ったか?」
ビングルはそう言って、右手に持つアサルトライフルを肩にかけた。
「ビングル。そこ危ないわよ。」
その忠告を真に受け、ビングルは右に交わした。
ゾルドリオの警戒心はMAXに高まっているが、飛んできたのは女だった。
拳を振り、ゾルドリオを攻撃する。
ゾルドリオはレーヴァテインを前に出し、防いだが、力の強さが異常だった。ゾルドリオは地面に足を引き摺りながら後方に大きく飛ばされた。
「たった二日でここまで強くなるとはな。色欲の罪。」
ゾルドリオを攻撃した女はイリビードだった。
その拳は城を壊滅されるほどだ。
「次は誰が相手になるのかしらねぇ。」
そう言ってイリビードはしゃがんだ。
ゾルドリオはイリビードの上を飛ぶものを見た。
それはジャンプ力の高い筋肉の塊だった。
それは足を上げ、真上から叩き落とした。
ゾルドリオは左腕とレーヴァテインで防いだ。地面は抉れ、小石を衝撃で浮かせた。
「お前は憤怒。」
ゾルドリオはフローレを見てそう言った。
「我の主を殺すとは中々だ。だが、強いのは主だけではない。」
そう言ってフローレはもう片方の足でゾルドリオを蹴った。
横に飛び、何とか体勢を保ったゾルドリオ。
顔を上げた瞬間、その首を跳ね飛ばされた。
即時に再生し、首を跳ね飛ばした人物を見た。
鎌を持った男。その姿はまるで虎を表すかのようだ。
「俺の主をなめると痛い目を見るぞ。」
瞳渾を持って歩いてきたのは強欲の罪、アブァリティアだ。
「その大剣はあの女のものか。よくゴミを使おうと思えるな。」
「ゴミじゃねぇよ。」
そう言って大剣を一振した。
その一振からは斬撃が出、ゾルドリオの胸部を大きく切った。
「何故、治らない。」
傷口が中々塞がらない。
「俺の持つスキル。″傷跡継続″だ。」
傷跡継続とは、回復薬を使ったとしても傷口が治りにくくなるスキルだ。これは再生能力を持つ者にも最適だ。
そのため、ゾルドリオの再生能力が少し遅いのだ。
「クソッタレが!」
レーヴァテインを振ったが、誰にも当たらない。
「ここです!」
そう言ってバグラは矢を撃ち放った。
その矢はゾルドリオの脳天を撃ち抜いた。
貫通し、地面に突き刺さった。その矢は先端から最後部まで血に染っていた。
脳天の傷と胸部の傷が同時に癒えた。
「たった二日でここまで。」
ゾルドリオは油断した。
それを着いて、小さい者が急接近し、ゾルドリオの腹を殴った。
その腹部には風穴が開き、上から血がダラダラ垂れる。
追い打ちを掛けるように顔を蹴って横に吹き飛ばした。
その小さな者は後ろから刃のように尖った翼。程よく伸び、鋭利な爪。青い炎を宿す右眼。龍化したシャティスだ。
「……」
何も喋ることがなく、真っ直ぐ敵を殺すような眼差しをゾルドリオに向ける。
「糞ガキが。いきがってんじゃねぇぞ!」
ゾルドリオの傷口は再生していた。
ゾルドリオはレーヴァテインを振り下ろした。シャティスは片手で受け止め、顎を蹴飛ばした。
力が強すぎて、前頭が吹き飛んだ。
しかし、直ぐに再生した。
「距離を、」
そう言ってゾルドリオは後方に飛んだが、首を矢で射抜かれ、体を蜂の巣にされた。
バグラとビングルのコンビネーションは凄いものだ。
「なんて力だっ!」
再生したゾルドリオは周囲を確認しながらゆっくりと後ろに下がる。
「下がらせないわよ。」
ゾルドリオの目の前には腕があった。
『ヤバい!』
そう思う時にはもう遅く、ラリアットを喰らった。
力が強く、ゾルドリオの体を空中で回転した。
「シャティス!行くわよ!」
そう言ってインビディアはゾルドリオの腹を蹴った。
「ぐはっ!」
後方に飛ばされたゾルドリオを尖った爪で突き抜いたシャティス。
「ぶはっ!」
口から大量の血を吐き出した。
「かなり死んだな。」
ビングルの言葉を聞いてプライドを傷つけられたゾルドリオ。
「切り刻んでやる!」
ゾルドリオは接近し、レーヴァテインを振った。
その標的にされたのはゾルディブだった。
縦に振られたレーヴァテインを躱し、ゾルドリオを蹴った。
「うおぁ!」
後方に飛ばされたゾルドリオ。追撃するようにシャティスが後ろへ飛ぶゾルドリオに接近した。
「なめるなよ!」
シャティスを蹴飛ばし、宙に浮いた。
「なら本気を見せてやろう。」
ゾルドリオはレーヴァテインを上に向けた。
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『暗い。ここは、何処だ?』
男は物凄いデジャブを感じていた。
「起きたか。相棒。」
どこからともなく声が聞こえる。
「俺はどうなったんだ?」
男は声に問いかけた。声は笑って返答を返した。
「殺されたんだろ。ゾルドリオっていう魔神族に。」
