第十八話 戦場
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先に武器を抜き出したのはギクスだった。
腰にかけた銀色に輝く細い剣。
赤い鱗が携わっている細剣。龍の素材を使っているようだ。
「この大会は殺しもありだ。」
親切に教えてくるギクス。
その事を聞いた途端、デウスの緊張はほぐれた。
「そうか。」
大剣を抜き取り、燃えたぎらせる。
「なら楽だ。」
顔を斜めにし、ギクスを見てニヤリと笑った。
不気味な笑みを浮かべるデウスを見てギクスも笑う。
「手加減はしない。」
ギクスの構えに微塵も余裕を感じられない。
デウスは腰を落とし、左掌に柄頭を当て、ギクスに大剣を向ける。
左向きの体を張り、戦う意志を示す。
ギクスが何も言わず、飛び出す。
突き刺すように細剣を振るう。
デウスは予想通りだった。細剣は突きに特化した武器だ。
切り刻む武器ではない。
デウスは細剣の一撃目を躱す。
二発目が来る前に、細剣を大剣で弾いた。
腹を切り裂くように大剣を振る。
ギクスは仰け反る体勢からブリッジを披露し、大剣を回避した。
そのままバク転から突きに派生するギクス。
実力はある。軟体さも武器扱いも。でも、一つだけ欠けている部分があった。
それは距離だった。
ギクスは自分の攻撃が当たる範囲で戦おうと接近するが、引きが感じられない。
敵に攻撃をしてと言っているようなものだ。
デウスはギクスを蹴飛ばした。
もろに喰らうギクスは吹き飛ぶ。
「接近しすぎだ。距離を取れ。」
そうアドバイスをするデウス。しかし、その言葉も無意味にするように距離を詰める。
デウスは大剣を打ち落とす。
ギクスは顔の上に大剣があることに気づき、右側に転がって躱した。
デウスの大剣は地面を抉り彫る。
ギクスは体勢を整え、細剣をデウスに突き立てた。
デウスは左脇腹に流し、躱す。
ギクスは細剣を横に振った。軌道上にデウスの横腹があった。
デウスは大剣を地面から抜き出し、ギリギリ細剣を防ぐ。
ジリジリと軋み合う大剣と細剣。
「中々やるな。」
ギクスの言葉にデウスは笑みを浮かべる。
「こちとら主なんだ。これぐらい出来ないと龍なんて怪物相手にできるか。」
ギクスは力を強めた。
デウスも地面を強く踏み締め、耐える。
「はあああああ!」
デウスの大剣は細剣を打ち返し、斜め下に振り下ろされた。
ギクスは後退したが、肩に少し亀裂が入った。
深くはないが、出血は免れない。
「重い。」
一撃の重さを見で実感し、少し圧倒される。
「まだやれるよな?」
デウスの問いにギクスは笑う。
「当たり前だろ。こんなことで押されてちゃ冒険者じゃない。」
やる気を出すように見せかけているが、実際は痛みで倒れそうなギクス。
熱を持つ大剣に切りつけられて肉を焼かれる。痛くないわけがない。
それでも戦う精神を持つギクス。
デウスは熱を放つ大剣を肩に置く。
肩からは煙が立つが、焼けてはいない。
シューという音が鳴り響いた。
「俺から行くぞ!」
デウスは地面を蹴り飛ばした。
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デウスの大剣はギクスの脳天を狙う。
ギクスは細剣で流す。頭すれすれを大剣が通る。
デウスは下に力を押した。耐えるギクスの地面は抉れる。
「なんて馬鹿力だっ。」
耐えるギクスが力を前にして圧倒されている。
「これを耐えるのもどうかと思うがな!」
言葉の語尾を強くし、力を上げた。
地面には穴が生じ、ブロック型に地面が壊れ始める。
「くっ!」
押されてきたギクス。デウスはさらに力を上げる。
ギクスは等々力を使い果たし、地面に叩きつけられた。
細剣はバラバラに砕けた。
「そこまで!」
審判が場に入り込み、試合の決着を伝えた。
「勝者!デウス・ペンドラゴン!」
デウスは大剣を背に収めた。
そのまま場に背を向け、開いた門に足を向けた。
デウスは暗闇に消えた。
ギクスは立ち上がった。
バラバラに粉砕された細剣を見てギクスは笑う。
「デウス・ペンドラゴンか。化け物じみてるな。」
砕けた細剣を鞘に収め、その場を抜けた。
デウスは控え室に戻った。
「どうだった?」
そう聞いてくるジャンヌ。
「ここに帰ってきてんだから分かるだろ。」
「そういう事じゃなくて。」
ジャンヌが聞きたいことは別の事。
「ギクスっていう人強かった?」
ギクスについて聞きたかったジャンヌ。
「強かったよ。」
そう一言で済ませるデウス。ジャンヌはもう少しコメントが欲しいと言って頬を膨らませる。
「良いだろ別に。」
そう言ってポケットに手を入れた。
またまたドアが開き、ジョンが入ってきた。
