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ライラと友達  作者: 角刈りチーズ
第三章 狂信の国
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12/25

第12話 聖水

夕飯の後、私たちは一つの部屋に集まっていた。

「さっきの女将さんすごい迫力でしたね。」

驚き冷めやらぬ気持ちに、思わず漏れた。

「昼間の祈りといい、この街ちょっと普通じゃないな。」

「そう思う。ちょっと調べてみようか。」

ダイヤさんの言葉にチャコさんも同調する。

「極秘ミッションですね。頑張りましょう!」

妙にやる気になってるリサに、街を去る気満々だった私はそっと口を閉じた。


このきれいな街でも裏路地はやはり何があるかわからない。

犯罪がない街なんてないのだ。

そういう危ない場所はダイヤさんとチャコさんに任せることにした。

私たちは街の人たちに聞き込みをすることになった。

幸い、リサの快活な性格は聞き込みには向いていた。

「教会は本当に素晴らしいんだよ!」

「祈りが私の生きがいよ!」

「君たちもぜひ入信しなさい。」

教会の話になった瞬間、皆一段と饒舌になった。

変わらない人もいたが、女将さん同様異様な雰囲気をまとう人もいた。

ただ、聞こえてくるのは賛美だけ。

「何にも情報有りませんね。」

リサがぼやく。

「さすがにずっとこんな調子だと、聞いてる方もしんどいね。」

「同感です。」

その時ふと昨日の助祭の顔が浮かんだ。

小声で話すときに覗かせる素直な表情。

(もしかしたらあの人なら違うことを話してくれるかも)

「ねぇリサ、もう一度教会に行ってみない?」


教会に行ったが昨日の助祭はいなかった。

迎えてくれたのは別の助祭だった。

「祈りについてですか。う~ん、どうお答えしてよいのやら。素晴らしいものなんですよ。心が洗われて心地よく感じるのです。」

聞き込みと変わらない、通り一辺倒の回答に2人して肩を落とす。

その様子を見たからか、思いがけない提案を受けた。

「そうだ!良かったら体験されてみませんか?門戸は誰にでも開いていますので。」

私たちは顔を見合わせた。

どうぞといいながらにこやかに促されるまま、教会の中へ入っていった。


祈りの手順は簡単だった。

思いを込めて祈り、聖水を受け取った。

私の願いは、平穏な生活をしたいっていう、まぁ大したことじゃない。

像の足元まで歩いていき、そこでこの聖水を飲む。

特に味も何もない。

(これただの水?)

