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ライラと友達  作者: 角刈りチーズ
第三章 狂信の国
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第14話 蒼炎の踊り子

言い終わると同時に、手から炎が波になって飛んでくる。

私たちが反応するより早く、チャコさんが炎の壁を作って波を止める。

チャコさんの体が青い炎をまとっている。

「実力行使ってことね。」

「その青い炎は・・・最近巷で若いのにすごい魔術師がいると噂になってるよ。」

「それはどうも。」

「ふふふ、同じ炎同士、仲良くできそうだ!」

そう言って枢機卿は炎の波を連発してくる。

「2人とも捕まれ!」

そう言ってダイヤさんに引っ張られ、あっという間に部屋の隅に寄せられる。

「防御に徹しておくんだ!」

そういわれ、力いっぱい前方に水の盾を張った。

「やるじゃないかライラ!」

ダイヤさんに褒められ、少し落ち着いた。


目を上げると迫りくる炎の波をチャコさんが華麗に避けていた。

青い炎が舞う姿は美しく、思わず「きれい。」と呟いていた。

「蒼炎の踊り子とはよく言ったものだね。でも、避けるだけでは意味ないよ。」

「大丈夫、攻めるのは私じゃない。」

チャコさんがそういったとき、枢機卿の顔がはっとする。

その瞬間、真横にダイヤさんがいた。

「終わりだ。」

そういった瞬間剣が腕に振り下ろされる。

しかし。

バキン!という音と共に剣が弾かれた。

目を見開くダイヤさんを枢機卿が不敵に笑う。

「近接対策してるにきまってるだろう。」

そういった瞬間枢機卿の体を覆うほどの炎が巻き上がる。

巻き込まれたように見え、思わず叫ぶ。

「ダイヤさん!」

「あぶねぇ!」という声と共にダイヤさんはチャコさんのすぐ横に立っていた。

「俺じゃなかったら食らってたな。」

「あれは・・・厄介だね。」

2人が顔を見合わせる。

「調べるしかない。チャコ援護してくれ。」

「任せて。」

そう言ってチャコさんから無数の青い炎が飛び散る。

枢機卿が炎を対処している隙にまたダイヤさんの剣が迫る。

しかし、また弾かれる。

私とリサはそれをただ見ているしかできなかった。


威力ではチャコさんが勝っているが、物量が違う。

枢機卿から襲い来る炎の数は圧倒的で、チャコさんが肩で息をしている。

ダイヤさんの剣も届く気配がなく、このままではじり貧だった。

そんな時、リサが耳元でささやく。

「私、武術をやってるからわかります。ダイヤさんの攻撃は完全に死角なのに防がれてます。」

「それはどういう意味?」

「意識の外なのに防御出来ちゃってるんです。なのできっと・・・魔道具を使ってると思います。」

「なるほど。だけどそれがわかったところでどうしようもないよ。」

「私に作戦があります。」

そう言ってリサはブギーバックに片手を突っ込んでいた。

「ちょっと!ここでそんな賭けに出る気?」

「このままだとどのみちだめです。この子は確かに効果の強さは気まぐれだけど、有効なものは間違いなく出ます。例え弱くても、ダイヤさんなら。」

リサは今まで見たこともないほど真剣な目をしていた。

そんな顔を見て、うなずかないわけにはいかなかった。

「・・・わかった。どうしたらいい?」

「隙が欲しいです。どうやらこれ、相当重いみたいで。」

そう言ってリサは既にブギーバックから何かを取り出しかけていた。

「だめでもともと、やるだけやってみる!」


そう言って私は目の前の水の盾に思いっきり魔力を込めた。

見る見るうちに盾は厚く、大きくなっていく。

そして枢機卿に向けて、思いっきり飛ばす。

「いけ~!」

「炎に水とは単純だね。」

枢機卿はあきれながら水の塊に向けて一気に炎をぶつける。

量はあったものの所詮は私の弱い魔法でできた水、一瞬で蒸発させられた。

ただその量があまりにも多く、大量の蒸気が霧のように視界を塞ぐ。

チャコさんとダイヤさんがその隙に畳みかける。

「この程度じゃ目くらましにもならないよ!」

枢機卿は2人をまたあしらい出す。

「ははは、残念だけど実力の差は歴然だね。君たちは強いが、私の防御を突破するほどでもない。」

「くそっ!」

ダイヤさんの歯ぎしりが聞こえる。

「もうあきらめた方がいいんじゃないかい?君も随分としんどそうだね。」

それを聞いてチャコさんが睨み返す。

息が上がって、反撃の量が減ってきている。

「ははははは」

枢機卿の大きな笑いが聞こえた瞬間、彼の頭上に大きなハンマーが浮かび上がる。

何もない空間から、リサが飛び出し、振りかぶっていた。

「これでどうだー!」

「姿を消してたか。ふん、たとえ大きくても剣と同じ!私には効かないよ。」

