第十七話 戦闘の始まり
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ジャンヌ・ペンドラゴンは突如としてデウス・ペンドラゴンの前に現れた。
「どうして姉さんがここに?」
デウスもあまりよくわからない状況だが、一番分かっていないのはデア達だった。
デウスに姉がいることなど誰一人として知らない。
「なんでって、なんでだろうね?」
「ね?じゃねぇよ!急に家を出てったからどうしたのかと思ったよ。」
どうやらジャンヌは家を飛び出したらしい。
「あの時は咄嗟の行動だったのよ。でも今エンジョイしてるから。」
「エンジョイしてるからって。」
デウスは呆れたように顔を手で覆う。
「そんなことよりなんでデウスまで家出てきてんのよ。」
全面的に話を投げ捨てられたデウス。少しもやもやした気持ちで答える。
「こっちも事情があるんだよ。」
投げやりの回答にジャンヌは少しニヤリとした。
「彼女探し?」
「そんなんじゃねぇよ。」
ふざけて聞いたジャンヌだったが、真面目に聞くことにした。
「何か大事なことがあったんじゃないの?あんたが家を出るなんて相当のことだわ。」
ボロボロのデウスを見た事のあるジャンヌなら分かる。デウスが親に反抗や願い事をすることはとても大切なことがある。
デウスは少し迷ったが、姉にはと思い、真実を話すことにした。
「姉さんは知らないと思うけど、俺には大切な冒険者仲間がいたんだ。とっても大切な。そいつらは俺の過去を知っても恐れず励ましてくれた。だから俺はそいつらと冒険者をしようって決めたんだ。でも、そんなある日、天災が降り注いだ。デルドラはデスペランドーマによって破壊された。俺は立ち向かった。でも、勝てなかった。デスペランドーマは破壊し尽くし、去った。その後俺は仲間の死を知ったんだ。その時は生きている自分が情けなかったよ。でも、五名俺の事を励ましてくれた奴がいる。そいつらは人の過去すらも全て受け止めてくれた。俺は仲間の仇のために旅に出た。デスペランドーマを殺すために。」
デウスは話し終わると、ジャンヌは泣いていた。
「そんなことが。」
止まらない涙を拭いもせずに涙を流し続ける。
「あ〜ぁ。服汚れるよ。」
そう言ってカバンから小さなハンカチを取り出してジャンヌに渡す。
「ありがと。」
ハンカチで涙を拭う。
拭い終え、ジャンヌはデウスを見た。
「それは辛かったね。」
姉目線の言葉が飛んでくる。
デウスは少し笑みを浮かべた。
「あいつらの為にも俺はデスペランドーマを倒すんだ。」
ジャンヌはデウスを抱きしめた。
「よく頑張ったよ。よく頑張った。」
そう何度も何度も言った。
「まだ終わってないから。」
デウスは少し笑いなからそう言う。
それを見ているデア達は何を魅せられているのかよくわからない状態だった。
「あの人たちは?」
ジャンヌがデア達を見て言う。
「旅で出来た仲間だ。」
そう言ってデウスはジャンヌの肩を叩いた。
「俺にはいい仲間がこんなにいるんだ。」
自慢げに言う姿は昔のデウスでは考えられなかったと思うジャンヌ。
「初めまして。私はデウスの姉のジャンヌ・ペンドラゴンです。」
ジャンヌはデアの前まで歩き、自己紹介をし、握手を求めた。
「こちらこそ初めまして。デア・ルナティックです。」
デアはジャンヌの握手に応じる。
「デウス。」
ジャンヌがデウスを呼んだ。
「なんだ?」
デウスは街を見ながら応対する。
「デアちゃん、だっけ。彼女?」
ジャンヌはなんの前置きもなくそう口にする。
「あぁ。そうだけど。」
デウスは即答する。
ジャンヌはそこまで興味なさげな顔をしていた。
「デウスの事宜しくね。」
ジャンヌは小さな声でデアに言う。
「分かりました。」
デアも小さな声で答えた。
フローレ達とも握手を交わし、自己紹介をしてもらったジャンヌ。
デウスの仲間と握手を交わしてジャンヌに分かったことがひとつあった。
『いい仲間に出会えたわね。デウス。』
それは、デア達がいい仲間だということだった。
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デウスは飯屋を探しているのだとジャンヌに言う。
すると、ジャンヌは指を指した。
「あそこが小さい飯屋よ。金額も高くないからいいと思うわ。」
そう親切に言った。
「そうか。俺達は今から飯だけど、姉さんはどうすんの?」
「私はクエストを受けに行くわ。」
「そう。頑張れよ。」
「えぇ。楽勝よ。」
ジャンヌはデウス達に背を向けて歩き始めた。
冒険者ギルドへと。
デウス達は飯屋に入り、朝食を済ませた。
朝食を済ませた後、何をするかを悩んでいた。
「どうするの?」
デアの問いかけにデウスは唸る。
「旅をするか?」
それでもデウスは唸り続ける。
「クエストに行くか?」
