材料を求めて雑貨屋さんへ
ここ数日スクロール作りに集中していたこともあり。
とうとうスクロール作りの材料が底をついてしまった僕は、雑貨屋にやってきた。
「こんにちは」
「やあ、少年。そろそろ来てくれるんじゃないかと思っていたよ」
雑貨屋の土間と私宅内とを分ける上り框に腰かけていたお姉さん。
入ってきた僕を見て、よっこらせとばかりに立ち上がる。
「スクロール作りの材料を買いたいんだろう? ちょうど昨日仕入れてきたところさ」
「助かります! 僕もちょうど材料が切れたところだったんです」
「ほら、これだ。もちろん代金はいただくけどね」
「ありがとうございます! これでしばらくは困ることもなさそうです!」
値段も街のお店と変わらない。もちろん僕はちゃんとお金を支払い、スクロールを書くための材料を多めに購入した。これでまた新しいスクロールを作ることができる。
「そうそう。ちょっと話があるんだ。聞いていかないか?」
お姉さんは雑貨屋の奥に向かい、上り框に腰かけると、自分の隣をぺちぺちと叩く。
以前に店の外で似たようなことがあったなと思いつつ、僕もお姉さんの隣に座った。
顔を向ける僕にお姉さんはさっそく切り出す。
「もし良かったら、この雑貨屋でキミのスクロールを販売しないか?」
「え?」
予想もしていなかった提案を聞かされて、僕はお姉さんの顔をまじまじと見つめてしまった。
僕の反応に小さく笑うお姉さん。
「いや、キミが来てからというもの、今までスクロールを欲しがることもなかったような連中までこの店を訪ねてくるようになったのさ。スクロールは売ってないか、とね」
「そ、そうなんですか」
「今までは街で仕入れていたわけだが……でも街で大量に売られているものは、キミが作るようなものに比べると品質が悪いんだろう?」
「まあ、そうですね……用途次第ではありますが」
これは決して嘘ではない。少なくともアイさんたちのようなファイアーワークスの使い方なら、市販のものでじゅうぶんだろう。
「謙遜しなくていいさ。それでね、どうせ売るならそんな粗悪品より、キミが作る上質なものを売りたいなあ、と思ったというわけさ」
「なるほど……」
「利益はアタシとキミで折半だ。とはいえお金儲けはキミの趣味ではないようだから、アタシも高値で売ることはしないでおこう。それでどうだい?」
魅力的な提案だった。
そのやり方なら、僕もお姉さんも村の人たちも皆が良い思いをする。
「分かりました。そういうことでしたら、扱いやすそうなスクロールをいくつか作って持ってきます」
「商談成立だね、少年。これからもパートナーとしてよろしく頼むよ」
「はい、よろしくお願いします!」
元気な僕にお姉さんも満足そうな笑顔で応えた。
この日を境に。
明かりをつけるライト。
頭痛や腹痛などを治すメディスン。
この二種類のスクロールが、お姉さんの雑貨屋に並ぶようになった。もちろん簡単な説明つきで。ライトの光量は個人宅用に調整したものだ。
ライトはもちろん半日で消えることはないし、メディスンも痛みがふたたびぶりかえすことはない。
きっと、村の人たちの役に立ってくれるだろう。
僕の作ったスクロールがドイゾアック商会のお店じゃなくて、この村のこの雑貨屋に並んだことが、何より嬉しかった。




