第10話 友達
ーーーライラさんが攫われてから大急ぎで街に引き返した私は、マスターに連れられて魔族の痕跡を追った。
「その子を返してもらうぞ。」
マスターから雷撃が放たれる。
まるで雷が踊ってるかのように、魔族を蹂躙していく。
その隙に、ライラさんが運ばれてきた。
「ライラさん!」
駆け寄ったけど、ぐったりしていて反応がない。
「大丈夫、生きてるよ。」
ダイヤさんの笑顔で少し落ち着きを取り戻した。
そうこうしているうちに魔法の音が止んだ。
顔を上げると、部屋は黒焦げになっていた。
「ほっほっほ、ちとやりすぎてしまったわい。」
「ライラさんは大丈夫ですか?」
「外傷もないし、体力が奪われてるだけだと思うよ。」
チャコさんがやさしく微笑んでくれる。
ここも見つけてくれたし、本当に頼りになる。
「よ、よかった~」
安心したのか、その場にへたり込んでしまった。
「ふむ・・・どうやら魔力を吸われておったようじゃの。ライラは魔力が多いから連れ去ったのじゃな。」
「ということは、すぐ目を覚ますかな?」
ダイヤさんが軽く尋ねる。
「う~む・・・見たところ魔力はいいが体は衰弱しておるようじゃ。どこかで休ませた方がよいの。」
「ではここから一番近い教国イゴンコウまで運びましょう。」
チャコさんの提案にマスターの顔が少し曇る。
「イゴンコウの~まあ仕方ないの。」
「あんまりいい国じゃないんですか?」
行ったことのない国なのでわからず質問した。
「悪い国ではないんじゃがな。その~・・・」
「マスターの師匠がいるんだよ。」
ダイヤさんの答えに、マスターはバツが悪そうだった。
ーーー長く眠っていた気がする。
前に目が覚めた時と違って、体が軽い。
ゆっくり目を開けると慣れ親しんだ声が聞こえる。
「目が覚めましたか?」
視界にゆっくりリサの顔が入ってくる。
(あ~私魔族に攫われたんだったね。)
しゃべったつもりが声になっていなかった。
「だ、大丈夫ですか!?」
「・・・声の出し方忘れてたよ。」
「なんですかそれ。」
私の感想にリサが笑みを浮かべる。
そう言ってしばらく沈黙が続いた。
リサが静かなのは珍しい。
気まずさに耐えかねて、私から話を振った。
「助けてくれてありがとうね。なんか・・・すごく足引っ張っちゃったね。」
自虐気味に笑ってみせたが、リサの顔が引きつった。
「昔からそうなんだよ。私は何もかも、うまくできない事ばかりなんだ。」
「そんなことありません!」
リサが大声を出して立ち上がった。
「ライラさんは何も悪くないです!私こそあの時何も出来なくて・・・ごめんなさい!」
リサに頭を下げられて、私はただただ戸惑った。
「それに!ライラさんはすごい人ですよ。なんだかんだ言いながらも、私を見捨てないで一緒にいてくれるじゃないですか!」
(何を言ってるのだろう?)
リサに引っ張られるまま、過ごしていた自分にはピンとこなかった。
「私・・・息苦しいって言われるんです。私は一緒にいることが楽しくて、一緒に!って思うんですけど、相手はそうじゃなくて・・・気づいたら空回りして。でも、ライラさんはそうじゃない!」
そんなことないよ、と言えなかった。
一瞬頭をよぎった言葉は、別の気持ちにかき消されていく。
「確かに、ライラさんの顔見てたら面倒だなって思われてることがあるのは知ってます。それでも!絶対に私を見捨てなかった。」
だってそれはペアだから、と言えなかった。
その言葉もかき消された。
弱っていたからか、リサの熱い思いからか、無意識に言葉が出た。
「・・・だってさ、友達だし。」
私のその言葉を聞いて、リサの目が見る見るうちに涙であふれてくる。
「・・・本当に、無事で良かったです!!うわーん!!」
子供のように泣きじゃくる彼女を見て、思わず口元が緩む。
その日私たちは、本当に友達になった気がした。




