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FaTuS;契約譚  作者: 元気ハツラツマン
二章 仲間探しの旅
37/91

第二十七話 特訓の二日間

✣ ✣ ✣


風のそよぐ音が静かに記憶を撫でる。

暗闇に小さく光が差し込み、ゆっくりとその光を拡大させた。

デアは目覚めた。バッドタイミングとでも言おうか。

デアの周りにはフローレ達がいた。

「目覚めたか。」

「戦いは!」

デアは急いで起き上がった。

「終わったわ。」

イリビードがそう告げると、デアは座り込んだ。

「そう。終わったのね。」

そこで気づいたようにデアは問いた。

「デウスと、刀は?」

その問いかけに誰もが黙り込んだ。下を向き、嫌な報せでもあるかのような顔だ。

「ど、どうしたの?」

デアは何が何だか分かっていなかった。

それもそのはず、目を覚ましてみれば戦いが終わっているのだから。

「……」

フローレはそっと後ろを向いた。

デアはフローレの向いた方向を目で追い、凝視した。

そこでデアはすっと息を飲み込み、口を震わした。

目で追った先にあったのは刀と、デウスの死に姿だった。

その近くにはジャンヌの死体もあった。

デアは立ち上がり、デウスの死体に近づいた。

誰もその後ろを着いて行こうとせず、ただただその場で暗い顔をしていた。

デウスはうつ伏せで倒れており、床には大量の血液と引きちぎれた血肉があった。

デウスの死体の前にたったデアは言葉を失い、膝を着いた。

二度にわたってのデウスの死。

その辛さはデア以外にも降り注いだ。一度目の死を知らない者もいるが、主将の死は絶大なる悲しみと辛さだ。

デアはそっとデウスを抱き起こした。

少し笑った顔のデウス。目を閉じ、頬が少し上がっている。

血の出ている口元、心臓の血はデウスの体を染め上げ、半分が血に染っていた。

デウスの笑顔にデアは涙がどうしようもなく堪えられなくなり、大粒の涙を頬に伝わせる。

流れる涙を拭いもせず、デウスをずっと見ていた。

その涙はデウスの顔を濡らす。

「あああ、ああああああ!」

デアは大声を出して泣き叫んだ。

その声を聞いて、フローレ達はさらに暗い顔になった。

イリビードやインビディアは涙を流し、ぐっと悲しみを堪えた。

「ねぇ、お兄ちゃんどうなったの?ねぇ。」

シャティスのその言葉にインビディアは更に涙を流し、シャティスを抱きしめた。

文字や形にならない悲しみは人の心を蝕み、地獄に汚染される。

デアは泣きながら自らを責めた。どうしてまた助けられなかったのだろうと。


✣ ✣ ✣


長時間泣き続け、漸く落ち着いたデア。

重いデウスを抱き抱え、立ち上がったデア。

後ろを向き、フローレ達を見た。

イラデゥエトスは顔を上げ、フローレ達に言った。

「二日後、また、あの魔神族ディアヴォルが、やって来ます。」

デア達は頷いた。

「なら、デウスさんと、ジャンヌさんの、仇を取りましょう。」

フローレは顔を上げた。

「あぁ。二日後、全員でデウスとジャンヌの仇を取ろう。」

全員が頷き、団結した。

その時、地面に何かが突き刺さる音が聞こえた。

デア達は一斉に後ろに振り返った。

そこには地面に突き刺さったデウスの龍鱗ジグラギとジャンヌの瞳渾メビウだった。

武器がひとりでに動くことは稀にある。

デア達はかなり驚いた表情をしていたが、デアが大剣に近づき、地面から引き抜いた。

すんなりと地面から引き抜けた大剣。

重くない。ほとんど太刀と同じ重さだ。

龍鱗ジグラギが放つ熱は高温で、近づくだけで服が燃えるほどだ。

しかし、それを簡単にデアは持った。

そこでデアはあることに気づいた。今デアは大剣を左手で持っている。左手の甲にはフローレの紋章があった。

デウスは熱耐性がかなり高かったが、それでも肌が溶かされる程だ。それに憤怒の紋章が加わったことで熱に対する完全耐性がついたのだ。