少し唸りが止んだが、またすぐに唸り始めた。
本当に悩みに悩んでいる。
すると、そこにクエストを終えて戻ってきたジャンヌが歩いてきた。
「何唸ってんのよ。」
デウスの前に立つジャンヌ。
身長差があまりない二人。目を合わせる。
「別にすることないから何しようかなと。」
旅という目的が無くなったように言うデウス。それに対してジャンヌはため息をつく。
「あんた昔から変わってないわね。悩んだら絶対唸る。」
どこか犬の世話をしている主のようになっている。
「そうね。ならこんなのはどう?」
ジャンヌの提案にデウスは少し興味を示した。
「私と戦う。」
瞬間、静寂になった。
誰一人として言葉を発しない。
初めの言葉を放ったのはデウスだった。
「俺が?」
「デウス以外に誰がいるって言うのよ。」
デウスは確定そうだ。
「嫌だよ。」
「なんで?」
拒否をするデウスにジャンヌは食いつく。
「なんでって、姉さん強いし、昔だって俺勝ったことねぇじゃん。」
「それは昔でしょ?今は違うかもしれないじゃない。」
デウスは少し考え、答えを出した。
「分かったよ。でも条件が一つ。」
デウスは一息置いて、それから条件を言った。
「手加減はなしな。」
「鼻からそのつもりよ。」
ジャンヌは笑った。
「なら場所を変えよう。ここではあまり問題を起こしたくない。」
以前のことがあるため、迷惑は掛けたくないと思っているデウス。
「分かったわ。」
ジャンヌは了承し、場所を変えた。
『戦い好きね。』
デアはデウスのことをそう思っていた。
姉弟揃って戦い好きだ。
戦闘場所はレクドルコロシアムという場所だ。
アバリブ国で最大のコロシアムだ。
コロシアムのエントリーがやっていたみたいで、それに参加して戦おうという。
だが、最初に誰と当たるか分からない。
デウスは少しいやいやで参加した。ジャンヌはノリノリだった。
デア達は参加せずに応援席に向かうことにした。
エントリー終了の一分前にエントリーをしたため、すぐに戦える準備をしておかなければならなかった。
デウスとジャンヌは待機室へと移動した。
中々広く、人がざっと千人入れるほどだ。
そこには様々な人がいた。
男性と女性。様々なジョブ。
本気の戦いには丁度いい場所だ。
話し合うこともしない。一人一人自分の健康面などを気にしていたりしている。
武器を研ぐものもいた。
デウスは腕を組んでいた。
「ここなら少しは退屈しなさそうでしょ?」
ジャンヌの言葉を聞いて、デウスは笑みを浮かべた。
「少しはな。」
そういった途端、デウスの後ろにあるドアが開いた。
「失礼します。私は企画者のジョン・ザルドと申します。只今からエントリーを行います。勝利者はもう一度ここに戻ってきてください。敗北者は退場してください。」
ジョンという男は注意事項を述べる。
それが終わると、ポケットから四つ折りにした紙を出した。
「それでは一回戦の選手をご紹介したいと思います。一回戦目は」
一息置いてから、ジョンは選手名を上げた。
「デウス・ペンドラゴン選手対ギクス・キクス選手です。その名前の方は着いてきてください。」
「あら、初戦じゃない。」
デウスはため息をついてからジョンに着いて行った。
その後ろから、ギクスと思われる男性が着いてきた。
ギクスの武器は細剣。剣士の使える中レベルの武器だ。
初戦の相手の武器が細剣なのは別に構わなかったが、怖顔の厳つい男だった。
かなり歩き、暗い場所に着いた。
「デウス・ペンドラゴン選手はここで待機してください。門が開いたら、線を引いてある定位置に着いてください。」
デウスは頷く。
「では、ギクス・キクス選手はもう反対側に向かいますので、着いてきてください。」
ジョンとギクスはまた歩き出した。
デウスは待機して約七分経った。
デウスは壁にもたれかかっていた。
『面倒なことになった気がする。』
戦いという気持ちとモヤモヤとした気持ちがリンクする。
その時、声が聞こえてきた。
篭っているようで響いている声だ。
聞き覚えのある男の声。ジョンの声だった。
小さく、デウスと呼んでいるのが分かった。
突如、門が開いた。
左側の顔に光が当たる。
デウスは言われたことを思い出し、歩き出した。
線が示してある場所まで歩いた。
目の前にはギクスが立っていた。
「宜しく頼む。」
低く、ハンサムな声がギクスの口から出てくる。
「あぁ。宜しく。」
デウスも宜しくと言った。
「両者とも準備は出来ていますか?」
丁寧に聞いてくる審判。
「問題ない。」
「大丈夫だ。」
ギクスとデウスは交互に言葉を発した。
「分かりました。それでは今から、デウス・ペンドラゴン選手対ギクス・キクス選手の戦いを始める!」
右手を指先まで天に伸ばす。
それから、勢いよく前方に振り下ろした。
「開始!」
審判はその場を即座に離れた。
デウスとギクスは同時に武器に手を翳した。




