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ライラと友達  作者: 角刈りチーズ
第四章 選ばれた者
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第20話 運命

ーーー私の必死さとはうらはらに、目の前のドラゴンは憎たらしいほどすましている。

剣を持つ手の感覚が薄れてきた。

いつからか肩で息をしており、口の中にほのかな血の味を感じる。

勇者だといわれ、とんとん拍子に連れてこられたこの場所で、いきなり試練と言われても、自分にはどうしようもない。

心づもりすらできていない私に、力なんてあるわけない。

雑念にまみれた頭では、剣筋も鈍る一方だった。


それでもとりあえず剣を振った。

やるしかないと思ってがむしゃらだった。

(でも一体なんのために?)

切っても切っても刃の当たった感覚すらない鱗を前に、憎たらしさが増していく。

(こんなに頑張って何になるの?)

ついには足を滑らせ、盛大に転んでしまった。

(勇者なんて別になりたいわけじゃないし・・・)

顔に張り付く土の感覚で、自分が涙を流したことを悟った。

手の感覚がなく、剣が見当たらない。

もういっそこのまま寝てしまおうか、そんな風にぼうっと周りを眺めたとき、きらりと光る紫の光が見えた。

キラキラ視界に入るそれに目を凝らすと、そこには私がよく知る顔が見えた。

心配でいっぱいの悲しそうな顔で見つめるその視線、両手を胸元でギュッと握りしめていた。

(お互い大変ですね。私は勇者、ライラさんは魔王に狙われるなんて・・・)

そう思ったとき、一つのピースがはまった気がした。

「・・・私が、私しか、守れないんだ!」

(魔王を倒さないと、ライラさんと一緒にいられない!)

気づいたとき、私は立ち上がっていた。

私は剣を手放していなかった。



ーーーリサが立ち上がったかと思うと、ゆっくりとオルディンに向けて歩き出す。

声をかけようにも、その背中から感じる雰囲気に誰もが息をのんだ。

「おぬし・・・」

オルディンが何かを言いかけたその時、リサが両手で剣を振り上げる。

「はあー!!」

「・・・これは!?」

リサが剣を振り下ろす瞬間、オルディンが体を横にひねる。

急なドラゴンの動きに、砂埃が舞い、地面が揺れる。

「な!?あなた避けるなんて・・・」

リサが文句を言いかけてやめた。

砂埃が落ち着いた先に見えたのは、オルディンの体に刻まれた一筋の傷跡だった。

「見事!神の運命にあらがう力。それでこそ勇者よ!」

「良くやったぞリサよ。」

そう言いながらマスターとバルドさんが駆け寄る。

リサは私の方を向いて笑顔で親指を立てた。

私はどこかぎこちなく笑い返す。

(本当に、リサはすごいな・・・)

友人の頑張りが誇らしくも、どこか自分の周りが暗くなる感じがした。


「さあ勇者よ。これでお前は試練を越えた。今なら聖剣を得られるはずだ。」

その言葉に皆が一斉にオルディンを見る。

「なんだ?」

「あの・・・どうすれば?」

リサの質問にさっとボルタラさんに視線を向けた。

「貴様!それも説明しておらんのか!」

「いやいやしたよ。それから聖剣を取り出せるってね。」

そう言ってボルタラさんはブギーバックを指さした。

「勇者は運命をつかみ取る力を持ってる。さあ聖剣を願ってごらん。」

そう言われ、リサがブギーバックに手を突っ込む。

「聖剣、こい!」

そう言って掴みだすと同時にそれを掲げた。

掲げられたそれは剣だった。

別に豪華な装飾があるわけでもなく、割とシンプルなつくりの剣だ。

ただその場にいた誰もが息をのんだ。

「美しい。」

思わずバルドさんが漏らす。

言葉に表せない神々しさを放つ刃、剣そのものが光を放っているかのように、周りに光がさした気がした。

心さえも見透かされそうな光に、私たちは吸い込まれそうだった。

「これが、聖剣。」

感慨深くつぶやきながら、リサが剣を振る。

風を切る音すらしない、流れるような美しい剣先に見とれた。

「すごく手に馴染みます。」

「はっはっはっは!当たり前ではないか。それは勇者だけが持つことを許された剣なのだからな。」

オルディンの声は出会った時より一段大きくなっていた。

「これで魔王と戦えます!」

リサの顔はすっきりとして、決意に満ちていた。


「うむ、これは勇者誕生の祝いだ。入口まで連れて行ってやろう。乗るがいい!」

そうして差し出されたオルディンの背中に乗って、私たちはヴァルハイムのダンジョンを後にした。

ダンジョンを出て、私たちはイゴンコウへの帰路に就いた。

へとへとだったリサのこともあり、最寄りの街から馬車を使うことにした。

早々に眠ってしまったリサをはじめ、マスターに気を遣われ私も横になっていた。

それでも眠れずに、今日あったことを振り返っていた。


始めから終わりまで、1人みんなに注がれる光の外にいた気がする。

マスターとバルドさんが整理した道をただ歩くだけ。

リサが力を振り絞ってる時もただ見ていることしかできなかった。

特別な才能なんてない。

あるのは魔族に狙われる、この天恵だけ。

結局またこれに苦しめられている。

馴染みあるその苦しみに、家を飛び出した、あのころの気持ちを思い出していた。

光り輝く弟妹をただみていた、あの頃の自分を。

揺れる馬車の振動で、ネックレスが跳ねる。

その先の転移石の輝きに、リサの顔が目に浮かぶ。

あの最後の瞬間、リサが倒れたとき、思わず体に力が入った。

声にはならなかったけど、無意識に、気持ちは彼女を支えに飛んでいた。

そんなときに目が合った。

私を見て、目に炎を宿したリサ、立ち上がる瞬間叫んだ言葉、それが何度も頭の中で繰り返される。

「どうして、私なんかのために・・・」

その言葉はあまりにも小さく、だれの耳にも届かなかった。

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