第二十四話 特殊スキル
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体の調子は順調。異常はない。
取り敢えずデウスのしなければいけないことは闇を制御することだ。
あの訳の分からない存在のことも気になる。
『神を殺す者か。』
その部分に何ぜか引っかかる。
「ぼーっとしてどうしたの?」
考え事をするデウスにデアが声をかけた。
「いや、少し考え事をな。」
「不安なの?」
「……少しだけな。」
この世で随一を争うほどの怪物。魔神族は弱い奴もいれば強い奴もいる。弱い奴はとことん弱いが、強い奴に関しては天神族を数体同時に相手に出来る。今回来る魔神族比較的強い方らしい。
デウスは随時神を殺す者と対話できるようになった。
『まだ名前を言わないのか?』
『言わねぇよ。』
『なんて呼べばいいかわかんねぇじゃねぇかよ。』
『適当に呼んでくれや。適当に。』
『その適当が分かってねぇんだよ。』
呆れてため息をつくデウス。
「疲れでもあるのか?主。」
ため息をつくデウスに話しかけるフローレ。
「え?あぁ。いや、大丈夫だ。」
「そうか?」
その場は乗り切った。
フローレもそれ以上は追求しなかった。
『別にいいじゃねぇか。バラしても。』
『そうだけどなぁ。念の為だ。変な奴に聞かれるのも面倒だしな。』
『そうか。取り敢えず頑張んな。』
その後神を殺す者との対話は途切れた。
デウスは力をつけるために大剣を振るいに振るった。
かなりの重量がある大剣。筋力がなければ持つことも出来ない超重量大剣。
鎌といい勝負をしそうな程だ。
「デウスはスキルを使わないよな。」
「あぁ。大体自分の力で戦うからな。」
スキルは誰もが習得出来る技みたいなものだ。武器にあったスキル。武器特有のスキル。身体などを強化するスキルなど様々だ。主に知られているのが『身体能力上昇』だ。
誰でも習得出来るスキルのひとつだ。筋力や速度、反射など様々な体の状態を上昇させるスキル。
デウスもデアもビングル達もこのスキルは取得している。
しかし、この『身体能力上昇』は使い方によっては諸刃の剣となってしまう。
デウスはスキルを多く習得しているが、使うことがない。
「デウスは特殊スキルは持ってないの?」
「特殊スキル?」
特殊スキル。簡単に言えば世にひとつしか存在しないスキルのこと。
あまり知られていないため、デウスは知らない。
「えぇ。私の『氷結剛塊』は知ってるわよね?」
「あぁ。それがどうしたんだ?」
「このスキルはこの世界にひとつしか存在しないスキルなの。これのことを特殊スキルって言うのよ。」
ジャンヌの習得している『氷結剛塊』。あらゆるものに氷結が付着し、剛塊に変化させ、行動を取らせないスキル。
「多分俺は持ってないと思うが。」
「そう。でも特殊スキルは習得している方がいいわよ。」
特殊スキルには二パターン存在する。
一パターン目は意識。発動を促すことによりスキルを使用することが出来る。これは一般的なスキルの特色だ。
二パターン目が無意識。発動を促さずとも発動してしまうスキル。この無意識には随時発動と危機察知発動の二つがある。
一つ目は文字通り随時発動される。二つ目は自らの危機、危険を察知して発動される。
無意識スキルは数が少なく、あまり見かけない。
ジャンヌの『氷結剛塊』は意識スキルだ。
「デアは特殊スキル持ってるのか?」
デウスが問いただす。
「持ってるよ。」
「なんてスキルなんだ?」
「『死灰』よ。」
『死灰』は意識スキル。まるで灰のような粒子を振り撒き、それに触れた部分は腐り、死んでしまうというスキルだ。この効果は人にしか発揮されない。
「なんか怖そうだな。」
「私も思ったわ。」
このように、特殊スキルにもあらゆるものが存在する。
『俺の特殊スキルか。』
特殊スキルは誰もが最初から取得、習得しているのではない。
気づいた時には習得していたという事例が多い。逆に自ら習得したという事例は少ない。
『知りてぇのか?』
「え?」
神を殺す者が急に話しかけてきて、デウスは驚き、不意に声が出てしまった。
「どうした?主。」
「いや、なんでもない。」
言葉を掛け、その場は乗り切った。
『で?それはどういう意味だ?』
『そのままの意味さ。』
『お前は俺の特殊スキルを知っていると?』
『あぁ。』