そして他の人に交じって大きな声で唱えた。

「神に祈りを!神に力を!神に命を!」

大声を出したからか、体が軽くなるというよりも疲れたといった方が正しかった。


「なんか・・・疲れちゃいましたね。」

外に出るなりリサが愚痴る。

「ちょっと声が大きい。でも、あなたもつかれたの?」

「はい。なんか好きでやってるからじゃないのか、妙に疲れたというかぼ~っとする気がします。気疲れってやつですね。」

そういいながらリサは笑っていた。

リサのその様子に、私は妙な引っかかりを覚えた。


その夜、私たちは再び部屋に集まった。

「まずは俺たちの方から話そう。結構きな臭い話が多かったな。」

「まずはあの助祭の人が言っていたように、教皇のボルタラは基本的に人前に出てこない。なので実質教会を牛耳ってるのは枢機卿のセドリックという人物よ。」

「そのセドリックだがどうやらたっぷり私腹を肥やしているらしい。信者たちのあの狂気的な信仰心からか、多額の献金がされてる。随分とふんぞり返ってるみたいだぜ。」

「それと妙な噂も耳にしたの。」

「妙ですか?」

チャコさんの言葉に思わず尋ねる。

「そう。一部の人たちはセドリックが呪われたといってる。昔はやさしい人だったのに、ある時からどんどん態度が悪くなってきたみたい。」

「お金に目がくらんだってことですか?」

リサが話に割って入る。

「時期的には重なるらしいが、どうもちょっと違うらしい。金は結果的に集まってるだけで、どちらかというと権力を振りかざしてる。祈りへの参加は税より重い。」

ダイヤさんが肩をすくめる。

「私たちが行った裏路地なんてまさにそう。信徒として信仰心が乏しいと判断された人が、住む場所を奪われていきついてる。」

「そんな・・・」

2人の説明に言葉がなかった。

「でも、具体的なことは何もだ。あくまでも表で聞けなかった噂ってレベル。そっちはどうだった?」

「街の人への聞き込みはご想像通り、女将さんと変わりありませんでした。教会で祈りの体験もやったんですけど、疲れただけでしたね。」

リサが力なく答える。

「どれも決め手に欠ける。」

チャコさんがうんうん唸ってる。


「あの・・・一ついいですか?」

私の声に皆の視線が一斉に集まる。

「祈りの時私もリサも妙に疲れて・・・最初は異様な空間での気疲れだと思ってました。でも、改めて考えてたんですが、違う気がしてるんです。」

「どういうこと?」

チャコさんが食いついてくる。

「この疲れた感じ、私最近体験してるんです。あの魔族に捕まってた時です。」

「「!?」」

全員が目を見開いた。

「魔族につかまってた時ってことは、もしかして魔力を吸われてた感覚ってことか?」

ダイヤさんの質問に頷く。

「そうです。あの時ほど重くはないですが、体の芯から指先にかけて残るこの疲れは、あの時に似ています。」

「祈りは魔力を吸い取るための儀式・・・考えられない話じゃない。」

チャコさんの言葉にダイヤさんも顔を見合わす。

「裏路地には住む場所を奪われた人がいたっていったけど、そういえばおかしな人もいたな。まるで廃人みたいに、生活もままならなくなってる人。聞き込みをしていると、その人たちは元は熱心な信徒だったと言ってた。」

「熱心に祈りを行ってたから、魔力を抜かれすぎてたってことか?」

チャコさんは頷く。

「可能性はある。」

「で、でもいつ魔力を抜かれたんでしょう?祈りに参加しているときそんな誰かに触られるタイミングなんて・・・」

「あの聖水が怪しいと思う。」

リサが疑問を呈してるのに割って入った。

「祈りの言葉にそんな効果があると思えない。もし建物に仕掛けがあったら、助祭の人にも影響があると思う。すると私たちしか、信徒しか体験してない部分・・・あの水を飲んだことが気になってる。」

私の言葉にみなが頷く。

「じゃあ次の一手は決まりだな。その聖水を、少しくすねよう。」

一歩進んだのがうれしいのか、そう言ってダイヤさんは笑った。


翌日、同じ人間がいかない方がいいだろうとダイヤさんとチャコさんの2人が祈りの体験に行った。

そして聖水の一部を飲まずに持ち帰ってきた。


「いや~改めて自分が体験すると異様な空間だったな。疲れる感じは全部飲んでないからかいまいち実感ないけどね。」

ダイヤさんが聖水を染み込ませた布を絞りながら笑う。

「ダイヤが鈍感なだけ。僅かだけど、奇妙な倦怠感はわかった気がする。」

チャコさんが聖水に魔道具を当てながら答える。

「チャコさんそれは?」

リサは興味津々だった。

「これがただの水なのかどうか調べてる。」


そんな状態で数刻が過ぎ、チャコさんから声がかかった。

「ライラちゃんの予想通り、これが原因だと思う。まずただの水じゃないのは確定。魔力なのかなんなのか、いずれにせよ混ぜ物が反応してる。そしてこれ。」

そう言ってチャコさんが指先に小さい炎を出して、聖水に浸かるほど近づける。

「・・・何も起きないみたいだけど?」

「鈍感。もっとよく見て。」

そう言って炎と聖水を突き出した。

目を凝らしてよく見ると、ほんのわずか、うっすらと聖水に近い部分の炎の形に目がいく。

「形が崩れてる?」

「ライラちゃん正解。本当にわずかだけど、魔力が霧散してる。聖水にここまで近づけて初めて反応してる。」

「おいおいチャコ、大丈夫なのかよ?」

「このぐらいなら何の問題もないし、恐らくいわれないと気づかない。それぐらい微弱。でもこれを体内にいれるということは・・・」

「体の魔力を奪ってるってことか。」

ダイヤさんの言葉にチャコさんが頷く。

「ライラちゃんの話を聞く限り、魔力を奪われてた時思考能力も下がってたみたいだし、毎日積み重ねることで、祈りの時いろんな悩みも薄らいだんじゃないかな。宗教も相まって、祈りがいいものに感じてたんだと思う。」

そうやって原因を突き止めたものの、チャコさんの表情は暗い。

「まだ何かあるんですか?」

私の質問に首を振る。

「ん~逆かな。特にないからわからない。信仰心を高めて何がしたいのかさっぱり。あそこまで狂信的に信仰させる理由がない。」

チャコさんの言葉に頭をひねる。

「あの~素朴な疑問なんですが・・・この出てしまった魔力ってどうなるんですか?」

リサがそっと手を上げながら尋ねる。

「霧散したらそれで終わり。集めたとしてもそんなたくさんの魔力・・・」

「もし魔族なら喜んで集めるさ。魔力は奴らの飯だからな。」

チャコさんの言葉をダイヤさんがつなぐ。

「魔族が絡んでるってことですか?」

私の言葉に全員が顔を見合わせた。

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