第15話 雷王
ーーーイゴンコウの郊外は信じられないほど静かだった。
目の前に転移してきた魔力から、あの子たちの成功を感じた。
(自分たちだけでやり切るとは、成長しよったわい。)
魔力の塊がこちらに向かってくる。
人ではあるが膨大な魔力を爆発させた結果、ボロボロに崩れかけてるようにも見える。
目が合うと、顔が驚きの色に染まる。
「貴様の差し金か!ゼフ!」
目を血走らせセドリックは怒り狂ってる。
「失礼な奴じゃ。あれはあの子たちが自分たちでなした成果じゃ。まあそうならずとも、わしだけでも動くつもりじゃったがな。」
「なにぃ!?」
「あの人は、教会の運営になど興味ないにきまっとる。糸を引くものがいることぐらい、想像に易い。」
「貴様~!」
怒り狂うその醜悪な姿、力を追い求めるあまり、周りが見えなくなるのはかつての自分にも重なりため息が出る。
「残念じゃがお前さんはここまでじゃ。少々やりすぎとる。」
「ふざけるなー!」
セドリックの体から魔力が噴き出してくる。
(まだこれほどの魔力を保持しておるのか。恐ろしい技術じゃ。)
「貴様がいくら強かろうと!この力があれば恐れるに足らん!・・・そこをどけぇ!」
「哀れな奴じゃ。魔力の量は、強さではない。」
そうして右手をセドリックにかざした。
「よく見ておれ。」
左手を天高くつき上げ、魔力を集中させる。
空よりすさまじい量の雷が手に落ちてくる。
その衝撃に昔の記憶がよみがえった。
ーーー40年前、師の魔法を見てその美しさに惚れた。
何もかも捨てて飛び出して、何度も頭を下げて弟子入りしたものの、炎から雷への変更は困難を極めた。
魔力量が決して多くないわしが、天恵を越えた魔法を使うなど正気の沙汰ではないと笑われた。
それに師はあまりにも長く生き過ぎており、あらゆることに興味がなかった。
わしにも。
弟子になったものの、見て学ぶだけ、教えるのは壊滅的に下手じゃった。
そうして20年経った頃、辞めたギルドからマスターにならんかと誘われた。
その頃のわしは荒んでおった。
どれだけ鍛錬を積んで、時間をかけても、師の出す小さな雷さえ再現できなかった。
それほどまでに師の魔法は美しかった。
泥水をすする思いに疲れ、弟子を辞めると告げたあの日。
言われるがままに外で見せられた技。
気まぐれなのか、意図的なのかはわしにはわからん。
いやどうでもよかった。
この技は師から教わった最初で最後の技なのだ。
ーーー受けた雷に魔力をまとわせ放出する。
「魔力とはこう使うのじゃ!」
雷は1匹の龍のようにうねり、そこにいたものもろとも消し飛ばした。
果てまで伸びた焦げ付いた地面だけが残っていた。
「さてと・・・」
一息ついて、背後の気配に集中する。
「お主はどうするつもりじゃ?」
何もなかったはずの暗い空から、立派な角を携えた魔族が手をたたきながら現れる。
「いやはや、さすが雷王といったところですね。いいものを見せていただきました。」
まとっている魔力の異質さに眉をひそめる。
(こやつ、かなりの手練れじゃな。)
そっと構えようとすると、魔族は手で制してくる。
「おっと、あなたとここで戦う気はありませんよ。お互い、何のメリットもありませんから。」
その笑みは不気味だが、嘘をついてるわけではないと感じられた。
「なんじゃ。計画をつぶされた腹いせでもしてこんのか?」
「ふふふ、なるほどなるほど。面白い推理です。しかし、残念ながら私は、いや魔族はこれには関わっていませんので。」
「なんじゃと?」
「もしかするときっかけはあったかもしれませんがね。ですが、ここまでになったのはあれの独断ですよ。あそこまで集まるとは!今後は参考にさせていただきましょう。」
「・・・今後じゃと?逃がすと思っておるのか?」
さっと構えて魔力を練りだす。
「ふふふ、いい土産も見つけましたし、近々もらいに伺いますよ。戦いはまたその時に。」
そう言って魔族の姿が消えかけていく。
「待てい!土産とはどういうことじゃ!」
「あなたが隠してるあれですよ。ふふふ。我が名はヴォルド、また会いましょう雷王よ。」
そう言ってすっかりその場から消えてしまった。
(あれほどの魔族が何用でこんなところに・・・それに土産じゃと。)
ここ最近あったことを思い返す。
魔族が好むもの、魔力に関係するもの、そんな中で奴らが欲しいものなんて・・・
「まさかライラか!」
(調べる必要がある。)
わしは急いでイゴンコウに戻った。




