↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ライラと友達  作者: 角刈りチーズ
第三章 狂信の国
PR
16/25

第16話 本当の天恵

ーーー私たちはマスターに連れられて教会の奥深くまで来ていた。

目が覚めてから、本当に目まぐるしい日々だった。

目が覚めたときは宿屋だった。

今度はリサは泣いてなかった。

何があったかはダイヤさんたちが説明し、マスターから教会に伝わっていた。

枢機卿の死による体制の崩壊にしばらくは大忙しだったらしい。

数日して落ち着いた今、今回のお礼ということで教皇から呼ばれてここに来ている。


飾り付けられた扉の前に、最初に来た時の助祭さんがいた。

私たちの顔を見るなり、頭を下げられた。

「本当にありがとうございました。」

「礼はこの子たちに。」

そういったマスターは手でこちらへ促す。

「ありがとう。」

「解決できてよかったです。」

チャコさんが笑顔で答える。

「教会は、どうなるんですか?」

「枢機卿が暴走していただけで、基本的にはみんないい人なんだよ。しっかり話してやっていくよ。」

リサの質問に助祭さんはやさしく答えた。

「まあ、お主が指揮を執るなら大丈夫じゃろう。さて!お互いに忙しい立場じゃ。行くとするが・・・大丈夫かの?」

「はい。ご要望通り、ゼフ様から許可が出るまで誰も部屋には近づかせません。では、ごゆっくり。」

そう言って再び頭を下げて、助祭さんは去っていった。

背中を見送って、マスターが部屋に入るのに続いた。


部屋は礼拝をおこなった部屋にも負けず劣らずの広さだった。

山のようにいろんなものが積まれており、包装紙をかぶったままの箱もたくさんあった。

そんな中、中央に一つ豪華な椅子が置かれている。

一目見て、それが教皇なのだとわかった。

ダイヤさんともそう年齢が変わらなく見えるが、まとう空気が青白く光ってるように見える。

その神々しさたるや、神様がいるとしたらこんな見た目なのかもしれない、そう思った。

「おぉ!久しいなゼフ!元気だったか?」

「お久しぶりですボルタラ様。このように老けはしましたが、元気でやっております。」

「はっはっは、爺さんみたいなしゃべり方をしておるな。いや、もう爺さんなのか。人の生は相変わらずだな。」

教皇と聞いていたからどこか緊張していたが、あまりにも軽い応対に目を丸くする。

「悠久の時を生きるというのは、上も下も、長いも短いもなくなっていくものなのじゃよ。」

その様子に気づいたマスターがそっとささやく。

「はっはっは、すまんすまん。人の礼儀には疎いものでな。生きていくうえで何の役にも立たんというのに、人族はかくも面白いものよ。」

荘厳な見た目とは裏腹にお腹を抱えて笑うその様は、失礼ながら子供みたいだった。

「群れて生きるには、必要なことだったのです。」

「うむ、この感じも久しいな。」

マスターと話すことを楽しんでいるらしく、終始上機嫌だった。

「懐かしむのは後にいたしましょう。ボルタラ様、まずは今回の件を解決したのはこの者たちです。」

そう言ってマスターが手で促す。

「あ~話は聞いてるぞ!セドリックが好き勝手やってたみたいだな。全く、だから教皇なんぞ面倒なのだ。」

そう言ってボルタラさんは肩をすくめる。

「ボルタラ様」

「ああ、すまんすまん。そんな話ではなかったな。おし、お前たち!この部屋に積んであるそこから好きなだけ持っていくがいい。」

「「えぇ!?」」

「1人1個なんて遠慮するなよ。そこにあっても邪魔なだけなんだから。」

外に出ている物だけでも大きな宝石や豪華な装飾が施されているものばかりだ。

箱にしまってあるものも含め、きっとどれも高価なのだろう。

「ん?どうした?いまいちだったか?」

私たちが固まっていると怪訝そうに尋ねられる。

「はぁ~ボルタラ様、圧倒されておるだけです。それに、ここにあるものはどれも大変高価なものとお見受けします。きっと信徒の方たちからの思いがこもってるのでしょう。好き勝手になぞ出来ませぬ。」