そう言って枢機卿は真正面からハンマーを受けた。

彼に当たった瞬間、バキン!という音と共にハンマーがはじかれる。

しかし、それと同時に枢機卿の体を覆う膜のようなものが割れた。

「なに!?」

枢機卿がそういった瞬間、すでにダイヤさんは枢機卿のそばにつけていた。

「早・・・」

言い終わるよりも先に、剣が切り裂いた。

肩口からきれいに入った斬撃で血しぶきが舞う。

致命傷の一撃だった。

「がはっ」

枢機卿がその場に倒れこむ。

「終わりだな。会心の一撃だ。」


緊張から息を忘れていたのかもしれない。

ふ~っと息を吐き、その場にへたり込んだ。

「・・・勝ったんですね。」

「全く無茶な作戦だ。俺が反応できなかったらどうするつもりだったんだ?」

笑いながらリサに尋ねる。

「ダイヤさんなら理解して、届くと思ってました。」

大役をやってのけたというのに、けろっとした顔でリサが笑ってる。

「全く。」

さすがのダイヤさんも苦笑いだった。


私はふらふらになってるチャコさんのもとに走った。

倒れそうな体を支える。

「チャコさんもお疲れさまでした。」

「さすがに疲れたね。とんでもない魔力量だった。こいつもしかして・・・」

チャコさんが何かを言いかけたとき、背筋が凍るような悪寒が走る。

全員が枢機卿の方を見た。

体から、すさまじい魔力が湧きだしている。

「これは!」

ダイヤさんがリサを抱えて離れる。

「うがああああ」

人とは思えぬ叫び声が枢機卿から聞こえる。

そして見る見るうちに体が肥大化していく。


ブクブクと膨れ上がった体は人とは思えぬほど膨れ上がり、天井に届きそうな大きさに思わず見上げてしまう。

「おまえたち、ずいぶんやってくれたじゃないか。わたしはこのきょうかいのしはいしゃだぞ。わたしがいちばんえらいのだぞ。かみにもせまるこのわたしに、ふけいであるぞ。」

ぶくぶくに膨れ上がってるせいで声が聞き取りづらい。

でも、我々への憎悪の気持ちは肌に刺さる。

「やっぱりこいつ、貯めた魔力を自分で取り込んでたんだ。」

チャコさんが冷や汗をかいてる。

魔法が得意ではない私でも、目の前の魔力の塊に畏怖の念が沸き起こる。

ただただその姿に圧倒され、皆足が止まっていた。

「ゆるさんぞ。わたしにきずをつけただいしょうはおおきいぞ。このみに。このわたしのみに。かみのみに。」

かろうじて判別できる瞳は、錯乱しているのか焦点が合ってない。

今にも爆発しそうな魔力の塊に諦めかけていた。

そんなときチャコさんが私の前に出る。

「ライラちゃんは離れて。私とダイヤで何とかするから。」

チャコさんの目は諦めていなかった。

満身創痍なのに、自分の仕事を全うしようと立ち上がっていた。

自分が情けなかった。

(自分だけ諦めて、バカみたいだ。)

そう思ったとき、一つの考えが浮かんだ。

私の取り柄は魔力の多さだ、それをもしチャコさんが使うことが出来たら・・・

うまくいくかはわからない。

でも、このままだと・・・臆病な気持ちに蓋をして、立ち上がった。


チャコさんの背中に両手を添える。

「ライラちゃん?」

「大丈夫です。信じてください。」

そう言って目を閉じた。

魔族につかまったときのことを思い出す。

聖水を飲んだときのことをイメージする。

体の芯から指先にかけてつながるように力が抜ける感じ。

何回も何回も、頭の中でイメージする。

(私にもできる。私だってできる)

そう何度も心の中でつぶやく。

指先のさらに先に、チャコさんの魔力を感じる。

遠い遠いところにある、そこへ届くように届くように伸ばしていく。

襲い掛かる吐き気を飲み込んで、自分の奥から伸ばし続ける。

チャコさんの芯に触れた瞬間、体から一気に力が抜けるのを感じる。

でも離さない。

がっちりと掴んだそれに、私はありったけの魔力を流し込んだ。

「これは!」

チャコさんが驚く声が聞こえる。

「使って・・・ください。思いっきり!」

私の言葉を聞き、チャコさんの目の前に火の玉が作られる。

ぐんぐん吸われる魔力に、気持ち悪さで足ががくがくする。

それでも絶対に離さなかった。

朦朧としていく意識の中で、遠くで枢機卿らしき声が聞こえる。

「ぜんいんまとめてころす。なにがそうえんだ。ふたつななどなまいきな。おまえからしぬがいい。」

魔力が集まるのを感じる。

きっと枢機卿の魔法だろう。

でも、こっちのはもっと大きい。

「これが私たちの本気!」

チャコさんが叫ぶのが聞こえる。

魔力と魔力の激しいぶつかり合い、それを体全体で感じる。

枢機卿の魔力が押し負け、消えていくのがわかる。

ああ大丈夫、私たちは勝てたんだ、そう思ったのを最後に、私は意識を失った。

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