第五話 ブラックゴブリンの群れ
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「もう行くのか?」
スガラムがデウス達に言う。
「あぁ。迷惑かけちまったしな。」
「でも、お金は、」
「貰っといてくれ。どうせほとんど使われない金だ。」
五日間の金はスガラムにやることにしたデウス。
スガラムもこれ以上は何も言わなかった。
ただ一言。
「じゃあな。」
その一言だけ言った。
デウスは笑顔で言い返した。
「おう!」
と。
門の前には長が立っていた。
「もう行かれるのですな。」
「あぁ。迷惑かけちまったな。」
「気にしなくてもいいのですがな。」
長は髭を撫でる。
「気にするさ。死人も出ちまったし。」
実はあの下の階に居た人が二人死んでいる。
床が抜けたため、そのまま真上から床が降ってくる状態だ。逃げる時間などなかったのだろう。
「そうか。なら、今から門を開く!」
長は門番に命令した。
門番は足を揃え、
「は!」
と従った。
門がゆっくり開く。
門の隙間から物凄い風圧がかかった。
髪や服を靡かせ、大地を見た。
緑が生い茂り、開けている。
門は完全に開いた。
「元気での。」
長は小さな笑みをシワのある顔で作った。
「あんたもな。」
デウスは去り際、前を向きながら言い、手の甲でさよならの証を見せた。
門は直ぐに閉められた。
「少し風が強いな。」
デウスは体にかかる風の重量を感じて言った。
「ずっとヒラナリにいたからね。」
デアが聞かれてもいないが返答をする。
「外ってこうなってるんだ!」
シャティスは初めての外の光景にキラキラ目を輝かせている。
「主。次は何処に行く?」
「そうだな〜。」
悩んでいると、インビディアが言ってきた。
「ここからならアバリブ国っていう鬼神族が住んでる国が近いわよ。」
「良く知ってるな。」
デウスが言った。
インビディアはそれに対して
「行ったことあるから。」
と友達気分で返答する。
友達と言えば友達だ。
「そうか。なら鬼神族が住むアバリブ国に向かうか。」
「因みに歩いても行けるわよ。」
「そうか。なら歩いて行くか。」
「龍にならなくていいのか?」
フローレが聞いてくる。
「たまには良いだろ。軽い運動にもなる。」
「分かった。」
他のものも頷いた。
「決定だな。アバリブ国は何処にある?」
「えっとね。今見ている方向から北西に真っ直ぐ進めば着く。」
「よし。じゃあ行くか。」
デウスが先頭に歩いた。
インビディアはシャティスを抱き抱え、歩いた。
見た感じは全く国は見えない。
今は開けた平地しか見えない。それと、奥は木が生い茂っている。
「ねぇ、デウス。」
「なんだ?」
デアがデウスの隣を歩く。
「私の武器どうすればいい?」
「そうか。武器折れたんだったな。確か噂では鬼神族は武器を作るのに特化していたはずだ。」
デウスはデルドラでちょこっと耳にしていた。
他の種族も何種か情報が回ってきているそうだ。
「取り敢えず、今はイリビードに武器を作ってもらえ。」
「イリビードさんに?」
「あぁ。イリビード!デアに武器を作ってやれ!」
「分かったよ〜。」
イリビードは歩きながら、手を合わせた。
そしてゆっくりと手を離していく。
磁場が発生し、手を引き寄せる力が働いている。
そんなことは気にせず、イリビードは武器を作る。
全体まで手を広げたら、真ん中に武器が浮かんでいる。
すると、イリビードはもう一度手を合わせた。そして今度は勢い良く手を離した。
時空ごと吸い込まれそうな割れ目が発生する。
「デアちゃん。手を入れて。」
デアはイリビードの指示に従い、割れ目に手を入れた。
「武器を握るような手にして勢い良く引き抜いて。」
デアは割れ目に入れた右手を武器の持ち手が入る程度に握り締め、勢い良く引き抜いた。
その途端、割れ目が弾けた。
割れ目は壊れた。
「さ、出来たわよ。証よ。」
刀の形をした武器。持ち手は黒く、装飾が施されている。刃は虹色に輝き、片刃となっている。
「これ、勢い良く引き抜いた時に落ちたのよ。」
イリビードはデアに渡した。刀を収めるための鞘を。
鞘は全体的に紺色っぽい色をしている。
「いい武器ね。」
デアは見た目だけでそういった。
「取り敢えずそれを使ってみるといいわ。」
デアは刀を鞘に収め、腰に装備した。
「これで大丈夫だろ。よし、行くぞ。」
デウスはまた先頭に立った。
歩いていく内に、デウスは気づいたことがあった。
『俺歩くスピード速い?』
明らか皆との距離が開ける。
「俺の歩くスピード速いか?」
「少しね。」
デアが答える。
「なら少し遅く歩くか。」
俺は独り言のように下を向いて言った。
また歩き出した。
どんどう森林地帯に近ずいて行く。
木が生い茂り、少し迷いそうな場所だ。
「きゃああぁぁぁぁぁ!」
森林の中から女性の叫び声が聞こえた。
「襲われてるのか!?」