「だがやれるものなど、この程度しかないぞ?」

「なので、1人1個とさせてください。皆もそれで良いな?」

マスターの問いかけに、私たちはただただうなづくだけだった。

「う~む・・・そういうものか?」

「そういうものです。」


山盛りの中から私たちが選び終わるころ、マスターが私を側に立たせた。

「ボルタラ様、実は一つお願いがございます。」

「なんだ堅苦しい。お前と私の仲だろう?遠慮なくいえ。」

「はい。この者の魔力量を見ていただきたいのです。」

「なんだそんなことか。ではいくぞ。」

えっと声を発する間もなく、ボルタラさんが一瞬で目の前に移動していた。

そっと頭に手を置かれる。

「心配いらん。すぐ終わる。」

そういうと同時に、やさしい暖かさを感じる。

体の中をその温かさにかき混ぜられている感じがするけど、不思議と心地いい。


とろけそうな心地よさに顔がほころびそうになると、すっと熱が引いていった。

「終わったぞ。ふむ、面白い娘だ。」

顔を上げると笑うボルタラさんの目が合った。

「いかがですか?」

そう聞くマスターの周りにいつの間にか他の3人も集まっていた。

「私の記憶が正しければ、これは無尽蔵だな。尽きない永遠の魔力を持つ、珍しい天恵だな。久々に見たぞ。」

軽く言うボルタラさんとは裏腹に皆一様に驚いた表情だった。

「やはり・・・」

マスターが小さくこぼす。

「あの、マスター。私には何が何だか・・・」

急に自分の天恵を調べられ、それもただ魔力量が多いだけだと思ってたら無限だといわれ、何が何だかさっぱりだ。

困惑する私に、マスターは真剣な顔で話し出す。

「実はな・・・」

マスターから教えられたのは、先日私をさらったことで、高位の魔族が私をつけ狙っていること、そしておそらく無限の魔力を持つことに気づいているということだった。


「・・・」

魔族が自分を狙ってる、その事実に怖くなって言葉が出なかった。

「安心せいライラ、わしが守ってやる。」

マスターが力強く肩を掴んでくれる。

顔を上げるとリサやダイヤさん、チャコさんもうなづいてくれる。

「私たちもいますよ!ライラさん!」

「みんな・・・」

「だがゼフよ、魔王が攻めてくることも考えといたほうがいいぞ。」

「なんですと?」

「無限の魔力なんぞ魔族からしたら最高の体だ。捕まえるために手段など選ばんだろう。」

あまりの衝撃に思わずふらつく。

「ライラさん!」

リサがとっさに支えてくれる。

「ま、魔王ってあのおとぎ話に出てくるような、あの魔王ですか?」

絞り出すように聞いた。

本で読んだ魔王は人を世界を滅ぼそうとする強大な存在とあった気がする。

「おとぎ話?前回の魔王からもうそんなに経つのか。」

ボルタラさんの軽い返事に、頭が混乱する。

「あまり怖がらさんでくだされ。魔王が復活するとき、それは勇者が生まれるときです。言い伝えでは両者は対になる存在。勇者の噂もないのに、魔王などそもそもおりませんでしょう。」

「何を言ってる?勇者ならそこにいるではないか。」

そう言ってボルタラさんは、リサを指さした。

「・・・え?」


皆の視線がリサに集まる。

「その腰のポーチ、ブギーバックであろう。それは聖剣を取り出すための鍵だ。天命と合わさることで聖剣を取り出せるぞ。」

「ちょ、ちょっと待ってください!私別にそんなんじゃないです。」

リサが慌てて反論する。

「その雰囲気で明らかだろう。だがそうだな、ん~そのポーチ使ったことあるか?」

「はい、これは効果はピンキリですけど、私の望むものが取り出せます。私がラッキーだから。」

「他の人間につかわせたことは?」

「ありません。」

「ゼフよ、試しにそこから何か出してみろ。」

「何かといいましても・・・では何か食べ物を。」

そう言ってマスターがブギーバックに手を突っ込む。

しかし、一向に何も取り出そうとしない。

「あの・・・マスター?」

怪訝そうにリサが尋ねる。

「それがの、ほれ。」

リサが目を見開く。

マスターが手に持っていたのは明らかにガラクタだった。

「望むものを取り出せていたのは、君の天恵があったからだ。天命、自分で運命を手繰り寄せる力。だからブギーバックは君の望むものを出せたんだよ。」

その場にいた全員が言葉を失っていた。

魔族に狙われている恐怖を飲み込めないまま、リサが勇者に選ばれていた。

いや、最初から勇者だったのだ。

友人と自分の立場の差を実感するのに、私はこのあと数日必要だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。