第7話 指名依頼
ある日、マーサさんから呼び止められた。
「ライラちゃんとリサちゃんに指名依頼が来ているのだけど、受けてもらえないかしら?」
「指名依頼?」
リサが首をかしげる。
「私とリサにぜひお願いしたいって依頼主が言ってるってことだよ。」
私の言葉にリサが目を輝かせる。
「2人にとって初めての遠征任務になるのだけど、ノービアースをこなした2人なら大丈夫だと思うわ。それに、戦闘用に護衛の人は別にいるから。あくまでもサポートとしてかしら。」
「戦闘用の護衛なんて、ずいぶん羽振りのいい方ですね。」と私がつぶやく。
「ふふふ、あなたたちもよく知ってるパッジさんよ。」
マーサさんは私のペンダントを指さしながらそう言った。
パッジさんは宝石商なので買い付けに出かけることが度々あるらしい。
今回は教国イゴンコウへ行くので、護衛の他にサポートメンバーが欲しかったようで、私たちに白羽の矢が立った。
パッジさんにはよくしてもらったので、断る理由はなかった。
依頼当日、パッジさんは相変わらず人の好さに溢れていた。
「2人とも今日は依頼を受けてくれてありがとう。見知ってる人に付いてもらえると安心なんだよ。」
「いえ、こちらこそ指名依頼なんて初めてです。ありがとうございます。」
私の返事に笑顔がより深くなる。
「それはよかった!それと紹介しておこう。私の護衛のガロ、彼は結構強いから君たちが危ない目にあうことはないと思うよ。」
「しっかり荷物持ちよろしくな。」
紹介された男はスタインさんと同年代ぐらいに見える。
切れ長の目でガタイのいい、いかにも戦闘が得意そうな見た目だ。パッジさんは気づいていないようだが、私は彼の言い方に少し棘を感じた。
恐らく私が苦手なタイプだと思う。
「リサです!よろしくお願いします!」
横で元気に挨拶するリサを見ると、少し背中を支えられてる気がした。
馬車で移動しながら、今回の依頼内容を再確認していく。
「教国イゴンコウに行くにはモルグレンの森を抜けるんですよね?」
「そうだよ。そんなに危険が多い森じゃないけど、念には念をと思ってね。2人に声かけたのさ。」
私の質問に運転中のパッジさんが答える。
「ガロさんは剣ってことは剣士なんですか?」
向かいのガロにリサが尋ねる。
「ああ、おれは天恵がそのまま剣術だったからな。剣は大体何でも使えるぜ。2人も冒険者やってるってことは何かしらいい天恵なんだろ?なんなんだ?」
「私は豪運です!」
リサが胸を張って答える。
「ん~?ただ運がいいだけってことか?」
「ちょっとじゃないです!すごくいいんです!」
ガロの言葉にリサは必死で反論していた。
「ライラは?」
「・・・私は、ただ魔力が多いだけ。」私は消えるような声で答えた。
「なに?魔力がって・・・天恵はあるんだよな?」
「魔蔵っていう人よりも魔力が多い、それだけです。」追及にそっけなく答えた。
私の天恵がすごくないことは自分が一番わかってる。
話題になっただけで、気分が落ち込んだ。
「お二人ともすごいじゃないですか!ライラさんは人よりもたくさん魔法を使えるってことでしょう?私なんてすぐ息切れしてしまうので、うらやましい限りです。リサさんも、運がいいということは、この旅の無事が保証されたようなものですね。」
声だけで満面の笑みが想像できる。
少し救われた気がした。
リサとガロの言い合いを聞きながら、私は前方に見えてきた森に目を向けた。
モルグレンの森の第一印象は怖かった。
教国に行くのによく使われているとは思えないほど、生い茂っており入口が暗い。
先の見えない森に不安がよぎる。