フローレが仕切りと警戒をする。
「急ごう。」
デウスは走り出した。
皆もそれについて行くように走り出した。
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木や草が邪魔で上手く進めない道だが、デウスは難なく走り抜ける。
「デウス速すぎ。」
デアは少しバテていた。
物凄い足の速さで森林を駆け抜けるデウス。それに追いつけないフローレ達。
デウスはそんなことも気にせず、森林を駆け抜ける。
森林は開けている場所が少ないため、風が全く入ってこない。
デウスは急に足を止めた。
「ここだ。」
風が強く吹き、開けている。
目の前で起こっていることを説明しよう。
デウスの目の前では女性を攫おうとするブラックゴブリンの群れ。
ブラックゴブリンはメジャーなモンスターでは無いが比較的弱い部類に入る。
ブラックゴブリンの長。ブレイクゴブリンはブラックゴブリンの中でも群を抜いて優れている。
「お前ら!何をしている!」
デウスは問いかける。
ゴブリン達はこちらに振り返る。
片手には木や石で出来た武器。盾を持っていたり、防具を付けているものも居る。
「ナンダテメェ。」
忌々しく、毒々しい声でデウスに近ずいてくるのはブレイクゴブリンだ。
大きく、体格も優れている。武器はゴブリン達の中では貴重品の鉄剣を使っている。
「その女性をどうする気だ。」
デウスは倍くらいある体格のゴブリンを前に動じない。
「ウッテカネニスルノサ。オンナハカネニナル。」
ブラックゴブリンやブレイクゴブリンは人を攫ったりして金を集める。言わば人身売買だ。部分的ではなく、全体的な売買だ。
「ゲスが。」
「オレサマニソンナクチキイテイイノカ?」
ブレイクゴブリンは睨みつけるようにデウスを見つめる。
「オレサマハゴブリンノナカデモナガタカインダゼ。」
名が高いゴブリンは初心者冒険者に殺されることは無く、時には熟練者も圧倒する程だ。
「だからなんだ?俺はお前のこと全く怖くねぇぞ。」
喧嘩を売るように喋るデウス。
「ケンカウッテンノカテメエ!」
ブレイクゴブリンは剣幕が悪くなった。
「俺が喧嘩を売ってるんだとしたら今武器を取ってるさ。」
そう言って手をしたにブサブサ揺らす。
「ソウカ。ナラココデシネ!」
ゴブリンは武器を振るった。
ゴブリンの攻撃はデウスに当たらなかった。
「ナ!?」
デウスは大剣でゴブリンの攻撃を防いでいた。
「名が高いから強いのかと思ったが、お前はそこまでのようだな。」
溜息をつき、ゴブリンの武器を弾いた。
ゴブリンは押されるように後ろに下がった。
「全員でかかってこい。お前ら全員殺してやるよ。一体も逃がさねぇ。」
デウスは構えを取る。八双の構えだ。
「テメェラ!ヤッチマエ!」
ブレイクゴブリンが後ろに下がり、ブラックゴブリンが前方に出る。
ちょうどそこでフローレ達が合流した。
「これはどういう状況だ。」
フローレが今の状況を見て問いかける。
「話は後だ。皆はブラックゴブリンを頼んだ。俺はブレイクゴブリンを殺る。」
デウスはそう言って走り出した。
「あ!おい!」
フローレは止めようとしたが、ブラックゴブリンに囲まれた。
「めんどくせぇ。」
フローレは右手を龍の鉤爪に変えた。
「殺ってやるぜこんちくしょー!」
もう面倒くさくなったフローレ。
戦う気になる。
デウスは向かってくるゴブリンを躱したり、切ったりしてブレイクゴブリンの元まで走る。
「殺す!」
デウスは斜め右下から大剣を引き上げるように振った。
ブレイクゴブリンはそれを防ぐ。
「ヤレルモンナラヤッテミナ!」
武器同士が軋み合い、火花を散らす。
ゴブリンとデウスは同時に後ろに下がった。
「勝つのは」
「オマエヲコロスノハ」
「俺だ!」
「オレサマダ!」
同時に言葉を発し、衝突した。
風が舞い、周囲の木々や草木を揺らす。
デウスがゴブリンの攻撃を弾いたが、ゴブリンは反撃のようにデウスに急速攻撃を仕掛けた。
デウスは防ぐ。
「ナカナカヤルジャネェカ。」
「お前もな。」
ゴブリンはもう一度武器を振り下ろすために、上部に上げた。ゴブリンは反撃の隙を与えないために、即座に振り下ろした。
デウスは大剣で受け流し、スキルを使用した。
「燕返し!」
デウスは斜め右下からゴブリンを攻撃した。ゴブリンの胴体を斜めに切り、今度は左上から切り傷を酷くするように返した。
ゴブリンは直で喰らい、胴体から血を吹き出す。
「グハアァ!」
ゴブリンは切られた場所を手で抑える。傷を見るように顔を下げるゴブリン。
「死ね。」
その言葉を聞き、ゴブリンは顔を前に向ける。しかし、間に合わず、向いている途中に視界が回転した。
そのまま意識が亡くなった。
デウスはブレイクゴブリンの首を跳ね飛ばしたのだ。
ブレイクゴブリンは首元から血を噴き出し、倒れ込んだ。
「俺の勝ちだな。」
デウスは大剣を背に収めた。
デウスの勝利である。