「おつぎはジャンヌ・ペンドラゴン選手対バルバト・デクノロズ選手。」
二回戦目はジャンヌが出場。
「それじゃ、ちゃちゃっと終わらせてきますか。」
「姉さん。程々にな。」
そう声を掛けたデウスに手を振り、部屋を出た。
ジャンヌはジョンについて行く。
バルバトもその後ろから着いてきていた。
ジャンヌはあるくらい場所に立たされる。
門の所だろう。
バルバトとジョンはまた移動を始めた。
それから数分間自分の大剣の調子を見たりして時間を潰していた。
突如、門が開き、光が差し込む。
ジャンヌは大剣を背に収め、歩き出した。
定位置のことについてはデウスの戦闘中に教えられていたため、すぐに定位置に着く。
奥からバルバトが歩いてくる。
今にも鎧を壊しそうな筋肉が光によってさらに大きく見える。
バルバトも大剣を装備している。
「互いに準備はよろしいか?」
デウスの時とは違う者が審判に上がっていた。
ジャンヌは頷き、バルバトは大剣を抜いた。
「それでは、開始!」
審判はその場を離れた。
その途端、バルバトが体の力を抜いた。
「一つ頼みがある。」
「なに?」
「降参して欲しい。」
何故そんなことを聞くのか物凄く疑問に思ったジャンヌだった。
「・・・・・どうして?」
「女を傷つける趣味はない。」
ジャンヌはため息をついた。
「あんたなんかに傷つけられるほど私甘くないわ。それに、ここはコロシアムよ。殺し合いの場。降参しろなんて言うのはもとより皆無なのよ。」
バルバトは笑みを浮かべる。
「それもそうだな。なら、本気で行く。」
「はいはい。来なさい。」
そう言うジャンヌは全くとして大剣を取ろうとしない。
バルバトはすきととり、突撃した。
大剣を横に振った瞬間だった。目の前にいたジャンヌが消えていた。
「遅いわね。デウスより遅い。」
バルバトを後ろから見るジャンヌ。距離はほぼない。
「馬鹿に、するな!」
バルバトは後ろに振り向くと同時に大剣を振る。
それを難なく黒い大剣が止めた。
「な!」
「力は申し分ないけど、テクニックとスピードがないわね。」
ギリギリと軋む大剣。
バルバトはさらに力を込める。
ジャンヌは全く動じず受け止めている。
バルバトは両手で押しているのに対し、ジャンヌは片手で耐えている。
ジャンヌは大剣を地面に勢いよく叩きつけた。
大剣同士が削れ合い、バルバトの体が浮く。
「とりあえずは右肩ね。」
ジャンヌの大剣がバルバトの右肩を切り裂く。
血を吹き出し、大きな亀裂を肩につけられたバルバト。
屈辱的だ。女性に傷をつけられたことなど今までなかった。
「舐めやがって。」
「別に殺してもいいけど。本気を出す程でもないね。」
ジャンヌはバルバトの腹元に柄頭を近づけた。
「さよなら。」
そう言って、柄頭を当てた。
バルバトは後方に吹き飛び、壁に激突した。
バルバトは立つことはなかった。
「勝負あり!」
審判が止めた。
「勝者!ジャンヌ・ペンドラゴン!」
圧倒的な強さ。圧倒的余裕さ。
契約者程だ。
ジャンヌは黒い大剣を背に収め、その場を去った。
控え室に向かい、ドアを開いた。
「早かったな。」
「弱かったのよ。」
そう言ってデウスの隣に立つジャンヌ。
それから別の人が試合を始めた。
ほかの試合も早く済んでいた。
軈て、人数が少なくなってきた。
長い間デウスとジャンヌは試合をせずに話し合っていた。
今までの旅のことや九つの罪龍のこと。
またまたドアが開き、ジョンが入ってきた。
「人数が少なくなってきましたね。お次の対戦の選手を発表させていただきます。」
人数が減る事に言葉遣いが変わっていくジョン。なぜだかよく分からない。
「デウス・ペンドラゴン選手対ルギナ・ベル・ヘルン選手。」
『長い名前の敵と当たったな。』
自分もそうなのに何故か長い名前と解釈する。
敵は女性。武器は槍。中距離主体だ。
デウスはジョンの前に立つ。
その隣に歩み寄るルギナ。
「宜しく御願いします。」
そう言って握手を求めてくるルギナにデウスは握手に応じる。
「こちらこそよろしく。若き戦士さん。」
「お互い様です。」
言葉を交わし合う。
「挨拶は済みましたね。それでは行きましょう。」
デウスとルギナはジョンについて行く。
その際、デウスはあることに気がついていた。
握手をした時に感じた信じられないほどの圧力。一歩でも油断すれば押し潰されそうな力。
人間とは思えないほど全てが飛び抜けている。
今まで出会ってきた強者の中でも上位に食い込む程の強者。
『こいつに手加減は無意味。かと言って本気を出す程でもない。中くらいか。』
決して手加減はできない相手だが、ジャンヌよりは弱いと確信があった。
なぜならジャンヌは、全国共通除籍五位なのだから。




