第十五話 終わりしリベンジマッチ
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デウスとビングルは睨み合っていた。
地雷によって両者とも動けない。風でも振動でも反応してしまう地雷はデウスの周りに大量に設置されている。
デウスの体は満身創痍で少しの攻撃でも倒れてしまいそうだ。
ビングルも疲労と小さなかすり傷などで爆発なんて喰らえば倒れてしまう。
両者近づくことも出来ない。
デウスはそこである方法を試すことを考えていた。
少し爆破が当たってしまうが上空に飛び立つという方法だ。
しかし、それを察知したのかビングルが笑みを浮かべて言った。
「上に逃げようとしても無駄だぞ。今のお前ならその意味がわかるだろ。」
ビングルの言葉にデウスは飛ぶのを辞める。
デウスも分かっている。今体に力を入れてしまえば血が地雷について爆破してしまう。
デウスの避難方法がついに切れかけていた。
しかし、もう一つ方法があった。
それがビングルの右手にあるグレネードだ。
この世界のグレネードは水素爆破を利用している。
どうにかして水素のみを取り出し、地雷を故障させようと考えたが、この手も使えないと思った。
水素をどうやって地雷に近づけようか。
水素は質量が少なすぎる。大量に入っていると言っても水としてはなっていない。水滴ぐらいだろう。
水滴があったとしても数が多い。それに水滴と同じ液体の血で起爆してしまうのだ。
故障させるという方法はない。
あとは何とかして逃げるのみ。
逃げる道は上空のみ。しかし、ジャンプしても血が飛び散る。血が飛び散らなくても風圧がある。
この場から逃げれる確率は一パーセントもないだろう。
だが、デウスは行動に出た。
たった一パーセント未満の可能性にかけたのだ。
デウスは自分の腰掛けカバンからポーションをひとつ取り出した。
それをがぶがぶ飲み干す。
傷が癒える。これで血の心配はなくなった。次は風圧だ。
風圧は自らの可能性にかかっている。
ビングルは完全に逃げられると思い、ピンを抜き取り、付属鉄をはじき飛ばした。
そのまま勢い良くデウスの方向に投げた。
デウスは限界突破を使えるようになったが、今は眼だけだ。
風圧の操作や力の解放などはまだである。
だが、デウスは試す。試さなければ可能性などない。必ずの敗北が待っているだけだ。
グレネードはもうデウスの目の前にあった。
地雷はひとつ爆発させてあったため、小さな余白が空いていた。
デウスは片足のみで飛び上がった。案の定風圧が生じ、爆発した。
しかし、デウスはポーションで回復している。
少し足に爆発が当たる程度大したものでは無い。
しかし、グレネードの爆発も同時に発生し、デウスは爆破に全身のコントロールを取られ、上部に物凄く力で押し出された。
ビングルは勝ったと確信した。
デア達はこれで倒れるデウスではないと思ったが、そのまま背から重力によって地面に叩きつけられた。
デウスでもこれは流石に耐えきれない。そう思ったのだ。
砂埃の中から出てきたのは倒れたデウスだった。
「勝った。」
ビングルは信じられないという顔をしている。
「デウス。」
デアは心配した顔でデウスに近づく。
その時、デアは気づいた。遠くからじゃあまり見あかなかった顔が見えたところでデアはまだ負けていないと確信を得た。
デウスの口角が上がっていた。
その事を知り、デアはビングルに言った。
「まだ戦いは終わってないわ。」
ビングルは少し疑問を抱いた顔をしたがすぐさま言い返した。
「デウスは倒れている。俺の勝ちじゃないか。」
勝利を手にしたということが真実だと信じた。
「いいえ。まだあなたの勝ちじゃないわ。」
デアが言葉を放った途端、デウスが砂埃を円のように漂わせて姿を消した。
「な、なんだ。」
ビングルがそう言った直後、嫌な狂気を感じた。
すぐさま後ろを振り返った。
「ENDだ!」
デウスの拳はビングルの腹に直撃した。
ビングルは後方へ大きく吹き飛ばされ、地面を転がった。
最後は壁に激突し、横たわった。
ビングルは立ち上がることは無かった。
デウスは膝を着いた。
背中から落ちた衝撃が強すぎたのだ。
常人ならば立つことも息をすることも出来ないほどだろう。いや、普通なら死んでいる。
約一キロほど投げ飛ばされて背中から地面に激突は流石に生きていれない。
息を荒くして膝をついているデウスに寄り添って肩を貸すデア。
デウスは勝利した。ビングル・ビルグルル、二丁拳銃に。二度目の勝利だ。
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デウスは壁に寄せられた。
「ありがとう。」
少し疲れた声で感謝を述べるデウス。
