第8話 モルグレンの森
森の中は静かだった。
鳥の鳴き声すらしない、私たちの話声だけの何もない空間だった。
魔物が襲ってこないかアンテナを張っていた。
だからこそ、突然目の前に現れた大きな魔力に驚いた。
3人とも馬車をかばうように前に出た。
ガロさんが私たちより少し前にいる。
魔力の正体、それは・・・魔族だった。
「なんだかうまそうなのがいるじゃないか。」
ニヤリと笑った顔が赤黒い肌で不気味さを増す。
控え目な頭の角がなければ人によく似ているけど、うまく言えない嫌悪感が溢れてくる。
放たれる膨大な魔力とその異質さが心の奥を圧迫してくる。
「・・・すごく嫌な感じ。」
「急に魔力を感じましたね。」
私のつぶやきにリサが答える。
「こいつは魔族ってやつか?初めて見たぜ。」
私たちとは裏腹に、ガロさんは余裕がありそうだった。
やっぱり場数が違うのだろう。
「あん?魔力なんぞ少なく見せるのは簡単なことだろ?これだから人間どもは・・・まあそんなことはいい。そこの女!お前おれと来い。」
そういって魔族は私を指さしてきた。
「え?」
「ほら、ぐずぐずすんな。とっとと行くぞ。」
そういいながら魔族が近づいてきた。
身構える私との間にガロさんが割行ってくる。
「おいおい。そんないきなり渡せと言われて、はいどうぞなんてなるわけねぇだろ。」
そう言って素早く剣を振り下ろす。
しかし剣が届いたかに見えた瞬間、ガロさんの両腕が宙を舞っていた。
「は?」
「どけよゴミが。」
自分に起きたことをガロさんが理解する前に、魔族が蹴り飛ばす。
一直線で馬車めがけて飛んでくるのを、リサがとっさに受け止める。
軌道はそれたものの、2人して木に打ち付けられた。
「ぐう・・・ガロさん!大丈夫ですか!」
リサが体を引きずりながら呼びかけるが反応はない。
2人が飛ばされたのを見て血の気が引くのを感じていると、腕を掴まれた。
気づけば目の前まで来ていた。
「ほら行くぞ。」そう言って乱暴につかまれたまま魔族は飛び立った。
恐怖でただただ動けなかった。
「ライラさーん!!」
リサの私を呼ぶ声が、遠くに聞こえた。