今現在デアはほとんどの熱エネルギーに耐性がついている。

その大剣からは怒りとやる気を感じる。

それは龍鱗ジグラギが放つ熱から感じられる。

『これが、武器の気持ち。』

デウスと龍鱗ジグラギはいつも熱エネルギーで感情を通わせ、コンビネーションを取り、敵と戦っていた。

その事を知れてデアは少し嬉しくなった。

「やろう。デウスの仇を取るために。」

デアの言葉に反応して龍鱗ジグラギはかなりの熱を放ち、やる気を見せた。

瞳渾メビウを引き抜いたのはヘルトだった。

この大剣も重さは絶大だったが、軽く感じる。

自らの身を主の知り合いに託したのだ。

「これから二日間、勝てるように特訓しよう。」

デアの意見に満場一致で賛成。否定するものはおらず、やる気を見せている。


✣ ✣ ✣


これから二日間に渡る特訓が始まった。

デアは二刀流に慣れる為に長い時間国の剣士と手合わせしていた。

フローレは体全てを強化するために筋トレや爆速走行をして体をいじめ抜き、鍛えた。

イリビードは武器をデアに渡しているため、拳を鍛えることにした。木やコンクリートを殴って拳を強化させた。

ヘルトは鎌の力を更に発揮させるために剣術の腕と体を鍛えた。

アブァリティアは瞳渾メビウを使って一通りの剣の扱いを覚えた。

インビディアは拳を鍛えた。最初から拳での戦いには慣れていたインビディアは、木やコンクリートではなく、鉄を殴って拳を鍛えた。

シャティスはインビディアを真似て訓練し、形も技もそれなりに良くなった。

ビングルは銃のスキルを強め、拳銃から武器を変え、アサルトライフル二丁になった。

イラドゥエトスは九つの罪龍の中で唯一できる半人半龍を極めた。失敗すれば体に損害な障害が出てしまう危険なものだ。イラドゥエトスはそれを極めた。

バグラは弓を扱うことにした。目が良いため、それを利用して弓を使えるようにした。

ゾルディブは神経を研ぎ澄ませ、あらゆる攻撃にも対応出来るようにし、それに加えて片手剣を使えるようにした。

まずはデアの特訓の様子だ。

国に魔神族ディアヴォルの進行を伝え、特訓を依頼した。

国はデア達がいる時はだいたいトラブルが起きると感じていて、その依頼を受け、国の戦士も同時に鍛えようと考えた。

しかし、弱い戦士はデアに剣先すら触れれずに倒されてしまう。

だから国の上位戦士と戦わせた。

「二刀流とは、珍しいものですなぁ。」

年寄りの剣士だが、何度も国を救っている英雄だ。

「ある人の形見を使って倒したいと思いましてね。」

「辛い思いをしたんでしょうなぁ。ですが、めげずに特訓をしている所が今の貴女の良いところですぞ。」

「仇は確り取る主義なので!」

デアは言葉の途中で攻撃を仕掛けた。

老人に片手で止められてしまう。

かなりの力を込めて打ち込んだ攻撃だが、楽々に止められた。

「強い力を込めているようじゃが、力だけでは無理じゃぞ。」

「なら、どうすれば?」

「二刀流を教えるのは初めてなのできちんと教えられるか不安じゃが、教えよう。」

こうしてデアは力をあまり駆使しないように教えを受けた。

次はフローレだ。

フローレの筋トレ、爆速走行の練習メニューは腕立て伏せ、腹筋、背筋、倒立腕立て、片手倒立腕立て、片足スクワット、超長距離ジャンプ、手バージョン超長距離ジャンプ、連続バク宙、片足連続バク宙、連続前宙、片足連続前宙、五十メートル五秒往復の十三個。

腕立て伏せは連続千回。腹筋は足に支え用の重石を乗せ、千回。背筋も千回。倒立腕立ても千回。片手倒立腕立ては少し減らして八百回。これを右手と左手に両方。片足スクワットは五百回。これを右脚と左脚両方。超長距離ジャンプは縦に十キロジャンプする。手バージョン超長距離ジャンプは半分の五キロ。連続バク宙は百回。片足連続バク宙は五十回。連続前宙は百回。片足連続前宙は五十回。五十メートル五秒往復は百回。これ全てを五セット続ける。