デアはそんなデウスに笑いかけた。
「どうしたしまして。」
デアはデウスの隣に座り込んだ。
「お疲れ様だ。主。」
フローレがこちらに歩いてきた。
デウスは汗をかいている顔で笑みを作った。
「強かったよ。計画性、戦略性、相手の状態分析なんかもほぼ完璧だった。ポーションがなかったら負けてたよ。」
しかし、背中から激突したせいでポーションは全て無駄になってしまった。
「また買うしかないな。」
ポーションはそこまで高くない。
純度九十パーセントでも銀貨五枚だけだ。
純度百パーセントは未だに作られていない。
デウスは上を見上げる。
「そろそろ日が沈むな。」
紅の空がデウス達を照らす。
眩しいほどの光と少し疲れを撫でるように吹き荒れる風。
「あ、あの。」
急に話しかけられたデウスは少し睨みつけるように見てしまった。
話しかけてきたのはイラデゥエトスだ。
体を震わせている。デウスに恐怖を覚えているのだろうか。
「なんだ?」
「い、いえ、あの、主人は、大丈夫、なんでしょう、か?」
「大丈夫だ。気絶しているだけだ。」
そう言って安心させるように言ったデウス。
立ち上がろうとするが痛みで立ち上がれないデウス。
手助けをするようにデアがデウスに肩を貸してゆっくりと立ち上がる。
「ビングルが起き上がったらゆっくり体を休めろって言っといてくれ。」
「は、はい。わかり、ました。あなた、達は?」
「別の場所で休むことにする。用があるなら冒険者ギルドまで来てくれ。そこで休んでる。」
「は、はい。」
そう言ってデウス達は冒険者ギルド本部へと歩き始めた。
イラデゥエトスはビングルのそばに駆け寄った。
とても小さく息をするビングル。
まるで死ぬ間際の人間のようだ。
イラデゥエトスは正座をする。
「お疲れ、様、です、主人。」
そう言った直後、ビングルが咳をした。
そしてゆっくりと目を開いた。
「ここは、」
ビングルはそう言って体を起こそうとしたが体を起こせない。
「お目覚め、です、か。主人。」
「イラデゥエトス。そうか。俺はデウスに負けたのか。」
ビングルは頭だけを動かして周囲を確認した。
しかし、そこにはデウスの姿はなく、イラデゥエトスの姿のみがあった。
「奴らは?」
ビングルはイラデゥエトスに問いかけた。
「冒険者、ギルド本、部に、休みに、行きま、した。」
ずっと辿々しいままの言葉で話すイラデゥエトス。
ビングルは体から力を抜いた。
「そうか。」
「あと、一つ、伝言、が。」
イラデゥエトスの言葉にビングルは少し眉を寄せた。
「なんだ?」
「ゆっくりと、休んで、と、言って、いました。」
その言葉を聞いた瞬間ビングルは自分が馬鹿馬鹿しくなった。
はははと小さな声で笑ったあと、ビングルはこういった。
「敵に対する配慮をするなんてな。罪な男だぜ。全く。」
そう言っているビングルの目には薄らと涙が輝いている。
「自分がクズに感じるほど優しい。全く、俺は何をやっているのやら。」
「クズなんて、言わないで、ください、よ。」
気遣うようにイラデゥエトスがビングルに声をかける。
「僕と、契約した、主人は、クズなんかじゃ、ないです。」
「そう言われると嬉しくなるな。」
倒れ込んでいるビングルと正座をしているイラデゥエトスは黙り込んだ。
暫く沈黙が続いた後、ビングルはイラデゥエトスに言った。
「お願いだ。デウス達の元に連れてってくれ。」
「でも、休まな、ければ、いけません、し。」
「大丈夫だ。だいぶ回復した。」
「よろしい、のです、か?」
「あぁ。連れてってくれ。」
イラデゥエトスはビングルに肩を貸し、冒険者ギルド本部へと歩き始めた。
一方デウス達は本部に着いていた。
「大丈夫?」
「あぁ。まだ少し痛むが、大丈夫だ。」
痛む時点で大丈夫ではない。
デウスは待機椅子に座った。
「ここで一休みだな。」
フローレはそう言って腕を組む。
シャティスはインビディアの腕の中で眠っていた。
デウスも少し眠くなっていた。
「ね、眠い。」
デウスはそう言って目を細める。
「膝貸そうか?」
デアがそう言って隣に座り込む。
「あぁ。悪い。」
そう言ってデウスはデアの膝の上に頭を置く。
ものすごく眠そうな顔だ。
その時、イラデゥエトスの肩を借りたビングルが近づいてきた。
デウスは体を起こす。
「もういいのか?体は。」
「お前の方が重傷だろ。」
そう言ってデウスの目の前に立つビングル。
「少し良いか?」
そう言ってビングルは自分で立った。
デウスはビングルを見ながら問いた。
「なんだ?」
頼み事だと思った。
ビングルは改まったようにデウスを真剣に見つめる。
「単刀直入に言う。」
そう言って一度深呼吸をした。
それからビングルは口を開いた。
「俺を……」