神を殺す者はデウスの特殊スキルが何か知っているらしい。デウスも感じ取れるが、いまいち感じ取りにくい。
『どんなスキルなんだ?』
『特殊スキルの中でも上位に君臨するスキル。その名は『不制御狂乱暴君者』。』
『不制御狂乱暴君者』。特殊スキルの中でも上位に君臨すると言われる驚異のスキルだ。
自らの意志を遮断し、破壊のままに動く暴君と化してしまう。敵も味方もまとめて葬る。『不制御狂乱暴君者』の発動中はジョブ関係無しに武器を使用出来る。ジョブが剣士であろうと弓や銃を使うことが出来る。魔法は使用不可能。この特殊スキルが発動されている間使用者は傷口が一瞬で癒える。心臓を貫かれない限り死に至らない。遠距離攻撃、スキルは一切通用しない。例えスキルに必ず殺すことが出来ると効果が存在したとしても。一時間経てば自動的に元に戻る。すぐ様『不制御狂乱暴君者』を使用することは出来ず、一時間のクールダウンが必要となる。
『『不制御狂乱暴君者』?』
『あぁ。それが相棒の特殊スキルだ。』
『不制御狂乱暴君者』は意識と無意識の両方だ。
発動を促すことも出来るし、自分の危機、危険に勝手に発動する。
「デウス?何止まってるの?」
「んあ?あぁ。悪い。考え事してた。」
「しっかりしてね。もうすぐ魔神族が来るって時なんだから。」
「あ、あぁ。」
デウスは大剣を振りながら思った。
『これは無闇に使わないようにしよう。』
出ないとデア達も殺してしまう。
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あれから二時間が経過していた。
魔神族が来る気配は全くない。
「来ないな。」
「来ないね。」
「来ない。」
「来ないねぇ。」
「来ないなぁ。」
「来ませんね。」
「来ないわね。」
「来んなぁ。」
「来る気配ないな。」
「来ま、せんね。」
「来ねぇ。」
「来ないよ?ねぇねぇ。」
「来るの?」
『……』
全くどうなっているのか分からない。来ると言っていた神を殺す者も黙り込んでしまった。
『おい、来るんじゃなかったのか?』
『…そんなすぐに来れる程の距離じゃねぇよ。』
神を殺す者は待つことを勧めた。
先ずデウス達は距離なんて全くわからない。ここから何キロ離れているかも全く掴めない。
『取り敢えずもう少し待て。もう少しで来る。』
デウスは信頼を失ってきた。
練習を初めて二時間も経っているのに来る気配もない。
迷信なのではないかと感じ始めた。
デウスが立ち上がった途端、何かを感じた。
物凄いスピードでこちらに向かってくる何か。
『気づいたか。』
全員が立ち上がり、上を見上げた。
怪物的憎悪を感じる。
体をビリビリ震わせる何か。それと同時に何故か恐怖を感じない。
しかし、戦いの高揚感は顕在していた。
戦い好きのデウスとジャンヌを震わすもの。
今すぐにでも戦いたいという昂り。
そしてデウスとジャンヌの脳裏をぐっと掴んだ。
大剣を持たずには居られない。この戦いを楽しまないものはただのヘタレだと。
何故かそう感じるデウスとジャンヌ。
デウスは即座にその場を離れた。
魔神族がデウス目掛けて真っ直ぐ飛んできているのが分かったからだ。
そのデウスを見て全員間隔を空けてその場を去った。
デウスとジャンヌだけが大剣を引き抜いた。
金属同士が擦れ合い、戦いの高揚感を唆る。
デウスは大剣を前方に大きく振った。
魔神族が丁度デウスの前に現れたところだった。
大剣は魔神族に止められた。
「よう。魔神族。」
「初めましてだ。人間。」
黒い邪気を放つ大鎌を持った魔神族。デウスの大剣を受け止め、ギリギリと音を立てていた。
「会って早速だが、貴様に死んでもらう。」
「こっちは一人じゃねぇんだ。先にお前を殺す。」
デウスと魔神族が同時に距離を取った。
「我が名はゾルドリオ!ゾルドリオ・べーゴスだ!貴様を殺す!」
「俺の名はデウス!デウス・ペンドラゴン!殺られる前に殺ってやる!」
デア達は武器を構えた。
金属音が鳴り響く。
デウスは地面を蹴り、ゾルドリオに接近した。
「来い!強き人間!その強さをぶった斬ってやる!」
「オラァァァァ!」
大剣と大鎌が衝突し合い、衝撃波が生まれた。
地響きがおき、地面が抉れた。
「ぶった斬れない強さをぶつけてやる!」
大剣と大鎌の間に雷が走る。
デウス達とゾルドリオの戦いが今始まる。




