第13話 潜入
「さて、それじゃあ白黒つけに行くとするか!」
「え?」
ダイヤさんの言葉に驚く。
「魔族が絡んでるなら一大事だ。解決しないとだろ?だからその証拠をつかみにいかないとな!」
「勇み足の所悪いけど、宛はあるの?」
チャコさんがジト目でにらむ
「ない!だから、いっちょ潜入してみよう。」
「調べることには反対しないけど、潜入なんてどうするつもり?」
呆れながらも反対しないチャコさんに慌てて割って入る。
「ちょっと待ってください!潜入なんてそんな・・・泥棒と一緒ですよ。」
「ライラちゃんはまじめだな~別に何かを盗むわけじゃないよ。白黒はっきりさせるだけさ。」
ダイヤさんの笑顔に開いた口が塞がらない。
「で、でも・・・」
「ふっふっふ、皆さんお困りの様ですね!ここは私とこの子に任せてください!」
リサが壊れた茶色いポーチを片手に躍り出る。
ブギーバックにはいい思い出がない、出てくる物の性能はまさに運頼みだ。
「この子は私の欲しいものを出してくれます!さあブギーちゃん、潜入にピッタリなのお願い!」
そう言ってブギーバックの中から、勢いよく黒い服を取り出した。
「これは・・・ローブ、みたいですね。ちょっと着てみます。」
そう言ってリサは皆の反応を待たずにさっと羽織る。
すると、リサの姿が消えてしまった。
「ちょっとリサ!」
「大丈夫ですよライラさん、ここにいます。」
そう言って元居たあたりから返事が聞こえる。
すると空中にいきなりひょこっと顔が現れた。
「どうやら姿を消せるみたいですね。」
「「おぉ~」」
皆の反応にリサは満面の笑みだ。
「これならばれないで中に行けそうだな。でも、これ一人用だろ?」
「ちっちっち、甘いですよダイヤさん!ちゃんと人数分念じましたから。」
そう言ったリサの手には別のローブが握られていた。
「じゃあこれ、ダイヤさん、チャコさん、そしてライラさん、どうぞ。」
流れで受け取ってからはっと我に返る。
「ちょっと待って。私たちも一緒に行くの!?」
皆の視線が私に集まる。
一様に驚いてる。
どうやら私以外は疑問にすら思ってなかったようだ。
私はそれ以上、抵抗を諦めた。
深夜、私たちは透明になるローブを被って教会前に来ていた。
姿を隠せているとはいえ、慎重に動く。
どうやら足跡までは消せていないらしく、宿を出るとき女将さんに見つかりそうになったのだ。
反省を生かして忍び足で進んでいく。
作戦はシンプルだった。
「噂の渦中にいるセドリック枢機卿を偵察しよう。」
ダイヤさんの作戦は大胆だがわかりやすかった。
教会には見回りが何人かいる、ただし別段厳しい警備というわけでもなかった。
あっという間に中に入り、信徒がくぐれない扉までやってきた。
「中はどうなってるかわからない、みなはぐれないように。」
小声でダイヤさんが注意する。
透明になってしまうのでお互いの位置がわからない。
だから私たちはローブの中で手をつないでる。
幸いゆったりした大きいローブだったので、覆い隠すのは訳なかった。
扉を抜けてからも特段怪しいものは見つからなかった。
一部の神官の生活スペースになっているらしく、何人かすれ違ったし、そもそも部屋が多い。
枢機卿に会ってもわかるのだろうかと不安になっていたが、その心配は杞憂に終わる。
廊下の先に明らかに違う装いの人が歩いていく。
つないでいる手がギュッと握られる。
恐らくあの人を追いかけるのだろう。
頷く代わりに私も握り返す。
迷いなく進むその人に必死についていくと、背丈の倍以上もある大きな扉が立ちふさがった。
結構な重さがあるらしく、ゆっくりと開いていく。
ついていくにも厄介だと思っていたら、幸いにも扉は開いたままになっていた。
隙間からすっと中に入る。
中は大きな円形の部屋だった。
部屋の形に添って椅子が円テーブルに備え付けてある。
その最も奥にその人物は座っていた。
「まあかけたまえ。」
「「!?」」
私たちが動揺した瞬間、音もなく背後の扉が閉まった。
「姿は見えないようだが、残念ながら魔力は隠し切れてないね。他のものは気づいてないみたいだが、私まではごまかせない。」
こちらを見る瞳は深く、暗い色をしていた。
全てを見透かされている気分だ。
「ばれてるなら隠れてもしかたねぇな。」
ダイヤさんがローブを脱ぐのに合わせて、私たちも姿を現す。
「なんだ、思ったよりも随分と子供だな。それで、何の用でこんな盗人みたいなマネをしてる?」
嘲笑しながらにらみつけられる。
思わず体に力が入る。
「その前に一つ、あんたが枢機卿のセドリックかい?」
「全く・・・そんなことも知らずにここのいるのか。」
ダイヤさんの質問に呆れながら笑みを浮かべた。
「その通り、私がセドリックだ。この教会の枢機卿。それで、盗人は何が望みだい?大方教会は儲けているとかいう馬鹿な噂を真に受けたのだろう。残念ながらそんなものはない。はぁ・・・今帰るなら見逃してあげよう。帰りなさい。」
枢機卿は煩わしそうにシッシッと手を払う。
そんな雰囲気をものともしないで、チャコさんが一歩踏み出す。
「あなたが信徒に飲ませている聖水が魔力を奪うことは分かってるわ。何が目的なの?」
枢機卿の眉がピクリと動く。
「魔力を奪う?突拍子もないことを言うね。証拠でもあるのかい?」
「ええ。申し訳ないけど聖水を少し拝借したわ。そして実験させてもらった。」
チャコさんの指摘に枢機卿は不敵に笑う。
「なるほど。聖水をくすねたのか、まさに盗人だね。じゃあ仮に君の言ってることが正しいとしよう。魔力を奪う聖水を私たちが使っているとね。それで、何か問題なのかい?」
「それ自体は糾弾できるほど問題とまでは言い難いわ。でも、もしその魔力を集めて魔族に渡しているなら話は別。」
「ふ~む、面白い推理だね。」
チャコさんから指摘されても、枢機卿は一切動揺を見せていなかった。
「魔族は世界を支配したがってる。見過ごせない。」
チャコさんが詰め寄ろうとするのを枢機卿は手を挙げて制止する。
「こっちが質問に答えてばかりだから、私からの質問にも答えてくれないか。これは君たちが調べたのかい?」
「ああ、そうだ。俺たちが調べた。」
「他に知ってる人は?」
「いないわ。」
ダイヤさんとチャコさんの説明をきき、納得したような頷く。
次の瞬間、枢機卿が指を鳴らすと、部屋全体に魔力が満たされたのを感じた。
「そういう情報をほいほい答えるのは感心しないね。君たちを殺せば証拠隠滅ってわけだ。」
その顔に浮かぶ笑みが一気に不気味さを増す。
その恐ろしさに皆一斉に身構える。
「じゃああなたやっぱり。」
「残念ながら、今は魔族とはつながっていないよ。でもね・・・知っちゃいけないところまで知っちゃったかな。」




