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内見に行くぞ

 今日は不動産屋に紹介された中古物件を、見学しに行くことにした。


 なお、前回は不動産業者に1人で行ったけど、今回は一緒に住むことになる水杜(みもり)やコボルト達も連れて行く。

 みんなの意見も聞きたいしね。


 ……まあ、コボルト達は、あまり人目に触れる場所に連れ出さない方がいいような気もするけど、さすがに彼らだけで留守番をさせるのは不安だった。


「わうわうー(速い速いー)」


「大人しくしているんだよー?」


 そのコボルト達は、車窓の外に流れる景色を見ながらはしゃいでいる。

 それを水杜にたしなめられていた。


 今現在俺達は、不動産業者のワゴン車に乗って、見学する家へと向かっている。 

 

「かなり郊外なんですね」


「ええ、駅や都心部から離れているので少々不便ですが、その分価格はお安くて静かですし、ちょつと足を延ばせばコンビニやショッピングモールもあるので、物凄く不便だということは無いと思いますよ」


 と、担当のおばちゃんが運転しながら答える。

 周囲は住宅地ですらなく、住宅はポツンポツンとまばらに建っているだけという感じの、実に寂しい雰囲気の場所だった。

 どちらかというと、草木の方が多い。


 だけどこれならば、異世界人が住んでいてもご近所から奇異の目で見られるようなことも、面倒くさい隣人からの干渉も、ほとんど無いかもしれない。


 しかも、徒歩で通える範囲に探索者協会の支部があるので、ダンジョン攻略も捗(はかど)りそうだ。

 ……いや、ダンジョンから魔物が迷い出る可能性もあるから、周囲が閑散としているのかもしれないけど……。


「でも自家用車はあった方がよさそうですね」


 駅は遠いし、バスの路線からも微妙に外れていそうなんだよな……。

 だから自動車があれば、色々と便利そうだ。

 それに中古自動車なら、家を買うよりもよっぽど安い金額で手に入るし……。


「え、免許をお持ちなのですか?」


 と、驚くおばちゃん。

 確かに子供のような容姿の俺が、運転免許を持っているのは意外に感じるだろう。


「ええ、勿論」


 今の姿になる前に、ちゃんと取得している。

 免許証に記載されている情報についても、神様の力で改ざん済みだ。


 ●:でもナオきゅん、足がアクセルやブレーキに届く?

 前はちゃんと見える?


 あ……!

 今の俺の身長だと厳しいか……!?

 オートバイならいけるかもしれないけど、しかしサイドカーを付けてもコボルト達を全員乗せるのはちょっと大変そうだな……。

 カートも同じ理由で問題があるし、そもそもめちゃくちゃ目立つから現実的ではない。


 ●ナオ:じゃあ……いっそ自転車で……?

 雨の日とかは使えないけど……

 

 ●:確かに荷物も「アイテムポックス」に入れればいいし、自転車そのものも収納すれば、駐輪場所にも困らないもんな


 ●:コボルト達を連れて行く場合は、散歩と割り切って走ってもらおう


 それしかないかぁ……。


 ●水杜:それなら私が「念動力」で車を運転しようか?


 ●ナオ:事故りそうで怖よ!

 そもそも免許持ってないでしょ!?


 ●:それはもう、ナオちゃん達を直接「念動力」で浮かせて移動すれば良くない?

 免許もいらないし


 ●:実際、「飛行」スキルも似たような原理ですしね


 ●レナ:というか「転移」のスキルを取れば、すべて解決では?


 いや、8000万Pもするんですが!?

 家よりも高いんだから、簡単には手を出せないよ……。

 ユニコーンを乱獲すればできなくもないけど、さすがにそれをやると相場が下がって効率が落ちるよなぁ……。

 というかこの神様、俺へと更に借金させようとしてない……?


 そうこうしている内に、目的の物件へと辿り着いた。

 周囲は木々に囲まれていて、ポツンと一軒だけ建っているその家を、俺は見上げた(・・・・)。

 ここから見える範囲では、ちょっと古いけど結構大きな家だな。

 部屋とかの広さはそれほど気にしないけど、これならドッグランを作れるほど広い庭に期待できそうだ。


「では、こちらへ。

 足元にお気を付けください」


 と、先を進むおばちゃんに促(うなが)されて、階段に足をかけた。


 この家の土台には大量の盛り土がされており、ちょっと高い場所に建てられている。

 近年になって温暖化の影響で豪雨災害が増えているから、その対策として多く見られるようになった建築方式だ。

 土台を高くすることで、洪水時に床下・床上浸水にならないようにしている訳だが、家に入る為には階段やスロープを使う必要がある為、老人や病人などの身体が不自由な人とは相性が悪い。


 まあ、今の俺は健康体なので、階段とかはさほど苦ではないけれど、将来的にはエレベーターやエスカレーターの設置を考える必要があるのかもしれない。

 ……って、その頃には新居に移っている可能性の方が高いだろうけれど。


 ちなみに、土台を高くするのではなく、1階を車庫にして、生活空間を2階にする家も増えているけど、いざという時は車を避難させないと駄目だという問題もあるようだ。


 その点この家は、車庫のスペースも土台の上に作られているようなので、自家用車を買わなくても倉庫として水没の不安無く使うことができそうだな。


 ただし、こういう建てられ方をしているということは、周囲が水没することもあり得る立地だということだが……。

 いざという時は浸水被害は避けられたとしても、停電や断水になる可能性はある。

 まあ、そのおかげで家の大きさの割には安く価格が抑えられているようなので、どちらを取るのかということではあるが……。

 生活用水や電化製品の代用は、ある程度なら魔法でどうにかなるので、気にしなくていいかな……と、俺は判断している。


 さて、まずは家の中から見学しようか。


「いらっしゃいませ」


 ……玄関の扉を開けたら、和装の幼女が土下座……じゃなく座礼をしていた。


「え、誰!?」


「あら?

 どうかなさいましたか?」


 え、おばちゃんが俺の反応に対して、首をかしげている。

 この幼女、俺にしか見えていない感じ!?

 急に寒くなってきた……。

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