次はイリビード。

イリビードは木やコンクリートを用意してもらい、それを拳で砕き割る。拳が疲れてきた場合は足で割る。

これを長いことやっていると体にも影響を及ぼす。

そのため、この特訓方法はかなり実用的だ。

次はヘルト。

ヘルトは軽い腕立て伏せと腹筋をして、その他は鎌の能力の発揮だ。

「こいつは、体に来るなっ!」

やはり最上級剣士武器。一振するのに根気と体力を奪われる。それに能力の解放にもかなりの時間がかかる。

名前を付けるのが能力を解放するのに一番手っ取り早いが、その分力のズレが生じ、倍以上の特訓を要される。

そのため、ヘルトは自らの肉体を強化させつつ鎌の力を最大限に発揮できるように特訓した。

次はアブァリティア。

剣の扱いは初めてで慣れない。

かなり大変だ。

「難しいな。」

たまに大剣が助けてくれるが、助けてくれない時もある。

その時は自らの主として強くなって欲しいということだろう。

次はインビディアとシャティス。

国に用意してもらった鉄をインビディアは殴って砕いた。

それを見てシャティスは空間を殴った。

すると、小さく波動が現れた。

その波動は素質の現れ。シャティスは格闘の素質があるようだ。

「お母さん。もう少しそれ私に教えて。」

「いいよ。」

インビディアは教える側と特訓を交互にこなしていた。

シャティスはインビディアのやり方や言葉を聞いて真似し、戦えるまでにはなった。

次はビングル。

二丁拳銃では火力不足だと感じ、国で売っているアサルトライフルを二丁買い、それを主流にして戦うことにした。

連射速度が早く、それでいて反動も大きくない。それに申し分ない火力。

チームの火力不足を少しでも減らすためにアサルトライフルを選んだ。他にもレールガンやマシンガンなどの超火力性能の銃もあったが、連射速度や反動が強かった。

二丁と考えるとアサルトライフルが一番最適だった。

次はイラドゥエトス。

九つの罪龍で唯一無二の全戦闘面に置いて力を発揮できる一位の龍。その唯一無二の存在が更に根気を入れて練習したのが半人半龍。別名、別種同化。

魔神族ディアヴォルにも天神族ディーイルンガチェレスタにも出来ない変化だ。

この力は一度手に入れると覊禍きがが習得出来なくなるという効果を持っている。

これを出来るのも憂鬱の罪龍だからだ。

次はバグラ。

離れた距離から狙いを打ち落とせるように弓を使った。

最初は十メートル。クリアして次は二十メートル。どんどん距離を離していく。

今現在バグラが挑戦している距離が五千メートル。五キロ先の的だ。

ここまで来ると弓の扱いを極めた妖精族エルフでないと当てるのは難しい。

「……」

バグラは黙り込み、ゆっくり糸に矢を置き、後ろに引っ張る。

バグラの目には的が見えている。

バグラには弓矢の才能があり、妖精族エルフ並の目と命中率を持っている。

矢の飛ぶ速度や落ちる地点を正確に把握し、強く糸を引っ張る。

弓を上に向け、矢を撃ち放った。

矢は的へ一直線に飛び、ど真ん中に命中し、貫通した。

弓の腕は確かだ。

最後はゾルディブ。

神経を研ぎ澄まし、あらゆるものを予測する。

バグラがたまにゾルディブに背後から矢を撃ち放つ。音を立てず、バレずに、息を、気配を殺して。

ゾルディブの頭を狙った矢。

ゾルディブは頭を左に傾け、頭の横を矢が通り過ぎる直前、ゾルディブは矢を受け止めた。

かなりの速度が出ていた。それを手で止めたゾルディブ。

バグラは弓を横にし、矢を五本持ち、撃ち放った。

ゾルディブはそれを全て片手剣で弾き返した。

全員かなり成長した。

二日間特訓をしてデアは国の英雄を倒せるまでになった。

フローレはメニューをたった数時間で出来るように。イリビードはコンクリートを二十枚重ねたものを風圧のみで壊すことが出来るようになった。

ヘルトは鎌の力を極め、能力を解放した。それを難なく扱える。

アブァリティアは大剣を自由に扱えるようになった。力を解放したヘルトと互角に戦えるまでに。

インビディアとシャティスはかなりの成長だ。インビディアは鉄を五十枚重ねたものを一撃で全てをかち割ることができるようになった。シャティスは形も良くなり、インビディアに一撃入れると、インビディアは後方に少し押される程だ。

ビングルは近距離遠距離全戦闘面で活躍できる程に。イラドゥエトスは半人半龍を完璧に磨き上げ、半人半龍の状態の極みの力を出せるようになった。

バグラは十キロ先の的を射抜くことが出来た。それ以上の距離は流石に辛い。ゾルディブは完全に敵の思考を小枠することが出来た。

これでならゾルドリオとも戦える。

国は全力を尽くすつもりだ。

勿論デア達も本気を出すつもりだ。

「何かが急接近してくるぞ。」

ゾルディブの言葉に全員が警戒した。

すると、何かがものすごいスピードで地面に衝突した。

砂埃が舞い、前が見えない。

「三日前とは違うな。簡単に死ぬ気はないようだな。」

砂埃が晴れ、抉れた地面の中心にあの男はいた。ゾルドリオだ。

「全員ここで死ね!」

ゾルドリオは最初からレーヴァテインを出した。

「デウスの仇を打つ!」

デアはそう言って、地面を蹴った。

それを見て、ゾルドリオも地面を蹴った。

デアとゾルドリオは衝突し合った。剣同士を軋ませて。

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