「あぁ。そうだったな。」
そう言って男は座り込んだ。
「何してる。」
「俺は死んだんだろ?なら俺の役目はここで終わりだ。」
男は自分の死を受け入れて眠りにつこうとしていた。
「何言ってんだよ。相棒はまだ生きてる。」
「…は?」
生きているという言葉に矛盾を感じた男。
「え?俺は殺されたんじゃないのか?」
「そう思っていたけど、生きてる。」
男も声もよく分からないことになっている。
『!?』
男の目にあるものが写った。
それは男の嘗ての仲間達だった。
「コクド!?如何して!?」
「本当に、お前は情けないなぁ。俺達の仇を打ってくれるんじゃなかったっけ?」
「そうだが、俺は死んじまったし。」
「だから死んでないって。俺達が何とかしといたから。今からでも体を動かせる。」
「こんな情けない俺に如何してそこまで。」
「そんなのひとつしかねぇだろ。」
男の目に写っている三人の仲間は同時に言葉を発した。
「「「デウスに勝ってほしいからだ!」」」
三人の笑顔が光に呑まれていった。
その言葉を聞いた途端、光に飲み込まれた。
光が少しずつ無くなり、目を開くことが出来た。
そこは部屋の中だった。
少し薄汚れた白い天井。少し硬いが確りと体を支えてくれるベッド。
「ここは、ギルド本部の宿泊場所。」
見覚えのあるものがその答えを導き出した。
『相棒。今外でドンパチやってる見てぇだぞ。行くか?』
「いや、まだ行かない。」
『何故だ?』
「あるものを手に入れる。」
『あるもの?』
「俺の考えを読み取れるお前なら何をしようとしているか分かるだろ?」
『まさか、』
「あぁ。そのまさかだ。」
男は体を闇に取り付かせ、黒き防具を装着した。
そして『不制御狂乱暴君者』を発動させた。
何とか制御し、そこから離れた。
男の目的は一体なんなのだろうか。
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「オラアアア!」
ゾルドリオの攻撃を受け、国の戦士が半数やられた。
「「ぐああああ!」」
本気を出したゾルドリオ。流石は魔神族と言ったところだろうか。
「やあああ!」
デアの攻撃を受け、弾き返し、追い打ちをかけた。
フローレがそれを助け、イリビードがゾルドリオの攻撃を防いだ。
しかし、それもやられ、地面に衝突した。
「かはっ!」
フローレが二人を上にし、地面に衝突したのはフローレだけになった。
「!!!」
ビングル達の体が動かなくなった。
「体を鍛えても、覊繃には耐えられないのかっ!」
「本気の俺を倒したいなら覊禍のひとつやふたつ覚えてくるんだな!」
フローレはゾルドリオの顔面を殴り飛ばしたくて仕方がない。しかし、体が言うことを聞かない。
「さて、そろそろ終わらせるとしよう。」
ゾルドリオはレーヴァテインを天に掲げた。
「どうして、デウスの仇すら打てないなんて。」
悲しさを抑えきれずに言葉を漏らすデア。
「まだ死人に心を寄せているか。お笑いものだな!」
ゾルドリオの笑いに対し、悔しくて涙を流すデア。
「直ぐにやつの元に連れてってやるからよ!」
ゾルドリオはレーヴァテインを振り下ろした。
デア達は、国の戦士達は死んだと、もう終わりだと思った。
目を瞑り、一瞬の死を覚悟した。
と、その時、金属がぶつかる音がした。
「お前は!」
デア達はゆっくりと目を開いた。
ゾルドリオの攻撃を防いだ黒い防具を纏う人間。
その人間の手には剣があった。
デア達はその防具を纏った人間の正体を知っていた。
「「「デウス!」」」
「待タセタナ。遅クナッタ。」
ゾルドリオの攻撃を受けながらそう言い放つデウス。
「お前、何故生きている!」
「ナニ。死ンダ仲間ニ助ケテモラッテナ。」
そう言ってゾルドリオを地面に叩き落とした。
砂埃の中でゾルドリオは立ち上がった。
「ヤッパリレーヴァテインニハコレガ一番ダナ。」
「お前、その武器は!」
デウスが手にしている武器の名は、
「カラドボルグ!」
光を討ち滅ぼし、闇を生み出し新たな世界を生み出す程の力を持つエクスカリバーの祖剣。カラドボルグ。
その武器は聖剣と魔剣の区別がつかないと言われる。神すら触れることが出来ない討ち滅ぼしの剣。
「それをどこで見つけた!」
「エクスカリバーヲ探シニ行ッテモ無クテナ。ソレデ代ワリニ見ツケタノガコノカラドボルグッテ訳ダ。」
聖剣や魔剣の初期を表す剣、カラドボルグ。
これはいくらレーヴァテインとて簡単に勝つとはいかない。
「ジャア、ラウンド2トデモ言オウカ。再戦ダ!ゾルドリオ!」
カラドボルグをゾルドリオに向けたデウス。
ゾルドリオはレーヴァテインを握り締めた。
「なめるなよ。人間風情が!」
ゾルドリオはデウスに突撃した。




